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128マリンブルー7

 命がトキワとボールを持って実達の元へ戻る頃には昼時だったので、レイトとヒナタがいるビーチパラソルにて姉妹の母が作った一口サイズのサンドイッチを広げて食べることにした。


 いつの間にかイブキが魔術で氷の器を作って飲み物を冷やしてくれていたので、それぞれ瓶の蓋を開けてそれも飲む。


「はいイブくん、あーん」


 実は人目を憚らずイブキにサンドイッチを食べさせている。


「おいしい?私も作ったんだよー!」

「すげぇ!実ちゃんおいしいよ!」


 見ているこっちが恥ずかしくなると思いつつ、命は玉子サンドをかじってからジンジャーエールを流し込む。トキワも食べさせて欲しいのか、視線を感じるも、命は照れ臭くて無視をした。


「はいイブキ、あーん」


 八つ当たりのつもりか、トキワがイブキにサンドイッチを無理やり食べさせれば、イブキは喉をつまらせて胸を叩く。


「きゃー!イブくん大丈夫ー?」


 甲斐甲斐しく実がイブキにオレンジジュースを飲ませて世話をする。どちらかというと実の方が彼にご執心のようだ。


「トキワ、あんまりイブキくんをいじめちゃだめだよ。ほら食べな」


 いじけさせた自分にも非がある気がして、命はトキワにサンドイッチを食べさせてあげると、トキワはサンドイッチを食べるついでに命の人差し指を食んでじっとりと舐めた。


「ちーちゃんの指おいしー」

「変態!」


 トキワの手を振り払い、命は舐められた手を濡れタオルで拭き、そのタオルでトキワをバシバシ叩いて憤慨した。


「お前ら子供のいる前でイチャつくなよ……」


 レイトは膝に乗せてるヒナタの目を左手で隠しながら、呻きつつ、サンドイッチを口に放り込んだ。



 サンドイッチだけじゃ足りなかった男性陣は屋台に追加で食べ物を調達しに行くらしいので、命と実はビーチパラソルで荷物番をする事にした。


「俺残ろうか?またナンパされたら嫌だし」

「心配しすぎ!ほら、食べたい物買っておいで」


 トキワが命達と留守番しようと申し出るが、命は手を振って追い払った。トキワは後ろ髪を引かれる思いでレイト達の後を追った。


「それでみーちゃん、イブキくんとはどんなきっかけで付き合ったの?」


 残された二人で日焼け止めを塗り直し合いをながら、命は実とイブキの馴れ初めを尋ねた。


「あのね、イブ君とは刀の訓練所に通い出した頃から一緒なんだけど、いつも一生懸命な所と気配り上手な所が好きになったの!あと顔!彫りが深いイケメン最高!」

「顔は……大事よね」


 男は顔じゃないとか言ったら特大のブーメランが返ってきそうなので、命はそこは認める。


「それで一昨年に訓練の休憩時間に呼び出して、私から告白して精霊祭に一緒に行こうって誘ったの」


 なかなか積極的な妹の恋愛模様に同じ歳の頃の自分はどうだったかと思い出すと、そういえば十歳の美少年に振り回されていたなと、思わず乾いた笑いが出てしまった。


「でね、聞いたと思うけど精霊祭での初デートでトキワお兄さまに見つかっちゃったのー!その時イブくんが堂々と『実ちゃんと交際してます』って宣言してくれて、あの時一生ついて行く!て思ったのー!」


 テンション高々に実は当時を思い出して、指を組んでうっとりとした表情を浮かべる。


「それでトキワはなんて言ったの?」


 賛成したのか反対したのか、以前命がトキワから聞いた話だとどうだったか知らなかった。


「『ふーん、そうなんだー』って。その後用事があるからってすぐどっかに行ったよ。あの時のお兄さまてちーちゃんが学校でいなかったから元気なかったし。それなのに珍しくあっちから話しかけて来たからビックリしちゃった!」


 元気がなくてもトキワなりに実が知らない男を連れている事を心配してくれたのだろう。彼の優しさに命は心の中で感謝して、もう少し優しくするべきかと思い直した。


「ねえ、君たち二人?」


 二人組の水鏡族の男性が命と実に話しかけて来た。またトキワに二の腕を揉まれてしまう。命は頭を抱えつつ、可愛い妹を守るべく二人組を追い払おうと顔を上げた。


「違うよー!三人だよ。ここにいるの」


 実は慈愛に満ちた表情で猫背気味にお腹を撫で始めたので、二人組は勿論命も呆気に取られてしまった。


「あはは、そうなんだ。お幸せに……」


 若干引き気味に男性二人組がナンパを諦めて去って行くと、命は思わず実に詰め寄った。


「う、嘘だよね?」

「今のところはねー!」

「今のところはって……」


 実の笑えない冗談に命は脱力していると、男性陣が食べ物を持って帰って来た。


「おかえりなさーい!あのねさっきナンパされちゃったー!」


 ナンパされた事を実に口止めするのを忘れた命は短い悲鳴を上げた。その後命は無心で焼きとうもろこしを食べるトキワに二の腕を揉まれ続けるのであった。




 



 

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