後悔
今日も私は図書室にいる。いつものように数冊の本を取り、いつもの席へ。そしていつもならそのまま人間観察を始めるのだが、いつもと違うことが一つだけあった。
私が座るいつもの席の対面に1人の女性が座って満面な笑みでこちらに向かって手を振っているのだ。そう満面な笑みで。
はぁ、大きなため息が無意識にあふれる。私は昨日女性に声をかけたことを本当に後悔しているのだ。もう一度言おう、本当に後悔しているのだ。
「何をため息を吐いているのかね?さくらくん」
ふざけた口調で話しかけてくる女性の名は椿茉友。彼女は列記とした幽霊なのだ。どうして幽霊がぁ~とかなんで私にだけ見えるの~とか疑問はもちろんあるが…正直どうでもいい。本音でいえば関わりたくないのだ。
「無視をするのはよくないぞぉ、さくらくん?」
と、視線を逸らしていた私の顔を覗き込んでくる。はっきり言ってうっとおしい。顔だけは綺麗なのが納得いかない。
「やめてください椿さん、私は忙しいので関わらないでください」
私がだした答えは拒絶。こうすれば大抵の人は関わってこない。そう私は望んでいたのだが、この人は人ではないことを私は忘れていた。
「断るのだ!やっとやっとやーっと、私が見える、話せる人が見つかったのに、逃すわけないでしょうよ!ねーねー、話そうよ~さくらくん?」
要するに、ようやく見つけた話し相手を逃してたまるかってことで強制友達みたいなことをさせられたいるのだ。迷惑な話だな。最初の知的で大人しそうなイメージはどこへやら、とことん構ってちゃんモードなのだ。しかし、私には関係ない。スルーして人間観察でもするか。
数時間後、時計に目をやるとそろそろ数分後にはチャイムが鳴りそうだ。横ではギャーギャー話してくる椿さんを適当にあしらいながら最後の1人を観察しようかなっと周りを見渡す。
ターゲットは隣のクラスの子。名前は確か原田さんだったかな。歴史本がある棚のところでスマホを弄っている。時にニヤニヤしているところをみると彼氏とかかな?彼女は見た目から優等生タイプ。確か委員長とかしてた気がする。隣のうるさい女にも見習ってほしいくらいお淑やかな女性だ。それにしても本当嬉しそうにスマホを見ているな。
「ねーねー、憲法について語ろうよ~」
うん。本当に見習ってほしいな。どんだけ法律が好きなんだよ…っとそろそろ時間だな。帰るとしますか。
「はぁ、はぁ、はぁ、お、お前が悪いんだぞ。だがどうすれば…そうだ!」
夜の学校がふけていく。