176.ガイド三州吉田城 未完成?三層櫓の並ぶ城
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
******
温泉のお蔭でグッスリ眠れて、朝スッキリ目が覚めた。
んで母とも一遍温泉入って朝食。
「「うまうまぁ~」」
近くで採れた魚の干物を朝食に頂く。脂が染み出てうまうま。
グラ玉コンビに食べさせてあげたいが…冷蔵便で贈ろう。
お父さんにも。
******
次は国鉄で三州吉田駅へ。
新幹線も停まるし、名鉄名古屋線の終点で特急の新型パノラマカーも停まっているのが見える。
駅前のロータリーの向こうには、市を東西に走る路面電車の停車場、その先には吉田城の外堀と正面を向いた下見板張りの重厚な楼門である大手門、そして奥には三層櫓が建ち並ぶ吉田城の中心部。
「ここは天守がないのねえ」
「そうなのよ。
吉田城は松平と今川の争う中、家康が今川から取り戻し、それ以後酒井氏はじめ徳川の家臣が守っていたの。家康が江戸へ行った時に、後で姫路城を築く池田輝政が秀吉の命で近世化しました。
でも城を完成させる前に転封して、結局その後を継いだ徳川譜代の城主代々が改修して今の吉田城になりました」
「ふんふん」
「各城主にとって、この吉田城の整備もさることながら、左手豊川に架かる国道一号線の端、豊川大橋の建設も一大事でした。
東海道でも重要なこの橋は、歌川広重によって吉田城とセットで何回か版画に描かれる程人気の景色でした」
「なるほど」
大手門左右は外堀で、土塁の上に白壁が、途中V字型に突出しながら長く連なっている。
大手門の内側、左手西側は煉瓦造りの宮殿みたいな市役所。元陸軍の師団司令部だった。
皇族行幸の際の御座所にもなったとか。
でもその後ろに、巨大な現代的なビルが新館として聳えているのが何とも…
その北側が広いグランドとこれまた煉瓦造りの…城内中学。元兵舎を学校に転用したものだ。
正面には南に突出した二之丸南部の三層櫓、評定櫓。ここも土塁だ。櫓の下が僅かに石垣で整えてある。
その左手、二層の到着櫓が見下ろす楼門から二之丸に入ると、藩庁だった御殿。
ここも名古屋での国際イベントで宿舎として活躍する。城泊への転用も検討中とか。
その二之丸御殿を右に見る正面が、石垣で固められた本丸大手の長大な渡り櫓の南多門。
高麗門は土橋の手前にあって土橋の両脇は塀で固められている。
面白いのは本丸の壁で、只の白壁ではなくした1/3が海鼠壁になっている。
金沢城とか新発田城で海鼠壁は使われているが、太平洋側では珍しいな。しかも縦横に区切る「芋張り」ではない、斜めに区切る発展形の「四半張り」だ。
そして西には壁の内側に千貫櫓、東は石垣上に辰巳櫓、共に重箱造りの二層櫓の上に三層目の望楼が乗る古風な造りの三層櫓が聳える。いずれも重厚な下見板張りだ。
千貫櫓は手前の壁のせいで4層にも見える。
「結構立派ねえ。岡崎城より立派かな?でも天守がないのがねえ」
一般人はそう思うよね。
「本丸の中は、将軍上洛の際の宿所となる本丸御殿が今でも豪華な内装とともに整備されています。皇族行幸の際の宿所にも使われています」
「岡崎城と同じねえ。一度泊まってみたいわー」
「今夜はお城に泊まるよ」
「うわー!嬉しい!」
******
本丸御殿は、流石将軍の宿所であり皇族の宿所でもあって豪華だ。
でもやっぱり障壁画と格子天井にシャンデリアのバランス感覚が。
御殿の奥には…
「あれが天守じゃないの?」
「天守っぽく扱われていた、鉄櫓よ」
やっぱり天守的なものなので、登る。
「このお城の本丸は立派な櫓が一杯ねえ」
「本丸は鬼門の北東だけ二層の入道櫓、他は三層。豊川沿いにある腰曲輪にも三層の川手櫓があるでしょ?」
眼下の三層、川手櫓もどっしりしてる。
「こっちは何か色々な気が生えてるわ」
「そこは二之丸花畑。泉水もあって、回遊式庭園、大名庭園になっているわ」
「こっちは川ねえ」「豊川よ」
あ、川手櫓の横に続く多門櫓の真ん中が水門になってる。
ボートが何隻か泊ってるけど、あれは役所とか警察とかの船だろうな。
瀬戸内の城をメガヨットで乗りつけてたキャプテンジェフだったら…ムリか。手前の端を潜れないな。
「何かニコニコしてるわねえ」
「ちょっと、船でお城を案内してた事を思い出してね」
「良い思い出だったみたいね」
「うん!」
本丸の北多門を出ると、川手櫓とそれに続く長大な多門。
水門から川を覗く。広いなあ。
何か、ホワイトキャッスル号がやって来そうな気がしてならないよ。
皆さん、元気にしてるかなあ。あ、今やライバルだったんだ。
いい企画考えて対抗するか提携するか、存在感をアピールしなくちゃ。
「また仕事の事考えてるわね?」
母は鋭い。
******
※三州吉田。現実世界での豊橋市です。
刈谷・岡崎同様駅の位置が城の目の前にされています。
市内を走る路面電車は現実でも健在です。
※壮大なのかそうでないのか微妙な吉田城。
天守が無いので三層櫓を林立させた城と言えば明石城や久留米城、津城なんかがそうですが、どっちも石垣が立派な分、吉田城はより一層微妙です。
でも本丸の4つの櫓が建ち並んでいたら結構な壮観だったでしょう。復元図は下記の通り。
https://ameblo.jp/kantaro-yamaguchi/entry-12660337372.html
江戸中期、宝永地震で本丸御殿を失った後の姿はこうでした。
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/f/fe/Yoshida_Castle_%28Aichi%2902.jpg
地元の工業高校の学生が作った復元模型が模擬鉄櫓に展示されています。
下記ページの下の方に載っていますが、鉄櫓の二層目以上が姫路城っぽいのは御愛嬌?
https://4travel.jp/travelogue/11409802
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。