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107.お宿は松坂城1 お宿もお風呂もお客様と一緒

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 とうとう拉致られた。

 増姐姐の胸に弾き飛ばされて、毘姐姐にお姫様だっこされて、ゴージャスリムジンバスにご案内。

 ヤーティンさんに緊急コールしたら「今までよく頑張ったネー」だって。

 いやまだ二日目じゃないっすか?


 次に向かうは松坂城。松坂牛の松坂。当然夕食も松坂。

 しかもお宿も松坂城!しかも天守だー!

 本丸御殿とくっついた、古い形式の蒲生氏郷スタイルな松坂城城泊!

 その御予算!ゼロ5つ見てその先怖くて見て無い。

 否、ちゃんと見て試算したけど二度と見たくない。


「今夜の宿で司ンの選球眼が決まるゼ!」

 ワイングラス突き出された!

「はい!小ぶりな城ですが、むしろ寛いで頂けると思います!」

 折角の良さげなワインだけど、飲んだ振りしてやり過ごさないと潰れるー!

 注いで頂いたら他の方に、イケメンボーイとかに注いで。

 あ、継ぎ足しはダメだった、グラスはテーブルに置いて…うん。もう関係ないねコレ!


「あらん司ンボクちゃんにお熱?」と増姐姐。肉体の圧が凄い。

「いえ、やはり近くの男性にご返杯すべきかと」

「毘姐姐のお孫さん姉妹だし、余程気が合うのかな~って」

「え"?」

「祖母が、イロイロ、スミマセン」「マセン」

 この美男美女、あのアスリート様のお孫さんで姉妹だったのかー!


「あの、色々名古屋城とかでお話されていたのは」

「私、日本式のテーマパーク企画して、どしたらいーか姉さんと話てマシタ」

 愛の囁きじゃなかったのかー!

 姉妹だしなー。

「是非成功させて下さい!」

 ハイ次!この後ろの座席から頭の上に登って来る小さい生物!


「この子達は持姐姐の孫よ」

「孫…毘姐姐さんのお家とは随分と差が」

「持姐姐の孫はもっといるよー。子供が6人、孫が20人?」

「どひー!!」

「司ンも負けんなよ!テメーがくたばる時子供一人じゃサビシーぞ?」

「サビシー!」「サビシー!」ちびっ子が謎の魔女っ娘ステッキ振り回して叫ぶ。


「はいはいー!高速道路ではシートベルトを締めないと、事故の時空飛ぶよー!」

 暴れるちびっ子たちを座らせてモニターいじって衝突実験テスト映像を流してやった。

『『飛んだー!』』

 しばらく全米自動車ナントカ協会のクラッシュダミーでも見てるが良い。

 あれ?何かウケてる?怖い子供達だなー。


「一瞬であの悪ガキを手なずけるとは…只者じゃないね?」

「あはは。せいぜい持って10分ですよ」

「孫達がスミマセン」とあの冴えない老人。

 孫達?…つまり、このしなびた爺さんが持姐姐さんの旦那さん…

 吸いつくされたか?


「何か失礼な事考えてない?」

 持姐姐が眼光をこっちに向けてきたー!

「いえいえー元気なお孫さんですねー!」


 他の皆さんの紹介を受けつつ、ゴージャスリムジンバスは本日のお宿、松坂城へ。

 陽の傾く中、桜に包まれた城が見えて来る。

 狭いながらも水堀を渡り、桝形門を潜り、更にその先の桝形門、表門へ。

 二つの二層櫓の間にある助左衛門御門から徒歩で一行をご案内。


 本丸は天守がある上段と、月見櫓がある下段に別れている。

 他にも記紀(古事記・日本書紀の事)をはじめとする日本の国学研究で有名な本居宣長の邸のある隠居丸、徳川家宿泊の御殿がある二之丸があるんだけど、当然のことながら今夜の宿は本丸上段。

 しかも天守と接続されていて、最上層で宴会できると来たもんだ。

 ここに案内しない訳には行きませんでしたよ。


「松坂城は16世紀末に豊臣秀吉配下の蒲生氏郷が築きましたが、場所柄重要性が薄く、建物も失われていきました。17世紀の江戸時代には相当荒廃したらしく、和歌山藩の支城となっていました。

 明治時代に天皇陛下行幸の宿所として、残された設計図、建地割を元に、現存した建物と合わせて整備されたのが現在の迎賓館としての松坂城です」

「道理で過ごし易そうな感じだねー!」

「この和洋な感じが観光旅行!って感じでイイネ!」

「テンシュー!」「テンシュー!」大広間の向こうには三層の小ぶりで古風な天守が見える。


******


「イヤー!こりゃいいね!司ン昨日のホテルもいいけどこりゃ殿様気分だぜ!」

 本丸御殿に増築された温泉浴場。温泉はトラックで近くから運んでるみたいだ。


 豪快に手足を広げる毘姐姐。色々見えてるけど気にしない。

「ほんと~!でも私はお姫様がいいわねえ」

 更に色々飛び出してる増姐姐も気にしない。

「今天守に人いないよね?」

 普通に恥じらう広姐姐が常識人に見える。

「はい、宴会を準備する女性スタッフだけですよ」

「至れり尽くせりだねえ。司ン、いい旅になりそうだよ!」

 親分の持姐姐もご機嫌だ。


 みんな本当に60代か?!

 お肌艶っ々じゃん!お腹のたるみとか無いじゃん?!

 女優さんかよ?!40代?30代?テレビとか出られるんじゃない?いや裸じゃなくてドレスとかで。

 何だか私この旅行で一番ダメージ受けてない?!


「あー司ン。この人達に常識的なモノを期待するだけ無駄だぞ」

「それはどういう意味で?ハオ」

「肌年齢の話ですよ~」

「あら。女は武器を大事にしなくてはネエ?あんたもよハオ」

『私男とかどうでもいいんで』

『徐の女に生まれてその発言は許せないよ?

 この血の輝き、女の最大の武器。磨きに磨かねば…』

「ひー!」

 風呂を飛び出そうとしたスー!だが増姐姐の巨大な肉壁に弾き飛ばされた!私がキャッチ!

「司ン?ウチのハオってどうかしら?」

「ええ。とても美人で、クールで男子学生からモテモテです」

「でしょー!!そーでしょー!!」

「でも言い寄る男共がボンクラばっかで彼女には釣り合わないですね」

「あなたも同じ境遇みたいね?」

「いえいえ、私に言いよる男なんていませんって。あ…」


「「「「何何??」」」」

 うわっ!美肉の壁が迫って来た!思わずスーを盾にしたら…

「ひえー!」

 あ、泡噴いて気絶した。ちょっと上がって貰おう。

「この司ンに迫る男!どんなヤロウか見てみたいぜ!」

「えー、言い寄るってか、色々助けて頂いている年上の方ですが」

「「「「ほうほう!」」」」


「その人は。私の知らない、色々な時代の人達の苦しみや戦いの悲惨さを知っている様で」

「何だソイツ?」『黙って!』

「私に父親に近い感じで色々教えたり、色んな名所や城に連れてってくれたり。

 結構お金かかってるのも気にしないで…」

「「「「ほ~。」」」」『それって』『シっ!』


「まあ、あしながおじさんって言うんでしょうか。

足、長くないオッサンですけど、ははっ!」

「「「「…」」」」

「あ、あのー」


「え、まあ、しっかり頑張るのよ」

「協力者がいるのはいい事ね」

「足は長くないけどな」

「あっちは」

『『『ゴラァ!!!』』』

 叔母さん達は三々五々上がって行った。

 もしかして、時サンの事知ってたりして?今度本人に聞いてみよう。


******


※松阪牛を思い出すか、本居宣長を思い出すか、梶井基次郎の随筆を思い出すか、はたまた豊臣秀次子女虐殺を思い出すかの松坂城。

 17世紀初頭には荒廃しまくって、正保城絵図でも「松坂古城」と半分廃墟扱いです。

 無論建築に関する資料は皆無です。そこを敢えてCGにした果敢なページが下記です。

https://shotatominagadesignworks.jimdofree.com/%E5%9F%8E%E9%83%AD%E5%BE%A9%E5%85%83/


※ 同ページ内で描かれている飛騨高山城や越前大野城等と同様、松坂城も天守と御殿建築が一部くっついていたのでは?との想定で作劇しています。

 市が本丸を発掘調査し、いくつかの礎石を発見したのですが、それ以上に本丸の大部分は配水池にされてしまい礎石より深く掘られてしまったため正確な事は不明です。

 ただ天守・敵見櫓・多門櫓そして多門櫓に密着する様な本丸御殿の礎石が確認され、この辺りの建物群は接続され半ば一体化していたのでは、と推測されています。

 浴場?完全なるフィクションです。


※因みに現在では松『阪』と書きますが、これも大『阪』と同じで明治以降の改変です。


※全体の復元画は例によって余湖くん様の作品もあるのですが、正確な現在の石垣配置図は下記の通りです。周囲に存在した狭い水堀は現在は埋められ市街地になっています。

https://livedoor.blogimg.jp/sujin_10/imgs/f/7/f7638d9f.jpg

 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

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