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209準備は着々と3

 結局冷やかしになってしまった上に、課題が残ってしまった。命たちは仕立て屋を後にして、家路に着いた。そして帰ったら、どんなドレスになったか聞かせて欲しいと祈から言われてたので、一同は祈の家でティータイムとなった。


 祈の家の前に辿り着くと、隣の空き地ではトキワがレイトと手合わせをしていた。お互いいつになく真剣な様子だったので、みんなで勝負の行く末を見守っていると、最後はレイトの見事な返しで、トキワが膝をついてしまった。


「あーもうっ!」


 悔しそうにトキワが肩で息をしながら声を上げる一方で、レイトがニヤニヤしながら命達に手を振ってきた。トキワは命と目が合うなり、一直線に詰め寄り、慰めろと言わんばかりに抱きついた。


 師弟もお茶にすると言うことなので、一緒に家に入ると、祈が大量のスコーンを用意して待っていた。ヒナタとカイリは仲良く昼寝をしている。


 祈と光がお茶の用意をしている間、話題は先程の手合わせの話になった。


「ちーちゃんと結婚するまでに、師匠を倒しておきたいんだけど、中々倒せない。こうなったら痺れ薬でも飲ませて挑むか」

「おいおい、正々堂々倒すって言ってただろうが。しかしお前も頑固だよな。魔術の使用込みなら、お前の方が多分強いのに」


 確かに、レイトも魔術の扱いに長けているが、トキワは桁外れなので優れている。命はハンカチで額から流れるトキワの汗を拭いつつ、分析する。


「師匠は剣の師匠なんだから、剣で勝たないと意味がない」

「ああ、そうかい。まあ別に勝てないからって、結婚を認めない訳じゃないから、俺ばっかに構って命ちゃんをおざなりにするなよ」


 現時点でトキワはレイトに一度も勝てていないが、レイトは今の実力なら命を任せてもいいと、祈と共に認めている。ただし自分を倒さない限り、兄とは呼ばせないつもりでいた。


「お待たせー!スコーンもお茶も沢山あるから、遠慮しないで食べてね」


 紅茶が注がれた人数分のティーカップに、おかわり用のティーポットを祈が持って来た。スコーンのお供にクロテッドクリームとジャムも用意された。


 全員早速スコーンに手を伸ばして、それぞれ好みの味付けをして食べると、口の中の水分がごっそり奪われたので、紅茶を流し込んだ。


「それでちーちゃんのドレスは決まったの?」


 祈の問いに、命は口の中がモソモソしてたので、首を振って返事をしてから、紅茶を飲んだ。


「最近は種類が豊富で目移りしちゃって。あと店員さんが花婿とデザインのバランスを取った方がいいって言われた」


 命の発言でトキワは何かを言おうとしたが、スコーンが咽せて咳き込んでしまった。隣にいた命は背中をさすってから、ティーカップに紅茶を注いで飲ませてあげた。


「ありがとう。えっと、つまり今度は俺も一緒に行った方がいいわけだよね?」

「うん、当日のお楽しみにしているところ悪いけど、いいかな?」

「ちーちゃんのお願いなら行くよ。当日は完成形を楽しめばいいわけだし」


 トキワは快諾すると、懲りずにスコーンを二つに割って、ジャムを塗りたくってから、口に放り込む。


「そうだトキワのお父さんとお母さん、旭ちゃんも一緒に見に行かないか誘ってみて」


 トキオと楓も可愛い我が子の結婚の準備に関わりたいだろうと命は予想して提案すると、トキワは嫌そうな顔をしつつも、大人しく頷いた。


 いつの間にか大量のスコーンは無くなり、日も傾いて来たので、イブキは自宅へ帰って行った。命たちはそのまま祈の家で夕食となった。


 トキワはレイトに夕飯前に泣きのもう一戦を懇願して、二人で外に出て行った。


「あ、いいこと思いついた!今度うちとトキワちゃんの家族とでお食事会しない?以前大精霊祭でお食事したいねーって話してたし」

「それいいね!トキワに伝言頼んでおく」


 祈のアイデアに命も賛同すると、夕飯の用意をしながら食事会では何を作ろうと考えを巡らせた。


 量が多かったので、時間が掛かってしまったが、夕飯の準備が整ったので、食卓に並べてトキワとレイト以外が席についた所で祈が二人を呼びに外に出た。


「ヒナちゃん、パパとトキちゃんどっちが勝ったと思う?」


 ご馳走を前にお預けを食らっている甥っ子に命が問いかけると、ヒナタは可愛らしく腕を組んで考え込んだ。


「パパ!」


 ヒナタが声を上げたと同時に玄関のドアが開かれて、レイトと祈が入ってきた。


「あれ、トキワは?」

「不貞腐れている」


 どうやらまた負けてしまったらしい。命は立ち上がりドアの隙間から空き地を見ると、寒い中トキワが地面に寝転がっていた。仕方ないので、命は迎えに行く。


「ご飯出来たよ。一緒に食べよう?」


 トキワの横で中腰になって、命は手を差し伸べた。


「師匠にあって俺に無いものって何だろう?」


 敗因を探るようにトキワが問うてきたので、命は少し考えてから答えた。


「妻と子供?」

「あーなるほどね。勝てないわけだ」


 命の言葉に納得したトキワは彼女の手を取ると、起き上がり体についた汚れを払った。


 






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