187.太陽の船で裸のお付き合い
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
以下、「」が日本語、『』が各キャラの母国語になります。
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夜の有明埠頭を出発して海の上。
船のテーマソングがロビーに繰り返し流れてて、暫く頭の中をグルグル離れないー。
さて船室に荷物置いたらお楽しみの大浴場へ行こう!
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のーんびーりお風呂ーを楽ーしんでー。
お風呂がー揺れるー右左ー。
これー子供ーだったらー楽しーかもねー。
他のーお客さんー達もー、右へー左へゆれーているー。
「イッツバス!」「ヤー!ロッキン!」
「インジャパン!ゼアイズビッグバス、オンシップ!」
ガイジンサンの子供かな?って、下の子男の子じゃん?
「ヘイ!ドンッラン!」
母親らしき人が入って来た。
いや、走るな、じゃくて大きい男の子は男湯へ!
他の女性客も微妙にぎこちない。
年長の人は動じてないけど。
これは一言申し上げるべきか…
と、男の子が湯舟にダイブした!
「ヘイボーイ!ストップ!」
と、思わず男の子を外に抱え上げる。
「ソーリー、マダム!」
これは注意せねば。
『失礼ですが、この子は何歳でしょうか?』
『8歳だけど何?』ヤンキーマム、悪びれる様子もないな。
『日本では、小学生つまり6歳から子供も男湯に入る様指導しています。
アメリカの少年だと日本の子供より大きく見えるので猶更です。
今後は男湯に入る様お願いします』
『そうなの?初めて知ったわ!』
『それは、仕方ありませんね…』
…脱衣所に注意書きはあったかな?
『そして、体を洗ってから入浴して下さい。そしてお風呂では暴れない様に』
『色々厳しいわね』
納得行ってないな、マダム。
『多くの人がゆっくり寛ぐのが風呂です。配慮をお願いします。
君、お風呂に入る前に体を洗いなさい』
一応角が立たない様笑顔で手招き。
『嫌!』
『シャワーが怖いかな?ボクなんちゃいでちゅか~?』
ちょっとからかう。
『怖くない!』
とこっちへ来た。
『よーし!お姉さんが洗ってやろうか?』
『…うん…』
恥ずかしそうに来た!ちょっとカワイイかな?
『リチャード!一人で洗えるでしょ?
お嬢さんごめんね、スケベな息子で』
『こっちこそ失礼しました。日本の旅を楽しんでくださいね』
『ヘーイリチャード、スケベー』
姉がからかう。
『スケベじゃない!日本の女の人は美しいんだ!おじいちゃんが言ってた通りだ!』
リチャード君、君は良い子だ。思わず顔が緩む。
イカンイカン、これでは危ないお姉さんだ。湯舟に戻ろう。
は~、ビバノンノン。
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「お嬢ちゃん、ビシっと言ってくれたねえ、ありがとねえ」
隣のおばさんが褒めてくれた。
「いえいえ。ちょっと言い過ぎたかなって…」
「昔の銭湯なんかあんな悪ガキいたら怖いばあさんが叱り飛ばしてたもんだよ」
「あの人達USから来たみたいだから日本の風呂に興奮しちゃったんでしょうね」
なんて話してたら一家が揃ってこっち来た!
今度はゆっくり入って来たよ!
『レディ、こんな感じでいいかな?』
「ウェル、ダン…じゃない、グーッド!」
しまった、ピーコック卿ご一行を相手にしてたせいかクイーンズで返してしまった。
『あなたUKの人?』
『いえ、仕事でUKの方のお相手をしていたので、つい』
『ワオ!日本には英語話す人が少ないって聞いたのにクイーンズまで話せる人がいるなんて、
学者か外交官?まさか軍人?』
『おー!ウェーブ!』女の子が食いついて来たよ!
『ノー、学生です!今は仕事で案内士をしています!』
『私達もこれからシコクを旅するのよ!貴方みたいに英語出来る人が案内してくれると嬉しいわ!』
「ホワッ?」
『シコクの城を7つアタックするのよ!』
あちゃ~!この親子、お客さんだー!
『すみません、ミス・フーバーマンですか?』
『ええ。あなたもしかしてツレテク社のガイド?』
やっぱりかー!
『初めまして。ご案内させて頂きます、ツカサ・トキオです。
アンナイシニナロウから出張しています。
明日から4日間、楽しんで下さい』
『オー!偶然ねー!私、スーザン、スーザン・フーバーマン!』
『え~、ウェーブじゃないの?』
『ミスツカサはね、英国の将軍を案内した凄い人なのよ』
『えー!じゃあキャプテン?』
『違いますよ、案内士ですよ』
『私、レイチェル!宜しくお願いします、サー!』
敬礼されたよ!何か勘違いされてるよ!
『日本のお姉さん、綺麗で強いんだ、大きいんだ』
あらま嬉しい…って大きいって何だよこの早熟ボーイ!
『いてっ!』
ボーイ!姉からビンタされた、大事な所を!
周りで見てた女性客、ガン見。オバサン、すげえ笑いをこらえてるし。
『このスケベな子は弟のリチャードです、サー!』
『サーじゃないよ』
『旅の間に鍛え上げて、立派なG.I.に育てて下さい!サー!』
ダメだこりゃ。仕方ない。
『では…ミスレイチェル、最初の命令です』
『イェス、サー!』
『バスタブにタオルは入れてはいけません。
後、髪を結んで湯に漬けない事!』
「ホワッ?」
仕方がないので、持ってた予備のゴムでお母さんと一緒に髪を結ってあげたよ。
『日本のキャプテンは…親切デス!』
『ありがとね、ミスツカサン』
『日本の女は綺麗でやさしいよー』
会って早々「ン」がついた!
あとリチャード君、君は良い子だ。
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風呂場で別れて、デッキでくつろいで早速報告。
「船で移動中フーバーマン家と遭遇。入浴マナーを指導。先方は注意を受けた事に驚いた様子」
それ以降の部分は楽観視に繋がるので置いておこう。
と、雅姐姐から電話。
「お疲れー、早々にお客とぶつかったってすごいねー」
「いや、ちょっと男の子連れで女湯に入って来たもんで」
「ラッキーじゃん」
「雅姐姐そういう趣味が!」
「オホンオホン。えー、相手を否定する発言をしなかったり、敵意ある言い方でなければOK。
さっきの報告に出来る限り交わした会話を追記してねー、万一裁判になった時の証拠にするから」
「裁判…」
思わぬキーワードが飛び出した!
「言いがかりってあるからねー。
まー、あまり出歩かずに船室に籠ってるのがお利口かもって…
明日の夕方までそれじゃ息が詰まるよね~」
「そうですよー」それはご勘弁。
「もしまた接触したらなるべく記録するなり録音するなりしてね。
万一言いがかり付けられてもウチは司ンを守るから」
「雅姐姐~、嬉しいよ~」
「まああんたの事だし、結局仲良くなっちゃうんじゃない?」
「それこそ楽観的過ぎだよ!」
あ、私雅姐姐に遠慮しなくなってるなあ。まいっか。
「折角の船旅なんだし、楽しんでね~」
「もう接客始まってる様なもんなんですけどー!」
「その辺契約外のアクシデントって事で。ま、ツレテクさんには言っとくよ」
と、その時。
『ヘーイ!キャプテンツカサーン!』
スーザンが!
『綺麗なお姉さんだー!』
『ツカサーン!また会ったわね!』
フーバーマンファミリー、なんか男性陣が増えてるし!
「ぶっはっははははー!何だかもう愛されてそうじゃね?」
電話の向こうで雅姐姐が壮大に噴いてるし!
「えー、では接客を開始しますんで先方には宜しく!」
報告を切り上げて一家へ向かう。
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向こうの一家は半分出来上がっていた。
何ていうか、アメリカ~ン、なノリだ。
「アナタガ、ミス、ツカサンデスカ?」老人が聞いて来た!日本語で!ンが付いてるし!
『はい、先ほど僭越ながらお風呂でお子様の入浴について注意しました。
ご気分を害されたら…』
『ノー!こっちこそすまなかったわ!色々教えてくれてありがとう!
グランパ、彼女は今度の旅で案内してくれるそうよ?』
よかったー。軽くアッサリ流してくれてるー。
『そうか。私はハロルド。昔戦争で北九州の芦屋に居たんだ。四国に行くのは初めてなんだ。
案内を楽しみにしているよ!やっぱり日本のお嬢さんは綺麗で優しい!』
と、強烈に握手して来た。ミスター・ハロルド。あなたは良い人だ。
…芦屋?対共産戦争の時、空軍のレスキューがいた所?じゃあこの方、レスキュー隊員?
いかんいかん、深入りは禁物だ。
『妻に説明してくれて有難う。私は夫のグレンだ。息子に酷い事はされなかったかい?』
てか女性に酷い事する様な育て方してないですよね?息子さんいい子ですよ。
するとハロルドさんが。
『いいかい、日本は昔から、皆でルールを守って清潔で、礼儀正しく暮らして来た。
もし日本の人から忠告を受けたら、素直に従うんだ。大体それで上手く行く。解ったね?』
あー、そう言ってもらえると有難いなー。
『ねえ私達これから食事なの。貴方も一緒にどう?』
キター。これ断れない奴だー。
『ではお近づきの印に。お招きいただき、ありがとうございます』
私の気ままな船旅は出航後数時間で終わった。
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※久々の特撮ネタ。
米軍芦屋基地の救助隊を描いたというか宣伝的映画、「あしやからの飛行」、大映特撮陣が健闘していました。
映画自体の評価はイマイチでしたが、ユル・ブリンナーはカッコイイ。
悲劇的(な筈の)シーンでちっと笑ったけど。
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。