3話 初めての人と街
俺はしばらく草原を歩き続けていた。
本当になんもないな。
魔物も出て来ないし、どうしたもんかな。
そういえば探知のスキルを使ってみるか。
どのくらいの距離まで探知できるのか、何を探知できるのか。
色々確認してみたいしな。
とは言ってもスキルとかってどうやって使うんだ?
アニメとかだと大体イメージする感じだよな。
とりあえずやってみるか。
「探知!」
自分の周りから波動のようなものが出てる感じがする。
ッ―――!
何かが引っかかった感じがする。
ここからおよそ50m程離れた辺りに複数の反応がある。
反応が魔物なのか人間なのかそれ以外のなにかなのか。
そこまで詳しいことは分からないみたいだ。
反応があったとこを目指してみるか。
俺は複数の反応を感知した場所を目指し進んだ。
しばらく進むと遠くに何かが見えてきた。
あれは・・・荷馬車?
見えた荷馬車の周りにはイノシシらしき魔物が数匹見える。
あぁ、あれも恒例の異世界あるあるだな。
まあ魔物を倒せば強くなれるし、荷馬車ってことは街へ行けるだろうから一石二鳥だな。
俺は急ぎ荷馬車の元へ向かった。
荷馬車の元へ着くと、3体のイノシシに囲まれていた。
3体か。同じ魔物を倒しても能力は3体分上がるのか?
それを試すいい機会でもあるな。
俺はイノシシに向かい走り出すと同時に刀を抜いた。
俊敏が上がったからか先程より少し体が軽く感じる。
荷馬車に夢中になっているイノシシの頭目掛け刀を振り下ろした。
バシュッ!
1体目のイノシシの首が落ちる。
結構切れ味良いなこの刀。
1体やられたことによって他の2体が俺に意識を向けた。
流石に気付くよな。
俺はイノシシに向け刀を構えた。
2体のイノシシは同時にこちらへ突進してくる。
蜂程ではないが、イノシシも速いな。
シュッ!シュッ!
突進してくる2体の足に向かい刀を振った。
「プギィ!」
ザザーッ!
足を切られたイノシシは突進の勢いをそのまま地面に転がった。
蜂と違って陸上生物だからな、やっぱ足を狙う方が効率がいいよな。
俺は地面に転がったイノシシの頭部に刀を刺した。
グサッ!
【スキル習得:嗅覚強化・跳躍力強化】
【能力向上:体力x3・力x3・俊敏x3】
x3ってことは同一の敵でも倒せばその分能力は上がるってことか。
スキルは同じだから何体倒そうと得るものは変わらなそうだな。
「あ、あの、ありがとうございました。助かりました。」
荷馬車から男が降りてきた。
「たまたま通りがかっただけだから、気にしないでくれ。」
「えーっとあなたは冒険者なのですか?」
冒険者?冒険者システムがあるのか。ホント異世界だな。
「いや俺は冒険者じゃない。ただの旅人って感じかな。
街か村がないか探している途中だったんだ。この近くにあったりするか?」
「ええ、街ならこの先にアルメリオという街があります。
もしよろしければ街まで乗っていきませんか?」
「いいのか?」
「もちろんです!助けていただいたご恩がございますから。」
「それは助かる。乗せてもらうついでと言ってはなんだが、
このイノシシも持っていってもいいか?」
「グラスドボアをですか?」
イノシシの名前グラスドボアっていうのか。
「ああ、街で素材として売れるかと思ってな。なにかおかしかったか?」
「そういうことでしたか。冒険者では無いのに素材を持ち帰る方は珍しいので。」
この世界では魔物の素材は冒険者しか持ち帰らないのか。
でもやはり素材という概念はあるみたいだな。
「それでこのグラスドボアも乗せてもいいか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「助かる。そういえばあんたは商人なのか?」
「はい、各地で商売をしている旅商人です。」
「そうか、旅商人か。
じゃあ街まで乗せてもらうついでだ。それまで俺はこの荷馬車の護衛をするとしよう。」
「それはとてもありがたいのですが、
先程も助けていただいた上に護衛までしていただくのは申し訳ないですし。」
「どうせ魔物に襲われれば俺も狙われることになる。ついでだ、気にしないでくれ。」
「確かにそうですね。では街に着き次第、護衛料を払わせてください。」
「別に気にしなくていいんだけどな。それであんたの気が収まるのならそれでいいさ。」
俺と商人の男はボア3体を荷馬車に積み、街へと向かった。
街への道中2体のグラスドボアを退治し、計5体のボアを乗せた荷馬車は街へと到着した。
「ここが、アルメリオです。」
街の入口に着くと商人が俺に向かって言った。
「なあ、送ってもらったついでに一つお願いしたいのだが、
このグラスドボアを買い取ってくれる場所は分かるか?」
街に着いたはいいが、この5体を運びながら探すのは流石にしんどいからな。
「魔物素材の買い取りでしたら、冒険者ギルドで出来ますよ。」
「もしよかったらその冒険者ギルドまで乗せてってもらえたりするか?」
「ええ、もちろん。それくらいお安い御用ですよ。」
荷馬車を助けて正解だったな。
街を少し進むと西洋風の酒場のような場所に着いた。
「ここが冒険者ギルドです。」
「ここがギルドか。助かったありがとう。」
「いえいえ。あとこれ護衛の代金です。」
商人はそう言うと銀貨を7枚差し出した。
「悪いな。ここまで運んでもらったのにお金までもらってしまって。」
「気にしないで下さい。これは助けてもらったお礼でもありますから。
そういえばあなたのお名前を伺っても良いでしょうか?」
「ああ、名乗ってなかったな。俺はユーリだ。」
「ユーリさん、しばらくはこの街に滞在しておりますので、
何かあればいつでもお声掛け下さい。」
商人はそういうとボアを下ろすのを手伝い、荷馬車を走らせていった。
さてとりあえずのイノシシ達を処理しないとな。
俺は一度イノシシをギルド前に置き、ギルドへと入った。
ギルドの中は外観通り西洋の酒場風な感じだった。
俺は受付らしき所へ向かった。
「すまない。グラスドボアを5体買い取って欲しいのだが。」
「グラスドボアですね。では冒険証を確認させていただいてもよろしいでしょうか。」
「冒険証?冒険者じゃないんだが。」
「冒険者ではないのですか?そうですか。少々お待ちください。」
そう言うと受付嬢は奥へと入っていった。
そういえば商人も驚いてたっけか。
そんなに珍しいことなのか。
「お待たせ致しました。グラスドボアでしたね。
素材の確認をさせていただいてもよろしいでしょうか。」
「ああ、ギルドの前に置いてるんだ。確認してもらえるか?」
「かしこまりました。」
受付嬢はカウンターから出て外へ向かっていった。
一応買い取ってくれるみたいで良かった。
受付嬢が外から戻ってきたみたいだ。
「グラスドボア5体確認しました。
素材ではなく魔物本体ですので、解体料が別途掛かるため解体料を差し引いて銀貨3枚となりますがよろしいでしょうか。」
この世界の相場が分からんがまあそれは追々でいいか。
「それで構わない。あと素材だがこれも買取は出来るか?」
俺は帯から蜂の羽根と針を出した。
「グラスビーの羽根と針ですね。これでしたら銅貨5枚ですがよろしいでしょうか。」
「大丈夫だ。」
「ではこちらが銀貨3枚と銅貨5枚でございます。」
「ああ、ありがとう。
それと一つ確認したいのだが、冒険者っていうのはすぐになれるものなのか?」
この先この世界の知識を得るには冒険者は都合がいい。
すぐになれるのならなった方がいいだろうな。
「冒険者の登録ですか?登録料として銀貨1枚が必要になりますが、
登録は可能でございます。」
「じゃあ冒険者登録をしてもらってもいいか?」
「かしこまりました。ではお名前を教えていただいてもよろしいでしょうか。」
名前って多分フルネームだよな。
異世界ならやっぱりファーストネームからって感じか?
「ユーリ・キサラギだ。」
「ユーリ・キサラギ様ですね。ではこちらに血判を押していただけますか。」
血判?まさか血を使うとは思わなかったな。
紙と一緒に出されたナイフで指を切り血判を押した。
「これで登録完了でございます。こちらの冒険証は紛失しないようお願い致します。」
「もし無くしてしまったらどうすればいい?」
「その場合再発行には銀貨3枚が必要となります。」
再発行にも金がかかるのか。
「ユーリ様の冒険ランクは最低ランクのEランクになります。
依頼は同ランク以下のものまでしかお受け出来ませんのであしからず。」
「ああ、わかった。」
これで俺も冒険者か。
とりあえず今日は宿を見つけて明日から依頼とかやってくか。
習得済スキル
探知
毒付与
嗅覚強化
跳躍力強化