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第26話 閑話 Kへ

 件名、明日香です。

 送信者、浄瑠璃寺明日香。




 蛍、お疲れ様。明日香です。


 もう聞いているだろうけれど、私は元の世界と時代へ戻らず、このまま現代で生きていく事にしました。


 兄さんは、最後まで迷って、記憶を消して元の世界と時代へ戻る事を選択したようです。だから兄さんの犯した罪が無くなる訳ではないですが、私は兄さんの分まで背負って生きていこうと思っています。


 今は異世界召喚経験者が受ける現代知識とかを教えてくれる学校に通っています。


 私の知らない事ばかり、いえ、私の居た頃では考えられない未来の出来事に毎日驚きを隠せません。スマホもSFみたいになってて、このメールもちゃんと遅れているのか心配です。


 それから、私はWDOを目指します。


 そして兄さんと私のように、異世界に連れて来られて苦しんでる人を助けたい。


 こう思えるようになれたのも蛍のお陰です。物理的にお礼をするって約束、忘れていません。


 いつでも言ってください。




 件名、無題。

 送信者、ミカエル。




 あああ。


 おお、しゃべると文字が出た。このキーボードとやらを押すのは難しいからな。これならペンよりも早いくらいだぞ。


 いや、待て、全部出てしまった。これどうやって消すのだ?


 誰がお漏らし王子だ!


 ええい、もういい!


 蛍、僕だ。君が魔王と真の魔王を倒してくれたお陰で、僕の国からは魔物が居なくなった。


 君こそ真の勇者だ。


 僕はそんな君に負けないくらい、立派な王になって見せる。


 そのために毎日勉強しているんだ。国連憲章というのはお父様よりも早く覚えたし、色んな人が僕の名前を知ってくれているみたいで頻繁に話し掛けられる。それだけ期待されてるって事だろう。


 そうだ! Kを驚かせるつもりだったが、教えておく。僕は留学を薦められたんだ。Kの国で、色んな勉強をしてみないかって言ってた。僕は受けるつもりだ。


 その時はまた会おう!




 件名、世話になったな。

 送信者、デルギーン。




 デルギーンだ。


 手紙なんて生まれて初めて書く。変でも許せ。


 結局話す機会はなかったが、俺は愛した女を魔王軍に殺されて失った。だから正直に言うと、俺はお前を自分の復讐に利用しようとしてた。実際お前はそれをやってくれたが、お前がやったのはそれ以上だ。すごいよ、お前は。


 お前が光の中に消えた後、残ったWDOとか言う連中が色々やってくれた。


 俺には連中が何をやってるのか、サッパリ分からなかった。


 だが、そうしたら、アイツが戻って来たんだ。生きた姿で。また、会えた。


 アイツは何とか被害者で、だから助ける許可が下りたとか言っていた。小難しい言葉ばかり並べられてまったく分からん。とにかく俺は、アイツがシスターだったから神が助けてくれたんだろうと思うことにしたよ。


 お前は本当に神に選ばれた勇者だったんだな。


 俺は神なんか信じちゃ居なかったし、見返りを求めない善人の伝説の勇者なんか馬鹿にしてたが、考えを改めた。


 お前には、本当に感謝してもしきれない。


 そういや小耳に挟んだが、姉と不仲らしいな? 俺にはお前の気持ちが分かるが、もっと素直に甘えておけ。大切な奴はいつ居なくなるか分からない。その時、最後の思い出が喧嘩だったら、一生後悔し続ける事になる。


 じゃあな、元気でやれよ。




 みんな、私のこと美化しすぎじゃね?


 アスこと明日香は、まあかなり現代に近い感覚だけど、それでも救ってくれたとか思ってるみたいだし。


 ミカエルくん、私を真の勇者とか言っちゃってるけど、そのお漏らし王子広めたのって他ならない私だから。


 デルギーンなんて、滅私奉公の勇者? いやいや、私って滅私奉公とは対局にいる存在だよ。


 まあ、いいか。


 私が配信で救った人たちって、結構こういう風に感謝してくれるんだよね。今でも年賀状やお歳暮送ってくれる人もいるしね。


 アスにはお礼を忘れるなって返信しておきましょう。これ大切です。絶対にコスプレ撮影会はします。


 ミカエルくんは、まあてきとーに頑張れで良いですね。年齢差的に同じ学校に通うことはないでしょう。


 デルギーンも意味不明なアドバイスをしてます。私と光姉さんが不仲なんて有り得ません。むしろ私と光姉さんほど仲の良い姉妹ってなかなか居ないですよ。


 まあ、三人ともそれなりに新しい生活に前向きのようですね。それは良い事です。


「蛍、笑ってるみたいだけど、何か楽しいメッセージでも貰った?」

「光姉さんのやらかしのせいで、困ってるところ」

「そう。それは良かったね」


 良かったとは一体。


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