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127.ガイド明石城・姫路城 豪華メガヨットへの誘い

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


「いい絵が描けたよ!」とお次さん。

「城と豪華クルーザー、中々無い景色だぞ司ン」何故か得意げだ。

「それジェフ卿にプレゼントしたら喜ばれるよ~」

 とグラ玉に挟まれてぷゆぷゆしてる私は力なく答えた。

 ああ~。この二人は癒しだ~。


「そろそろ姫路だ。本日最後の仕事だねー」

 時サンがバスコンを運転しながら教えてくれる。

 先方より充分余裕を持っての到着だ。


「しかし桜門集合とは、今度は流石に上陸用ボートだなあ」

 そう。姫路港と姫路城を繋ぐ船場川は底も浅いし橋も多い。

 なので尼崎みたいな力業は出来ない。

「にしても、一回城をグルっと回って来る根性も凄いよなあ」

 船場川と姫路城内堀は『水戸違い』と言って、水位が異なる。なのでどこかで閘門を設けるか、ボートを無理やり引っ張り上げるかする必要があった。後者は無理があるなあ。


******


 姫路城桜門。

 春に来た時と同じく、巨大な三層櫓と二層櫓、二重多聞が守る戦闘空間に、聞こえて来るエンジン音。


『ヘーイ!ミスツカサーン!』

 な!

 ビッチョビチョのジェフ卿が笑顔で手を振ってる!後者だったー!!

 そこまでして水路に拘るかー!!


『ジェフ卿!服が!川の水は色々汚いですよ!』

『ハッハッハー!城に入るんだ、汚い姿では入らないよー!』

 すると、門外にバスが来た。

 「案内士になろう!」では手配してない、彼ら自前で頼んだお着換えオンリーのチャーターバスなのか!

 濡れ鼠だった三人の貴族様はサッパリした姿でバスから降りた。


******


 そして潜る桜門、目の前に広がる三之丸メインストリート。

 そして、正面に五層の大天守と三層の小天守、その周囲に連なる櫓、壁、石垣の雛壇。

 江戸城、大坂城。伏見城や名護屋城、京の城達にも負けない絶景だ。


『ミスツカサー!一緒にオヒメサマになりましょー!』

 サンドラさん、おおはしゃぎだ。

『よし、私達もダイミョーに変身しようか!』『『イェッサー!!』』

 ジェフ卿に続き、サム卿、ジョン卿が敬礼してついていく。

 そしてついていくインフルエンサー君。

『男達は本当に子供ねえ。私達も、どう?』とバージニア夫人を誘うメアリ夫人。

 バージニア夫人は…動かなかった。

 やっぱ色々面倒な人だなあ。でも、何だか行きたがってる気がしないでもない?


 駄目元で私は声を掛けた。

『仮装行列みたいなものと割り切っては如何でしょうか?』

『そうね、折角来たんだからやって見ましょう!』

 メアリ夫人がバージニア夫人の手を取って和服処へ向かう。楽しんできて下さい!

『あなたもよ、司ン姫!』

 逃げられなかったか~!


******


 青い目の大名一行が天守群を前に写真を撮る。何故か私も一緒だ…いいのか?


『これは我が船のブリッジに飾ろう!』

『あ~、ジェフ卿。今までも何回も姫路城には来たのでは?』

『妻やバージニアまでオヒメサマになったのは今回が初めてだよ!

 それにミスツカサンもいるしなあ!』

 それはまあ光栄な事です。

 でも、ジェフ卿もメアリ夫人も、私の事司「ン」って言ってない?


『さあ!今回は今まで行った事が無かった御殿と、姫路連隊博物館に行ってみよう!』

 これは想定済み。

 流石に姫路城に5回も6回も行った事がある卿ならそうするかもなあって思ってました。

『えー!ヒメなんだからヒメジ城に行きたいー!』

 あ、初来日のサンドラさん可哀想。


 と、ススーっと近づいて名刺を差し出したボランティアさん?

『皆様は大英帝国からでしょうか?宜しければガイドします』

 お延さんだったー!

 名札には英語で有志ボランティアの証明書が?


『サンドラ。折角だ。マダムノブに案内して貰いなさい』

『いいの?』

『ああ。色々疑問に思っている事を、この人はきっと教えてくれる』

…ジェフ卿、お延さんの事知ってるのかな?

『ではご案内申し上げます。靴は歩きやすい物に替えましょう』

 サンドラさんは菱の門に向かって行った。


『彼女はツカサンの会社が手配したのか?』

『無関係です。ボランティアですから』

 知~らないっと。まさかお延さんにあんなアドベンチャーな一面があったとは。

 どっかで他のみんなもこっち見てるなきっと。


 お?例によって廻りに人だかりが出来ているし。


******


 城の東に合った姫路連隊の師団司令部、三之丸の東、御作事所後に赤煉瓦の荘厳な建物は今では軍事歴史博物館になっている。

 そこには日本各地の天守の模型や縄張図が展示されているが、一行は何だか上へ急ぐ。

 二階は、海運と水軍の展示。


 男性陣は織田家の鋼鉄蒸気船や艦載砲の模型だけでなく、水軍基地や海運との連携、南蛮征伐の航路やその後構築されたシナ海航路を必死で眺めていた。

『本やネットで知るのと、博物館で見るのは違うなあ』

『ジェフ、我々は遥か昔に負けた。東洋の異端に。今学ぶ事があるだろうか?』

『あるさ!この頃の日本には夢がある!アーサー王伝説にも匹敵する夢が!

 王の眠る山を探すのと同じくらいに、何故世界の果てに蒸気船や鉄道が生まれたのか、マリーンが迷子になってここにきてしまったのか、私は知りたいよ!』

 興奮気味のジェフ卿に司書の方…軍人さんが一礼すると、ジェフ卿は敬礼して落ち着いた。


『この人は、本当に子供ね。私より20も年上なのに』メアリ夫人がバージニア夫人に囁くと、

『うふふ!』と夫人が笑いをこらえる。


 私達、失礼がない様に、逆になんか色々身構えてしまったけど。

 ジェフ卿は大きな子供だし、メアリ夫人は良い人だし、バージニア夫人は…ちょっと抵抗感はあるけど、そんな極端な人でもなさそうだし、こんな笑顔もする人だ。

 他の卿達もジェフさんの良い友人や後輩だし。


 色々考えすぎだったのかな。悪い事したかも。


******


 三階は鉄道と国内軍事の集約の展示。


 そこには「鉄道はドイツの鉱山が発祥」と書かれていた。

 そして「蒸気機関は1世紀のアレクサンドリアで生まれ、それを宣教師から聞いた日本が実用化させた」と書かれていた。

 それを読んでジェフ卿。

『知ってはいたが、日本でここまではっきり正しく書かれると。

 英国では自国中心に書かれていたのだがなあ』とうつむいていた。


 主要街道での鉄道延伸や、幕府軍の集約、敵対勢力との軍事協定等も、英文のパネルをじっくり見ていた。

『何故…シマヅやモーリはトクガワと戦わなかったのか。

 鉄道による流通と発展が、戦意を削いだのか…』

『エンペラーがいたからかもしれないな』

 ジェフ卿とサム卿が、何だかとても悔しそうに話している。

 そっちだって王や女王がいるじゃないの。


 下の階に下りると、夫人二人は姫路城のマスコット、しろまるひめとかんべえくんのヌイグルミが子供達と遊んでいるのを見て何だか驚いていた。

 今まで何回か来て、見た事無かったんだろうか?そして何故か二人とも神妙な顔をしていた。


 しかし二体のヌイグルミが一行に近寄って手を振ると、少しづつみんな笑顔になった。

 私も一歩踏み出していった。

『みなさん、写真を撮りましょう!』

 かつての軍事拠点、連隊司令部のエントランスホールで殿様、姫様姿の英国軍人の一行とゆるキャラが記念撮影。

 これって、素晴らしい事じゃないのかな?

 あ、司書の軍人さんがジェフ卿に何か話してる。今の写真の事かな?

 これ会社に提出しなきゃ。


******


 内郭から天守、その下の備前曲輪を満喫したサンドラさんがお延さんとビール飲んで待ってた。

 わー!ミスサンドラが抱き着いて来たー!


 そして一行は桜門のボートへ。


『どうしても私の船に来てくれないのか、ミスツカサン』

『なんで最後に「ン」がつくんですか?

 あとその件は今会社に問い合わせていますので、結論が出るまで待って下さい』

『さっき船から街の奥に城が見えたんだ。多分明石城だと思うんだが、君の説明が聞きたかったよ。

 会社には前向きな答えを望むよ』

 そして一行は来た時と同様、ボートで城の東へと向かった。

 姫路城三之丸外周の重厚な二層、三層櫓列を堀から見上げるのもいい観光ポイントかもね。


「オツカレー!」ハっとすると、雅姐姐、そして時サンご一行。

「疲れましたよー!」雅姐姐は肩を抱いてくれた。


******


 何故か、雅姐姐も時サンのバスコンに乗って乾杯してる。

「亘さんとの旅も今夜迄よー」

 ここで雅姐姐から宣告!

「ショア伯爵ご一行のメガヨットに乗ってらっしゃい!」

「やっぱりかー!!」

 脳裏に、あのパワフルなご一行がワッハッハーと笑う顔が浮かんだ。


******


※明石城、一行未満で終わってしまいました。

 天守が無い城だと、観光的に色々アレですねえ。

 その復元図の一つが下記です。

 建築の大部分を失った今でも、二基の並び立つ三層櫓と壮大な石垣は、見惚れてしまう絶景です。

http://rekishi.maboroshi.biz/sengoku/akashijo-guidebook-present/


※本丸の巨大な天守台に天守が上げられる事は無く、替りに三層櫓が4基本丸の四隅を守りました。明治に城の保全を願った士族に対し、県はだまし討ちするかの様に電光石火で城を解体しましたが、辛うじて今残る二基の櫓が残りました。

 珍しいのは本丸御殿の一部が三層楼閣になって、御亭と呼ばれていた様です。

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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