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第1話 コロナデイ②

西暦3000年、モンスターのいなくならない世界。混沌とする世の中に一つの出来事が起こった。

自然溢れる街『ピュシス』。魔法剣士の僕はこの地で身体を休めている。世界各地で起きているモンスターの凶暴化。「原因を探れ」との連絡を受け、現在ここにいる。観光気分にはなれないが、大陸でも有数の緑溢れる景色。風がそよぎ、透き通る風が僕の肌を通りすぎる。

街の外れにある小さな丘、木陰で街全体やその奥に見える()()()を見ながら想いふける。街全体は10000㎡程ぐらいあり、一戸建てやお店が色とりどりに立ち並ぶ。旗や暖簾が赤、青、緑と華やかさを演出してくれている。

()()()は僅かな不気味さと静けさを遠くからですら感じさせる。

ここのどこかに僕の求めている答えがあるのだろうと、まずは街へと情報集めに腰を上げた。



夕暮れの時刻。日が夕闇となり、多くの人達は出稼ぎから戻り一時の安息につく時間帯。僕は、今日も無事に過ごす事ができたと笑みをこぼす人達のたまり場である酒場へと足を運ぶ。

大きな樽が3つ並ぶ隣にある、木製で出来た開閉ドアを開ける。ギーコっとぎこちない音を出しながら、半円を動いたドアが元の軌道を探す。

「いらっしゃいませ」

ドアの開閉と共に、20歳位の青年が声をかけてくれる。

「お一人様でしたら、こちらのカウンター席へどうぞ」

カウンター奥にある厨房から弾むような声で仕草をする。僕は、誘導される席へと座り、この街一番のお酒を頼む。

出されたジョッキの中身をカラカラの喉に半分以上、ゴクゴクと流し込む。

意識がもっていかれそうなくらいの甘美香。

「かぁ~~~!冷てぇーーーーー!これだよ!これ~!」

風味の良い甘味が鼻を香り、冷たさが気持ちを掴み取る。

「お客さん、気に入ってくれましたか!?」

爽やかな眼をした青年が答えた。

「最高だよ!酒が上手い街は、暖かい人しかいない!酒は冷たくても人の心は暖かい!僕は今まで旅をしてきて、そう思う!若いのにマスターかい?スゴイね~!!」

「気に入って貰えて良かったです。この街で一番のお酒です!」

「そうかぁ~、人々に愛されたお酒、祝いの酒として合うスカッとする酸味。この幸せな一時を与えてくれたお酒はいくらですか~?」

お酒は人を新しい世界に連れていってくれる。今目の前のここにある世界とは別の場所に。

「100万ゴールドになります」

「えっ!・・・冷たい・・・全然暖かくない」

すると店の奥から、10代後半の女性が現れた。

「もお~、カイル兄さん。冗談やめてよ~」

「おぉ、スフィアか!」

鼻筋の通った、スラッとした女性。

「・・・良かった。冗談かぁ~」

安堵の声が漏れる。

「本当は、200万ゴールドですよ!!」

全身が魔法にかかったように凍った。

「・・・倍になった」

栗色の眼をしたスフィアさん、これは本当なのかと聞こうとした矢先、

「このお酒綺麗ですよね。この街で一番高い幻の果実酒なんですよ!別名『幸せの扉』」

うぅ~っとうなだれる僕は、誰かに嘘だと言って欲しいと願いつつも、『幸せの扉』の余韻に浸っていた。

「妹のスフィアです。二人で酒場を切り盛りしていて、売れ行きがあまりよくなかったのですが、久しぶりに幻の果実酒が売れたので助かりました」

200万ゴールドなんて持ち合わせてもいなく、心が痛む。一体何万匹のモンスターを倒したら200万ゴールドなんて手に入るのだろう。・・・何万?何百万の間違いではないだろうか。

「お客さん、お金大丈夫ですよね?もし、ないなんていったら、250年うちで皿洗いして貰いますよ!」

「・・・まさかの3世代」

ははっと笑いながら、それでも甘い香りの果実酒。この世の現状を忘れさせてくれる媚薬。・・・まさに今だなと思いつつ、残りの果実酒を飲み終えようしたその時、酒場の外から何かが飛んできて、僕に激突。幻の果実酒の入ったジョッキもパリンッ!

僕にぶつかったのは、表にあった樽の一部だ。樽を壊して投げつけてきたのだろう。数秒前まで果実酒が入っていたジョッキを見ながら、落胆した。






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