第32話 異世界召喚RTA(本気) 前編
『外道で幼女の異世界召喚』はっじまっるっよぉーっ!
はーい、配信者のKでーす!
いつも私のチャンネルを見てくれてる常連さんはありがとう! 初めての人は、まずチャンネル登録してから続きを見やがれ!
はいはい、何々、いきなり質問? ようやくWDOの軟禁状態から脱したのかって? ご心配ありがとう! あの程度で私を止められると思うなよ。そういうことだよ。
前回と前々回の放送を見ていなかった人のために説明するけど、この若干十歳の美少女配信者Kは、悪辣非道なWDOによって自宅軟禁の状態にされていたのでした。権力を笠に着た豚共め!
詳しくはアーカイブ配信で見てくださいね。絶対後で見ろよ。私との約束だよ!
さて今回はですね。
もうRTAをライブ配信していた時から、ずっとずーっとうるさい人がいたんです。それはもうオウムかストーカーかかってくらい連呼して来ました。中には一発屋もいましたけどね。
まったく困っちゃいますね。どんな内容を連呼していたのかと言うと。
私の本気RTAを見たいってことです。
いやね。たしかに反省しましたよ。
異世界召喚RTA配信。この企画は正直、失敗でした。少なくとも一発ネタに留めるべきで、何度もやるようなものではありませんでした。だから次のネタを考えるには、WDOの強制軟禁は良いクールタイムになったと言えるでしょう。
でもね、RTA配信をやめる前に、ご要望にお応えしておこうかと思い至りました。
私の全力のRTA、時間という概念との壮絶なる戦いを求める要望にね。
覚悟しろよお前ら。望んだのはお前らだからな。
という訳で、今回は視聴者からの要望も聞きませんし、サービス優先で何かをすることもありません。でも投げ銭はしてね。私との約束だよ! つーか、しろ。
まずはいつものように、異世界召喚を行おうとしている術式を探します。
あ、タイマーは現地の地面を踏んだ時に開始、元の世界の地面を踏んだ時に停止です。これは今までのレギュレーションと変わりありません。
ただし今回は、それ以外は何でも有りで行きます。百パーセントも考えません。あれって何をしたら百パーセントになるのか分からなかったし。
見つかるかな。んーっと、えーっと。
お、いました。なかなかの魔力、これは神ですね。このエネルギー量、前回の真の魔王ルシフェル笑よりも上かも知れません。前回とは違って、単独でも次元の壁をぶち抜いて異世界召喚可能なほどの力を有しています。
こいつに召喚されたらチート能力貰えるでしょう。本来の異世界召喚なら当たりも当たり、大当たりです。
この神に召喚して貰えたら、異世界で無双を楽しめることでしょう。
それではこの術式を乗っ取って、私が召喚されるように仕向けます。
ああ、まずは神の領域に招待してくれるようですね。
神の領域、ここのタイマーどうしよ。ま、あくまでタイマー開始は現地の地面を踏んだ時ってことで、神の領域ではタイマー開始としません。事情を聞く時間もタイマーに含めるべきって意見もあるでしょうけど、まあレギュレーションの説明だとでも思ってください。
異世界召喚ー。
おお、美人の女神様ですね。うちのロリコン豚共じゃなかったら、一気に盛り上がりそうな女性です。
「突然のことで驚かれたでしょう。私はミネルヴァ。あなた召喚した女神です」
「全然驚いてないから大丈夫」
「あれ? たしか、世界を救う運命を持つ少年を選んだ、はず、なのですが」
「運命概念を持つ世界なのね。まあ大丈夫。そいつよりも早く終わらせるから」
運命概念を簡単に説明すると、大まかな筋書きが決まっている世界です。こいつは勇者になって世界を救う、こいつは宝くじを当てる、こいつは事故に遭って死ぬ、みたいなのが最初から決まっているんですね。
運命概念はその領域を支配している神が、管理しやすいように用いることが多いです。
現代では人権侵害派と神権尊重派がよく喧嘩する論点の一つなので、聞いたことがある人も多いでしょう。生まれですべてが決まってしまうのは良いことなのかどうか。良い運命を貰った人は絶対に手放したくないでしょうから、永遠に分かり合えないでしょうね。
「いえ、やはりおかしい。あなたのような小さな子供を危険に晒す訳には参りません」
「その良い人ムーブはもうやったから、二番煎じは止めてくれる?」
「に、二番煎じ?」
「だいたいさ、困ったから召喚なんて使ったんでしょ? スーパーレアの勇者を召喚しようとして、ウルトアレアの私を引き当てたよ。虹色の演出はなかったけど」
「ウルトアレアとは?」
「はー、もう察しが悪いな。良いから、助けてやるから、困ってる内容さっさと話してみ」
女神ミネルヴァは私の勢いに押されたのか、説明を口にしてくれました。
女神ミネルヴァによれば、彼女の管理する世界では魔王が復活しようとしており、魔王が復活すれば女神でさえも止められず世界が滅びてしまうというものです。
デュラリオン王国よりも遙かに危険度が低いです。
「それだけ?」
「ええ、ですから、魔王の復活を阻止できる聖なる力を持つ勇者でなければならないのです」
「まじかぁ、困ったな」
「いいえ、安心してください。手違いで召喚してしまったあなたは、すぐに元の世界へ送り返します」
「そうじゃなくてさ。それだけだと、まじで配信が数分で終わっちゃうんだよね。困るから、他に何かないの?」
「配信? 他?」
だって今の話だと戦う必要もなく、現地に行って再封印で終わりになりかねませんよ。
「ま、いっか。とりあえず危険を取り除けばクリアね」
「えっと、先ほどから何を言っているのでしょうか?」
「じゃあ行ってくるね」
「行く? どちらへ?」
「あんたが神権を持ってる世界に決まってるじゃん。そのために召喚したんでしょ」
「お、お待ちください! あなたは聖なる力を持つ勇者ではありませんし、まだ女神の祝福も授けては………!」
「要らん」
女神ミネルヴァは私にチート能力を授けてくれようとしています。また聖なる力なる能力を持っていないことを危惧しているようです。
けれど視聴者様たちならとっくにご存知でしょう。私にはどちらも必要ありません。
つーかね、私よりも位階の低い女神が、私に何かを授けるなんて舐めてるのかと。
私の本気を見せてやるよ。




