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129※残酷な描写ありマリンブルー8

 昼からは命とトキワは海の浅い場所でレンタルした子供用浮き輪にヒナタを乗せ浮き輪を引っ張って移動したり、水をかけたりして遊び相手をした。


 その間レイトは荷物番、実とイブキは海岸を散歩しているようだ。


 命とトキワがしばらくヒナタと遊んでいると、レイトが日が明るい内に帰ると呼びに来た。


 砂浜に戻り、命がトキワとレンタルした物を返却して戻ると、ヒナタがまだ遊ぶとレイトに駄々をこねていた。


「そんなこと言わないで、みんなで喫茶店でプリンを食べに行こう」

「プリン?食べる!」


 父の甘いお誘いにヒナタは目の色を変えて喜び、大人しく更衣室へと向かった。


 命は預けていた着替えなどが入っていたバッグを受け取り、実とシャワーを浴びて頭と身体を洗ってから、着替えを済ませた。


 そしてまたも実は先に更衣室を出て行き、自由奔放な妹に命がため息混じりに荷物をまとめ終えてから、五分後更衣室を出た。


 今回は更衣室のすぐ近くでトキワが待っていてくれていたので、命はほっとして駆け寄ろうとしたが、三角ビキニ姿の金髪の美女二人組がトキワに話しかけていたので、命は更衣室の出入り口から様子を窺った。


「あれはもしや、逆ナン?」


 ここは自分が「彼は私のものよ!」とでも言ってアピーした方がいいのかと悩んだが、迫力のある美女達と対抗する勇気もないし、更なる修羅場が起きそうだったので、命は静観することにした。


 しばらくして美女達はトキワの元から去って行ったので、命はいそいそと彼の元に駆け寄った。


「おまたせー」


 命はにっこり笑うと今こそ仕返しと時と言わんばかりにトキワの引き締まった左の二の腕を掴んで揉み始めた。


「……見てたの?」


 トキワは右手をかざして命の髪の毛を乾かしてあげながら問い詰めると、命は首を傾げてとぼけてから、トキワの二の腕を揉み続けた。



 海水浴場の出入り口でレイト達と合流すると、ヒナタと約束してしまっていたのでそのまま帰るわけに行かず、喫茶店に入る事になった。


「あ、私ちょっと買い物があるから行ってくる」

「わかった。終わったらこっちに来てくれ」


 命は一旦レイト達と喫茶店の前で別れて、雑貨屋に行く事にした。トキワもそれについて来る。


「これからトキワの誕生日プレゼント買うから、お店の前で待っててね」


 雑貨屋に辿り着くと、命はトキワを店の前に待たせてから店内に入った。


 ここの雑貨屋はアクセサリーが充実していて色々目移りしそうだったが、事前にどんな物にするか大体決めていたので、運良く希望に近い物が見つかり即決して購入すると、店員にラッピングをしてもらってから店を出た。


 そして喫茶店に戻り、身体が冷えていたので命は紅茶と焼き立てのアップルパイを、トキワはホットコーヒーとパンケーキを頼んでおやつにした。


 既にプリンを食べ終えたヒナタは目をとろんとさせているので、寝るのも時間の問題だろう。


 夕暮れが近づく頃、命達は港町を後にして獣道を通って村に帰ることにした。今回は討伐数を争わず、レイトはすっかり眠りについたヒナタをおんぶしているので、戦闘に参加せず結界を張って移動して、前衛を実とイブキ、後衛を命とトキワで進もうかとレイトが思案した。


「それならみんな疲れてるだろうから、俺が結界を張るよ。一度やってみたかったし」

「今朝のやつの広範囲版か。そうだな、頼む」


 トキワの提案をレイトは採用すると、トキワは早速獣道の入り口で結界を張ることにした。


「なるべくみんな近くにいてね。あとちーちゃんは俺の手を握ってくれてると助かる」


 レイト達はトキワの指示に従い、突如魔物に襲われても動ける間隔を維持しつつ固まり、命はトキワの右手を握った。


「何で手を握るの?水属性が必要なの?」

「単なる俺の精神安定用」


 真面目な顔をして話すので、下心がある訳ではなさそうだ。命が特に何も言い返さないでいると、トキワは深呼吸をしてから左手を翳して結界を発動させた。すると、厚い魔力の膜が命達を包み込む。


「よし、出来た。大丈夫だと思うけど、一応いつでも反撃できるように心掛けて」


 トキワの注意事項を聞いてから移動を開始する。軽く走って十分ほどで五体ほどの魔物が結界に体当たりをしたが、結界から真空波が起きて魔物達は血飛沫を上げて転がった。その後も魔物が結界に触れるたびに返り討ちにされていった。


「すっげー!トキワさんかっけーっス!」


 イブキがトキワに尊敬の眼差しを向けるので、トキワは少し得意げに笑う。


「お前もこのくらい出来ないと、実ちゃんとの結婚は認めないからな」

「押忍!頑張るっス!」


「いやいや、待て。この結界は俺も出来ないからな。出来ても三分持たねえよ」


 素直にトキワを見習おうとするイブキをレイトは止める。命から見てもこの結界はトキワみたいに魔力が無限にないと出来ない術だとわかる。


「しかしお前も制御が上手くなったよな。この術だってお前が命ちゃんが死んだと騙されて魔力が暴走した時の応用だしな」

「え、私いつの間に殺されてたんですか?」

「闇の神子と対峙した時だ。あの時命ちゃんの姿が見えなかった上に闇の神子が殺したとか言い出して、トキワが完全に我を失ってしまったんだよ」


 まさかあの事件にそんな裏側があったと思わなかった命は返す言葉が見つからなかった。


「というわけで、命ちゃんは村の平和のためにもあいつより一秒でも長く生きるように」


 もし実際に命が先に死んだら今度こそトキワは自我を保っていられないかもしれないとレイトは考えていた。


「……努力します」


 今の命にはそう返す事が精一杯だった。



 結局トキワの結界は獣道を抜けるまで一度も壊れることは無かったので、一行が戦うこと無く村に辿り着き、診療所前で各自解散となった。


 こうして命達の日帰り海水浴は終わりをつげた。



 





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