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第18話 世界を覆った闇を切り裂く閃光

 闇が太陽も月も星も覆い隠して、すっかり暗くなってしまいましたね。配信している映像には光量調節を入れていますが、見え辛かったら遠慮なく言って下さい。


 遠慮なくっつっても、まずは自分のモニタの光量を調節してからだぞ。見てるのはお前だけじゃないんだからな。


 あー、RTAが失敗だと言ったら、視聴者が減りました。この初見どもが。私の過去動画を一億回見直してから出直してきやがれ。


「なんだよ、こりゃあ、これが真の魔王ルシファーって奴の力か!」

「ヤバイ力だね」

「ガキ勇者でも、そう思うほどなのかよ!」


 私のテンションを下げた上、挙げ句の果てに視聴者を減らしやがって、真の魔王ルシファーめ、なかなかの力じゃないか。


「ハハハ! お前たちの負けなんだよ! さっさと俺に謝罪すれば、もう一度、抑え付けてやっても………な、なんだ、よ、これ? う、うわあぁ! なんで、言う事を聞けよ! た、助け………て」


 勇者ユウキは空の闇に飲み込まれちゃいました。自業自得なので、私の責任ではありません。


 まあ自分で気付かなかったみたいだけど、私たちの前に現れた時点で魂の半分以上は飲み込まれてたみたいですから、どうしようもなかったです。


『そんな、このような事になるなんて。もう、この世界は』


 蛙精霊は蛙精霊で想像力がないですね。


 あのね、異世界召喚初心者って何やるか分かったもんじゃないよ。やる奴は本当に好き勝手やるから。子供にダイナマイト持たせて、爆発するとは思いませんでしたって言ってるようなもんだぞ。


 本当に大事な事なら自分でやるか、信頼できる人に任せるか、それでも無理ならちゃんとマネイジメントしないと。何でも他人に丸投げするからそうなるんだよ。蛙精霊は上司の風上にも置けない奴です。


「明日香、その子供、勇者が元の世界へ帰る方法を知っているなら、勇者と一緒に逃げてくれ。余が時間を稼ぐ」

「ダメだよ、兄さん! K! Kでも、どうにもならないの!?」

「そうだ! 僕たちにはKが付いている!」


 しかしどうしましょう。


 普通にやったら、この真の魔王ルシファーとか言うの倒すのに一週間くらい掛かりそうです。ライブ配信はトラブルが醍醐味だとは言え、これはマズイです。


 いや、演出じゃなくて、本当に困ってるんだよ。


 一週間掛かっても倒せば良いじゃん、じゃねぇーんだよ。


 お前ら忘れたの? これライブ配信なんだよ。


 一週間なんて時間掛けてたら、確実にWDO(奴ら)が来ちゃうよ。


「K?」

「ああ、うん。強敵だね。勝てるけど、勝った頃にはみんな死んじゃうみたいな」


 配信を止められて、私の大切な視聴者(みんな)が居なくなる。


 そんな結末は絶対に嫌です。


「ちっ、それほどなのかよ!」

「そんなっ」


 まあね。ここで私だけ逃げ出せば、チャンネルは守れます。


 でもそれをすると、奴らがやって来るまでに、真の魔王ルシファーがこの異世界が蹂躙するでしょう。


 私だって見捨てたくはないですよ。


 外道が売りの私のチャンネルですが、それはあくまで常識の範囲内です。犯罪者にまで落ちるつもりはありません。罠に嵌めるは当たり前、裏切り上等、人質から拷問まで、外道戦法は何でも使いますが、それはあくまでクリアのためで、誰彼構わずやったりはしません。


 短い間だったけど、家族で苦労しているらしいアスは助かって欲しいですし、ミカエルくんには悪い事をしたので幸せになって欲しいと思っています。私がお金と時間を余り使わない範囲で。


 ただ私は万能ですが、全能ではないので出来ない事もあります。


 あ、なんか良い案あるんですか?


「見ろ! な、なんだあの魔物は!?」

『あれはただの魔物ではありません。神獣とも呼べる存在。天上世界に住む神の使徒にして、罪人を噛み砕き粛正すると言われるもの』

「おそらく余や明日香と同種のものだろう。魔王ベルゼビュートや魔王アスタロトのようなものを植え付けられた存在だ」


 兄魔王が私の肩を掴みました。うるさいですね。


「勇者、頼む、明日香を連れて逃げろ」

「ちょっと待っててくれる?」

「待つ時間など。もうすぐルシファーが顕現する。それまでには」

「私だって待ちたくなんてねぇよ! でも待つ必要があんだよ!」

「はい………」


 えっと、何だっけ、良い方法思い付いた人がいるんだよね?


 何々? 良い方法なら大歓迎で採用しちゃうよ。クソ案だったら時間を無駄にした分、てめぇを罵倒するけどな。


 ………は? いや、ちょっと、それは。それは駄目でしょう! おま、それやったら、何が起きるか分かって言ってんのか!?


 あ、てめ、ちょ!




「おい、勇者! これ以上は保たんぞ!」

「てめぇは黙ってろ、魔王」

「そうだ。Kに任せておけ」

「兄さんは大人しく見てて」

「何故、余が最も心配をしている!?」


 はい………準備完了しましたね………本当に嫌だけど、やりますか………。


 お前ら、これから起こる事を刮目して見ろよ。そしてお前たちがどんなに非道い事をしたのか、しかと目に焼き付けろ。


「はい、お待たせ。ちょっと予定と違ったけど、私にも覚悟が必要でさ」

「覚悟? やっぱりKでも厳しいの?」

「これから私は死闘に身を投じる事になる。勝つには犠牲が必要なんだよ」

「勇者………、お前ぇ、本気で」

「K! 僕は最後まで君と戦うぞ!」

「そうなの? なら遠慮なく盾にするけど」

「ああっ! 君に救われた命だ! いくらでも使ってくれ!」


 んー、ミカエルくんを盾にすれば意外とやれるかな? 一部から外道戦法も期待されてるし。あ、お前らがやれって言ったんだからな? ログ取ってるからな。後で容赦なく提出するからな。自分らの発言には責任持てよ。


「な、なんだ?」

「闇の空が、割れる?」

「あれは、人間、なのか?」


 ああ、来たよ。来ちゃったよ。


 まさか私からWDOに連絡―――もとい通報するとは思わなかったなぁ。


 はい、視聴者の皆様、あの空から次元の壁をぶち破って登場されましたのが、三千大世界に名高きWDOの執行官様です。


 WDOの執行官とは、異世界との間で発生する様々な問題を解決するエキスパートです。異世界のどんな相手とも渡り合える戦闘能力、現地や国連を繋ぐ交渉能力や折衝能力、多くの裁量を持つがゆえに語学は当然として法律から経済まで多くの知識が必要で、超難関試験をクリアしなければ就けないまさに現代のエリート職。


 そして彼女は。


 WDO一級執行官、西園寺光、十六歳、身長は全国平均よりも十センチ以上低い小柄、好きなものは身長を気にして牛乳だって言い張ってるけど本当はショートケーキ、嫌いなものはGで現れると悲鳴を上げて大騒ぎ、趣味は刺繍とぬいぐるみ、あの歳になってぬいぐるみを抱いて寝てるってどうよ。


 十歳でWDOの執行官試験に史上最年少合格して、天才少女と持て囃されて、仕事にテレビに取材にと忙しくて、彼氏どころか男友達の一人さえいないイキオクレ。ぶっちゃけ同僚は年代が違うし、飛び級でまともに学校も行ってないから友達も驚くほど少ない典型的なボッチ。休みの日に自分の部屋でちくちくやっている姿は、この年齢にして哀愁を漂わせています。


「蛍ぇぇぇーーー!!」


 はい、来ましたね。


 私の姉が。




 75:00:00


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