104.ガイド大垣城 四層は死相?
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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岐阜・加納城ガイドを終え4姉妹一行を見送った私は一路次の合流ポイント、大垣へ!
国鉄対国道21号線の戦いが今!
スーが何か言ってるけど聞こえない!
なんて言ってる間に10分過ぎて大垣駅、ダッシュでタクシー拾って大手門へ!
三之丸大手門外の駐車場着、ほぼ同時!
「チっ!今度は同着だからな!」と毘姐姐。
「はいは~い。それでは皆様、こちらも中山道を抑える対大坂包囲の要、大垣城です!
今は三重しか残っていませんが、昔は5重の堀に囲まれた、これまた水の城でした」
一行を大手門へ、その中の内堀沿いへご案内。
「当初大垣城は三層の天守を構えた城でしたが中山道の要衝で数々の戦いを経験し、17世紀頭には徳川家康の腹心、石川数正の従弟、康通が城を近代化し、17世紀中ごろには4層天守大好き大名の戸田氏鉄が完成させました」
「何だいその4層天守大好き大名ってさ」
「はい。普通天守は五層か三層で、これは四層は死相に通じると忌み嫌われたからと言われています。
しかし戸田一門は尼崎城、大垣城、膳所城と四層の主で、80の天寿を全うしてるので大した人だなあと一部では人気です」
「へぇ~!そんな逆張り大名がいたとはねえ!気に入ったよ!今回他の2城は行のかい?」
「はい、膳所城は琵琶湖旅行で既に尋ねられたと聞きましたので、尼崎城へご案内します!」
「そうかそうか、死相の天守かあ」
リーダーの持姐姐がゴキゲンで広大な内堀に浮かぶ二之丸へ向かう。
「これ台風来たら沈む?石垣が低い…」
お?あのイケメンお兄さんが聞いて来た。
確かに二之丸も本丸も外側の石垣が低めで、ちょっとしたら水があふれそうな不安はあるなあ。でも。
『昔はよく水が溢れましたが、今はこの堀の地下に調節水槽と揖斐川に向かう排水路が整備されていて、洪水はありません。
日本の城の堀は20世紀に地下水路や調整池に改修され、水害防止に役立てられています』
と英語で返した。
あ、美女様が来た。
『どーすんの?そんなオマケ付けたらテーマパークじゃなくて公共施設になっちゃうよ?』
『いや、逆にそれで自治体から金毟れないかな?』
『…アリかもね?日本の城がそうしてるって突き付けたらさ!』
『やったね姐さん予算が増えるよ!』
美男美女が愛を囁き合っている様に見えるねえ~。うん。姉弟なんだけど。ニコニコ。
「さてはオメーわかってんな?」「何が?」
スーがヘンな事を言う。北京語も解らないのに福建の言葉なんて解らないっての。
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かつて御殿があった三之丸は、例によってクラシカルな市庁舎等の洋館になっている。
広大な、湖の様な内堀に、南北並んで浮かぶは北の本丸、南の二之丸。
本丸は外部に出入り口は無く、一行は三層櫓が四隅を守る二之丸へ。
ここの三層櫓、逓減率が少ないノッポな感じね。
でも真っ白で二層目に小さい千鳥破風を付けた感じが瑞々しくて気持ちがいい。
二之丸御殿は天守が見えるとか酒が飲めるとかなかったんでフツーにスルー。
本丸への唯一の進入路、廊下橋を渡ると、こじんまりした本丸。
「何か子供の頃遊んだ公園みたいだなー!」
「こんな豪華な公園無かったよ!」
「おめー心がババアになってんぞ?子供の目で見るんだよ!」
おお、毘姐姐いい事言う!同時に広姐姐にスゲー喧嘩売った!
オーラの炎で国の宝燃やすなよ、と念じつつ。
「こちらがかつて三層だった天守です。
その後四層に改築され、高欄を内部に取り込まれ、今の姿になりました」
「日本の城って頭でっかちな城が結構あるけど、その…ベランダを取り込んでこうなった、って事だね?」持姐姐が聞く。
「城、というより天守なのですが、その通りです」
「ほーん。有名な姫路城とかも一番上がデカイなーって思ってたけど、そうだったんだ」
「前話さなかったっけ?」広姐姐が突っ込む。
「空気読めよ」と持姐姐。え?私に説明を振ったって事?
ありがとうございます、そう心の中でお礼を申し上げたら、なんだかコッチ向いて微笑んだ。
心が読めるのか?
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「この大垣城は、大坂の乱で指揮を執った石田三成がかつてここの占拠を企み、徳川への挑戦を試みました。
しかし賛同者が無く、未然に終わった場でした」
とフツーに説明もしました。
時サンの言う現実の歴史であった『関ケ原の合戦』って大戦が無かったんだよね。
「そのミツナリって男も、ファンキーだね」と持姐姐。
この姉妹、逆張り大好き?
「どーあっても豊臣はオシマイ、そんな中あえて負け戦を挑んだ。どんな男だったんだろねえ」
「相当実直で理路整然とした男。正義の人という評価もあります」
「なんで日本を裏切ったのかねえ」
「彼は日本を裏切ったのではなく、豊臣家、秀吉と淀君に忠義を尽くしたのでしょう」
「バカな男だね。でも案外いい男だったのかも」
持姐姐。どんな人生があったのか、どんな青春だったのか。
全力で知りたくない!
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狭い城内にひしめく二層櫓に三層櫓。
一度二之丸に戻って三層櫓に登ると
「おー!これで柳に船がありゃ、大陸の景色といい勝負かもねえ!」
『彩に欠けるでしょ毘姐姐?』
『日本にいたらこの青い空と水、白い建物がいいんだよ!おまけに今は桜まで咲いてるんだぜ?』
『まあ、毘姐姐ったら何とも詩的な事!雨が降りそうね?』
『いいね!雨が降ったらよっぽど風情ってもんだろ?』
『どうしたの毘姐姐?何か悪い物食べた?』
『いい物食べ過ぎたんだよ。アレ、とか』
なんか母国語で会話してた4姉妹の視線がこっち向いた。
何か凄い笑顔だ。超怖い。
「司ンは光成好き?」
「全部が全部好きではありません、でも死んでほしくなかった人です」
「それは好きって事じゃない?」
「豊臣に恩があるにしても…淀君に肩入れし過ぎです。
彼女には不倫してたって噂がありますし」
「「「キャー!!!」」」
しまった変な方向に火をつけた!
「こりゃ~、その不倫話を聞かねー事にゃあ、今夜は返せんなあ」
「え~、それは次のお城で、でも」
嘘言った。次は津城。そういう浮ついた話の欠片もありゃしない政治力学のガッカリキャッスルだ!
「よーし!今晩は司ン交えて大宴会だぜ!」
「宿泊は別となっています」
「今夜は城泊だろ?キッチリガイドして頂くぜ!」
あー、とうとうこの時が来たかな?
こーゆー時はヤーティンさんに何ていうんだったっけ?
チェックメイトキングツー、だったかな?
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※広大な堀に浮かぶ大垣城。その姿に憧れてその昔描いた拙作が下記です。
https://www.pixiv.net/artworks/74085038
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。