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152.ガイド米子城 山陰三巨城?

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


「んで宿題増えたー」

 携帯でお延さん達とチャットする。


「いーじゃんコッチはまだ単位足んねーし」とミキ。

「やっぱガイジンの就職はハネられるっぽいよ~」と就活中のラン。

 どこの企業だ?訴えてやれ。そして喰らい付け。

 にしてもどっちも辛そうだな。

「たすけてスー」「右に同じー」

「甘えんなコラ。私だってあの怪人軍団の期待に応えなきゃ殺されるんだぞ」

 怪人軍団って。毘姐姐は確かに怪人っぽかったけどさ。


「で何よ宿題って」

 しまった。奥様方の抱える蟠りについて愚痴ったけど迂闊だった、詳しく書いては駄目だ。

 あまりにもプライバシーに踏み込み過ぎている。

 私はあくまでガイド。知ってるお話を楽しんでもらうだけなんだ。

 サンドラの頼みは私の中で出来る範囲で消化するしかない。ぬぬぬ。


「お客様達が司さんを歓迎してくれるのは嬉しいよ。

 でも、あくまで貴女は貴女のスタイルで接する事が大切だ。

 お客様達もそれを望んでいるよ」

 時サンの一言、もとい一文がズッシリ来るなあ!

 プレッ!プレッ!プレッシャアアア~!!って奴だ!


「それっきゃないっすよね」

 今日は寝るか…と。

「お客様達と一緒のツカサンいい顔してたぜー」

 やめてお次さん。てか見えてたんだ。

「皆様の司さんを見る目はとても慈悲に満ちていましたよ?」

 ありがとうお延さん。

「魚おいしー」「貝もオイシー」ブレないなグラ玉。


「楽しいお土産話持って帰るから待っててくれー」

 うん。元気を貰ったぞー。


******


 今朝は本丸内の渡り廊下を伝わって、古天守四層で朝食。

 狭い窓ながら昨晩止まった天守が見える。

 はは~ん。こういうプランを提案するモニターにされてるな?

『はは~ん。こういうプランを提案するモニターにされてるな?』

 ニッコニコのジェフ卿。ギクっとする城泊スタッフの皆様。

『宜しい。このキャッスルステイの発展のため、思いつく限り改善点を考えてやろうじゃないか』

 中々キビシイ!

 でも一流を知る人からのご指摘程有難い物は無いよね。ガンバレスタッフ。

 ノドグロうまうま。

『やはり海を見下ろす天守に泊まって目が覚める、というのは素晴らしい!

 しかも船で乗り込み、船で帰る。正に今までにない経験だ!

 今回ここに泊まれたのはミスツカサン!君のお蔭だ!』

 ノリノリでゴキゲンな伯爵のはしゃぎっぷりに、一行もニコニコだ。

 城泊スタッフさん達もニッコニコになった。

 お金払ったのはあくまで伯爵様達なんですけど。


******


 朝食を済ませ天守を降りる。


『え~今更ながら解説を。

 米子城は、先日訪れた岩国城を築いた毛利家悲劇の家臣、吉川広家が築き始めました。

 その途中に毛利家共々追放され、後を継いだ中村家がゴタゴタしまくって岡山藩主の親類池田家の城となって完成しました』

『どんなゴタゴタだったのやら』

『中村の父と忠臣が徳川に恭順を示したものの、忠臣を妬んだバカ家臣が死んだ父の跡を継いだ11歳の藩主をそそのかして殺した。恭順を示した忠臣が殺されてブチ切れた家康がバカ家臣を処刑。

 11歳の藩主も9年後急死した、という事だそうです』

『それでも立派な城は残った訳だ』

『天下の池田家ですので。

 朝食を摂った古天守が、吉川広家が最初に上げた天守です。

 昨晩泊まった天守がその11歳藩主の忠臣の誰だったっけさんが上げた物です』


『改めてみると、なんか一番上の階が縦に長細いのねえ。下半分なんて斜めだし』

 メアリ夫人、美的感覚が良い。

『元々は5層で、最上層は望楼だったものを、風雪を避けるため外壁で覆った姿が今の物で、

四層天守に見えています。古天守も同様に望楼を外壁が囲っています』

『成程、不思議な形の天守だと思ったわ』


『完成当時、または完成後に最上層を風雨から守るため壁で覆った例は、先日訪れた福山城天守の江戸時代の姿や、長野の松本城などがあります。

 日本は豊かな木材で建築が発展しましたが、同時に木材を育てた湿潤な気候が木造建築に試練を与えていたのです』


『姫路城で聞いた話と言い、日本の建築には私達の国とは違う命があるな。

 我が国の石を活かした構造物とその中を彩る木の命、そして木と土で築かれた日本の建築の命。

 これを別の物と思わず、同じ人間が作り上げた物と考え比べる必要があるなあ…』

 ジェフ伯が、物思いにふけった。


 そうなのよ、西洋、イギリスの建物も内装は木。庶民の家も木。

 腕のいい職人さんの技量は日本もヨーロッパも素晴らしい。

 そこで差異を観察し、何を求めて進化して今があるのか。

 こういうの比較文化学というのかな?建築学の世界にもそういうジャンルあるのかな?


『ツカサン、ハローツカサン?』

「うわ!おー、そーりー」

『ふふ。グランパもツカサンも時々学者みたいに考えに沈むね!』

 サンドラにからかわれた。


『でも素晴らしい事だと思いますよ。

 一つの事象から、今まで体験した情報を再構築するために考える。

 そうやって過去の知識を再構築する、それこそが人間の知の楽しみじゃないですか?』

 とまた、時サンの受け売りを語る。

『素晴らしいわツカサン!私は駄目ね!そういう頭で考えるの苦手なのよ』

 そんな事無いと思うけどな。


******


 一行は西端の二重櫓からの眺望を楽しんだり、山麓の二之丸御殿で休憩して裏門を出て堀をグルっと回って大手門を眺め、深浦から堀に入ったところでホワイトキャッスル号に乗り込んで米子を後にした。


 城泊スタッフの皆さんが見送って手を振る。私達も手を振り返す。

 何か流れてる「再会」の曲。


 堂々とした、昨晩私達を休ませてくれた天守が、航海の無事を祈る様に私達を見下ろしている。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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