91.お宿は関宿 城キャン凸
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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渡良瀬川堤防の内側を南下すると、利根川との合流点を経て、更に江戸川の分岐点。
とは言え走ってる道は堤防の内側だからその辺何にも見えません。
そして利根川を渡る橋を水戸県から佐倉県の北端に渡ると、行く先には西陽を背に受ける天守、いや御三階櫓。関宿城だ。
「あそこが今夜のキャンプ地だよ」
「おお!ついに城キャン凸ね!」
「でも…ここは丘なの?」
「堤防だよ?」
「亘さん、何か城全体が丘っぽいんだけど…
「ああ。あれは『でえだら堤』、今で言えばスーパー堤防。
さっきの古河みたいに、川沿いに三角の堤防が長く続くだけじゃなく、その内側の市街も含めて堤防の上に築く、分厚い堤防。
もう人口の台地と言った方がいいかな?」
「あー!そっから先は私の仕事だよー!
折角勉強してきたのにー!」
「おっとガイドさんの仕事を取っちゃったらいけないねえ」
「明日お城の中に行けば、江戸の建設と利根川東遷の資料や模型が一杯あるよ~」
「では、明日の名ガイドさんの案内を楽しみにしましょうね!」
「司ンー!期待シテルネー!」「ねー!」
「任せてグラ玉!今夜は最後の宴会だね!」
「えー…」「もうそんななんだ~」
あ、グラ玉が萎んだ。
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バスコンは城下町の中央通りを進み、水堀沿いに進む。
道の両側を土塁で囲まれた大手門跡…高麗門の大手門は道脇の歩道に移動されていた、その車道を進み、古い町並みを改造した商店街を進む。
そして空堀で隔てられ、スーパー堤防でかさ上げされた三之丸佐武門の楼門手前を右折して、城の東を囲うスーパー堤防の上へ坂道を登る。
発端曲輪跡、丁度利根川と江戸川の分岐点辺りが公園とキャンプ場になっている。
本丸と御三階櫓はその隣、スーパー堤防よりもう一段高い位置に聳えている。
「今日はテントと車内、どちらがいいかな?」
「昨日と気分を変えて、テントかな?」
「え~?みんな一緒で車内でよくない?」
「いやそれじゃ時サンが辛いかなって」
「私の事はお気になさらず」
「じゃあ亘さんも一緒に寝ましょうネ!」
「何言ってんだミキー!」
結局時サンは風呂場兼寝室のテントで、他の女性陣みんなは車内となりました。
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みんなのフルートグラスにスパークリングワインならぬシャンパーニュが注がれた。
あー、最後の晩の贅沢に取っておいたんだなー。黒いラベルに赤い斜め線が入った…
「マムのコルドン・ルージュね」「さいでっか」
「じゃー汗も流してスッキリした事だし、今年最後の…」
とミキが言いかけると。
「オンドは亘さんにお願いしまショ!」とラン。
「いや、この旅行はガイドの司サンあっての物だろう。音頭は、司さんにお願いしよう」
やめて時サン!
「オー!」「「ガイドサマー!」」「お願いね、司さん」
いやあ照れるなあ。でもしゃあない!
「じゃあ僭越ながら。
みんなと一緒に色々勉強にもなって、とっても楽しくて賑やかな旅が出来ました。
皆、有難う!
そして素敵で快適なバスコンにキャンプ場に長時間の運転をして頂いた時サン!
本当にありがとう!」
拍手が沸き起こった。
「皆さまの来年の幸福を祈って、カンパーイ!!」
「「「カンパーイ!!!」」」
車窓の向こうはライトアップされた、どこか古風な御三階櫓と本丸の白壁と楼門が光っていた。
「旅の終わりって、サビシイネ」
「飴ズは寮だろ?賑やかじゃないのか?」
「ソリャソーだけど、お次いないとサビシーよ」
「グラシアもお玉もダヨー!」
「えへ、嬉しいね」「こんな旅も、悪くないな」
賑やかだ。
「お延サーン!おネー様になって下さ―イ!」
酔ったミキが爆弾発言。
「あらあら、それは時様にお越し入りするって事かしら?」
何言ってんのお延さん!
「ワオ!イーネー!働き者の日本のオトコ!」
「オイデヨー!」
グラシアも煽るな!
これでいいのかフィリピンの男性諸君!
多分今年最後のガッツリステーキの山が忽ち消えて行き、交替に空き瓶が増えていく。
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食事の片づけが済むとまたまたリビングをベッドにガチャゴチョ変形させて、ベッドメイキング。
そして順番に食後のシャワーを浴びてパジャマパーティー。冬の夜は長いよ~?
と、時サンがいない。
「もう時様はお休みですよ」
「そうですか…」
上着を着こんで風呂テントを覗いてみたら。
「オヤ?司さん?覗きかな?」
「ギャッ!」
入浴中、てか風呂入って御三階櫓を眺めながら酒飲んでたー!
お酒は徳政宗、とか言ってる場合じゃねー!
「スミマセーン!」
時間を改めてもう一度。
「あの…さっきはすみませんでした」
「いいよオッサンの見苦しいものを見せちまって」「見てません!」「わっはっは!」
「でも、ホントに今回は色々有難う御座いました!」
「いやいや、私の方こそ楽しませてもらったよ、最後のハプニングも含めてね」
「スミマセンでしたー!」
大きなテントの中は、は天井からつるした大き目のランタンで明るい。
風呂用を兼ねた薪ストーブ暖かさと煙の匂いが、何だか特別な空間を、年末の特別さを感じさせてくれる。
いいなあ冬のストーブテント旅。
「でも楽しかったなあ~。あんなカワイ子ちゃんに囲まれてこの数日は極楽だったよー!」
「うわオッサンスケベ根性丸出しだー!色々台無しだー!」
「みんな必死に色々見て楽しんで好奇心燃やしてさ、ああいう情熱は失いたくないけど」
「最初からそう言えばカッコいいのにー!」
相変わらず徳政宗、利根川対岸境町の地酒を飲んでる。私も頂こう!
「おっとっと。で、司さんも得る物はありましたか?」
「そりゃもうガイドの実地訓練みたいなものよ。
九州の時は未だ何となく当時を良く知ってる皆を相手にしてガイドごっこっぽかったし、何より現実と別の歴史のギャップに眩暈してたし」
「今回は?」
「ランもスーもミキも、スーは意外だったけど日本から何かを必死に学ぼうとしてた。
そんな中…どこまでみんなの役に立てたかなーって。
みんなにとってお城の情報より、近現代の技術史や経済発展の秘訣の方が必要だったのかなって思ったのよ」
「そう…」
時サンは黙って聞いてくれた。
「歴史の勉強、日本って歴史あっての今なんだから決して無駄じゃないとは思うよ。
でもあの子達は国に帰って国のために働きたいし、自分の為に成功したい。
ちょっと寄り道になったかも…」
しまった!まるで時サンが頑張ってくれた事を寄り道だなんて!
「御免なさい!みんなとっても楽しんでくれたと思うし!」
「いいよ、私は寄り道大好きだから」
なんかはぐらかされた。
「でも日本がどうして今みたいに成功したのか。
それってランが言ってたみたいに経済学だけじゃ解らない。
ミキが嘆いてるみたいに働き者だけじゃ、いやそれも大事だけどそれだけで足りない気がする。
時サンから聞いた『本当の歴史』を聞くと、努力の方向を間違えると、とんでもない悲劇に向かってしまう。
どうしたら彼らの求める答えを提供できるのかなーって考えると、ね」
私もガイドで頭が一杯だったし、みんなの真剣さがここに来るまで解ってなかったから、今更な悔しさが込み上がってきてしまった。
「それはもう大学の教授の仕事だよ。ガイドの仕事じゃあない」
「そ?!」
「ガイドさんって、初めて訪れる場所について、来た人に必要最低限の情報を与えるなり、質問に答えるなりして、楽しんで帰って貰うために居るんじゃないかな?
旅の楽しさ、面白さを味わってもらうためにいる、そういう人じゃないかな?
人生相談とか歴史哲学とか政治経済指南とかまではする必要は無いよ」
「そりゃそうだけど…う~ん。そう言えばそうだよね!」
うん。あまりにも難しく考えすぎてたなー。
私飴ズの保護者じゃないし、先生でもないし、友人なんだし。
「みんな楽しんでくれたかな?」
「そりゃもう!流石に国に帰りたくないー、とまでは言ってないけど」
「それこそ重畳。お次さんとグラシアのスケッチも、玉ちゃんのうまうまも楽しい旅の思い出になったと思うし、司さんのガイドも、これから色々勉強する上のヒントになったと思うよ。
勝手に思うだけだけどね」
何だか嬉しい。そう言って貰えると、頑張った甲斐があったかも知れない。
「さあ、もうそろそろみんなの所へ帰らないとヘンな噂が立つゾ?」
「そういう事を言わなきゃいいのに」
「スケベオヤジだからねえ私は」
「ゲー」
バスコンに帰ったら既にヘンな噂が立っていたので気にせず寝た。
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※今回のキャンプ場も実在しません。
一応関宿城博物館裏手にある子供用ののびのび公園がもしキャンプ場を併設してたらなーと思いつつ書きました。
昔小さかった娘を連れて遊びにったものです。
関宿城と逆井城はコンビで行ったもので、特に春の逆井城は桜が綺麗でした。
※徳政宗は関宿の対岸、境町の萩原酒造様の銘酒です。道の駅さかいでも売っています。
https://www.tokumasamune.com/
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。




