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80.ガイド忍城 お宿は豚さん温泉キャンプ

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 陽が傾いて来た。

 今更だけど冬は夜が早いから観光の時間が限られるなあ。

 時サンには相当無茶振りしてしまった。

 相変わらず何だかワンダバンダバダバってスキャット聞きながらご機嫌な様だけど。


 向かう先には何だか賑やかなスーパー?レストラン?露店で賑わう所が…


******


「子ブタさんがいるよ」

「豚ー!ぶひぶひ~!」「グルニーグルニー」「クゥーッ!」

「豚の声もインターナショナルだなあ」

「で、豚小屋なの?」

「そう。養豚場跡の温泉キャンプ場とバーベキューレストランだよ」

「オンセンー?!ヌフニャ~ム(ステキ)!」

「そんなとこあるんだ…」


 着いた先は川越の南西、狭山。

 元々養豚場だったけど周囲の車が多くなって繊細な豚のため養豚場が移転。

 前々から温泉が出て豚の発育を良くしていたけど、これを日帰り温泉に拡大。

 広大な敷地をバーベキューレストランや公園、更にキャンプ場まで開設して大人気。


 とは言え流石に冬場のキャンプ場はガランとしてる。


「子豚ちゃんかわいー!」「ぶひー!」

 レストランの隣の公園で子豚をナデナデ。子豚、意にも介さず放尿。

「ギャー!」逃げる一同。


「「「うまー!うまうま!!」」」「ン!ホント美味しい―!」

「可愛らしい子豚ちゃんの命、余すところなく頂きます」

 手を合わせるお延さん、お次さんとラン。

 バーベキューレストランでひたすら肉食。私ら肉食女子です、そのまんまの意味限定で。


「ビバノンノン…」

 広い露天風呂を大きな天井で覆った庭園風呂。すごい。

 いつも元気なグラ玉も、飴ズもなんだか溶けてる。


「広い風呂サイコー…」

「マラビョーソ…」

「日本の温泉やっぱイイネー」


「なんていうか、満喫しまくってますねえ」

「時様が色々遅くまで計画してましたから」

「何か、いつもスミマセン」

「いいんだよ司ン。寂しい中年に新しい女子との出会いは至福の時なんじゃね?」

「これお次!」

「時様は嬉しいんだよ。ねえお延姉?」

「それはその通りね」


「時サンにはこんな美女4人がいるじゃないですか」

「それでも、あの人寂しがり屋だからネー」

「最初は極力人に係わりたくなかったと言っていました。

 でも私達みたいな人を助ける度に、関わる人が増えてしまうそうです」

「そりゃそうでしょうねえ、ましてや天下人三代を裏で操るとは…」

「でもいつかお別れの時が来るんだって、寂しそうに言ってました。

 だから、でしょうね」

「楽しい思い出を作りたい、とかですか?」

「ええ」

 お延さんが莞爾と、ちょっと寂しそうに笑った。


「あ!」「どうしました?」

「て事は今頃…」

「あら?まあまあ落ち着きましょうね」

 立ち上がろうとする私はお延さんに止められてしまった。


******


 温泉から上がると、もうテントはストーブで温められていた。

「またまたスンマセン…」

「女性はゆっくり温泉を楽しむものだよ。外は寒いしね」

 時サンは既に日本酒を飲んでました、天覧山?あ、この近く、飯能市のお酒なの。


「「「カンパーイ!」」」「「「うまうま」」」

 まだ食うかグラ玉!飴ズ!ソーセージとか…うん、美味しそうだ。

 薪ストーブであぶるのがまた何とも!冬の醍醐味かあ!

 私も食べるぞ!豚になるんだ!


「賑やかで嬉しいねー!」

 時サンのフツーな反応に、ちょっと色々思ってしまった。


******


 出発前に子豚さん達に挨拶して、お別れ。

 バスコンは北へ。


 忍城の案内板を左折すると、広い湖、その先に白く輝く三層櫓。

「ここがシノビの城?」「オシ城だよ」

 バスは三之丸へ、市役所の駐車場へ。


「忍城は、中世15世紀から続く成田氏の城で、戦国時代には北条氏と上杉氏の戦いに、そして16世紀末には小田原征伐の際羽柴秀吉配下の石田三成軍による水攻めに耐えた、沼や川を利用した城です」


「湖じゃないノカ…」

「沼です。今の姿になったのは17世紀前半、徳川家光の忠臣阿部忠秋の手によるもので、10万石に相応しい城となりました。


 南端にある三階櫓が天守替わりで、他に二層櫓が二基と建物は小規模に見えますが、巨大な沼に浮く湿地を固め、本丸を囲む様に配置した縄張はいざ戦いとなれば敵にとって苦戦する事でしょう」


 私達は沼を渡る土橋で沼橋門のある浮島みたいな一郭へ、そして三之丸へ。

 ここの三階櫓も外側に白壁があって一見四層みたいに見える。

 その最上層へ。


「沼だねー」

 三階櫓から北を見渡せば、玉ちゃんの言う通り、沼に島が浮いてる感じだ。


「あの森は何だろねー」「あれが本丸です」「えー?!」

「関東では本丸に将軍を招く場合が多く、忍城でも本丸を万一のために開けておいたと考えられます」

「西側は沼ないねー」

「西側は街の発展と共に本丸とその西隣の井戸曲輪を残し、埋め立てられて市街地になっています」


 三階櫓のある勘定所から北へ、飛び石を歩く様に三之丸、二之丸へ。

 二之丸の御殿を見学。大広間洋風に改装されていた。

「藩政の場であった二之丸御殿は、明治以降足袋の町として発展した産業都市のために商工会館として利用され、街の発展に貢献しました」

「御殿様の時代が終わって商売の時代になったんだねえ」

「ショギョームジョーデース」


「いやいや、その切り替えが日本の凄いところヨ」

 グラちゃんにランが突っ込んだ。

「商売上手って事?」

「ウ~ン。社会が進むべき道を最短距離で選んだ、迷いの無さ、カナ?

 あと一度決めたら国が一つになって突き進む。

 コレ他の国だとダラダラしててナカナカ出来ないヨ」

「日本の男は働き者デース」

 ラン日本絶賛、ミキも乗る。


「迷いの無さだって」

「ん~?何の事かなあ~?」

 時サンに突っ込んだらとぼけられた。


******


「森だね」「森だ」

 本丸に入って引き返し、城外へ。


 二之丸対岸から二重櫓の手前に広がる沼を眺めると…

「長閑だねえ」「ダネー」「「ウンウン」」


「日本のお城って言っても小田原城とかゴザイショ、甲府城みたいな立派な城と、ここや昨日の川越城とはゼンゼン違うネ」

「それが時サンの言う西と東の違いって奴かな?」

「そうだよ。西の人は城に費やすエネルギーの桁が違うんだ」

「不思議ネー」


 それでも水辺に建つ三階櫓は冬の青空の中、綺麗に輝いている。

 バスは最初に見た気持ちの良い景色を眺めつつ南へ。


 バスの中では、お土産の十万石饅頭が、包み紙の殴り書きしたみたいな、それでも凄くパワフルなお姫様の笑顔と共に大人気。

「うまい!うますぎルー!」「風が語り掛けますヨー!」

 土産屋で無限ルーチンしてたCMが壺に入ったのかここだけブームになった。

「それ棟方志功の絵なんだけど…」

 大家の絵もカタナシなのか、それとも心を捕らえたのか…


******


 バスコンは一旦東へ、途中酒蔵と大きな公園に寄って…じゃない、これ古墳かあ!

「「「ほえー」」」展望台から眺める巨大な前方後円墳に感動しつつ、今度は西へ、北西へ。

 途中蒸気機関車が線路を走ってるのが見えて何だか私もみんなも「「「おおー!」」」って喜ぶ。何故だ?


******


※元養豚場、モデルは狭山市の「サイボクの森」ですが、キャンプ場はありません、そこだけ架空の物です。

 娘が小さい頃、子豚と遊び、レストランで最高の豚肉を楽しみ、温泉で温まり、豚肉を買って帰るのが小さな楽しみでした。

 口蹄疫やコロナの影響で、今では三匹の子豚と触れ合う広場はなくなってしまいました。

 子豚さん達、有難う。


※天覧山はその名の通り飯能市の五十嵐酒造のお酒で、安価で美味しい日本酒です。五十嵐酒造では現在狭山産の酒造米で「里平」という地酒を生産していますが、この物語ではまだそこまで時代が進んでいません。

 天覧山、「ヤマノススメ」でヒロインが劇中で初めて登った山ですね。


※沼に浮かぶ忍城の復元模型は下記の通りです。

 詳細な絵図や明治初期の鳥観図で大体正確な姿が判明しています。

 ちなみに現在では写真右下部分の沼のみ残っていて、他は一旦消滅しました。

 近年本丸の森の一部が行田市郷土博物館として整備され、不正確ながら城址っぽさを演出しています。

https://www.mapple.net/articles/photos/1101/2519/


※現在本丸東、諏訪曲輪南端に行田市郷土館として忍城三階櫓を模した城郭風建築があります。破風の配置や出窓等は明治の絵図を参照していますが、窓の造作はずいぶん印象が異なります。残念。

 それでもサイタマ民には関宿城と並んで数少ないお城っぽい建物なので、私は良く遊びに行きます。


※途中で寄った酒蔵は、「桝川」を醸す川端酒造さんです。忍城下の水城公園からさきたま古墳群に向かう道、沼の先直ぐにあります。

https://www.kawabatashuzou.co.jp/


※さきたま古墳群には展望台はありません。どれかの古墳に登って、周囲を眺めるしか前方後円墳の姿を確認する術は無かったりします。


 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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