162.鼻高々つかさ英国の旅
※芥川隆行さんの合の手は入りません。
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両親に、「案内士になろう!」に就職する事、土日はほぼ休みにならない事、慶弔事より仕事優先になる可能性がある事を伝えた。
父親は客から嫌らしい事をされないかを心配していたが、そんなの普通の会社でも起きている。
母親は、一緒に旅行に行けなくなるねえと残念がっていた。
「でも折角の縁だ。一生懸命働いて、見聞を広めなさい」
「稼ぎはいいんだから、無駄遣いせずに将来のために蓄えなさい」
なんかチグハグだな。心配してくれてる事には違いないな。
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なろう社に契約のお願いと、ピーコック社にお礼とお断りのお詫びを送り、久々に学校へ。
「もー学校来なくていいよー単位全部何とかするから」と観光ゼミの教授と学部長。
「君は今や注目の人だ。
それに単位はほぼ取ってる。どうしても受講したいもの以外は色々融通するから、頑張って働いてウチの学校宣伝して来なさい」
ぶっちゃけたよ学部長!
「ま、内定者として掲載すればあのウルサイ連中も大人しくなるしね」
他社の勧誘かあ。
「もう見境なしでさ、時尾さんが駄目なら徐君、それも駄目ってんで3年生とかにも唾つけようとしててね」
タイヘンですねえ教授。
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「よっしゃー!司ンの就職歓迎会ダーッ!」
出来る女雅姐姐、私の中からさようなら。
「ありがとう!今までみたいな感じで、肩の力を抜いて楽しさ第一で企画を練り上げてくれ」
押印した書類を受け取って、海外社長が励ましてくれる。
「まあ、36協定は順守する方向でお願いします」
「何言ってんの!24時間戦えって時代よ?」
「それ微妙に古いっすよ。刑事罰モノだし」
なんて話して会議室を出ると、外にはなろう社の先輩達が…堰を切った様に質問して来た!
「ちょっと何でメガヨットで城に接岸しようって思ったのよ?危険じゃない?」
「もしかして徐一族の学友と関東旅行した時の経験から?」
「軍楽隊までどうやって動かしたか教えてよ!もしかして軍人一家?」
「軍の戦略チームが君の事マークしてるらしいぞ?USの対日戦略研究とか公文書館の資料読んだのか?!」
「まさか徐一族の海運と二重契約とかないよね?!」
うひゃー!皆さん何か質問が凄くスルドイ!てかお友達との関東旅行まで知ってるし!あれ?なんか資料出したっけ?
「ゴルァ!」
雅姐姐が吠えた!怖!!
みんな一瞬で消えた!
雅姐姐、やっぱりあの一族なんだなあ。
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それから、残りの単位を修得し…
ロンドンのピーコック海運本社から招待を受けたー!!
地球の反対側デスヨー!
飴ズと雅姐姐も一緒だ。何で?ああ、徐商会も旅行企画で提携するからか。
新会社設立パーティと言いながら、日本歴史観光の事例紹介を求められ、大急ぎでPCで旅行概要を纏めさせられ、渡英した!
私の人生初の海外旅行だよー!!ヒャッホウ!
しかもご招待顎足つき!鼻高々ー!
初UK、初ロンドンは目まぐるしかった!何か偉い人達と英語で挨拶し、ハグされ…そうになった所を雅姐姐とジェフ伯のダブルブロックで守られ…
近京坂ボートツアーに大坂包囲戦国ツアー、関東土の城ツアー、九州武将ツアー等の事例と予算概要、訴求対象の所得層等、超特急でまとめ上げた資料を英語で披露した。
何このビジネスライク過ぎる卒業旅行?!
歴史用語1/3、貴族層向けの言い回し1/3、ビジネス用語1/3、全部クイーンズ。
英領香港育ちの雅姐姐でもキツかったみたい。私らニューワールド(US・豪)英語だしね。
そして豪華なパーティーでジェフ伯グループと再会、サンドラやバージニア子爵夫人と抱き合う。
その光景に一同驚愕。あ~。バージニア子爵夫人が他人と、ましてやイエローと親しくするのがビックリモノだったのね。
そしてラスボス、メアリィ~。
「アラァ?イタノォ~?」
「アイハブ、リッタァ~ンド!」
ヘンな日本語とヘンな英語で交わす笑顔…笑顔なのか?
笑顔って表情筋ビッキビキ、血管ビッキビキで交わすものだったかな?
更に固まる一同。親アジアだった筈のメアリィ~が敵意むき出しなのがドッキリモノだったので。
「ミスツカサン、君がいると全く退屈しないよ!」
久しぶりのジェフ伯が満面の笑顔で言った。いやあなたの奥様何とかして下さいよ。
そして、ジェフ伯が新会社設立を宣言し、社名のプレートの幕が切って落とされた。
『YOUI MARINA Co’Ltd』
ユイ。「ユイ」と読むにはやや不自然な綴り、YOUとI、貴女と私。
そして「ユイ」と言えばウチナーグチ、琉球方言で結、親しい人達との絆の意味。
後で知ったけど。
それはかつてアジアを愛した青年が愛した女性、沖縄から買われ東南アジアに住み着いた奴隷の末裔の娘の名前でもあったそうだ。
非業の死を遂げたその人の愛と絆が、多くの人達の新しい出会いと結を産む。
私も日本の提携企業の一因としてその仕事に係わる。
バージニア子爵夫人が涙でジェフ伯を見つめている。メアリ…伯爵夫人も。
この仕事選んでよかった。でも大変な使命を負った気がする。
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ところ変わってここは帝国ホテル、江戸城を見下ろすホール。
眼下には、城と黒と金の、日本最大の天守が照らし出され、それを取り囲む様に白亜の櫓が三重に輝く絶景。
世界に誇る歴史都市江戸東京の中心だ。
私達は帰国後早々にこの思い出の場所に来ていた。
「それでは、我等が女神…」
「ヤメテヨー!」
「司さん、そして彼女の親友、好婷さん(スーの事だよ)、チャープランさん、ミカエラさんの就職を祝い、今後の幸福を祈念して、乾杯!」
「「「カンパーイ!!!」」」
時サンの音頭で4姉妹と私達は乾杯した。
「まさかイキナリ高収入とは思わなかったヨ!」
「これならフィリピンに男を3人は囲える身分だナ!」
「え?ミキそんな人いるの?」
「イナイヨー!いても絶対お断りネ!1人でも時サンの全財産ギャンブルと麻薬と堕胎で潰すのが国のダメ男ダヨ!」
そこまで駄目なのか~。
メアリィ~が「自分で何とかしろ!」って色々辞職したの、正解だよね。
「イスパーニャの男も投機的よ!そんなのに比べたら時サンイイ男ヨ?」
「ちょっとグラシア私の友達をハーレムに誘うな!」
「司ン、時様優しいじゃない!お金持ちだし超有望永久就職先ダヨ?」
「ネー?」
「ネーじゃないよグラシア!ミキ、あんた年相応の働き者で誠実ないい男捕まえなさいよ?」
何かお母さんみたいな事を言ってしまった。時サンは悪い物件云々以前に、私達の手に余る。
「司~ン!」
うわ何だ?スーが涙と鼻水流して泣いてる!
「あんたにゃ一生頭が上がらねーよ!ありがと、ありがとなあ!」
「いや私あんたを旅行に連れまわしただけだし」
「そのお蔭で私新人で課長だよ!年収ン百万だよ!ランとスーを部下にして就職だよ!」
「あー…それは就職した後が大変だぞ?実績出さなきゃねー」
「ズっ友だよ司ン?」あれ?ゲロ泣きから何か邪なニヤリんぐに変わった。
「企画協力はなろう社と契約を宜しくお願いしまーす」
「チッ!」あ。さっきの涙何だったのか?
ライトアップされて輝く江戸城天守を眺めて、時サンに言った。
「時サン、思えばここからずっとお世話になりっぱなしだっ…でしたね」
「何だよ司さん、畏まらないでよ」
「私は色々贅沢もさせてもらったけど、何よりチャンスを貰いました」
「だから畏まらないでって、最後酷いオチが待ってそうでコワイよ」
「人を何だと思ってんのよ?」
「世紀末覇王」
「ヤメテー!」
皆が笑ってるー。
「司さん。もし、私から何かを受けたと思うなら、司さんの大切な人にお返しすべきだよ」
時サンが私に問いかけた。
「えー、雅姐姐や徐一族の叔母さん達と、ジェフ伯、時サン達に飴ズ」
「その前にだよ」
「…両親?」
時サンとお延さん、お次さんがニコニコと微笑んでくれた。
「「うまー!うまうまー!」」グラ玉と飴ズは肉喰って酒飲んでた。
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※次回、新章!親孝行 信越東海親孝行ツアーです。
ご両親相手なので、地味なお話になります。




