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130.ガイド岡山城2 黒い天守に住みたいな

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 不思議な形、でも優雅な姿の岡山城天守の探検は続きますよー!


 天守二階に、立派な部屋があった。

『ワオ!御殿みたい!』サンドラ嬢が喜ぶ。

『はい。ここは城主の間と言い、御殿の対面所の格式を持って作られました。

 この岡山城天守は戦時の御殿の機能を持っています。

 そのためこの城主の間を始め、各階は畳が敷かれ、居住性を確保してあります。

 ただ、実際にここに城主や城内の人が住んだ事はありませんでした』

 まあわざわざ階段上ってエッチラオッチラ暮らすより、広い平屋に住んだ方がいいもんねえ。


『それなら今からでもキャッスルステイ出来る様にすればいいのにね!』

『国宝ですからそう簡単には。

 それに電気や水道、冷暖房を通す改造も簡単ではありません。

 現在キャッスルステイを行っているのは、三層の天守を持つ城や、御殿が殆どです』


『ツカサンはキャッスルステイしたの?』

『はい、お客様のご厚意で、平戸城、松坂城、皆さんと待ち合わせした岸和田城等に宿泊させて頂きました』こういう謙譲語の表現、難しいなー。

『羨ましいわ!』

『今回の旅で、天守ではありませんが城内に宿泊できる城を今手配していますので、お待ちください』

『是非良い返事を頼むよ』


 雅姐姐は「最悪海軍動かして浜田城か田辺城抑えてやるわ!」と意気込んでいた。

 一泊数十万、グループだと一千万近く狙える城泊を「なろう」社の海外富裕層向けの目玉にするため、成功事例を増やしたいんだろうなあ。

 徐姉妹の時はおひねり貰える程の好評だったしね。

 欧米圏の実績造りには今回は持ってこいだ。


 尤も、文化財保護が第一だ。城泊で破損や火災なんかあったら本末転倒、絶対許されないけどね。

 なんて考えてたら、城の係員が凄い聞き耳立ててメモ取ってた。

 まさかここも城泊を検討する事に…なったらそれはいいかも。


******


 そして、花頭窓から市内を見下ろす最上層。

『他のフロアは華やかでは無かったね。姫路城ほどではなかったけど』

 少々残念そうにサンドラ嬢が言った。そうだなあ。


『もし奥方や側室が住んでいたら、華麗な装飾が追加されたかも知れません』

 ちょっと慰め半分で答えた。


『ミスツカサン。以前安土城や二条城に行った時は、天守の中も華麗だったよ?』

 流石ジェフ伯、通だな。こんなマニアックな人がレイシストな訳ないよねえ。


『安土城は最初から天下の覇者が住む御殿として、権威を天皇家にすら誇示するため、二条城天守は天皇を迎えて京の街を展望頂くため、どちらも華麗な装飾を惜しみなく施しています。

 同様の装飾は、天下人の天守でも伏見城や大坂城…今は九州の日出に移築されていますが、ごく限られたものです。

 徳川政権はこの華美を嫌い、江戸城や今の大坂城天守は単純な権威の象徴として建設されました。中は姫路城同様巨大な倉庫となっています』


『ほう。世の中が安定してくると、ああいう華美さは失われてくると言う事か』

 感慨深げにジェフ伯爵は頷いた。


『もしスプリンクラーや避雷針がなく、江戸城や大坂城の天守が焼けても、徳川幕府は再建する事より災害復興を優先したでしょう』

 私は補足した。

『そうか…平和な時代に、大きな物は要らなくなるものか…』

 更にジェフ伯は考え込んで、眼下の城を眺めていた。

 これは時サンから聞いた、もう一つの事実だ。天守の無い城こそ、平和の象徴、か。


******


 一行は一旦内下馬門から本丸を出ると

『城の外側を見て回れないかな』

 とジェフ伯が聞いて来た。

 車を呼びます、と言うと

『いや、岡山は電車が多い街と聞いたよ?』よく知ってらっしゃる。

 時刻表を見ると…おお、二之丸内郭を沿って走る県庁・二之丸内堀系統が来る。


 一行が電車に乗るが流石に観光地だけあって外人慣れしてるのか、別に驚かれる事も無く席に着いた。

 車窓からは二段目の内堀の向こうに本丸同様立派な二層櫓、三層櫓と白壁が威容を誇り、その内側に本丸が、天守がチラチラと見える。

『凄いわー。あそこだけが岡山城じゃなかったのね!』サンドラ嬢が喜ぶ。

『この堀の内側は岡山県庁がある東南郭、そしてこの北の二之丸内郭と西の丸があります。

 今電車が走っているのは二之丸の北東、県庁通りです。城は更に内外二段の三之丸がありました。今保全されているのはこの内堀二段目以内の二之丸内郭等と本丸だけです』

『凄いわー』

 サンドラ嬢や城の縄張が好きと言っていたジョン卿はしげしげと塁上の櫓群を眺める。


「じょーちゃんぼけえ(凄く)英語ペラペラしゃべりよるなあ」

 隣のおばあちゃんが声かけた。

「仕事ですから」と愛想笑い。

「よう勉強なさったなあ~」お婆ちゃんが褒めてくれた。嬉しい。泣きそう。

「ありがとうね!」ちょっと涙目でお礼を言った。


******


 三層櫓と二層櫓が居並ぶ対面所の石垣上、そして西に連なる長大な石川門を眺めつつ、電車は西門を出て西の丸北門前へ。

 広い堀の向こう、ゆるやかなカーブの上に西手二層櫓が見える。

 岡山城って漆喰塗りの連格子窓がトレードマークだよね。何でだろ?


 私達はそこで下車し、別の電車に乗り換えて本丸水手門へ戻った。


『次はシモツイまでお別れだ!俺の事を忘れるなよー!マイゴッデース!』

 ピーコック伯爵ジェフ・ショア様ご一行は海軍軍人ジョークを放ち、手を振りながら岡山城を後にした。

 私も照れながら手を振り返す。

 あ。周囲の視線が私に集中した…

 脱出!!


******


※城はこの本丸の南と西を包む様に二之丸と西の丸が置かれ、その外を二段えの三之丸が東西に長く囲み、更に町屋が西側を守り最外郭に西川が南北に流れてるという広大な物でした。

 下記が最盛期を描いた、所謂正保城絵図です。物語で司ンが一行を案内したのは、旭川に突き出た本丸とその一回り外側のあたりです。

 その西南を囲む二之丸、塁上にも門や櫓は設けられましたが、この物語では一部失われ、一部残る、そんな感じです。内部は完全に現代の市街になっています。

https://kojodan.jp/castle/31/photo/99802.html


※内堀は二段目も三段目も、勿論他の堀も全部埋められて、本丸周囲の堀しか残っていません。

 なので劇中司ンが乗った路線は存在しませんのであしからず。


※本能寺以後に発令された「城壊さんで取っとけ」令。沼城は「移転」扱いで中世然とした旧地から岡山へ引っ越しました。

 この辺、後の藩城の前身の段階で、ガチガチに近世化して壊すのに手間かかった九州とは違う~??。うん。そう思う事にしました。

 神辺城(福山城の前身)とか大和郡山城(広島城の前身)、どうしよう。


※西の丸西手櫓は現存します。

 さあ一度行ってみましょう!ウォーリーを探すより簡単かどうかは解りません!

 …って位「どこだよ?!」って言いたくなる、どこにあるか分からない現存城郭建築です。

 小諸城大手門、日出城鬼門櫓と並ぶ『日本三大どこだよ現存城建築』です。

 とはいう物の。

 今では西手櫓の手前にあった家屋はなくなって駐車場になってるし。

 小諸城大手門は完全に整備され公園化されてる。

 日出城鬼門櫓は移築され復元されてます。

 

 さあ!君の手で『シン・日本三大どこだよ現存城建築』を選ぼう!

 但し移築高麗門、薬研門は多すぎるので除く←難易度高!

 茨木城大手櫓門、掛川城二之丸大手櫓門はセーフ?


※言うまでも無くピーコックという伯爵号なんて実在しません。架空のものです。

 因みに影の薄いサム子爵はポートメイリヨン子爵でこれも架空です。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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