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141.ガイド亀居城 そうだ、城、築こう!

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 宮島を離れ、ホワイトキャッスル号で洋上ランチしつつ次なる目的地、亀居城へ。

 フェリーが発着する大竹の港に尻から入るもギッチギチでした。


 そこから国道と国鉄を挟んで見える丘の上の、白亜三層の天守と、そこから北へ連なる白壁、立派そうな石垣。

 船から降りた一行はタクシーで大竹市の中心部よりやや北へ、そして山上に連なる亀居城の真ん中あたりを目指して坂道を登る。


 道の終わり、松の丸門前で下車。正面に櫓門が聳え、背面海側に出丸っぽい感じで居館、鐘の丸がある。


『現在では埋め立てられていますが、この亀居城は丁度国道二号線の内側を海岸線にして、街と港を囲う様に築かれました。

 この城は南蛮征伐、対ポルトガル・スペイン戦争で織田軍が台湾、フィリピンに築いた和城と同様の造りをしています。

 高地に城、沿岸に港と町、それを取り囲む石垣という実戦的な構えがこの地にも再現されました。

 亀居城は毛利家追放後に福島正則が領地防衛のため17世紀初頭に築いた支城で、鞆城同様立派過ぎて即破壊される運命にありました。

 しかし逆に幕府の監視下に置かれ存続し、更に福島家追放の原因ともなりました。

 実に皮肉な城でもあります』


『初めて来るが、確かに立派だ。海側の御殿の規模によっては大名の居城に匹敵するな』

 興奮気味にジョン卿が鐘の丸を見下ろして言う。

『そうか、あそこに港があったのか…』

 対照的にジェフ伯が無念そうに呟く。

 あの辺までホワイトキャッスル号で乗りつけたらさぞかし痛快だっただろうと思うと残念だ。


******


 松の丸に入ると目の前に無の丸二層櫓が待ち構えている。その外側を南へ進む。

 階段状に連なる有の丸の先に高麗門が、そしてそれを鈎の手に曲がると二之丸櫓門が。

 この、山上に連なる狭い曲輪の連続、下津井城を思い出すなあ。

 あれもまた和城のノウハウが生きている城だった。

 二之丸櫓門を左折すると、兵舎らしき建物が並ぶ。


 その奥に、二層の小天守と櫓門、多門櫓に固められた本丸正面、その奥に三層の天守が聳えている。

 本丸というより、姫路城と同じ様な連立式天守の様だ。

『これは支城というにはかなり拘り過ぎかもしれない!』

 もしかしてジョン卿はマイナーな城とか好きなのだろうか?

 時サンと気が合いそうだな。


 そして本丸門。

『何だこれは?』

 正面から入り、右手に曲がる。そしてその先、正にUターンする様石段があり、その周囲を多門櫓に囲われている。どっかで見た、というか歩いた様な。

「あー!原城かあ!」おっと日本語が出た。


『オー!ツカサン、君もあそこへ行ったのか!』

 あんな地の果てまで言ったんだジョン卿!

『はい。このUターンの道の周囲を多門櫓で囲い、大きさを何倍にも広げた、正にキリングゾーンがありました』

『あそこも恐怖だがこの小さい殺人廻廊も充分脅威だ。

 どうしてここまでの物を築いたのか!』

 呆れ気味に言うジョン卿が面白かったです。


******


 狭い本丸、正面に聳える天守には直接入れない。

 西側の多門櫓から入る。


 おや?土足OK、というか床が石張りだ。そして何となく内装が綺麗だ。

 凄く小さいホテルのロビーというか。

 そして正面、天守に上がる間口も絨毯が敷かれている。


 更に天守内、何と言う事でしょう!

 柱と梁の無骨な内装ではなく、和風の照明や壁には天井から織物のカーテンがあしらわれ、落ち着いた和の応接室が。

 解放され廊下と一体となった一角はカウンターになっている。

 営業はしてなさそうだけど。


『今までの殺伐とした戦いの場から一転寛ぎの場になってしまっているが。

 これはどういう事だ?』

 ジェフ伯も驚いている。

『これは…城泊に向けて改装しているのかも知れません。

 途中の段階を一時的に公開している、そんな所ではないでしょうか?』

 携帯で調査した時には情報は無かったが、今は係員もいる。

 ちょっと聞いてみると…


『年内に宴会場としての貸し出し、来年にはホテルとして開業を目指して今はプレオープン、だそうです』

『そうか!ここにも泊まれる様になるのか!また来なければいけないな!』

 子供の様に喜ぶジェフ伯。

『他の建物も公開されるだろうか、特に櫓門から防衛線を想像するのは楽しそうだ!』

 ジョン卿もまた楽しそう。


 だが。プレオープン、アヤシイ。

 もしかしてこの一行の到着に合わせて無理くり特別公開したとか?

 海外富裕層向けビジネスモデルの模索、と言ったところかも。後で雅姐姐に確認しよ。


******


 天守の二階以上は現在土足禁止だが、開業したらホテルのスイート同様土足OKになるんだろう、床材の保護をきっちり施して。


『これ位優雅だと、極東の姫になった気分が味わえるかも知れないわね』とメアリ夫人も楽し気だ。

 二階は落ち着いた休憩スペースになっている。一回がダイニング、ここがリビングになるのかな?


 そして最上層、三階は周囲を障子が囲っている。ベッドルーム兼展望室、かな?

 今はそれなりに快適なソファが置かれている。


『初めて来る城だが、泊れるというのは夢があって素晴らしいな。

 私にももう少し財産があったら母国に日本の城でも築けるのにな、ハハハ!』

 笑いながら言うジェフ伯の言葉は少年そのものだ。


『城の無い街で生まれた大企業の社長が10億円で大き目の天守を立てた話があります。

 南米でも3層の天守を立てた日系移民もいますよ。

 不可能ではありません。但し、鉄筋コンクリート製ですが』

『コンクリートではなあ。木造では幾らだろう?』

『規模に依りますがこのくらいだと同等、先の広島城天守規模だと5倍以上かと。

 維持費はコンクリ以上にかかります』


 ガイジンさんの質問、お城はいくら?だ。まずは天守から。

 小さめの櫓門だって億は飛ぶってか梁だけで数千万だ。そんな門や櫓を幾つも建てた日にゃ。

 それ以前にこれだけの石材を丘の上に運ぶだけで何億かかるか。


『中々に厳しいな』

『でも夢があっていいです。その夢がビジネスに繋がれば良いですね』

『ビジネスか。日本観光事業が立ち上がったら次はそれかな?』

 あ、ジェフ伯が何か凄くやる気になってる。

『私も一枚噛むぞ!日本ブームを仕掛けてやる』

 ジョン卿もだ!IT会社の代表だったかな?ネットでステマ?


 でも地球の裏側にこんな城がボヨっと出来て、気軽に観光出来たら日本の城好き、日本好きにはたまらないだろうなあ。

 城の裾野に城下町があって、和服のスタッフがいて…

 それ日光江戸村じゃん、城はないけど。


…ああ。そういや徐姉妹んとこのイケメン姉弟、叔母さん達からOK貰える様な日本庭園プロジェクト完成出来たかな?


****** 


※わずか3年で消えた広島の支城、謎多き亀居城。

 発掘された石垣と現地に残った絵図の他資料が極端に少ないながらも香川元太郎先生によって描かれた復元図が下記です。

https://rekishi.kagawa5.jp/214-%E4%BA%80%E5%B1%85%E5%9F%8E/%E5%BA%83%E5%B3%B6%E7%9C%8C/


※建築物の配置や構造等不明だらけなので天守も三層なのかは不明です。

 なので劇中後半は現実の亀居城ホッタラかして夢マシマシです。すみません。


※日本中、城も天守も残されたこの世界、日光江戸村はあっても伊勢戦国時代村は無かったりします。だって安土城行きたきゃ現地いきゃいいんですから。

 むしろ維持費捻出のため現存する城を戦国時代村にするところがあってもおかしくないかも。


※因みに現実の伊勢戦国時代村の、宮上茂隆先生復元案の安土城、総工費70億円。

 劇中出てきた「10億円」は尼崎城天守をコンクリで復元した際、エディオンの社長が個人で寄付した金額や、木造の大洲城天守14億、同じく木造の掛川城天守10億あたりの参考値です。


※数々のサボタージュで頓挫している名古屋城天守は事業化時点で500億、宮内庁が絶対許さない江戸城天守が試算350億。耐用年数を超過した広島城天守も試算で90億。

 築城ラッシュで人件費も低かった1600年前後、天守のみならず城丸ごとの相場はいかほどだったのでしょうね。


※なお、コンクリでもいいから城っぽいのに泊まりたい!でもという方には、和歌山県の国民宿舎湯浅城なんかリーズナブルで天然温泉でオススメです。模擬建築としても上位の出来です(個人の感想)。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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