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67離れたくない3

 トキワの誕生日当日、命は膝上丈の花柄のシフォンワンピースにボーンサンダルを履いてトキワを待っていた。手入れをしながらようやく肩甲骨まで伸ばしてきた髪の毛は夏らしく爽やかに高い位置で結んでいる。


「珍しく遅いなー」


 待ち合わせ時間まで余裕があるが、いつもトキワは待ちきれず早く来ている。しかし今日は命の方が待たされている。


「ちーちゃんお待たせー!」


 しばらくしてトキワが姿を現した。本当は命よりずっと早く到着していたが、命が自分を待っている姿が見たかったため、身を隠して様子を窺っていたのだ。だがそれは彼女には内緒にしておくことにした。


「おはよう、誕生日おめでとう」

「ありがとう!今日もめっちゃ可愛いね!スカートがちょっと短過ぎると思うけど」


 いつも短くても膝丈のスカートしか着ないのに、今日は太腿が半分見える位に丈が短かった。それはそれで魅力的だとトキワは分かっていたが、命の脚を他の人に見せたくないという独占欲もあった。


「これ元々は膝の少し上位の長さだったんだけど、一年で足が伸びちゃったみたいで短くなっちゃったの。大丈夫、これ下にショートパンツ履いてるから!」


 恥じらいもなく命がスカートをめくりショートパンツを見せてくるので、流石のトキワも顔を赤くし、慌てて命のスカートの裾を下げる。


「ほらもう行くよ!」


 命の手を取りトキワは港町行きの乗り合い馬車の待合い所へ向かった。本当は移動時間を短縮させる為に命をお姫様抱っこして魔術で移動しようかと考えていたが、それでは命が可愛い格好をしてくれないと思ったので、そこは諦めた。

 馬車に乗り、トキワは命を一番奥に座らせて肩を寄せ合う。そしてトキワは持っていたハンカチを広げて命の膝に乗せる。


「ショートパンツ履いてるから大丈夫なのに」

「いいから!大人しくして」


 未だしつこく小声でショートパンツを主張する命を睨みトキワはハンカチを命の膝に押さえつけると、少しでも命の体温を感じたくて彼女の腕に抱きついた。


「ちーちゃんさ、今身長いくつ?」

「こないだ測ったら伸びてて百七十二…じゃなくて百六十八cmかな」


 うっかり本当の身長を言ってしまった命は慌てて誤魔化すが既に遅かった。友人や家族より…ましてやトキワより背が高いのは命にとってコンプレックスだった。


「百七十二かぁ、頑張んなきゃな」

「百六十八だって!」

「はいはい」


 どうりでいつまで経っても命との身長さが縮まらない訳だ。現在の身長が百五十八cmのトキワは心の中で嘆いた。


「やっぱ女の方が背が高いのって嫌?」


 不安そうに見下ろしてくる命にトキワは首を振る。


「ちーちゃんなら背が高くても低くてもどっちも可愛いよ。でも俺も高くなる予定だからね」

「トキワのお父さん背が高いから大丈夫じゃない?」


 トキワの父のトキオは高身長で顔も美形だ。トキワも将来ああなるのかと命は漠然と予想していた。


「母さんが低いのが不安要素なんだよね。いくつか知らないけど去年追い越した」


 いくら顔が父親のクローンと言われていても母親の低身長が遺伝したら悲劇だ。トキワは引き続きよく食べて早寝を心掛けて第二次成長期を迎えようと決意した。


「確かにトキワのお母さんて小柄で可愛いよね。うちはお母さんは百六十八mでお父さんが二百六cmだから…まだ伸びちゃうのかな私…」

「熊先生は本当に熊みたいだったからなあ……」


 せめてどっちが高くなろうが身長差は十cm以内に留まるようにと命は心から強く願った。




 


 

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