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251.ガイド江戸城ウエディング イカれた歴史を有難う

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


「ご案内に参りました」

「…今日の予定って、内務省でしたか」

 久々の休み、実家にいたところに予定が入ったと思ったら、BGの赤石氏。

 のんびりダラダラしたかったんだけどなあ。


「いえ。今日は、のんびりダラダラして頂きますよ?」

「何ですか?」


 黒リムジンじゃなくて、フツー…じゃないな。結構な旧車がお迎えだった。

 ウヒョー!セドリックー!とか父の絶叫が聞こえたけどなんだか解らん。

 でも。


「結構大変なお怪我をなさったんでしょ?」

「いい頃合いでした。BGは廃業です」

「!私のために…」

 赤石氏は笑って。

「最初にお会いした時言ったでしょ?私は貴女を尊敬してるって。

 男は、尽くすと思ったレディのために命を懸けるのが、矜持って物なんですよ」


 これ、何と言い返したらいいんだ?


「では、お仕事でも使命でもなく、司さん。貴女をのんびりした時間にご案内します。

 どちらに行きたいですか?」


 私は、なんとなく。漠然と。


「私が最初に行った、江戸城に」


******


 そこからは、二人で観光客もまばらな江戸城を見物した。

 大坂城、京の4城、伏見城、伏見城、広島城、金沢城。

 日本を代表する色々な城を案内してきた。

 でも、一番身近な江戸城はやっぱり見応えがあって素晴らしいなあ。

 二の丸の塁線上に並ぶ、二重長押塗り出し、軒先鼻隠しや破風板妻板を黒ふすべで覆った二層、三層の櫓の行列にその間を結ぶ長大な多門櫓。


 日本最高級の格式って奴だね。

 その上、イケメンの案内士付きだもんね。


 久々に上った江戸城天守の5層は、何と展望バーラウンジになっていた。

 殺風景な筈の内装も、400年近い文化財を傷付けない様に、日本各地の色鮮やかな織物で飾られている。

 家具も各地の工芸品だ。

 まあこのフロア自体、日本の工芸展示場みたいなもので、商談の場になっていた。


 そして共される酒も素晴らしい、各地を巡って舌鼓を打った銘酒が揃っている。


「あれ?お車は?」

「送迎を用意しています」

 これ、お部屋を予約してます、って奴?


「あ~う~、とりあえず乾杯ー!」

「乾杯」返しもイケメンだー!

 それから目が回ってしまい、何を話したのか解らないまま自宅に着いた。

 翌朝、父がブリブリ不機嫌で、母がニコニコ上機嫌だったのが気持ち悪かった。


 そして半年。イケメン赤石さんの猛アタックは続いた。

「貴女は多くの人を案内して、幸せな時間を提供した。

 俺は、貴女…司ンを案内して、幸せにし続けたいんだ、一生!」

「それは、ちょっと嫌ですね」

「何故!!」あ、赤石さんがガビーンってしてる!

「私、一生ってなると誰かの世話になるんじゃなくて、一緒にのんびりつらつら生きていきたいんですよ。

 仕事ならいいけど、仕事が終わっても肩ひじ張って暮らすの、きつくないですか?」


「じゃあ、気を張らずに。オフの時は一緒に、のんびり。

 たまの旅行は、俺と司ンでだべりつつ」

「それがいいわね!」

 私は初恋で婚約と相成りました。


******


 例の事件以来世界のセレブからガイド依頼が殺到する中それらをこなしつつ、赤石さんも内務省から世界の警備会社の指南役をこなしつつ、私達は日取りを決めた。


 母はウキウキ、父も最初は渋々だったけど赤石さんと実家で飲んでる内に「君はもうウチの息子だー!出来のいい息子が出来て嬉しいよー!」とか感涙する始末。

「俺は~?」

「うっせー早く彼女作れー!」

 弟は就職はしたもののダメダメ三十路、こどおじである。


 しかし新居に越して一緒に暮らす様になると、やっぱり相手のダメな所も見えてくる。

 ちょっとした所が、疲れた自分には嫌に感じたり、逆に優しさが鬱陶しく感じたり。

 でも、いつしか赤石さん、ゲンさんが、自分の体の一部の様に感じる様になった。


 そして埼玉某所の護児学院、の隣の時サンの家。


「親父!俺は司ンを幸せにするぞ!」

 意外にも時サンの前では悪ガキっぽく話す赤石サン、いやゲンさん。


「その役私が替わろう」ズベシ!っと、左右後ろのお延さん達が同時に引っ叩いた。

「冗談だ」「「「「嘘仰い」だろ」デース!」だよね」散々である。

「いやー司さんのBGは志望者が多くてねー。ゲンならって推薦したら大当たり」

「だったら最初からそう仰いなさい」容赦ないお延さん。

 何なんだこのコント。


「冗談はさて置き、司さん。

 この間は大変な目に遭わせてしまった。改めて、本当に申し訳ない」

「何度目よ」もう何度もこの件で詫びられている。

「そう言いつつ俺たちを守ってくれたの親父だろ?」

「ふっ…」

「『フッ…』じゃねえよ。あの爆発、こっち側に死人が出なかったのどう考えても不自然だろ」

 そうだったのか。まあ、そうじゃないかと思ってたけど。


「でも、無事だったのは彼女の心が強かったからだ。

 あの無理な要求に堂々答えたのも、心の強さと優しさがあったからだ。

 強いひと程、笑顔は優しい。だって強さは…」

「じゃあ披露宴は盛大にやりましょうね!」更に突っ込むお延さん。


******


 翌年の春。桜咲く三月下旬、イースターの後。

 私達は都内のカトリック教会で挙式し、夫婦になった。


 そして江戸城、吹上の国宝紀伊家御殿で披露宴。

 時サン曰く「近代化に尽力した護児学院への謝礼、だそうだぞ」だって。

 この日のために、態々多くの人達が来てくれた。


 ピーコック卿、ポートメイリヨン卿の名代としてUKの観光大使になったバージニア様。

 なお後日、UKのキャプテン達には私達から会いに行って返礼した。

 キャプテンのお孫さんのサンドラと、私にちょっかいかけてきたアランのカップルには結婚式以来の再会を果たし、大きくなった子供を紹介して貰った。

 彼も私の動向をインターネットに配信して、色々支援してくれていたそうだ。

 その日はサム子爵やジョン卿、ユイ・マリナーズとの提携でお世話になった方々も招いてのセレブパーティーとなってしまった。


 徐姉妹の代表は、なぜか毘姐姐本人。

 宴席の酒を飲みつくす勢いだったので『自重願います!』と突っ込んだらゲラゲラ笑われた。

 勿論、徐姉妹とは何度も仕事で会ってヒドイ目に遭わされている。

 一度仕事中に一族が集結してゲンさんまで呼ばれて、サプライズ祝賀会された。

 泣く程嬉しかった。皆に抱いてお礼を言った。

 毘姐姐の抱擁には骨折させられそうになった。

 増姐姐の抱擁には胸で窒息させられそうになった。


 飴ズも家族連れで参加だ。ひたすら酒飲んで私に絡む妻たちを、優しい旦那衆は小さい子供の面倒を見ながら暖かく見守ってくれていた。

 徐海運は旦那の選定基準も厳しい様で、何よりだ。

 親子連れで微笑ましくなっちゃってまあ。

 待ってろ三人とも。私もまだ三十路、数年の内にそっちの仲間入りするからな。


 海上社長と雅姐姐、提携先企業として徐海運から摩耶姐姐。

 更にツレテク社の連手さんも取締役企画部長の肩書でお祝いに来てくれた。あの後もリーズナブル案件からセレブ向けまで何度も提携したんだよね。

 大きくなったお子さんも一緒にお祝いしてくれた。


 そして、披露宴で父母に感謝を述べた。

 小さい頃にあちこち連れて行ってくれたお父さん。

 細かい事に拘らず大らかに育ててくれたお母さん。

 ゲンさんも、父母の代わりに時サンと、法的な妻であるお延さんに堂々としたお礼を述べた。


 就職してから仕事で案内した方々からも祝電を頂いた。

 その後、お礼のため世界中に挨拶に飛び回って、行く先々で歓迎して頂いた。

 その先々に、なぜか時サンとお延さん達がいたりするのはもうデフォだと思う事にした。一緒に観光したり楽しかったしね。


 国宝の日暮門から退出する参列者に挨拶する。大部分は二次会に来るけどね。特に毘姐姐。

 吹上の火避け地に咲く桜が美しい。

 そしてその間に見える、江戸城本丸の高石垣と、塁上の櫓、日本最大の江戸城天守。


 私の両親の反対側、ゲンさんの側で挨拶する時サン。

 この人がいじくったヘンな世界に私達は安堵して暮らしているのかあ。

 ま、この人はそんな事を大々的にひけらかすことなく、割とのんびり好き勝手に暮らしている。


 皆さまへのご挨拶も終わった後、ゲンさんに目配せして、二人で時サンに言った。

「このイカれた歴史を、有難うね」


***終***

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