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197.ガイド丸亀城 朱に染まる二つの天守

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 秋の陽が傾く頃、特急は丸亀駅へ到着。駅の正面はまっすぐ大手門を目指している。

 そして大手門枡形の真上、石垣だけで築き上げられたかの様な城の頂上正面に、三階櫓が町を見下ろしている。

 一行はバスで城へ向かう。


 大手門の枡形の向こう、長大な大手櫓門は白亜で窓の上下に長押を巡らせた、徳川チックな堅固な門だ。


『16世紀末、豊臣配下の生駒正親によってこの地に丸亀城が築かれました。

 しかし徳川幕府の成立と共に丸亀城は子城扱いとなり、一時幕府の城代が置かれました。

 その後17世紀半ば、寛永年間の江戸城、大坂城の建設、島原の乱復興に活躍した山崎家治が丸亀藩主として赴任、生駒氏が築いた城を強化し、更に山崎氏の後に入封してきた京極高和が高石垣を築き、町を見下ろす象徴的な三階櫓を完成させ、17世紀後半まで数十年を費やして今に残る丸亀の町を築きました』


 おお、連手さんちゃんと生駒氏時代と山崎氏時代の城の違いを踏まえてるな。

 こっちに向かう特急の中でいろいろレクチャーしたのが生きてる。


『違う大名の三代によって完成された城か。見上げる様な石垣に、その上を櫓とタモンが埋め尽くしている。壮観だ。』

 アーメッド氏が頷く。この人もなんだかんだと日本の城の美を良く分かってらっしゃる。

 江戸時代に入ってしばらくした頃の、高石垣に綺麗な布積みの石垣。そしてその上の要所に二層櫓、そして最上部本丸北面には、中央に三階櫓と、左右を多門櫓で結ばれた二層櫓が連なっている。


『敵を威圧するかの様な要塞、石と木の要塞だ。逞しい』

 と相槌を打つグランパ。


 ここで『攻撃しましょう!マム』とレイチェルちゃんが…言って来ないな。

 刀利ちゃんと手をつないで、坂道に向かっている。

 もう遊び疲れたのかもしれないね。


******


 城の立つ亀山を上る。小さい子はお父さんやお爺ちゃん、なぜかリチャード君は私が負ぶっている。

 そして山上。門丸は四隅を二層櫓、城下に面した北側には三階櫓。そして方形に囲まれた本丸の中心に、三層の天守。

 生駒氏が挙げた創建時の天守で、城下からよく見える三階櫓より一回り大きい、けど城下からだと見えない。


『こちらの天守が16世紀末依頼この城の頂上にあった天守ですが、城下からは三階櫓が天守の様に見えて、二つの天守がある城として地元の誇りになっています』

 そういえばピーコック伯爵と行った岩国城も、天守が城下から見えなかったんだよね。

 逆にお父さんとお母さんと行った岩村城では天守代わりの三階櫓が大手前にそびえていたしね。

 こうしてシンボリックに見せる天守っぽい建築って、領民には愛されるだろうね。


 ややどっしりした戦国末期の天守と、間に二層櫓を挟んで、ほっそりそびえる17世紀後半の白亜の櫓を見ていると…

 なんとなく老君主を守る若侍達に見えてくる。

『綺麗だね』

 背中のリチャード君がつぶやく。もうおねむかな?

『日本のお城と女の人は、綺麗なんだ…』

 リチャード君。君はいい子だ。


******


 瀬戸の陽は暮れて、夕方の凪。まだお嫁に行かんけど。

 丸亀城天守からは手前を守る様にそびえる三階櫓と左右の二層櫓、そして瀬戸の朱と菫に染まった海。

『美しいグラデーションね…印象派の絵みたい』

 フレンチカップルのアンヌさんが言い事を仰る。

『その子、替りに負ぶろうかい?』

 カレシのアラン氏が…私に言い寄った?

『このまま城を降りて駅まで行ったら疲れてしまうだろう』


 おいおい、彼女の前で何言ってんの?

『いえ、お子さんの世話も私たちがしますので』

『明日に触ったら僕たちの案内は誰がするのかな?

 大丈夫。途中でGIファミリーに返すさ』


 あ…アンヌさんがなんか不機嫌だ。

『ではお願いします。子供が神に最も近い、遠ざけてはいけない、って言いますしね』

『あなたクリスチャン?』

 お?アンヌさんが聞いてきた。

『いえ。歴史を勉強していると聖書の有名な言葉に触れる機会が多いので』

『アンヌ。僕たちの予行演習だよ』

 あ、アンヌさん驚いて…フニャフニャになった。

 更にべったりした。

 ケッ!


******


 大手門からバスへ。

 見返り、見上げる壮大な石垣と白亜の櫓、多門、そして三階櫓。

 落日のグラデーションと、早めのライトアップで青白く照らし出され、不思議な彩の風景を描いている。


 大人たちは、その幻想的な光景に言葉もない。

 子供たちはかなり夢の世界に入っている。

 レイチェルちゃんは

『マム…夢のお城です…』ともたれ掛かって来ている。


******


※生駒氏創築の丸亀城と、山崎氏・京極氏改築の丸亀城。時代を異にする二つの城が、なんでかここでは混在してます。特に天守が二つ、はフィクションそのものであります。

 でも石垣はやっぱり埋め込まれた様です。


 最初は現天守の存在が消えている…としようかと思いましたが、かつて城マニアのOFFで参加されていた方が丸亀出身で、ものすごい丸亀城愛の濃い方だったので、両者いいとこ取りのハイブリッド丸亀城となりました。


※現実の丸亀駅は、本丸の直線上ではなくやや西寄りで、途中にアーケード街があるので駅から城は見えづらいです。これも江戸後半の鉄道整備や軍政近代化の歴史改変のせいだと思って下さい。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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