表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/251

105.ガイド桑名城 港を望む4層の天守

※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。


******


 尾張美濃の名城を堪能して頂き、一路南へ、名古屋県と津県の県境へダッシュ!

 向こうは昼食時間あるし…いや、あの毘姐姐の事だ。

『皆ー!ニンジャに勝つぞー!』とか言いながらダッシュかましてくる可能性大だ!


 頼む!泊ってでも車中でもいいからちゃんとお昼食べてよね?!


「て事で、養老鉄道でお昼だかんね!」

 時サン仕込みのローカル線急行一本直行、乗り換えなし!

 さー、名古屋経由高速域とどっちが早いか?!

「一体何があんたをそこまでさせるのか?」

 売られた喧嘩を買うのも女でしょうが!


******


 豪華な駅弁。でも乗ってる電車、これ東武線走ってなかった?見覚え有るんだけど?

 フツーのロングシートの席で駅弁喰う女二人。

 ナンパ野郎もドン引きで声かけないよ。

「やっと人心地ついたよ~」マジか?


「で、今晩、どーすんだ?」と矢継ぎ早の質問。

「そりゃ同乗同泊禁止でしょ?」

「あの人達、下手すりゃ国の要人超える面倒な連中だよ?」

「あー、やっぱ」

「薄!」

「さっきヤーティンに聞いたら『出来るだけガンバレ』だって。

 まーしゃーないかな?」

「更に薄!」

「スーはオバサン達嫌い?」

「嫌いとかじゃなくて!あの騒動に巻き込まれたり、機嫌損ねて張り倒されたり!

 それが怖いのよ!」

「だよねー。怒りの沸点解んないよね」


「あんた相当気に入られてるよ?」

「今までだって色んなガイドさん付いてたのに?」

「何か愛が違うとか気持ち悪い事言ってたよ?」

「私、愛薄いよ?」

「何だろうな。城への愛?歴史への愛?あの人達への愛は会ったばっかだからそうそう無いだろうし」

「そうよ。あんな富裕層を相手にしてた今までのガイドさんは私なんかよか知識もおもてなしパワーも余程上だよ?」

「でもあんたが良いんだって」

「ビギナーズラックか、新人いじりか」

「昔のオバサン達を想い出させるんじゃなかな?」

「昔の叔母さん達?」

「あの人達文化…」「知らんがな」「え?」

「お客さん達がどんな人でも、私のお客さん。

 例え過去に人を殺していても、掴まるまではお客さん。

 そう割り切らなきゃ。

 ガイドは人生カウンセラーじゃありません!」


「あんたスゲーな」

 何か悟った様な顔でスーが言う。

「そんな事より駅弁食べよう。うまうま」「うまうま」

 一瞬私にグラ玉の魂が舞い降りた


******


 やっぱギリギリ、勝った。

「チッキショー!」

「今夜の酒代、あんた持ちだかんね」

 毘姐姐、賭けてたか。


 桑名城二之丸手前の城門前で、ゴージャスリムジンバスをお迎え~。


「今度は黒い城か、渋いねー!」

「はい、この桑名城は先の大垣城に石田三成が迫った後、大坂側との決戦に備えて徳川家康が腹心の部下本多忠勝に命じて築かせた堅城です」

 三之丸西側の堀沿い左手に二層櫓が三基、毅然と並ぶ。その遠くにも。


 一行は楼門を渡り、神戸櫓…五層の神戸城天守の上三層を模した、という伝説のある三層櫓を見上げつつ、右手先にある二之丸へ。


「なんかさっきん所より、落ち着く?」

「アタシは白い壁の方がいいわね」

「司ンはどーだい?」

「名古屋城みたいに巨大で圧倒される白い壁もいいですが、ここの故郷っぽさを感じさせる穏やかな下見板張りもこころが落ち着きます。

 近場に住むなら黒い壁、観光に行くなら白い壁、でしょうか」

「この欲ばり娘め!」うぇゆいお

 こういうどっちが良い論争程相手にしていて阿保らしい話題は無いのでサッサと離脱しましょ。

 一行を本丸南端へ案内。内堀の先に見える天守を紹介。

「あちらが長良川を見下ろす四層の天守です。

 ここ桑名城は天守はじめ本丸の三層櫓、二之丸以下に二層櫓や平櫓が50以上築かれていました。

 今でも本丸、二之丸の豪華な御殿を含め、残された多くの櫓が今尚迎賓館はじめ様々なイベントで活用されています」


「名古屋の御殿も良かったけど、ここも良さげだなー!」

「迎賓館ですので~」

「フツーに泊れるといーんだけどなー!」

「迎賓館ですので~」

「ヨシ!行くぞー!」

 毘姐姐、ノリノリで二之丸御殿へ戻っていく。


 そして左右を三層櫓に挟まれた、廊下橋直結の本丸大手門へ。


******


「「「ほへー」」」

 天守の最上層から眺める揖斐川の絶景、そしてその先南方に見えるは、日本一のテーマパーク、ナガシマスパーランド。鼠の国より大人気だぜ!

 でもちびっ子たちが行きたいーとか言い出したらどーしよ?

 まあプランBも考えてあるんで、空きは見据えてるんだけどね。


 だがチビっ子は天守構造模型の方に夢中だ。何故?!

『この程度の楼閣、我が財閥の財力をもってすれば一朝にて再現可能!』

『何故イケオジオバーズはそれを戸惑うか?1億ドルもあれば朝飯前であろうに!』

『踏ん切りがつかないだけだ』『情けなや!』

 なんだろ?この天守をどう探検するかお話してるのかな?可愛いなあ。


『あのプロジェクトはあいつらの成人式みたいなもんだー!お前らガキンチョは口出すなよ!』

 あれ?持姐姐が何か言った。

『『御意!』』

 素直に応えるちびっ子達。何か芝居がかってるけどなんかのごっこだろ。

 あ。ここも城内ロードトレインあるんだ。ちょっと短距離だけど皆乗るかな?


******


 本丸周囲をゆっくりぐるっと遊具の様なバスから眺める。

「天守の脇に堀に下りる門があるんだな」

「はい。水利の良い城にはああいった水門が多く設けられます」

「いいねえ。万一の脱出とか、渋滞回避で城一直線とかさ」


 さっき通った、本丸入口を塞ぐ馬出の二之丸。

 その東西を固める楼門を過ぎ、本丸西の櫓や門を眺めつつ。

 三之丸外側のやや低めな石垣と、その上の二層櫓群を眺めつつ大名列車は最初の門の前に着いた。

 反対側は武家屋敷の造り半分、現代の町半分という中途半端な景色が、桜並木の向こうに広がっていた。


******


「こっから次の津、んで松阪まではほぼ一直線だよね司ん?」

「はい」

「別路線で競争すんのも運転手さん可哀想でさー」

「がんばりましょー!」

 私はサっとバスを降り、持姐姐の蜘蛛の糸の如きお誘いをブッ千切ってバスを降りたー!


******


※ローカル線の養老鉄道に急行なんてありません。

 しかしJRの名古屋迂回路ルート、快速みえと競争してもJRの方が若干早い程度です。

 養老鉄道は最高速度制限が65kmだそうで。

 あと急行があるこの世界は兎に角、リアルではトイレなしです。

 なお「東武線で見たことある」と司ンが言っていたのは東急からの中古車両です。

 但し実際養老鉄道を走っている7200形は日比谷線直通に使われていないので、7000形辺りと勘違いしているのかも知れません。

 日本の私鉄中古車両。物持ちいいなあ。


※桑名城の復元イメージ。拙作ながら建物デカ。

https://www.pixiv.net/artworks/73074242


※現在では中心部は石垣を四日市の港建設に持ち去られ、曲輪の形も歪に残されています。

 三之丸西岸の石垣だけが旧状を伝えていましたが、近年東海道五十三次にも描かれた七里の渡し付近が公園かされ、水門調整施設が二層櫓風に新築され、城らしさの断片を伝えています。

 なお、文中出てきた神戸櫓は、5層の伊勢神戸城天守を移築し縮小したものです。


 もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ