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24燃えるお母さん6

 数日後、レイトの引率のもとトキワは冴えない顔で大きなリュックを背負って命の家にやって来た。


「どうしたの?また家出?」


 命の問いかけにトキワは首を振り、どっしりと何かが詰まったリュックを下ろした。重量感的に三十kgは下らないはずだ。


「これ、母さんからちーちゃんにプレゼントなんだって」

「私に?」


 プレゼントを貰うような心当たりが無い命は首を傾げてリュックを開けると、中には大量の火炎魔石が敷き詰められていた。一番上には手紙が乗っている。命は封筒を開けて便箋を取り出して手紙を黙読した。



 命ちゃんのお陰で久々にトキオさんとデートができた。感謝する。

 火炎魔石は余ってるものだ気にせず使え。これから時々トキワに持たせる。

 迷惑をかけるがトキワを頼む。



 そこにはぶっきらぼうな文章が連なっていた。やっぱりツンデレだと思いつつ命はおかしくなって声を立てて笑った。


「なにか変なこと書いてた?」

「ううん、なんかトキワのお母さんって可愛いね」


 楓を褒める命にトキワは口をへの字に結んでから火炎魔石を一つ手に取る。


「この火炎魔石は母さんが精製したものなんだ。家計の大半は父さんの稼ぎだけど、これも収入源の一部らしいよ。とはいえ母さんは気まぐれだから依頼があっても気が乗らないと全然作らないんだよね。それなのにこんなに作るなんて……ちーちゃんの事よっぽど気に入ったんだね。はあ…」


 事情を説明した後、不機嫌にため息をつくトキワ。自分は命にまだプレゼントをした事が無いのに、母親に先を越されたことが悔しかった。だが命はその意図が伝わっていない。


「これだけあったら一ヶ月は買わなくて済む!本当助かるわ!あとでトキワのお母さんにお礼の手紙書くから帰る時預かってね」

「ええ!?何それ!俺もちーちゃんからの手紙が欲しい!」


 これ以上の抜け駆けは許さない。トキワは命に手紙を懇願した。


「じゃあトキワにも書いてあげるから、お母さんへの手紙ちゃんと届けてね」

「うん!!じゃあ今日も修行頑張ってくるね!」


 まさか快い返事をもらえるとは、頼んでみるものだ。トキワのテンションは一気に上がり、そのままレイトの修行を受けに行った。


 修行を終えて命から手紙を受け取ったトキワはすぐに読みたい気持ちをぐっと堪えて帰宅した。


「ただいまー」

「おかえり。で、どうだった?」


 いつもならトキオが夕飯を作ってる間、ソファで横になりながらおかえりの一言で済ます楓が今日はトキワに無表情で駆け寄りプレゼントの感想を求めた。


「ちーちゃんめちゃくちゃ喜んでたよ。これで一ヶ月は火炎魔石を買わないで済むって。で、これ」


 命が書いた手紙をトキワは名残惜しく楓に手渡した。楓はソファに戻りうつ伏せに寝転がると手紙を開けて読み始めた。その姿はまるでラブレターをもらった少女のようだった。足をバタバタさせているから恐らく喜んでいるのだろう。あんなに喜んでいる母の姿は初めてかもしれない。命の手紙は偉大だ。そう思いつつトキワも自室に入り手紙を読んだ。


「ふふっ、ちーちゃんらしいや」


 手紙の内容は先日勉強を教えた時にトキワがつまづいた復習問題だった。ただの宿題なのに丁寧な字で書かれた問題一つ一つがトキワには愛おしかった。

 トキワは手紙に書き込むのが勿体無いので紙を取り出して問題を写し、解く事にして、それをラブレターの返事の一つにする事にした。


 

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