186.四国旅行は太陽の船に乗って
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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夏休みを使った親孝行旅行も終わり、もう9月。
8時のドラマの前には帰って来る様になった父もビールの一杯、いや一本でゴキゲン。
そうそう、父も時サンも土産に送った日本酒に感涙してくれた。
時サン家に招かれオモテナシされてしまった。
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「どう?無礼な奴蹴り飛ばした?」
「お次さん。あなたにゃ私は何に見えてるんディスカー?!」
「そりゃ世紀末…」「ヤメテー!」
「またレジミェント(連隊)のデシフィネ(パレード)アリマシタ?」
なんかグラシアが目を輝かせて聞いてくる。
「…あのね。ありゃ海軍の将軍だったお客さんに向けてのものだよ、私は立ち合い人に過ぎないよ」
「でも司ン堂々としてたよ~?」
お玉ちゃんもくりくりしたお目目で讃えてくれる。悪い気はしないけど。
「そう?嬉しいかも」
「普通、イキナリあんな式典始まったらビビるよね?」
「司さんは物怖じ一つなされなかったですよ」
「いやー内心ビクビクでしたよ!」
等と他愛もない話を楽しみつつ。
「本当に親孝行できて、良かったですね」
ありがとうお延さん。
「不思議ですよー。
たまたま皆さんと知り合って旅して、それを学園祭で展示したら旅行会社の目に留まって、試しに案内したら好評、それもセレブ相手に2回もですよ。
どっちも結構クセ…個性的でしたしねー」
「いやフツー裸足で逃げ出すレベルだよありゃ」
その通りだよお次さん。
「キャプテンの船では貞操の危機を撃退されましたしね」
ヒー!!
「オ"ノ"ブザン!何で知ってるんディスカー?なじぇ見てるんディスカー!」
「いや前来た時司ンフツーに愚痴ってたよ?」
「そーだったっけー?」
「ツカサン、ヨッパライー!」「酔っ払いさんだったよ~」
「うう~、覚えてない」
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「それは兎に角、やっぱり司さんはお話し方とか、お話の組み立て方とかが人を引き付けるのではないでしょうか?
特に歴史のお話に皆さん心酔されていた様ですし」
そうかなあ。
「それは、徐姉妹もピーコック伯達も、豪華なモノが好きだったり、自分の生きた歴史に係わる話だったり。
ある意味ラッキーだったかも知れないよ?」
「逆だよ。そこしくじったらフツーかそれ以下の評価でお仕舞だったんじゃね?」
「お次の言う通りネ。司の話はアトラクティボ(魅力的)!」
「ありがとねグラシア。次も頑張るよ」
「ホントはそれだけじゃないけどね」
「え?」
「何でもないわよね、お次?」「そ。延姉。フフフ」
とそこへ時サン。
「次の企画はどんなのだい?」
「東京滞在のお客さんが足を延ばしたい、って言うんで四国をグルっと回る旅にしてみました。
物語性は無いけど、単純な名所めぐりをご案内、って感じです」
「またオヤジに裸見られるなよ?」
「今度は宿も座席も別よー!あとあれは事故だから!って何で知ってんの?」
「だから自分から話したでしょうが」
「ぐぬぬ…」
やだ、私の口、軽すぎ。
「また新しいお客さんと出会って、いい思い出を作って来て。お客さんも、司さんも」
「またお話聞かせてね?」
「はい。頑張ります!」
時サンにお延さんが励ましてくれた。ニヤニヤしつつお次さんも、変わらぬ笑顔でグラ玉も、応援してくれた。
「じゃ私達も四国行くか!」「「「ハイ!」」」「シー!」
「え"~?!」
台無しである。
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「今回の企画はウチのものじゃなくて提携先の旅行代理店、ツレテク社主催。
高知集合で司ン企画のルートで4泊5日、5日目の朝に徳島解散。
司ンはあくまで提携会社への協力って位置づけ。
今まで同様、お客さんとは現地集合で宿も別…
といいつつ、今までは結局あーなっちゃったけどね。
今回はツレテク社からツアーコンダクターが同行するから、城案内が終わったらサッサと逃げるんだよ?」
「わかりました」
「多分ムリだろね」
「は?」
「なんでもねー」
まあそうなったらそうなったで。
「これがお客さんリスト。
一組日本人だけど後3家族は海外の…上流ではないけど蓄えがあって休暇も長くとれる人達。
この企画の客層にはピッタリかな?」
USの元兵士の一家、フーバーマン家。祖父、両親、姉弟の5人。
インドのIT企業の一家、アーメッド家。夫婦と子の3人。
フランスの若いカップル、ジュール氏とシュミット嬢の2人。
そして日本人、楠見家の祖父母と孫娘の3人
「子供4人かあ。迷子に気を付けないとなあ」
「それはツアコンの仕事よ。
でもそうならない事に越した事はないから、無理しないで見てあげてね」
ま、程々にしとこう。そう言えば。
「考えて見りゃあ、よく徐ファミリーの時は迷子出ずに済んだものですよ」
「あの一族ならベトナムでもカンボジアでもアフガンでも生還するよ」
何言ってだ雅姐姐!そもそも!
「雅姐姐もその一族じゃ…」
「じゃあ健闘を祈るよ!
今度はご予算控えめだからトンでもないおひねりは期待しないでね!」
途中で話変えやがった。
それでも5日中最終日を除く4日が案内なのでギリ2桁万円、但し顎足付きだ。
行きと帰りはのんびりするかな。
「ところでこれ、案内士無しで予算抑えるって方向性は…」
「無し。案内士付、これはお客さんからの要望だよ。
外国からのお客さんにとって案内士はステータスであり道先の杖みたいなもんだ。
しっかり期待に応えて来てね!」
そう言われると、緊張するなあ。
「今回は期間限定ツアーって事で低く見積もってるけど、今後どう価値を付けてくか課題だね。
付加価値マシマシでお願いしますよ?案内士様!」
とコッチをジロリと睨む雅姐姐。
それも私の課題かあ~。
それにしても。
「道中飲めないのは初めてかなー」
「耐えなさい。てかあの2組が異常だから」
「ソデスヨネー」
「まあお宿は一行と別にしてあるし、そこで地酒を楽しむ事ね。
ちゃんと報告は上げてからねー」
「はいー」
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四国・戦国大名城巡りツアー。
って言う程戦国大名か?長曾我部元親、加藤嘉明、脇坂泰治…はマイナーかな?伊達宗利…を戦国大名というのは。
まあ南蛮戦争で台湾やフィリピンで築城したしいいでしょう。
今回は南蛮戦争の築城技術を逆輸入した城ってのも一つの売りだし。
まああんまり歴史に造詣が無いフツーの人々向けの軽い企画だ。各地の城を楽しんでね、って位の軽さでいいそうな。私もあんまり深い質問とか、他国に無関心だった日本を代表して恨みを買うなんて仰天体験する事ももうなかろう。
何より、お客さんの引率にホテルへの誘導、ホテルでの世話なんかは案内士になろう!社の責任じゃなくて提携企業のツレテク社の責任だ。ツアコンさんにブン投げだ。
私は現地、高知城で合流してお宿も別…
何かこのパターン、何度か繰り返してるかも。
イヤな予感がする…気の所為だ!
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今回ツアーに参加する各家族は、限られた時間を有効活用し、かつ安く上げるため国鉄周遊チケットで新幹線や高松行き寝台で向かう手筈だ。
私は、再びお船でのんびり。
宮崎行フェリー、真っ白い船にオレンジの太陽が描かれたお船で高知へ向かう事にした。
例によって時サン達はバスコンで一家揃って移動。
いいな~、あっちと一緒に行きたいな~、とは思いつつも。
今後はこういう仕事なんで、甘えられる環境に頼らない。
それに一緒だと、移動中にお酒入っちゃうしね。アブナイアブナイ。
さて、夜の東京湾を旅立って、のんびりお風呂でも頂くかなー!
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※どこかで見た様な太陽の船。もちろん有名なさんふらわあ号。
昔はさんふらわあも東京・高知・宮崎を結ぶ路線がありました。
今は大坂や神戸と九州を結んでいて東京から四国への路線はありません。