悪ガキVS賽銭泥棒―物欲任せの夏祭り包囲網―
諏訪中学校に通う中学二年生の晋太郎は、放課後に友達数人と地元の神社をたまり場にしていた。
「登紀子さ――ん!」
「おうみんな、いらっしゃーい」
そこに勤める諏訪中学校のOGであり元ヤンキーの巫女さん・登紀子。柔道三段で男勝りながら気さくな人柄でみんなに慕われている。
「今年の夏祭り、登紀子さんはまた店やるんスか?」
「おう、今年はくじ引き屋をやろうって話になってるよ」
この地区では夏になると、神社が中心となって祭りが行われる。
登紀子は毎年、祭りの夜店の統括管理を任されており、さらに神社からも夜店をいくつか出店している。
夏祭りといえば今から八年前、当時中学生だった登紀子が夏祭りに現れた賽銭泥棒を捕まえたという武勇伝は、未だに語り草だ。
そこで晋太郎はふと、こんなことを言い出した――
「もし俺達が賽銭泥棒を捕まえたら、何かご褒美をくれますか?」
「そうだなぁー、なら夜店の景品の中から好きなものを一つプレゼントするってどうだ?」
――と、登紀子は冗談のつもりで言ってしまった。
「マジで!? やったぜ!!」
「俺、SWITCH欲しかったんだ!」
「僕は遊〇王カード!」
射的に、輪投げに、くじ引きと、毎年高額商品を狙うも、痛い目を見ていた晋太郎達は、それを真に受けて大喜びした。
とは言え、大勢のお客が集まる夏祭りの夜にわざわざお賽銭を狙おうとする無茶な人は、そうそう現れはしないと登紀子は踏んでいた。
そして祭り当日、晋太郎達は祭りを楽しみつつも、パトロール隊よろしく境内に三つある賽銭箱の巡回警備を開始する。
「なあ晋太郎、俺思ったんだけど、賽銭泥棒が現れるとしたら、もっと人気の少ない日を狙うんじゃないのか?」
晋太郎の友達の一人・拓也がふと疑問を投げかける。
「そうかもしれねえけど、くじ引きで一等に当たる可能性の方が低いかもしれ……」
何を思ったのか、晋太郎は静かに拓也の腕をつかんで物陰に隠れる。
「おおい、どうした――」
「静かに!」
三つある中で一番人気の少ない社に、賽銭箱をこじ開ける怪しい男が……。それを遠くから観察する晋太郎。
距離にして約五メートル……だがはっきり聞こえた。男が右手でつかみ取り、指の間からチャリンチャリンとこぼれ落ちる硬貨の音が。
「おい! それどうするつもりだ!?」
「!?」
晋太郎の声に男は数秒硬直し、そして全速力で逃げ出した。
晋太郎達の追跡劇が始まった
夏祭りを舞台にしたドタバタ劇みたいなイメージで
思いつきました
なんだかタイトルは面白そうのコーナーに
出すネタの中で神社や巫女さんが出てくるものが多い気がした