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161.ガイド時サンち ほほぉ~解りました。

※すみません長くなったので次回に続きます。

 後日譚にもう2話お付き合い下さい。


******


 お延さんのお招き、というか時サンと4姉妹のお招きに与って、某県の時サン邸に伺う。

 途中何人かに声かけられた気がしたが気のせいだったかな?


 某県某駅。長閑~。徒歩数分。


 うん。想像通り日本家屋だ。堀とか天守は無かったな。

 だが、本瓦葺き。しかも何棟かに別れて…

 武家屋敷だな。長屋門まであるし、角が二層櫓になってるし!


 軒の反りがまさに城の建物だ。


 駅近なんだけど、田舎駅だし。

 何か学校が近いな。学校も古い偽洋風建築だし。

 どっちも映画のロケとかに使えるんじゃない?


******


「「「いらっしゃ~い!」」」「ビエンベニード!」

 皆が迎えてくれた。内装は…城だ。城の御殿だな。


 そして玄関に続く応接間…対面所だよこれ。広!30畳はある。

「仕事で子供を沢山入れる事があってね」

「そうか護児学院って直接学校経営もやってたのね。

 元が孤児院だし。あの裏の学校がそれ?」

「そうだよ。子供達をここに呼んでパーティーとかもあるしね」

 30畳で足りるのか?


「凄い賑やかになるんですよ。向こうの大広間も繋げて使うんですよ」

 やはり城の御殿の様に雁木状に繋がる奥の建物、2階建てだ。2階が皆さんの部屋かな?

「また城ガイドに来た様な気分ですよ」

「よかったら奥の方で」「スミマセン」


…奥御殿も同じくらい広かった。キッチンスペースとか奥の間とか仕切られていて対面所みたいなドカーンって感じがなくて、ちょっと落ち着ける。

 キッチンが居間、リビングと分かれていないのが現代的だね。

 台所とか別棟だと流石に不便だし。

「ほほ~う。日本建築ならではの解放感。これ時サンが。」

「古い解体予定の武家屋敷を貰って移したんだよ」

「解りましたぁ~」


 障壁画は淡い色の…各地の城だ。あの五層天守、弘前城だな。そこから各地の城が続く。

 ホント城好きだよなあこの人。

「あれ描いたのもしかしてお次さん?」

「そうだよ~」

「解りましたぁ~」


******


 テーブルに、何だか色んなお酒が並ぶ。

 おお、シャンパーニュも!モエだあ!


 やっと本題。

「どちらの会社も色々お世話になったので断りづらいです。

 まあピーコック社の方はハードルが高すぎて私には難しいかなって思いますが。

 ただ、このまま案内士としてやっていくべきか、普通のOLをやっていくべきか。

 悩みます」


「司ンのガイド、ペルフェシオーン(完璧)!ブエンタレント!素敵な才能ヨ!」

「ありがとグラシア。

 でもまさかこの1年ちょっとでこんな騒ぎになるって信じられなくてね。

 現実感無いって言うか」


「それを私達の前で言うかね司ン」

「そうでした、この非現実的のカタマリみたいな人の前で」

「人を宇宙人か何かみたいに言うなあ」

「それ以上ですよ。時様」

 皆で笑った。


「でさ、司さんは英語も出来てガイドも履修したのは何故?

 何かやりたい事とかあったんじゃないの?」

 おう。突っ込まれたなあ。


 子供の頃まで遡って考える。

 テレビで見た、日本と違う海外の風景。

 不思議で綺麗な歌。


「何か、やっぱこれから日本にいるだけじゃなくて、もっと、世界を知らなきゃ駄目かなって。

 でもガイジンサンに日本の事聞かれてワッカリマセーン、じゃ格好悪いし。

 私の父が日本の古い物好きだったし、あちこち連れてってくれたってのもあるかも知れないけど。

 英語で海外と渡り合えたらな。その時日本の事をしっかり説明できなきゃ、って」


「とても立派だ」

「ええ。その情熱が、あのお客様方の心を捕らえたんですよ。司さんのお力です。魅力ですよ」

 時サンと、お延さんが私を見てくれている。


「え?そうですか?お延さんに言われると嬉しいなあ、エヘヘ」

 恥ずかしいけど嬉しいな。

「私は?」言うもんか。


「だったら猶更案内士でいーんじゃね?

 今回だってあの超人姉妹の案内をやった会社の方が先に唾付けたみたいなもんだし、どうせ英国貴族の会社とも協業する事もあるでしょし」

 お次さん、超人姉妹って…間違ってないけど。


「時様、いつもの一言いう時じゃなあい?」

 お玉ちゃんが時サンをつっついて言う。いつもの一言か。何となく解る。

 グラシアもニコニコつついてる。

 多分、やりたい事をやれって言うんだろうなあ。


「あー…もう何となく解ったって顔されちったか。まいいさ。

 司さんはぼんやりとでも、やりたい方向に向かった方がいい。

 それが確かに見えて来た時に、また進路を考えればいいと思う。

 多分貴女の事だ。逃げ腰だったり、浮ついた気持ちで転職なんかしないだろう。

 今見えている物かは始める。それでもいいと思うよ」


「やりたい事をやれって事ですよね」

「平たく言うと…そうだね」バツが悪そうに時サンが答える。

 でもなんか嬉しい。


「私、本当にやりたい事が何かってのは解らない。

 恥ずかしいけど昔は先生になりたかったけど、学校の仕事が殺人的で自殺者も犯罪者も精神異常者も出てるって聞いてイヤになった。

 案内士が夢に近いかって言われるとピンと来ない。でも普通のOLで常識を身に着けて、って言うのも遠回りみたいな、逃げみたいな。

 どうせ苦労するなら、好きな事に近い方からやって見よっかな?」


「それがいいと思う」

 時サンとお延さんが、両親みたいな笑顔で応えてくれた。


「でも、うっかり時サンの本当の歴史についてしゃべっちゃいそうで」

「いいんじゃない?もしも、架空の教訓として聞いてもらっても、そんな歴史が実際にあったなんて誰も信じないし、第一証明も出来ないし」

「それもそっか。でも広島で海軍の女性士官さんが凄く真剣に聞いてたよ」

「それも教訓や机上の戦略論での話だよ。そうなんない様に色々やったしね」


「やっぱ歴史の影に時サンかあ」

 みんなが噴いた。

「それだよそれ!」「カゲッカゲッビュビュー!」「誰も知らない影ー」「君達止めなさい」

 何だか時サンがいつも聞いてそうな歌が。

 そして笑ってるみんな。


「うん。なんだかそれが良いかも。

 本当にやりたい事が何かはよくわかんない。でも、やりたくない事ややっちゃいけない事は何となく解るし、求められている事は目の前にあるし。

 先ずは動き出すところから始めます」

「世の中それがごっちゃになって判断付かなくなるもんだよ~ウヒヒ」

「こらお次!」

 あ、お延さんがお次さんをひっぱたいた!珍しい光景を見た!

「うひ。ゴメンね司ン」

「お、おう」


 結局その日は、お泊りになった。

 何と自宅まで車で送って貰っちゃった。

 カーステはなんかギュルッルーとか我が故郷を守れーとか昔のテレビの歌ばっかで。

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