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158湯けむり温泉旅行5

 長い旅路を経て、命と桜はようやく温泉観光地へ着いた。自然に溢れた観光地は海が近く、青空と海が楽しめた。既に夕方になっていたので温泉独特の硫黄の匂いを感じながら予約していた旅館に向かい、チェックインをして従業員に部屋を案内してもらった。


「おお、こじんまりとしているが、中々きれいな部屋だな」

「うん、ゆっくりできそう!」


 命と桜はこの部屋に四泊して温泉に浸かったり、近くの観光地を楽しんだりする予定だ。二人は早速部屋を探検した。旅館には大浴場もあるが、各部屋に露天風呂も付いていた。命と桜が裸足になり露天風呂に出て周囲を見渡せば、夕日がきれいに樹々を照らして圧巻の景色だった。


「今日はとりあえず大浴場に行こう」

「ですよね!」


 桜が大浴場行きを提案すると、命も快諾して早速着替えと館内着を持って向かった。清潔感のある大浴場で二人は脱衣所で服を脱ぎ、洗い場で命は桜の背中を流してあげる。身を清めた後はまずは二人で内風呂に入った。硫黄の匂い漂う乳白色の温泉が先日までの労働と長距離移動の疲れを癒す。


「はあぁ、極楽……やっぱ温泉はいいな」

「ですよねぇ、癒されるぅ」


 命と桜は大きく息を吐いて温泉を身体に沁み渡らせた。今日は人もまばらだったので、足を伸ばしてリラックスする。


「桜先生とお風呂入るのって久しぶりだなー。いつ以来かな?」

「うーん、少なくともお前の胸が真っ平だった頃だな 」


 視線を温泉に浮かぶ命の胸に向けながら桜は思い返す。


「今ではすっかりデカくなって……ヤバいな触ってみてもいいか?」

「どうぞ。メイド時代、先輩達にほぼ毎日揉まれて慣れてるので」

「じゃ、遠慮なく」


 桜が命の胸を掴み揉みしだくと、水音と共に周囲に波紋が出来る。


「柔らかっ!なんか癖になるな。先輩メイドが毎日揉みたがる理由もわかる」

「それはどうもー。桜先生ならいつでも揉んでいいですよ」

「マジかー、じゃあトキワくんの前でガッツリ揉んでやろーっと」

「それは勘弁して。次は露天風呂に行きましょうよ」


 命は苦笑すると話題を逸らす様に露天風呂へと向かった。桜もそれに続く。露天風呂に出ると内湯で温まった身体を柔らかい風が心地よくさせる。肩を並べて夕焼けを眺めてから露天風呂から出ると、ジェットバスや電気風呂、壺湯、炭酸湯などバラエティ豊かに楽しんで、明日は岩盤浴に入ろうと約束して大浴場を出た。


 温泉に入ってすっかり空腹となった命と桜は館内着姿で旅館内のレストランで夕食を取る。魚を中心としたさっぱりとした食事を会話を交えながら楽しんでから部屋に戻ると、約束通り命は桜の腰をマッサージしてあげた。


「うひー、この調子で温泉に入ってマッサージしてもらってを繰り返したら腰痛が治るかもな」

「えー、じゃあマッサージ頑張ろうっと。桜先生には帰ったらまたバンバン働いて貰わなきゃならないしね」


 うつ伏せに寝る桜に跨って腰を優しく揉みながら命は桜に働けと促す。


「おいおい、老体に鞭を打たないでくれー」

「何言ってるの!桜先生はまだまだ若いですよ。最低でも新しい医者が来るまでは現役でいて下さいよ」

「新しい医者なんて来るのか?ただでさえ他の診療所もなり手がいなくて医者の高齢化で外から雇うか話し合っている所なのに」


 水鏡族の村は山奥にあるし、学生は学力の水準も低いため、村から医者になるため村を出る若者もごく稀だし、現在村の外から医者が来てくれたパターンは水鏡族の娘と結婚した医者が北の集落の診療所で勤めているくらいだった。


「最速はヒナちゃんが医者になることかな。カイちゃんにも期待しよう。ナースも欲しいからお姉ちゃんあと一人くらい産まないかな……」


 一番手っ取り早いのは身内に医者になってもらうことだと命は判断して甥っ子達に夢を託す発言をした。


「りーのとこは男女どっちが生まれても子供は二人と決めてると言ってたから、予定外が起きない限り無理だろう」


 レイトの収入が不安定でいつまでも出来る仕事ではないので夫婦で話し合った結果、経済面から子供は二人だけの予定だと以前祈が話していたのを桜は思い出したのだった。


「そっか、じゃあもしもの時は私が産むしかないのかな。とは言ってもまだ結婚さえしてないけどね」

「あのなー、無理に診療所を守ろうとしなくてもいいんだぞ?もしもの時は知り合いに、それこそアンドレアナム伯爵に掛け合ってやってくれそうな医者を紹介してもらうから問題ないぞ」


 桜は心配無用と言わんばかりに思いつく中で一番大きな人脈を挙げて命を安心させようとした。


「それはわかっているけど、やっぱり血縁に継いでもらえたら嬉しいなって思うんですよ。おじいちゃんとおばあちゃんからお父さんとお母さんと桜先生へ、そして私と続いているんだし」

「ま、私が頑張ってる間は夢見てもいいが、もしもの時は現実を見てくれよ。ふう、だいぶ楽になったら眠くなって来た。ありがとうなちー、もう寝るわ」


 桜が感謝すると命はマッサージをする手を止めてから隣の自分が寝るベッドに移動した。


「じゃあ私も寝よ。おやすみなさい桜先生」

「おやすみ。明かり消しとくよ」


 そう言って桜は近くにあったランプの明かりを消すとベッドに横たわり目を閉じて眠りについた。

 

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