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225.お宿はフェリー 応援してくれる人達

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 徐海運が誇るちょい豪華フェリー、トーキョー3。

 私が四国旅行で乗ったフェリー同様、大浴場がある。ビバノンノン。


「今回は司ンのために貸し切りにしたからね!」

 ひえー!持姐姐!一体経費が何千万かかったの?下手したら何億?

「ハハハ!新航路開拓のための試運転だよ。司ンを迎えに行けたのも、運が良かったからさ」

「死ぬかと思いましたよ!」

「でも司ンや時サンのためなら急ぎでチャーター便出してもバチは当たらないさ」

 うわ!抱き着かれた!相変わらずお肌スベスベだなあ。


「ギャー!!」

 あっちではスーが毘姐姐に抱き着かれてボキボキいう音がしてる。

 愛されてるな、スー。


「皆様楽しそうでなによりですね」

 とお延さん。

「みんなお延先生やお次先生、時サンのお陰ですよ」

 珍しくしおらしい持姐姐。解放されたー。

 そして。

「あの時助けて頂けなかったら、もし私達が生きていても全うな道を歩んでいなかったでしょう。皆様は菩薩様です」

 と、刀利ちゃんを抱っこしながらお辞儀する楠見夫人、いやここでは善姐姐か。


 この人達に過去何があったのか。

 久保田に来る前に聞こえたキーワードから朧気に解らなくもない。

 でもそれは、この人たちの物語だ。私が首を突っ込むのも無粋だ。だから聞かない。


「ねえ司ン、あの人達何が…」とラン。

「それは、私達とは関係ない事だよ」と答えた。

「あ」と言って、凄い顔をするラン。

「危うく命を落とすところだった…」

 そこまでの事は無いだろうけどさ。


******


 風呂も貸し切りなら、レストランも貸し切り。

 バイキング風の立食パーティーだ。


「奇遇にも、私達姉妹に2度も観光案内してくれた恩人、時尾司さん、そして私達のかけがえのない恩師亘時さんとお延先生、お次先生、グラシア先生、お玉先生。

 悪天候が招いた運というのも奇遇なものです。


 そして、徐海運の未来を背負うお嬢さんたちにも。

 再開を祝して、乎乾啦!!」

『『『乎乾啦!!!』』』「ボダラー」


 久しぶりの乎乾啦、乾杯だ。

 並んでる酒も、例によって高価~!またロマネコンティとか4大シャトーとか。

 ドンペリが水代わりに見えるよ!


 徐3姉妹は時サン達に突進した。

 そして。


「いや~あなたが時尾さんか!雅から聞いてたけど流石だねー!

 あんな見どころ薄い城で毘姐姐を走らせるなんて!

 あ、挨拶が遅れたね。

 私はジョ・ツーリストの案内士の楠見摩耶。前にお世話になった楠見善見の娘だよ。

 貴女のお陰でいい子分が出来たよ!」

「は、はあ」

 子分って…。


「待ってよオバサン!この子は私んとこの子よ!」

 割って入るヤーティン。

「オバサ…お姉さまと呼べってんだろが!」

「呼んでほしけりゃ私の肝煎りにちょっかい出さない事ね!」

「ジャウォジェジェバア(お姉さんと呼べ)!」

「ウォ~ミンンバイエ、アィイ~(わかりました、オバサン~)?」

「ジェンゲ ホゥンダン(このあばずれ)!!」

「ジンズィツェイナアイ(鏡はどこかな)?」

 うわ…何言ってんだか分んないけど、流石徐一族の女だ。


「中国語勉強しないとなあ…」

「「早くしなさい!!」」うわ!二人に言われた!


 そして摩耶さん、飴ズの方を見て。


「みっちり練習してるかい?折角いいお手本がいるんだし、これで去年と同じだったら給料減るぞー」

「「イヤー!!」」

 とばっちりが飴ズに飛んでった!


「嘘だよー!早速いい話題作ってくれたじゃん!」


 摩耶さんは携帯を差し出した。何々?

「噂の美人案内士、今度は弘前で善行?遭難旅行者を救助?

 私は国際救助隊か何かか?!」


「どれどれ…あ、あの時の支配人サンだヨ!」

「宿泊客の名前晒すとか…」

「いや、それは無いみたいだな。

 これ、まとめサイトだ。

 他の場所で案内してたのを投稿したのと、支配人さんが『有志の方が部屋を譲ってくれて収容しきれた』って記事から推測しての記事だな。

 それに司ンの名前も載ってないけど、まあ十中八九…」

「わかっちゃうよネー」

 瀬戸内で英国貴族を招いて各基地で歓迎…大げさな書き方をしている記事まで。


「あんた達の事も書いてあるよ」

「「え~??」」「ホントだ」


 中尊寺で案内士の仏法説話、無量光院で涙の遥拝ってランだし。

 歌って踊れそうなアイドル案内士ってミキだし。

 あ、ホテルでフロントに掛け合ってる写真まで、スーもバッチリ写ってる。


「プライバシー違反を通知したから暫くしたら写真は削除されるよ。

 それでもまー知れ渡るねコレ。

 ヤーティんトコもウチも、知らない間に宣伝してもらってウハウハだよ!

 よくやった!」


 と、ロマネコンティを煽る摩耶さん。ゴキゲンだ。


******


 海鮮からステーキまで色々食べた。

「んまんま!ん~まんま~!!」と超ゴキゲンだったグラ玉、笑顔で食休みしてる。


 色目使ってる徐姉妹と素っ気ない時サン、そしてガードするかの様なお延さんにネットをチェックしているお次さん。


 なんだこれ給仕さん以外みんな女性ばっかじゃん?!

 これがッ!これがッ!時サンハーレムフェノメノンだッ!!なのか?


 そして話している中身が、やはり半世紀近い昔の、思い出話。

「あん時革命家気取りのお坊ちゃんを見逃してもらったりさあ」…

「狂ったアカ共と戦う武器の在処とかしれっと教えてくれて」…

「ビザを出してくれなかった大使が突然いなくなって次の日にビザがバンバン出されて助かったよ」…

 時サン、なんか凄く目が泳いでる。お延さんも笑ってる。ルルル、今日もいい天気。


 うん。聞かなかったことにしよう。


「よ!」

 うわ!いつの間にか持姐姐が来た!

「楽しくやってるか~い?」

「え、ええ。お陰様で。こんな贅沢旅、思っても見ませんでした」

「何言ってんだい、ブリテンのボンボンとこでも贅沢したんだろ?」

 あー。ピーコック卿の事か。しかしお貴族様捕まえてボンボンとは。


「あんた、あのボンボンのお孫さん、見事にとりなしたって言うじゃない。

 やるねえ!」

「ナンノコトデスカー」シリマセンヨー。

「あの伯爵様も、お嬢ちゃんも、心残りが消えて自由にやってるみたいじゃないか。

 あの二人、いや。

 いけ好かないご婦人サマやイカした仲間入れて5人か。

 あの人達にとって、あんたの力は決して小さくないよ」


「買いかぶりすぎですよ。

 私は、自分の意見を当たり障りのない範囲でお話ししただけです」


「それが優れてたんだよ司ンは。

 私らなんかその言葉選びに失敗して何度殺されそうになったことやらハッハッハ!」

 ひー!そんな死地を掻い潜っていたとはー!


「善姐姐からも聞いたよ?刀利ちゃんをありがとな!」

「あれも連手さんって言う、大先輩のお陰で…」

「その人を奮い立たせたのも、あんたの力さ。

 私達はね、あんたを、そしてあの子達を応援するよ!」


 嬉しかった。

 私達に暖かい言葉をかけてくれる人達がいる事が、堪らなく嬉しかった。

 思わず、盛り上がってる時サン達の方を見た。


 視線に気付かれたのか、みんな私の方を見て。

 微笑んでくれた。


 思わず、涙が溢れた。


「その気持ちを大切にな。

 思いあがらず、焦らず、誰かのために、そして自分のために。

 あんた達の頑張りを、応援してるよ!」

 バン!と背中を叩かれた!!


******


 部屋はスイートルーム、しかも丸い仕切りや窓が配された数寄屋風で和洋折衷。

 私達4人が一組になれる様にしてくれたんだろな。

 外は、日本海の星空。


「なんだか嵐の様な1日だったねー」

「私らの計画、木っ端みじんだな。ハハハ…」

「ノンノン、グレードアップして薩摩守ダヨ!」

 周回パスの切手代は払ったからタダノリではないぞミキ?


「お酒もいいの頂いたよ!」

「ゴチソーもステキだったネ!」

「味しなかったよ…いつもの事だけどさ…」

 飴ズが盛り上がってる、スー以外。


「でもこういうのって、もう当分ないかもね…」

 三人がハっとした。

 気楽だった学生の日々も、あとわずか。


「いやいやいや!あの人ら、突然襲ってくるぞ!」

 ハっとしたスーが全力で否定する。

「私らが結婚式挙げようもんなら、乱入して超豪華世界一周に引きずり込まれて花嫁花婿バシバシひっぱたかれ地獄とかありうるぞ!」


「それは地獄だ」私もさっきひっぱたかれたしな。


「でも、応援してくれるってさ。嬉しいよね、そう言って貰えると」


 三人が、溜息を吐いた。

「私達も、そう言って貰える働きをしねえとな!」

「そうネ!」

「そうよ!」

「よし、では乎乾啦!」「「「乎乾啦!!!」」」

「あ、24時になったら寝るぞ!」


******


※これから最後に向かって、架空の時間の中の人達の話と、城ガイドが半々程度で進みます。城のトンデモ話をご期待されている方には申し訳ございません。


 物語の終点も段々近づいています。今月中には完結する予定です。

 終点まで今暫く、このツアーにお付き合い頂ければ幸いです。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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