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117話 結希

全身のエネルギーを手中に集めた。

じわりじわりと熱と圧力が吸い込まれてくる。

痛みにも似た雷の感覚が膨れ上がると、

指先から腕にかけて痺れが走る。

『困難を与えられるほどに強くなる肉体』であって

耐えられるぎりぎりの痺れは、雷の力が究極まで研ぎ澄まされた証だ。

今まで『トールの雷龍』を放つとき、

このように静かに力を溜めて維持することはできなかった。

できるようになったのは、月子から教わった禅のおかげだ。

禅は思考を1つに絞ることを教えてくれた。

人はいつも、勝手に様々なことを思ったり、考えたりしてしまう。

さらに、放っておくと思考は次々とテーマを変えていき、

まとまりを失っていく。

まとまりのなさは、人から力を奪う。

禅は自らに意識を向け、それ以外を許さない。

鍛錬を繰り返すたび結希の脳は、

1つのことだけに集中できるようになった。

雷の力を研ぎ澄まし、小さな場所に留め続けることができる。

後は、力を放つタイミングを待つだけだ。

<葵の所にいくよ>

ロックの声にダニエルが眉を上げた。

「相手の狙い通りだとしても?」苦笑いを浮かべる

<うん、じゃあね>

ロックは大きく羽ばたいて、さらに上空へと舞い上がっていく。

結希は『雷竜』を撃たなかった。

「・・・」

ダニエルが中空から降りて来て、結希の前に優雅に着地した。

その佇まいは、一見隙だらけだが、まったく隙がないようにも感じる。

底知れない不気味な力が、こちらに手を伸ばしてきているようだった。

「そうしているだけでも、すごい力を感じる。

結希の力は電力だよね?

自分は磁力を使う。

磁力で集めた砂鉄を尖らせて武器にしているんだ」

自分の能力を明かされ、結希はどこか遠い世界に

放り込まれたような感覚に襲われた。

「・・・なんで教えた?」

「フェアじゃなから」

結希は眉間に力を入れた。

「フェア?」

「結希は、自分とロックの別れを待ってくれた」

結希はわざとらしく肩を竦める。

ロックが葵を目指すなら止める理由はこちらにはなかった。

「あんたの方こそ、すぐに全員を殺そうと思えばできたのかも」

ダニエルも結希の真似をして肩を竦める。

「結希は、自分が黒人なのをあまり気にしていないように見える」

彼はフードを取ると、自分の頬を指差した。

「僕はそういうのあまり気にしない」

「陽子もそう言っていた。

日本人にとっては、黒人も白人も同じ外国人の

カテゴリーに入るらしいね」

面白がるようにダニエルが言った。

「白人は黒人だけでなく、

黄色人種を差別するのに、日本人は差別をしない。

本当に素晴らしい国だ。だから最後にした」

結希は首を振った。

「日本人同士の差別はとことんするけどね」

「知らなかった」ダニエルが意外そうな顔をした。

「特別日本人が偉いわけじゃないってこと」

「そうか」

結希の言に感心したように、ダニエルは顎に手をやった。

「・・・じゃあ、やっぱり殺そう」

ダニエルは帰りにちょっと寄り道しよう、

とでもいうかのように軽く言った。

「虐殺を人のせいにするな」

この男の目的は、最初から変わっていない。

油断なく半身になり、腰だめに構えた。

「あんたは間違ってる」

喉を細くして絞り出すように言い放つ。

「黒人を否定できるのは、白人だけだ。

もういないけれど」

ダニエルが冗談めかすが、結希は少しも笑わなかった。

彼の背後に突如いくつもの空洞ができる。

空洞に見えたそれは、巨大な砂鉄の塊だった。

「さようなら」

塊は地面にバウンドしながら向かってきた。

ありがとうございました。

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