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227/251

227.日本海岸フェリー旅その2

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 村上城見学の後、岩船港に現れた黒い豪華そうなメガヨット。

 お、誰か降りてきた。


「なんか居やがるねえ」

「ボンボンじゃねえかい?」

「あらあら、お久しぶりねえ」

 徐3姉妹が岩船港に浮かぶメガヨットを眺めて言う。


「あれって前司ンが乗ってた…」

「やっぱそうかな?」

 色は違う。目の前にあるメガヨットは黒だ。あ、大きさも一回り大きいかな?

 ここに来るまで乗っていたフェリー、トーキョー3と同じくらいかな。


『オー!マイプリンセス!久しぶりだな!』

 力強い声が船から聞こえる。

 タラップから降りてくるのは、ピーコック卿ジェフリー・アレキサンダー・ショア伯爵!!キャプテン・ジェフだ!

 かつて瀬戸内海から山陰沿岸の城を案内した、UKの貴族様だ!


『伯爵!』

 なぜか私はダッシュで彼の元に走った。

 手を広げて迎える伯爵、だがその後ろに…

 カミソリの様な笑顔を浮かべるメアリィ~夫人!

 私は急ブレーキで停止し、そして、一礼した。


『大変ご無沙汰しています!先日は母国へ御招き頂き有難うございました!』

『私もまた会えて嬉しいよ!

 日本海航路を試験中に君が宿を取れなくなってと聞いて心配して来たんだが、その心配もなかった様だね』


 ジェフ伯は徐姉妹の方に敬礼した。


『ボンボンも相変わらず東洋娘の尻を追いかけてるみたいだねえ』

『はっはっは相変わらずお口が悪い。でも相変わらずお綺麗だ』

『貴族様は口が上手いねえ!』


 持姐姐と会話を楽しむ…楽しむ?伯爵。持姐姐も勝手が違う様だ。


『あら私には挨拶は無いのかしらァ?』

『ご夫人もお変わり無さそうで安心しましたわアア』こっちもヘンな笑顔で返した。


「まあまあ、皆様仲良しさんな事で」

 知ってか知らずか、お延さんが微笑む。と。


「亘先生!ご無沙汰しています!!!」

 時サンに気付いた伯爵が頭を下げた。日本語で!

 途端に顔を顰めるメアリィ…日本嫌いが顔に出てるって。


『ご壮健の上にアジア観光開発でのご活躍、お聞きしています。

 私の友人もお世話になって、本当にありがとうございます』

 流暢な英語で返す時サン。いや解ってたけど違和感あるなあ。


 改めてジェフ伯は時サンハーレム、徐姉妹軍団、そして私達に向いて言った。

『ここでお会いできたのも、亘先生の仰る人の縁。

 宜しければ私の船、ブラックキャッスル号へご招待したい。

 かつて我が娘の窮地を救っていただいた大恩ある亘先生、麗しい徐姉妹の御一行、そして東洋の才媛ミスツカサン御一行に、是非寛いで頂きたい!』

 お?メアリィも恭しく礼をしている。私だけあだ名?


「出来レースだけどね」と持姐姐。

「あっちも航路開発でウロウロしてた時、私らと同時にアンタの旅が行き詰まったって聞いたんだよ。でどっちが先にお迎えするかでモメてね」

「そ、それどう折り合い着けたんですか?」

「時サンがジャンケンでって」

 orz。


 と、善姐姐が。

『素晴らしいお招きを頂き、光栄に存じます。

 結構な人数になり恐縮ですが、私達徐姉妹と家族はご招待に預かり度存じます』

 恭しく返礼した。


「美味い酒期待してるぜ!」

 毘姐姐はホント台無しだ。

「やったね雅ちゃん!ライバルふえるよ!」

「やったねじゃないよオバサン!」

 摩耶姐姐と雅姐姐が頭を抱えつつ苦笑している。


『ピーコック伯爵様のご招待、有難くお受けします』と時サン&4姉妹。

『もちろん、私達も』と返そうとすると、

『有難く、それはもう有難く存じます!』スーが何だか必死だ。


******


 村上から新発田、特急いなほなら30分弱。

 100mクラスのメガヨットだと1時間。

 でも急ぐ旅でもなし、かつて見知った人達が集まる場だ。

「チアーズ!」「ボダラー!」「カンパーイ!」


 しかしすでに盛り上がっている模様。

 キャプテンも操船をクルーに任せてお楽しみモードだ。


『新会社設立の時はね、ホントは1ウィークくらいツカサンに居て欲しかったよー!

 君に日本文化のレセプションを頼んで、わが社の新商品の宣伝を頼みたかった!

 忙しい旅にしてしまって、本当に申し訳ないよ!』

 ジェフ伯爵が私に詫びる。

 てか私を働かす気だったんかいな?!まあそれは兎に角。


『恐縮です!学生のアルバイトの私を招いて頂いて光栄でした!』

『君は本当に素敵なレディだ…』

 このオッサンは…ここにいる全員、英語解るんですが。


『バージニアお嬢様は、もうご自分のお好きな事を始められているそうですね』

 そう、あの常に怯えていた様な、ジェフ伯爵と、彼が愛しながらも共産ゲリラに殺されてしまったユイさんとの間に生まれたバージニア子爵夫人。

 そのバージニア子爵夫人が善姐姐に挨拶した。ご主人のサム子爵と一緒に。


『貴方達は、私の命の恩人です。

 これからはその御恩に報いるため努力します』

『こうして妻の恩人と再会できた事をとても嬉しく思います』

 相変わらず仲良さそうだ。


『この子は今、自分と向き合って生きている。

 私の会社でアジア文化を学び、新たな観光資源の開拓をしてくれている。

 とても楽しそうにね』


 そう、バージニア子爵夫人はジェフ伯の会社、ユイ・マリナーで研究員をしている。

 一時ネット上でレイシストと噂されていたのがウソみたいだ。


『この子はきっと西と東の架け橋として活躍してくれる。そう信じる』

 肩に大きな手を置いた父に微笑むバージニア夫人。

 隣に寄り添ったメアリ夫人、姉妹の様に一緒に育ったメアリ夫人の手を取るバージニア夫人。

 前の旅で見せていた、気弱で神経質な感じはどこにもない。


『あたしらが無茶した甲斐があったってもんだな!善姐姐!』

 毘姐姐が割って入る。持姐姐も。

『あんた達はいつも無茶がしたいだけです!』

 一同が笑った。

 ああ。幸せな景色の中に、私はいるんだなあ。


『紳士淑女の皆様、本船は間もなく新潟国際貿易ターミナルに到着します。

 下船の用意をお願いします。

 素晴らしい歴史観光をお楽しみください』


 船内アナウンスが伝えた。

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