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87.ガイド四本龍寺 お宿はバスコン

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 いや~。眼を閉じれば黄金の輝き。


「凄かったネ―東照宮」

「前行った上野と芝を思い出すよ」

「え?東京にも東照宮ってあるノ?」

 飴ズが語り合ってる。


 前に時サンと四姉妹と行った事を思い出してポっと話した。

「あるよ。ここみたいにもう金と黒と赤の洪水」


「「司ーン!連れてってー!」」

 うお!ランとミキが食いついたー!


「ガイドはしないよー」

「ツカサー!ツレテッテー」

「グラシアとは前行ったじゃん?!」

「飴ズとイッショに行きたいヨー!」「私もー!」

「あらあら、仲良くなったわねえ」

「司ンの人徳だな」

 助けてお延さんとお次さん!


 バスは日光山の木々を潜り、元の車道へ、神橋へ。

 そこで、何故か停車。


「あ、そうだ。日光山最後のポイントがあったっけ」


******


 神橋脇を渡って、今度は石段を上がると、カフェ。

 その脇にある鳥居から境内へ。

 小さな、いや普通に街中にあったらそこそこな神社。


「ここも二荒山神社なの?」

「その通り。8世紀末に創建された、さっきの豪華な二荒山神社の元祖がここ。

 とはいえ元はここから西側にあったらしいけど」


 手前に拝殿、奥に壁に囲まれた本殿。

 どちらも朱塗りで梁には極彩色の飾りが描かれている。


 その奥には、もう一つの日光山の起源。

 白木で宝形造りのお堂、観音堂と、朱塗りの三重塔だけの小さなお寺、四本龍寺。


「こちらが、輪王寺の元となった勝道上人の四本龍寺です。

 8世紀、この地に四色の煙の柱が立ち、上人が近づくと四匹の龍が天に昇るのを見て、これを吉兆と男体山登頂を誓いました。

 それを祈念して四本龍寺が建てられました。 

 山岳信仰と仏教の融合から日光山の歴史が始まったのでした」


 あ、またランとグラシアが頭抱えた。

 ミキ、考えるのを放棄してんな?


「にしてもこんな小さな所から、あの東照宮まで発展するんだから歴史ってわからんものだなあ~」

「私もだよ」

 ここだけなら、町外れの神社かお寺か、って感じだ。


「そこが歴史の面白い所じゃないか。

 三重塔は東照宮の近くに建てられたそうだけどね。

 14世紀、鎌倉幕府の三代将軍源実朝が暗殺された後、供養のために建てられたそうだ」

 時サン、爆弾発言!

「今度は鎌倉将軍かー!!」

「日光、将軍大杉事件だな」

「杉並木だけニー!」


 世界中から多くの人が訪れる日光山の端っこの、小さいお寺?神社の中で、9人で笑った。

 道勝上人、お騒がせしてスミマセン。


******


「今日も結構歩いたから、キャンプはこの近くだー」

「流石時サン気配りの名人!」

「褒めても酒しか出ないぞー」

「いやそれで充分です」


 バスコンは途中、スーパーで買い出しを済ませ、神橋を流れる大谷川だいやがわに沿って移動、町外れのキャンプ場へ。

 木々の間を潜り、駐車場にしてはバス1台で一杯になる様なスペースで車を停めた。

「今夜は初めてバスコン泊だー」

「初めてー!」「そういやまだ車内で寝てなかったなあー」

「あ、お風呂は?」

「外に作るよー」「ステキー!」


 西日が段々赤くなる中、お延さん達が料理の支度を、時サンが簡易風呂の支度をテキパキと進める。

 私達も世話になってばっかじゃ悪いんで、グラちゃんが外でパエリア作るってんでコンロを出してお手伝い。

 手すき組は、リビングのテレビで大猷院の修理動画を見学。交代で風呂へ。

 いや~結構なんだかんだ歩いたなー。

 毎晩タップリ食って、日中タップリ歩く。これでダイエットに…

 あれ?何か忘れている様な。うん。気のせいだ。


******


「ふぃ~。旅路で風呂に困らないってステキー!!」

「「だよネー!」」

「この生活に慣れたら風呂無しの日は耐えられないゾ?」

「本当にそうですよぉ」

「日本の寮は、風呂とシャワーに困らないからなー」

「「そー!!」」

 飴ズが盛り上がってる。


 だがふと疑問が。

「最初ワタシ達だけでキャンプーって言ってた時、その辺どうするつもりだったのよ?」

 と聞けば

「日帰り温泉ネー」

「日本は全国どこでも温泉ダヨー」

「どっかにあるだろ」

 何と。スーすらも!

「でも焼き肉したらニオイ付くぞ?」

「それは考えてなかったネー」

 飴ズ、能天気だなあ。まあ、時サン達がいなかったら…

 え?もしかして計画練るの私だった?ひー!

 もう時サンに足向けて寝られないわー!


「「「カンパーイ!!!」」」

 この旅行何度目かの乾杯だ。

 今夜も乾杯はスパークリングワイン。


「楽しい乾杯は何度やってもいいもんだよ」

「日中お酒をガマンさせてスミマセン」

「いやいや、この時を楽しみに運転するのもいいもんだ」

「ホントスミマセン」

「司さんこそ楽しんでる?」

「そりゃこんな楽しい年末になるなんて思っても無かったよ!

 学祭で仲良くなった飴ズと一緒に豪華旅行なんて」


 時サンはニッコリ返した。

「そりゃ私も同じだよ。

 たまに大人数でこんな大騒ぎしてあちこち旅してさ。

 お延さん達も大喜びだよ」


 それにお延さん達が続く。

「ええ!護児堂を巣立った皆と久々に会って花見した時を思い出しますね」

「あんときゃ飲んだねぇ。子持ちの連中には恨まれたなぁ」

 お延さんとお次さんが遠い目をしてる。

 この人達にも、長い人生で人付き合いがあるんだろなあ。


「「パエリアうまうまー!」」「オイシー?嬉しいデース!」

 美人でナイスバデーで絵も描けて料理も上手、完璧超人かグラシア?

 時サンとお延さんは例によっていつの間にか日本酒へ。

 この先の酒蔵の酒、名前は「原酒」?、あ、違う、「素顔」か。

 考えて見りゃ私達、夕食はズッと時サンとノーメイクで飲んでるなあ。

 やべ、段々恥ずかしくなってきた!

 けど、今更だし。


******


「やっぱ凄かったね、東照宮」

「京の聚楽第よりスゴスゴデシター!」

「行ったんだー」「司ンと一緒デース」

「修理の動画見たけど、あの模様全部手で描いてるのネー」

「そらそーだろ」

「上手よねー」

 飴ズもグラ玉とすっかり仲良しだ。


「他の国での失敗例とかで、塗った模様が簡単に剥がれちゃったり、上書きした絵がドヘタだったり」

「それは日本でもあるよ?東照宮でも完成後『目が悪いのか!』って怒られて塗り直しになった彫刻もあるし」

「そーなんだ」「日本でもそういう事あるんだー」


「いやね。ああいう職人さん達が日本中の城や御殿や寺なんかを直して回って。

 それが何か、東照宮だけじゃなくて日本の文化財に…命を、吹き込んでるんかな、って」

 スーがしみじみいい事言った。

「オオー!イーコト言いイマスネー!」

「あたし、華僑の出なんだけど、商売大事で日本の文化財政策って金食い虫にしか見えなかったんだよね」


「「「…エ"ー???!!!」」」

 時サン以外全員ビックリ!


「一応去年日本国籍にしたよ?親は台湾だけどね。

 でもシンガポールとか香港マカオとか流浪の人生だったよ。

 まあ、これからもあちこち行ったり来たりだろうけどね」

「「「台湾かー!」」」

「圓山大飯店泊まりまシター!」「あそこ綺麗ーだったよねー!」

「スーちゃんさんって行人偏に余る、で徐かあ」

「スーちゃんさん、ってナニソレ時サンてば!」あ、スー壺った。


「台湾、よかったなあ。今度は海外の和城巡り、行くか!」

「そうね、社会人になってボーナス出たら」

「別に?クルーザー出すよ?」「持ってるんだ…」「流石富豪…」

 流石に飴ズも弁えたか。


「スーはやっぱりビジネスで日本籍にしたの?」

「それもあるけど、やっぱり特殊な社会でしょ?

 中華系に比べると面倒臭いけど、ありがたい様な。

 高砂族もそんな感じがするけどね。どこかそんな所に惹かれたのかな?」


 するとランが言い出した。

「私もいつかタイに帰るけど、日本が世界で成功した秘訣を学んで帰りたいヨ!」


 ごめんラン、その秘訣の半分、あんたの斜め向かいで酒飲んでます。


「でもネ。最初ワタシ、日本は経済がスゴイって思って、経済学を取ったヨ。

 でも日本の経営者、みんなイマイチ。

 日本の会社は社員と、経営を知らないアタオカな天才がモノを作って、

 馬鹿みたいに頑張って、気が付いたら成功してた、そんな話バッカリヨ。

 全く学べる所が無いネ!

 日本人、下の人達が凄スギー!上で成功した人、下の人スギー!」


 まあ、時サンから聞いたアッチの歴史ではその所為で大変悲惨な歴史になってたみたいだ。

 でもコッチの歴史では、経営者の地道な努力と、政治の舵取りのお蔭で今の発展があるんだ。

 その舵取り操ってるヤツが、私らの斜め向かいで酒飲んでます。


******


 皆で準備したごちそうを楽しみつつ、動画で城の修理とか見ながら夜を過ごした。

「あの白い壁ってああなってんのか」

「まさか芯が荒縄だったなんて…」

「何層壁塗ってんのヨ」

「壁に海藻混ぜてる…アンビリーバボー!」

「中々のニオイだったよ?」

「見た事あるんですか?流石時サン!」

「あの壁画修理してんの美大生かぁ。同年齢とは思えないなあ」

「昔の金メッキってああやるのか…水銀中毒になりそうだ」


 色々盛り上がってお開きとなった。

 …ただ、食事の片づけとベッドの準備は大騒ぎだったな。

 あ、リビングの天井が持ち上がって二段ベッドみたくなるのか!

 何だか楽しいかも。

 時サンは若い女性と同じスペースに寝るのを遠慮して床下のベッドに引っ込んでしまった。


※日光二社一寺が人々を集めるその片隅、神橋の正面石段を渡った脇に元の二荒山神社と四本龍寺があります。何度か日光観光を経験された方は一度訪れては如何でしょうか?


※日光の宿と言えば金谷ホテルか、鬼怒川の温泉街か。

 ですが、今回の司ン一行のコンセプトは貧乏旅行なので、大谷川沿いのキャンプ場です。

 モデルは日光だいや川公園ですが、バスコンが入れるか(多分サイズ的にムリ)携帯風呂の使用が可能かは疑問です。

 風呂は近接の公共温泉の使用を推奨しています。

 ちなみに、12/27で営業終了なので、この物語だとギリギリアウトです。

https://nikko-daiyagawapark.jp/


※日本酒「素顔」は、この日光だいや川公園の先にある片山酒造の製品です。

https://shop.kashiwazakari.com/


※皆が見てた金メッキは、金と水銀の溶液(金アマルガム)を火で炙り水銀を蒸発され、金を蒸着させる古代以来の手法です。

 東大寺大仏や京大仏はこれで水銀中毒者を多数出したそうです。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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