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193最愛4

 元の姿に戻った命は部屋の鍵をかけると、ボロボロになった服を脱いで裸になりトキワの外套を身につけて、彼が買って来た服と下着の山に臨んだ。


 まずは下着を手に取る。フリルとリボンがふんだんに使われた砂糖菓子のようなベビーピンクの上下セットの下着だ。体に当ててみるがどうも気恥ずかしい。可愛い物は大好きではあるが、自分が身につけるとなると命には抵抗があった。


 次の下着はワインレッドのレースとサテンの下着上下セットで上はフロントホック、下はサイドの紐を結んで着用するというセクシーなタイプの下着だった。もちろん先ほどのベビードールは選択肢に無い。


「両極端過ぎるけど、トキワこういうの好きなのかな?」


 命はワインレッドのショーツの紐を摘んでため息を吐くと、部屋の寒さで身震いがしたので止むを得ず妥協してベビーピンクの下着を身につけた。サイズは合っていたが、可愛すぎる下着をつけた自分の姿に命は気恥ずかしくなった。


 続いて服を選ぶことにした。フリルがこれでもかと使われたワンピースがベビーピンクとピンクの小花柄の二種類、ご丁寧にパニエまで用意されている。そして身体にぴったりとする素材のVネックとタートルネックのニットミニワンピースが一着ずつあった。


 タイツは白と柄編みのガーターストッキングの2種類。そして靴はあると分かっているはずなのに、可愛らしいピンクの靴と黒のロングブーツが買ってあった。


 どちらの服も魅力的には思うが、自分が着るとなると勇気がいる物だった。しかしこれ以上客人を待たせる訳にはいかなかったので命は覚悟を決めて服を選び身に纏うと、化粧直しをしてメイクポーチに入っていたアクセサリーを付けてから、着なかった物と破れてしまった服と下着をショッピングバッグに入れてから、両腕に下げると部屋を出た。





「お待たせしました……」


 リビングで待機している男性陣の前に裾や襟、袖などにフリルがたっぷりの使われた小花柄のワンピース姿の命が必死に羞恥に耐えるような表情で現れた。


「わあ、ちーちゃん可愛い!絵本に出てくるお姫様みたいだよ!」


 トキワは歓声を上げて感激した様子で命を抱き上げた後に頬に口付けた。どうやら本気で命に着てもらいたからったらしい。


「ルール違反」

「ごめん、ちーちゃんが可愛すぎてつい。あ、でもこの服はあれも付けるんだよ」


 トキワはそう言ってショッピングバッグを漁ると、ワンピースと同じ柄のヘッドドレスを手にして命の頭に取り付けた。


「これで完璧だね。ああ、俺のお姫様……」


 一人盛り上がっているトキワは置いて、命が勇者達に視線を移すと、拘束されて目隠しまでされているエアハルトはともかく、他の三人は同情するような目でこちらを見ていたので、命はますますいたたまれなくなった。


「と、とりあえずエアハルトのせいですっかり遅くなってしまったが水鏡族の村へと向かおうか。確か神殿側が馬車を用意してくれたと言っていたね」


 弓使いのテリーが本来の目的を口にしたので、一応仕事中であるトキワは命を愛でるのを止めて彼に向き直った。


「はい、馭者の神官を待たせてしまってるので行きましょう」


 一同出掛ける準備をして戸締りをしてから、最後にエアハルトの拘束を解いて家を出ると、神官が待つ馬車の待機所へ向かった。幸い神官は室内の休憩室で暖を取っていたので、凍えることは無かったようだ。神官は勇者達に感激しながら挨拶をすると、出発の準備に取り掛かった。そしてすれ違い様に命のフリフリのワンピース姿を一瞥すると、お疲れ様ですと労いの言葉をかけた。


「ちーちゃん指輪嵌めて」


 トキワが右手を差し出して来たので命は化粧ポーチから彼の指輪を取り出して薬指に嵌めてあげた。その様子をエアハルトは羨ましそうに眺めていた。


「ペアリングとか甘々過ぎるだろうが!だが、私と絆も負けていないぞ。じつはこの日の為に彼女に指輪を用意したんだよ!見たいだろう?特別に見せてやろう!」


 誰も別に見たいなどと言っていないにも関わらず、エアハルトは懐から小箱を取り出して開けると、中からリングケースが出てきた。どうやらこの小箱は異空間収納機能を持つ貴重な魔道具のようだ。


「その箱欲しい。勇者様ちょうだい!」


 指輪よりも異空間収納に興味を持ったトキワにエアハルトは複雑な表情を浮かべて一つ咳をしてからリングケースをパカっと開けた。


「うわー、えげつない」


 エアハルトが光の神子へと用意した指輪は緻密にカットされた巨大なダイヤモンドが八つの立爪に収まっていて、リングの周囲にもダイヤモンドが埋め込まれた贅の限りを尽くした指輪だった。命は思わず声を上げてダイヤモンドの眩しさに目を細めた。


「でもサイズは合ってるの?」


 命の素朴な疑問にエアハルトは含み笑いをした。


「このリングは僕が特殊な魔術をかけた物で、絆が嵌めたらぴったりのサイズになるように作ってある」


 そこは抜かりがないとエアハルトは勝気に笑うと、リングケースを閉じて小箱に収納した。


「どうするのよ?勇者様本気で光の神子にプロポーズするつもりよ?」

「まあ、プロポーズをするのは自由だし。振られたら勇者様惚れっぽいし、神殿の年増三姉妹辺りをもらってくれたら助かるなんて考えている」

「前から思ってたんだけど年増三姉妹て失礼にも程があるんだけど?」


 コソコソと命とトキワが話をしていると、神官から準備が出来たと声を掛けられた。トキワは客人の勇者達に先に乗って貰ってから荷物を放り込んだ後に命を抱き上げて乗せると、最後に自分も乗った。


 席はテリー、エアハルト、ジョーゼフと並び、向かい側に命、トキワ、ハジメと並んで車内のバランスを取った。馭者の神官が最終確認をした後に馬車は水鏡族の村へと動き出す。 


 一同黙り込んでいたが、命はいい機会だと思い、同じ弓使いのテリーにいくつか質問をして、弓談義に花を咲かせていた。他の男と仲良く話す命にトキワは嫉妬で狂いそうだったが、彼女と手を繋ぎ指を絡ませることで耐え忍ぶ。一方でエアハルトはあともう少しで光の神子に会える興奮から鼻の下をだらしなく伸ばしていた。


 しかしあと一時間ほどで村に辿り着くところで馬車が急停車した。トキワは命を咄嗟に支えて完全に止まったのを確認してから馬車から出て、神官の様子を見に行くと、神官は馬車全体に結界を張っていた。


「風の神子代行、前方に魔物らしき影があります。恐らくは上位の物かと」


 馬車が行き交う道は魔石が埋め込まれて結界が施されているため、ある程度の魔物は近寄らないが上位種はその限りではない。トキワはちょうど嫉妬心で鬱憤が溜まっていたので自分で始末しようと思ったが、久々に勇者達の実力が見たいと気が変わり彼らに任せるために馬車に戻った。


 


 

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