101.ガイド名古屋城2 金鯱鑑定団
※本作は空想の歴史を書いたものなので、史実や実在の自称・人物・史跡とは全く色々微妙に異なりますのでゴメンナサイ。
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本丸御殿見学を無事?済ませ、向かうは大小天守。
「この大天守は当時としては日本最大級、当時すでに焼けてなくなっていた東大寺大仏殿の高さを少し上回る規模、50m弱の巨大建築でした」
「イエー!」なんか嬉しそうだな、アスリートみたいな…毘姐姐さんか。
「1、2階が同じ大きさで、3階から順序良く小さくなるバランスのよいデザインで、柱が上下2階分を互いに入違わせる、地震に強い構造になっていました。
完成後400年経った明治の濃尾大地震にも耐えきりました。」
「イーゾー!」あれだ、強い!とかデカイ!とかが大好きな人なんだ、きっと。
「この巨大天守の技術が歓声したものが、50mクラスの大坂城と江戸城の天守です」
「ヒューヒュー!」
このコンサートみたいなノリ、ガイドの合の手なのかな?
何だかやり辛えー。
そして一行は大天守昇るぞツアーへ。
小さい子供が途中でバテない様にフォローしなければ…
逆にコッチが先にバテそうだ。
途中、広姐姐が柱の継ぎ目なんかに注目しまくってた。
最上階、そこには金の鯱があった。
さっき入る時、ちゃんと屋根の上にもあったからこれはレプリカだろう。
「ネーネーツカサン」
チビっ子二人が呼ぶのは…私?
「コレナニ~?」
『これはシャチ、建物が火事になった時、この口から水を吐き出すという、架空の動物です。
お寺のシビと同じ、火事で家が焼けないためのおまじないですよ』
「ホンモノ~?」
『これは模型。本物は博物館で保存していて、これと、この屋根の上のは本当の金を使わないレプリカです』
「ケチー」「ビンボー」こんガキャ。
『昔からお城の金のシャチは泥棒に襲われました。だから今では大切に金庫で守られているのよ』
「ドロボーは?」
『頑張って、ニセモノを掴んで、掴まって牢屋へgo!』
「「イエー!!」」あ、受けた。
「これどん位金が使われたのかねえ?」
今度は広姐姐だ。
「左右合わせて18金で90キロ程度です。大体4億?」
「他の城も?」
「名古屋城と同じ、木に金の板を張る方法は江戸城と大坂城くらいですね。他は金箔です」
「あなたどう思う?」
「国や藩の財政から見たら微々たるものですが、文化とか城下の人々の誇りとみれば金額以上に価値はあるのかな、と思います」
「政治家みたいな事言うじゃない?」
「色々な城を見ていると、そんな目線になってしまいますね」
「ま、ケチ臭い話じゃないからいいわ」
「ココは泊れナイカナ?」次はイケメン男だわ!
『天守は巨大なシンボル塔です。建物内にトイレも風呂もありません。
宿泊するには改造が必要ですし、窓の採光も不十分です。
私は心地よい御殿に泊り、天守は見上げるのがよいと思います。
しかしこの後、明日の夜は泊れる天守にご案内します』
「ホントー?ウレシーネ!」イケメンがほほ笑んだ!キャー!
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下りはチビっ子を破風の間=千鳥破風の内側から外を狙い撃ちする小部屋や4層目の出窓から堀を狙える様案内して、喜んでもらえた。
二人を追いかける冴えない老人もドーシャドーシャ(多謝)とお礼を言って下さった。
あの老人…まさか。持姐姐の旦那さんとかじゃないよね?
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仕上げは本丸塁上ツアー。
小天守南から多門櫓に3つの隅櫓、二つの櫓門をグルーって廻るの。
今にしてみれば大坂城本丸とかこれやってみたいよねー。
あ…毘姐姐とチビっ子二人がダッシュした。
他の人にぶつかんない様に心の中で祈る…だけにしとこ。
辰巳櫓から眺める一ノ門、御殿、天守、周囲の多門櫓に三階櫓。
これは一つの完成されたシステムの様だー。
縄張した徳川家康って、相当キッチリした人だったんだろなー。
最後に余り写真に写らない丑寅櫓の比翼出窓を堪能?して本丸御殿来た、不明門脇で多聞を出る。
真っ先にドダダダダと走破したであろう毘姐姐は例によってガッハッハと笑いながらビールの空き缶を回りに築いていた。
さりげなくゴミ袋に仕舞って行く。
せめてこの程度はしないと城が汚れる。
不明門を出ると、本丸の深い内堀、そして壮大な天守台が待っていた。
大名列車でシュポポと榎多聞の桝形を出て、満開の桜の下を西の丸、本丸馬出、二之丸と巨大な石垣に堀、長大な多門櫓の壮観を眺め、二之丸大手に戻った。
大名列車内は…毘姐姐が持ち込んだビールで既に宴会状態。どんだけ買ったんだ?
成程、空き缶を持ってった時売店のお姉さんが妙にご機嫌だった訳だ。
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『それでは、バスが夜の名古屋城を見下ろせるホテルまで皆様を案内いたしま~す』
満面の笑顔で徐姉妹ご一行を見届ける私!よくやった!
「司~ン、あんたも来なさい~!叔母さん達の闇に~!ブゲ」
何か頭鷲掴みにされてバスの奥にブン投げられた様な気がしないでもないけど気の所為だね!
「ガイドちゃんも一緒に来ないの?」
持姐姐が「こっち来いやぁ~」ってオーラを発しつつ私を見る。
「ツカサーン!」「ツカサーン!」後ろからチビっ子の声もする。
「皆様を移動手段まで無事にご案内するのが私の使命です。
どうぞホテルで美しい名古屋城の夜景をお楽しみ下さい!」
バスの扉がシャっと閉まり、バスは二之丸大手門を去っていく。
今夜のホテルは、ご一行定宿の〇KRホテルだ…そうだ。
バスが見えなくなるまで手を振る、笑顔で。
『そうしなさいよ!』と厳命したヤーティンさんのスゴい顔が思い浮かぶ。
あれ?あの人凄い美人だった筈だけど仁王様みたいな顔しか思い出せないや。
クールビューティーだった筈のスーも何だか地獄の餓鬼に喰い千切られる亡者みたいな顔しか思い浮かばない。
…。
いやあ!しっかり仕事した1日だった!
ではこれからビジネスホテルの地下温泉とかでのんびりしましょうかね!
ビバノンノン!
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「お疲れ様でーす!」「ガンバタネー!」「たねー!」「ナイス厄介事回避!」
何故かビジネスホテルにお延さん達がいた。
阿修羅の如きお客さん達と別れて、イキナリ菩薩様達が蓮に乗ってやってきた~。
「あれ?時サンは?」
「笑い過ぎて部屋で死んでます」
「そのまま死んでなさいって。みんなご飯は?」
「これからですよ?」
「じゃあ味噌煮込みうどんでも食べに行く?」
「いいですねー!」「「イイネー!」」「仕返しだな?」
で、栄でオススメの店に行ったら
「よう!」
時サンがいた。こういう人だよチクショー!
「もうちょっと高いトコ狙っても良かったんだぞ?」
「経費出ませんので」
翌朝。結局この夜は何かスーパー愚痴フェスティバルだったとお延さんから頭を撫でられつつ聞いた。
全っ然、覚えてませんでした。
「人間、どこかで頭や心に負担がかかり過ぎない様に、自然に忘れたり見えなくなったりするものなのですよ」
ありがとうお延さん。このまま極楽浄土に行きそうだよ。
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『今!名古屋では白松黒爽水が大人気!悪天候で疲れ果てた飛行機の乗客達を一瞬で癒したあの話題の飲料がスタジオに!』
極楽浄土から混濁の現生に帰ってまいりましたテレビの特集で。
あれ、昨日の話だよね?
隣で時サンがバカみたいに笑ってるし。
「時サン?まさかあんたあのオバサン達とお知り合い?」
『あの時、滅入ってた子供に、とても優しいあのお姉さまたちがこれを下さったんです!』
「はーっはっはっは!さあどうかねー?!ぶはっはっは!やり方変わんねー!」
絶対知り合いか何かだろコレ。
「その時空港に現れた四人の美熟女!イラストで再現!」
その様子を眺めつつ、慈母の様な顔で見遣るお延さん。
お延さん?モシモーシ?
…そうか、この人も400歳以上だもんなあ。どういう絡繰りか知らんけど。
あのオバサン達の過去知ってても不思議無いし。
ま、いいや。
私は私がしなきゃいけない事、出来る事、そんでしたい事を思いっきりやりましょ今日も!
「次は岐阜、行ってきまーす!」
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※金の鯱。かつては日本各地にあった織豊系城郭のシンボルですが、現実の歴史では火災に風雨に耐え近代まで残ったのは名古屋城天守のものが唯一。
名古屋城天守の鯱が独特なのは、遠くから見た存在感を示すための、デカい頭。
他の天守の鯱はもっとスッキリしていたみたいなので、あの元祖ゆるキャラっぽい見た目はかなりオリジナリティあります。
※名古屋城を見渡せるホテルと言えば、国家公務員共済組合…のホテル、KKRホテル名古屋。
まだ一度も泊まったことがありません。折角泊っても反対側の部屋だった日にゃあ…
もし楽しんで頂けたら、また読者様ご自身の旅の思い出などお聞かせいただけたら今後の創作の参考とさせて頂きますのでお気軽に感想をお書き下さい。