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31誕生日にはチェリーパイ7

 レイトとトキワは魔犬の親玉の牙を持って農村へ戻り、村長に報告した。返り血を浴びていたし、日も暮れていたので二人は村長の家に一泊世話になる事になった。


「ねえねえ、トキワくんが魔犬倒したんでしょ?すごく強いんだね!」


 酒で盛り上がる大人達の一方で、手を振り払われた事もすっかり忘れたのか、村長の孫娘はトキワに夢中になっている。トキワは返事もせず南瓜のグラタンを口に運びながら命の誕生日プレゼントを何にしようかと考えながらその場をやり過ごした。



 夜が明けて村長から依頼の完了届を貰い、一旦港町に戻りギルドで報酬をもらう為。二人は村を出ようとした。


「トキワくん待って!」


 村長の孫娘が村を出ようとするトキワを引き止めた。手には小さな花束を持っていた。


「これ!あげる!村を救ってくれてありがとう!」


 冷たい対応をされ続けながらも孫娘は精一杯の笑顔で村の花畑で摘んだ花束を差し出した。

 これはまた突っ返すかなとレイトが冷や冷やと見守っていたが、トキワは花束を受け取り、村に来てから一番の天使のような微笑みを浮かべた。


「ありがとう、これ好きな子にプレゼントにするよ!」


 トキワの笑顔にしばし惚けながらも、孫娘は失恋した事に肩をがっくりと落とした。


「じゃ、さようなら!」


 それは期待をさせないというトキワなりの優しさだった。孫娘に背を向けると、トキワはレイトと共に一切振り返らず港町へ向かい、たどり着くと真っ先にギルドへ向かい依頼完了届と引き換えに報酬を手に入れた。


「ほれ、お前の取り分」


 手渡されたお金は報酬の半額だった。トキワは目を丸くする。


「こんなにいいんですか!?」

「ちゃんと働いたからな。よくやったよお前は」


 弟子の成長が嬉しくなり、レイトはトキワの頭を撫でながら褒める。


「さて、あれだろ?命ちゃんの誕生日プレゼント選ぶんだろ?俺も祈と共同で渡すの買うから行くぞ。金は盗まれないようにしまっておけ!」


 報酬の一部をギルド内の銀行に預けると、レイトの誘導で商店が並ぶエリアへ向かう。途中屋台で激辛煎餅が売っていたのでトキワは両親へのお土産として買った。奥の方へ行くと小さな雑貨店があったので入ってみる。

 狭い店内には可愛らしい雑貨が所狭しと並んでいて二人は目移りした。


「確か祈はピンク色のフリフリエプロンにしたいと言ってたな」


 そう言ってレイトはフリルの付いたコーラルピンクの花柄のエプロンドレスを手に取った。


「こちらは同じ柄の布を使ったヘアバンドがございますよ」


 店員がいそいそとエプロンドレスと同じ柄のヘアバンドを出してくる。


「じゃあそれも一緒にプレゼント用に包装してください」

「かしこまりました」


 プレゼントが決まって肩の荷が降りたレイトは小さくため息を吐く。トキワはまだ決まらず煮詰まって来ているようだ。


「下調べに時間が取れなかったのが痛かった。ねえ、師匠なんか知りません?ちーちゃんの好きなもの」

「えー、なんだろうな……甘い物とか可愛い物とか…女の子らしい物が好きなんじゃないかな?」


 確かに命の持ち物は可愛い物が多い。服装はシンプルだがハンカチやポーチも可愛かった。下着も可愛いパンツ履いてたな……とトキワは一瞬だったが脳裏に焼き付いていた命のパンツを思い出し、気まずくなり顔を俯かせた視線の先の雑貨と目があった。


「これにしよう!」


 ようやくプレゼントを決めたトキワは命の喜ぶ顔を思い浮かべて笑みを浮かべた。




 


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