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第20話 最強の敵WDO執行官

「G弾、発射!」


 G弾、それは周囲のゴ○ブリを集めて、敵に向けて放つ弾丸術式です。ゴ○ブリってどこの世界でもいるから有用ですね?


「きゃあああぁぁぁーーー!」


 見たか! 私の百八つある得意術式の中でも、最凶と名高い術式を!


空裂スペースエクスプロージョン! 時壊タイムディスクトラクション! 次元震ディメンションクエイク!」


 空間断裂術式、時間破壊術式、次元崩壊術式を、私が飛ばした黒い虫に対して連射か。


 こいつ、本当に私と同じ血の通った人間かよ。まともな方法じゃこいつを止められねぇ。


「ハァハァ………ちょっと、蛍、何? 今の、何?」

「光姉さんに見せたくて、一生懸命作った術式」

「二度と使わないで!」

「妹の愛が受け取れないのか!」

「嫌がらせでしょ!?」

「うん」


 私の姉がそんな事言っていますが、ねぇ?


 視聴者様からこんなにアンコールを頂いていますから、ねぇ?


 投げ銭まで貰っちゃったら、ねぇ?


「見るが良い! これが私の全能力を結集した、最終G弾!」

「やらせない!」


 くそっ! 組み付いて直接術式を妨害してきやがった! いくら私の姉が幼児体型とは言え、本物の幼女の私じゃ対抗出来ねぇ!


「汚いぞ! 相手の弱点を突くなんて! 正々堂々戦え!」

「それ蛍が言う!?」


 いや巫山戯ている場合ではないですね。この形は最悪です。本当に抵抗が出来ません。


 胸揉み攻撃? いや、この姉に胸があるように見えます? 洗濯板に見立ててタワシで擦った方が幾分か使えるような。


「いたたたっ!」


 このまま戦うのは不利なので、ちょっと戦法を切り替えましょう。


「まあ光姉さん、落ち着いて聞いてよ」

「何?」

「ちょっと下見てみて」


 そこで素直に見ちゃうのが私の姉の駄目なところなんだよなぁ。まあ今回は助かってるけど。


「この世界、めっちゃ大変な事になってるでしょ?」

「そうね。調べてみたんだけど、WDO発足前から何人もの人を世界中から召喚してたみたいで、今被害者を洗い出してるところ」

「まずあそこに立ってる二人が被害者で、平成の頃の人間みたい」

「そんなに昔から………。じゃあ、帰る方法もなく、ずっとここに取り残されてたって事?」

「うん、そうなんだよ。まあさ、私も勝手やって悪かったけど、まずあの人ら救うのが先じゃね?」


 悩んでます悩んでます。


 いや、本当はもう姉の中で答えは出てるのでしょう。何せ真面目ですからね。WDOの基本理念は犯罪者を取り締まる事ではなく、被害者を救う事です。


 優先するのはグレーゾーンギリギリでチャンネルを配信してる私じゃなくて、異世界召喚の被害に合って苦しんでいる人となります。


 ほーら、拘束を解いたぁ!


「そうだね」

「とりあえず、この世界の神権を持ってる奴が人間を皆殺しにしようとしてるみたいなんだよね。そいつを止めたいから、光姉さんも手伝ってよ」

「分かった。確かに蛍の言う通り、その人を止めないといけないようね」


 勝った! 首を洗って待ってろよ、真の魔王ルシファー! 今から本物の悪魔がお前の命を刈り取りに行くぞ!


 私のRTA配信は終わらねぇ!




 さてデュラリオン王国へ戻って来ました。兄魔王連れて来ちゃったので変な顔されてますが、まあその辺りは私が「勝ったぜ!」みたいな顔してるんで大丈夫です。


 それよりは空が闇に包まれちゃったことのが大事件って感じですね。


「それでは浄瑠璃寺健太さん、浄瑠璃寺明日香さん、お二人には二つの選択肢があります。一つは記憶と力を失って元の世界、元の時代へ戻る事。この場合の因果の連結、過去へ戻る事での現在への影響は考える必要はありません。我々はエキスパートです。影響がないよう手を加えていきますので、安心してお任せ下さい」


 姉がアスと魔王にWDO執行官として、二人の処遇について説明をしています。


「戻る、元の、世界へ………」

「この世界の事、覚えていられないんですか?」


 早く終わらせて欲しいですね。姉は馬鹿丁寧に説明しているので時間が掛かっています。まあ、私一人で真の魔王ルシファーを倒す時間を考えたら、随分と時間短縮になっていますが。


「もう一つは、今のまま元の世界へ戻る事です。この場合でも、現代社会へ溶け込めるように全面的にバックアップします。具体的には現代知識についての講義から職業訓練、社会保障、各種カウンセリングと万全の体制が整っており、お二人と同じような立場の方々との交流の場もご用意しています」


 WDOのやり方って、基本的には被召喚者をこの世界に留まらせるって選択肢が無いんですよね。


 なんで無いのか知ってますか? 昔、現地に残った被召喚者が無茶苦茶やって文明レベルを引き上げまくった末に、こっちの世界へ侵攻して来た事件があったんですね。当時はWDOの失態って事で、各方面から叩かれてしまったそうです。はい、どうでも良いですね。


 被害者への説明の後は、加害者、現地の人らへの説明や召喚術式の封印処置などを説明しています。王様でもすぐには決められないようで、後日また別の職員が来た時に正式に話し合いの場が持たれるのでしょう。


「K! これから君のお姉さんと共に、天上世界へ魔王ルシファーを倒しに行くのだな!」


 戦略的には、後は姉に任せてここでのんびり待つって言うのも有りなのですが、それをやった瞬間に大ひんしゅく確実です。それに真の魔王ルシファーに事情があって、姉がその事情を聞き始めたらまた時間が掛かりますからね。


 ここは姉と一緒に行って、姉と真の魔王ルシファーが戦うなりしゃべるなりしてる所を、私がサクッと暗殺するのが早そうです。


「まあね」

「そうか。僕も最後まで付いて行きたいが、KとKのお姉さんの邪魔になってしまうだろう。けれど、僕は君たち姉妹の勝利を誰よりも信じて待つつもりだ!」


 ミカエルくん、全力で意味のない行動を取るらしいですね。


 それよりは姉から国連の規約なり現代史なりの説明書を受け取って、一言一句取りこぼさずに読む方が、よっぽどデュラリオン王国の未来のためになります。


 既にWDOに通報していますからね。デュラリオン王国がこれから戦うのは、魔王とか精霊とかチンケな存在じゃないです。国際社会の魑魅魍魎や神仏天魔となるのです。少しでも武器を得るべきでしょう。


「ガキ勇者、お前なら世界を救えるぜ。俺も微力ながら祈らせて貰う」

「祈っても意味ないから、魔王軍に壊された街の再建でも手伝ってたら?」

「へっ、そっちはそっちで全力でやるさ。お前を見習って無償でな」


 そう言えば、デルギーンからの依頼として魔王軍四天王を倒しましたが、依頼料を受け取って無かったですね。お金が目的ではなかったので忘れていました。


「K、本当にありがとう。私からはお礼を言わせて」

「言わなくて良いよ。物理的に返して貰うから」


 アスはジブリールちゃんと一緒にコスプレ撮影会に参加して貰いますからね。


「物理的? でも、もうしばらくは会えなくなるって聞いたけど。………ああ、そういう事? 分かった。その時は必ずお礼をする」


 んー? 今、聞き捨てならない事を言いましたね。私は妙な物言いをスルーするような愚者じゃないので、明確になるまでツッコミますよ。


「しばらく会えなくなるってどういう事?」

「Kのお姉さんが、これ終わったらKは忙しくなるって言ってたよ?」


 捕まえて帰る気満々かよぉぉぉ!


 ま、どうとでもなりますね。もう何度も逃げ切ってますし。


 しかし、こうして私の配信を何度も何度も邪魔してくれた姉が味方となってくれると、感慨深いものがありますね。


 言ってみれば最強の敵が仲間になった状態ですよ。古来からの王道展開じゃないですか。これはもっと良いタイミングで登場して貰った方が良かったですね。


 「あなたを捕まえるのは私だと言うのを忘れた?」って言って貰えるようなシーンを作ったら、見たいですか? ちょっと姉のキャラじゃないですけど。


 おお、見たいコメが多い。今回は無理ですが、何とか近いシーンを作れるように頑張ってみますか。ああ、でも他の要望もあるんですよね。


 あ、さっき通信機を使ってアカウント停止措置不要の連絡はしておきました。姉は知らないんじゃないかって? 当然、隠れてやりました。


「お待たせ、蛍。準備は良い?」

「行くぞ、ブラック」

「どちらかと言うと、蛍がブラックで私がレッドでしょ」

「さっすが光姉さん! 通じるぅ!」




 77:18:43


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