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196歳愛7

 ようやく馬車は水鏡族の村の神殿へと辿り着いた。馬車は目立たない様神官専用入り口に停車した。命とトキワが先に馬車から降りてから勇者一行も降りた。


「ねえ、私帰ってもいい?着替えたいんだけど」


 フリルワンピース姿を光の神子達に見られたくなかった命は大量のショッピングバッグを両手に下げたトキワにお願いした。


「可愛いからいいじゃん。勇者様案内したら後で俺の部屋で他の服も着てよ」


 薄々気付いていたがやはりトキワはファッションショーをして欲しいようだ。この言い分だとベビードールまで着せる気だと身の危険を感じたので、命はタイミングを見て逃げようと心に決めた。


 待機していた神官達と共にトキワ達は神殿の最奥部にある神子達が集まる精霊の間にエアハルト達を案内した。扉の前に到着すると、一旦説明と確認をするためにトキワが入って行った。


「紫さん、私部外者だし急用を思い出したので帰りますね」


 今がチャンスだと思い命は神官達の中に紫を見つけると、帰る旨を伝えて神殿を後にしようとした。


「ちーちゃん何処に行くの?」


 命が廊下の角を曲がろうとしたと同時にトキワが精霊の間から出てきて見つかり、追い付かれると後ろから抱きしめられてしまった。


「よく考えて?私は神殿からしたら部外者だよ」

「さっき許可貰ったから問題ないよっと……」


 逃がさまいとトキワは命を横抱きすると、そのまま勇者達と精霊の間に入った。今回風の神子がいるので、トキワは命を下ろしたあとにしっかり手を繋いで、次席以降の神子たちと同じ後側で待機した。静かで神聖な空間に漂う緊張感に命は意識が遠のいてしまいそうだった。


「ようこそ勇者エアハルトとその仲間たちよ。私達は水鏡族の村を守る神子です」


 闇の神子の手を引いた光の神子が慈愛に満ちた表情でエアハルト達を歓迎した。人の魔力が見えるエアハルトなら彼女が光の神子だと気づくはずだとトキワは予想した。一体今彼はどんな顔をしているか気になったが、ここからだと後ろ姿しか見えずもどかしい気持ちになる。


「あの、光の神子はどなたですか?」


 どうやら敢えて魔力を見ていないようだ。単刀直入に光の神子を尋ねたエアハルトにトキワは思わず吹き出すと、一同彼に注目する。隣にいた命は視線に耐え切れず顔を両手で覆った。


 光の神子はトキワをいたずらっ子を観るような目で見たあと、エアハルトに微笑みかけた。


「そうですね、まずは自己紹介を致しましょう。先ずは風の神子のフウガ」


 光の神子は焦らすように年長者の風の神子から紹介した。


「水の神子ミナト、炎の神子暦」


 ミナトと暦が前に出て頭を下げる。残る女性陣にエアハルトの期待が高まる。


「雷の神子雀、氷の神子霰」


 愛嬌たっぷりにウインクをする雀。次いでツンと澄ました顔で霰がお辞儀をした。

 残る若い女性は土の神子の要のみ。エアハルトは彼女こそが光の神子だと確信して目を輝かせた。


「土の神子要」


 しかしその希望は脆くも崩れ去り、要が一歩前に出ると元気に敬礼をした。残るのは幼児と老婆のみ。どちらが光の神子だとしても、エアハルトには絶望でしかなかった。


「この子が闇の神子サクヤ。そして私が光の神子、絆です。勇者エアハルトよ、いつも温かい手紙をありがとう。そして孫がお世話になりました」


 してやったり顔で光の神子はお辞儀をすると、エアハルトは描いていた夢が音を立てて崩れ去っていくのを感じた。そして孫が世話になったという言葉がピンとこなかったが、徐々にその正体に気付くと、エアハルトは後ろを振り返り、トキワに詰め寄った。


「お前の血は何色だーっ!!」


 血の涙を流しそうな勢いでエアハルトは慟哭した。


「からかってごめんね勇者様。でも俺は一度も嘘はついてないよ?」

「何故光の神子が君の祖母だと教えてくれなかったんだ!?」

「言ったところで信じた?」


 思い込みが強いエアハルトのことだ。トキワが真実を告げても信じない可能性は大いにある。それを彼も自覚してるのか黙り込んだ。


「クソっ!なんでこんな悪魔に可愛くて胸が大きい彼女がいて俺にはいないんだ!ああもう!!」


 地団駄を踏むエアハルトにもはや勇者の風格は無かった。


「しっかりして勇者様、ちーちゃん程じゃないけど、美人で独身で恋人がいない神子が三人もいるよ!あの辺を攻めたら?」


 命への欲目をたっぷりにトキワはエアハルトに要と雀と霰を勧めた。確かに三人とも美人でエアハルトのストライクゾーンに入っていた。


「確かに魔力が多い乙女なら聖女と呼べるよな」


 復活したエアハルトは気を取り直してトキワから離れると、神子達の前に戻った。


「取り乱して申し訳ありません」


 エアハルトは何事もなかったかの様に振る舞うと神殿からの接待を受けることとした。

 

 


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