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242.ガイド松倉城 お宿も松倉城

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 ランの感激っぷりと人柱の悲話に、なんだか天平の伽藍も印象薄い感じになってまった国分寺を後に、バスコンは今日のお宿、高山の街の南に聳える金森長政仮の住まい、松倉城へ。


 夕日を背にした松倉城。

「やっぱり御殿だ」

「それでも望楼がある分、大野城より天守っぽいね」

「なんか高山城の試作品みたいね」

 私達はわちゃわちゃ話す。


 山上の本丸以下、主要曲輪より一段下がった当たりまでしかバスコンでは行けない。

 駐車場からは林業なんかで使うモノレールで、山上の二の丸大手門へ向かう。

 ちょっとの距離だけど、ヘルメット被って乗るんだねえ。なんか楽しい。


 2回の分乗で、一行は大手門へ、そして二の丸へ。軽ならここまで来れるみたい。


「結構狭いね」

「大野城より狭いかも」

「あのモノレール楽しー!」


 予定に無かったのにスーがきっちり案内する。


「松倉城は、元は飛騨を支配していた三木氏の部下、姉小路氏の城でしたが、金森長政に攻撃され落城しました。

 その後、高山城完成まで長近の居城となった後支城とされ、後に幕府軍を迎え入れる事となりました。


 長近の手で本丸をはじめ二の丸、三の丸を石垣で固め、本丸は天守と一体となった御殿が建てられた、小さいながらも魅力ある城として、今なお高山城の別館として活用されています」


******


 二の丸から一段上がった本丸。方形の石垣の上、全面に

「やっぱり御殿だ」

「御殿だね」

 御殿があった。

 屋根は杮葺き、ますます御殿以外の何物でもない。


 ただ、北側の一部は石垣が一段高くなっている。そして、その御殿の上に望楼。

「あれが辛うじて天守に見えるっちゃあ見えるね」


 二の丸から石段を上がると、ロの字型の本丸御殿へ。玄関門がフロントになっている。

「ここも研究員の迎賓館になっているんですよ?」

 とお延さん。


******


 立地的に中々おもてなしも厳しかろう山上の御殿で。

「「「飛騨牛~!!!」」」

 絶賛牛肉祭り開催!

 いきなりステーキを注文、前菜もスープもすっ飛ばし!

 こちとら高山市内を歩き回ってカロリー絶賛消費済みよ!


「んまー!」「これは、鼻腔をくすぐる肉の香り」「肉汁が!肉汁が!」

「こらうまい!うまいですよこれは!」「これで私も通好みー!」

「「うまうま」」


「こんな旨い肉!食べた事ないぞー!」

 すまんなみんな、私松坂城で松坂牛食べたんですよ…

 後スー。君も一緒に松坂牛食べたよね?

「あの軍団と食事して味なんかわかるかー!」

 そうか、君も苦労してんだね。


「やっぱランさんはお寺の案内に気持ちが籠ってて、お話に惹かれるね」

 お?時サンがランの案内を褒めている。

「仏様を大事にしているだけですよー。でもそう言って貰えると嬉しいですー」

 おい、ランまでオッサン相手にのぼせんな。


 松倉城本丸御殿?天守?の広間。

 ここも元の装飾を基調に床や照明が洋風になっている。


「んぐんぐ、松倉城は高山城同様のんぐんぐ、うんまあ~」

「スー、とりあえず食うか案内するかどっちかにしなよ」

「食う!」

 それでいいんだよ。


******


「「「ふぃ~」」」

 本丸御殿から、現代になって渡り廊下で繋げられた二の丸の小屋が温泉浴場。

 山麓から引いた温泉が有難い。弱アルカリ泉だとか。

「地球の裏側から宇宙の神秘を探りに来た博士たちが、こんな戦国の城で温泉なんてのも…訳わかんねえよなあ」

 スーが笑いながら言う。


「地球の裏から博士が来る事がスゴいよ。タイには中々そんな事無いよ」

 スーが言う。


「世界中の仏教徒が集まるイベントでもやりゃいいじゃね?世界仏教サミットとかな」

「それ、日本やスリランカとかでもやってるよ?」

「そうね。でも、何か皆が来たがる行事とか、そういうのを考えてやらなきゃ駄目なんだ!」

「そうそう。そういう夢が明日を作るんだって。ガンバレーテキトーに」


「スーさんの言う通りですよ?」

 とお延さん。

「ハポンは明日への夢がモリモリデシタ!だからこんなにオカシナ国になったんデス!」

 とグラシア…おかしな国だけどさあ。


「夢ね…そう。私は、今は日本で勉強してるけど、いつかタイの寺院を世界に紹介したい!」

 ランが夢に目覚めた!がんばれ!


 だがランよ。あの…地獄巡りがある寺を世界に紹介するのだけはやめとけ。


******


 天守部分というか、望楼のサロンで、さっき時サンが買っていた物と同じ深山菊を頂く。

 北側の盆地は、もう灯がほぼ消えている。

 しかし、高山城本丸はライトアップされて、山麓の二の丸も暗闇の中に浮き上がって見える。


 ミキがワインを飲んで言った。

「こんな山の中の街でもこんなキレイネ。金沢なんかもっとキレイだっただろネー」

「この間、江戸城前の帝国ホテルから見たじゃない?

 多分都会の城を眺めたら、あんな感じだよ」

「そっか。日本は小さい東京がイッパイだネ」


 似たような近代的な街。でも私は思う。

「世界中行きつく先は同じだよ。

 後はどこまで独自の文化財を守っていけるか、その金と技術を守って行けるか。

 そしてその文化と、それを守る人を大切にできるか、なのかな…」


 するとスーが。

「この世の中、あっちこっち行けばどこでも楽ありゃ苦もあるさ。

 私さ、その楽の部分、楽しくて綺麗で、見てうわーってなる所を知って、それを多くの人に案内したい。

 そう思う様になったよ」


 多分、それは私達以上に、麻耶姐姐とか徐姉妹達が聞きたかった言葉なんじゃないかな?

 そして、多分その先にスーが目指すものも。


「ミキがやりたいことも探して行って、見つけなよ」

 スーの言葉に、ミキが驚き、そして。

「ありがとネ」

 笑顔になった。


「ワタシ時サンの奥さんになるネ」

「「ちょと待てヤ!!」」

「他力本願過ぎるー!」

 あ。時サン達が苦笑してやがる。お次さんゲラゲラ笑ってるし。


 冬の満天の星空を眺めつつ、私達はこの地の美味しいお酒を頂き、これからの心配事ややりたい事を語った。


******


 しこたま高山の地酒を満喫し、さて部屋に戻ろうと思った時、私達は時サン達に呼び止められた。

「でお願いがあるんだ、司さん、ハオティンさん、チャープランさん、ミカエラさん」

 時サンの、お延さん達の真剣な眼差しに、私達は怯む。


「明日の午後と夜、私達の子供達と一緒に過ごしてもらえないか?」


…。

 子供達ぃ~!?


******


※飛騨高山周囲にはいくつも城があり、その内近世城郭として残るのがこの松倉城(高山城は石垣に至るまで何も残っていない)。

 金森長近が高山城築城の際居城とし、石垣やら天守やらを立てた様ですが詳細は不明。

 記録もないので劇中描写は完全フィクションです。

 尚、香川元太郎先生は下記の想像図を描いていらっしゃいますが、劇中ではもっと金森チックにアレンジしちゃっています。

https://rekishi.kagawa5.jp/205%e3%80%80%e6%9d%be%e5%80%89%e5%9f%8e/%e5%b2%90%e9%98%9c%e7%9c%8c/


※ワットアルンや世界遺産のスコータイ、アユタヤ等の遺跡を誇るタイの仏教遺産。

 駄菓子菓子!どうにも気になって仕方ないのが日本の極一部では超人気のタイ、地獄巡りテーマパーク。

 昔の日本の寺とかにも地獄絵ありましたし、宗教ってそういう使命もあるもんでしょうけど。


※劇中の仏教会議、世界仏教徒連盟というのが1950年に発足し、タイ、スリランカ、日本、ネパール等で国際会議を開催しています。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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