表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/262

089◇仮面の男を追って


   リン、ゴ――ン。


 ちょうど「日付更新時」の「朝の一打点」が鳴った。

 『地球』で言うと、午前零時だ。


 俺は『おトイレ』に向かうべく、暗い部屋から廊下に出た。


 そして、

(昨日は色々あったけど、終わってみれば充実したいい一日だったなあ)

 と思ったのも束の間。


 とんでもない事が起きた。


      ◇


「おートイレぇ。おトイレぇ」


 慣れない場所に「お泊り」したせいか、クリムソルダ嬢が『おトイレ』を探して小宮殿の中を彷徨(さまよ)っていた。


 『大宮殿島』が浮かぶ人造湖は、式典やお祭りの特別な日以外は「夜間航行禁止」だそうで、シンシアさんとクリムソルダ嬢も『全知全能神神殿』に戻れずに、『白百合の小宮殿』に「お泊り」したのだ。


 来た時みたいに『合体飛行魔法』で送る予定だったのに、プリムローズさんが疲れ果てて寝落ちしてしまったからだ。


 ただ……さすがに「清き乙女」の『巫女見習い』が「無断外泊」はNGなので、『★伝心☆』とか言う『神聖術法』で、『神殿』に連絡は入れたらしいけれど。


「はううう、さっきのー『仮面の男』の人はーどこー? 教えてくーだーさーいぃ」


 『仮面の男』?


 はて? クリムソルダ嬢は何を言ってるんだろう?

 俺の右目の『光眼(コウガン)』には「暗視機能」があるから判るけど、そんなヤツ居ないよ?


 次郎氏もここに泊まってるから、彼が「安眠用のアイマスク」でもつけて、うろついてたとかか?


「おートイレぇ、どこー? 『仮面の男』の人ぉ、どこぉ?」


 クリムソルダ嬢は、短いスリップというか長めのキャミソールというか、「見せたいのか見られたくないのか、どっちなんだ? はっきりしろっ!」と言いたくなるような、微妙な裾の長さの肌着を、寝着代わりにしていた。


 でも、お尻がギリで見えないな……と思っていたら、彼女がこっちを振り向いた……ああ、なんということでしょう!

 その肌着は、サイズが小さいのと、彼女のお胸が大きすぎるのが原因で、前の裾が大きくずり上がっていたのです。おへその辺りまで。


 先の「質問」の答えは、前面がYESで、背面がNOという『YES/NO』だったのです!

 まるで、どっかの新婚さんが使う枕みたいじゃないですか!


 とにかく、パンツ丸見えだ!


 ラッキースケベ・イベント発生!!


 脳内に棲む某アンドロイドから問われる。


(カメラ機能を起動しますか?  Y / N (イエス・オア・ノー)


 それはもちろん、「YES」なんやよ! がをがをー!!


 ……と言いたいところだが、『光眼(コウガン)』の「カメラ機能」は起動しない。


 なぜなら「光」が無いからだ。「暗い」からだ。


 俺の『光眼(コウガン)』は、大雑把に「発光」または「受光」のどちらかひとつの機能しか発揮出来ないので、今現在作動中の「受光」「暗視機能」をやめて、「発光」「照明」で明るく照らして、さらに「受光」「カメラ機能」に切り替えても、時間差で暗い映像しか撮影出来ないのであった(泣)。


 天井には、『魔法』で光る『水灯(すいとう)』が付いてるけど、俺には点灯させられない。


 だから、こういう場合は、ただ「見る」だけだ。

 そして普通に「思い出」として心に刻むしかないのだ(泣)。


 これはもう、造った『全知神』さまがポンコツだからに違いないのだ!


「やんっ!」


 クリムソルダ嬢が、ちょっとやらしく短い悲鳴をあげた。


 あ、これって『巫女見習い』が身につけてる『神授の真珠』の「官能」……イヤ、「感応」か?


 と思ったら、やっぱり――


      ☆☆


『だーれが『ポンコツ』だ。このシ○ンベンたれのチン○コ野郎が!!』


 『白百合の小宮殿』に『全知神』があらわれた。


 相変わらず『守護の星(普通サイズ)』と(おぼ)しき「虹色のキラキラ星を身にまとった半透明な幻影」だ。


 そして……めっちゃ「おこ」だ。酷いセリフだ。

 山岸○花子(※『ジョ○ョの奇妙な冒険 ダイヤ○ンドは砕けない』)みたいな事言ってやがるぜ。

 確かに『おトイレ』行くために、起きて来たとこだけれども。

 そしてもし俺が女だったら、もっと違う事言われただろうけれども。


(ハイ。申し訳ございません。失言でした。心よりお詫び申し上げます)

 

 俺は「思念(こころ)」で素直に謝った。


『だいたいなー……君がその気に成れば、右目だろうが左目だろうが好きなように思いのままだろうが』


 怒りのテンションが下がると、ちょっと眠そうな感じだ。

 てか、暗い場所だと、凄い眩しく光るんだな、このお方。


(左目も『錬金術』で作り替えられるって意味? 出来るんですか、そんなこと? ……ってあれ? 今回『全能神』さまは?)


『ああ、あいつ、趣味で蒐集(コレクション)してるものがあって、そっちで遊んでるよ』


(……そうなんスか? てかコレクション?)


『ああ、『地球』のモノだよ。じゃあ……』


(あ、待ってください!)

 消え去ろうとするのを、引き留めた。


(今日――イヤ、昨日『暗黒邪法』なんてものを見たんですけど、あんなのアリっスか?)


『ん? ナニソレ? 知らね』


 うわー、雑。


(……なんで『全知神』なのに、いろいろと知らない事多いんスか?)


『答えはカンタン。私は『全知神』じゃないからさ。君たち『人間』が、勝手にそう呼んでるだけだよ』


(え? それってどういう)


『引き留めるなよ。時間の制約があるんだ。じゃあな!』


(あっ、ちょっと!)


 もう、待ってはくれなかった。


 他に呼びようがないで、こう呼ぶけど――『全知神』は、消え去った。


      ◇


 左目も『光眼(コウガン)』に作り換える――か。


 ヤだよ。


 「魔眼」が両目なんて……片目だけだからカッコいいのに。


 男には「美学」ってもんがあんだよ。

 まあ、俺が密かに敬愛するル○ーシュ様も最後は両目だったけど……アレはストーリー展開上のアレだしな。


 まあ、別の方法を考えてみようっと。


 それにしても『全能神(あのじいさん)』。何を集めてんだろ?

 もしかして「エロ本一万冊ゲットです」とか……イヤ、これって『ディー○らぐ!』に出てくる架空のゲームの話だな。

 そんで、言い忘れてましたが、先の「がをがをー!!」は、from『彼女が○ラグをおられたら』っス。


 ふと視線を感じると、

「…………」

 クリムソルダ嬢が、無言で俺を見つめていた。

 『ご光臨』に、驚き過ぎているのかもしれない。硬直している。


 そして、

「ジンさーん。絶対にぃ誰にもー、言わないでー、下さいねぇ?」

 どうしようもなく、切なそうな表情で、何かをあきらめたかのように、そう言った。


 ――ま、まさか。


 クリムソルダ、お前もか?

 ここで漏らしちゃう気か?


 ヒロインでもチョロインでもなく、「ジョ○イン」の誕生か?


「イヤイヤイヤ! 待って! 待って!! 俺、『おトイレ』の場所知ってるから! すぐそこだから!!」


 慌てて止めたよ。


      ◇


「……はううう」


 どうやら、間一髪だったらしい。

 『おトイレ』の個室から安堵の声と、それ以外の音が漏れ聞こえて来る。


 にしても、間に合ってよかった。

 「宮殿」というと毎回のように『おトイレ』を探し回る俺だが、実は昨日のうちにここを利用していて、場所を知っていたのだ。


 昨夜飲んだ『精力剤スープ』の効果が凄すぎて、色々とギンギン(笑)になってしまった俺様は、やむを得ず一人でごそごそしようとして、ここに来た。


 そしてそこで、たまたまミーヨと出くわし、彼女の協力で(以下略)。


「祈願! ★励光(れいこう)っ☆」


 あれ? そのミーヨの声だ。

 キラキラ星が舞って、天井の『水灯(すいとう)』が、青白い光を放ちだした。


 ハイ、照明来ました!

 カメラ「ON」でーす!

 でもクリムソルダ嬢は、まだ『おトイレ』の中だよ。


「あー……やっぱり、ジンくんだ」


 慌てて起きて来たのか、ミーヨはあられもない姿だ。

 短いキャミソール的な寝着姿だ。パンツ丸見えだ(笑)。


 愛する『俺のチョロイン』だけに「YES/YES」だ。

 前からも後ろからも、美味しくいただきました――まる。

 ……イヤ、今のこの場合は「カメラ機能」の画像としてだけれども。


 そして……その後ろには、何故かシンシアさんもいる。はて?


「あのー、ジンさん。『神授の真珠』に感応があったのですけれど、もしかして……また『ご光臨』がありませんでした?」


 なるほど、そう言う事か。

 『巫女見習い』の装具『神授の真珠』に、振動がブルブルっ、と来ちゃったわけか。

 それで起き出して来ちゃったワケか。シンシアさんたら『夜の服』姿だよ。袖も裾も長い、白いバスローブみたいな服だよ。


 実際のところ、『夜の服』って「前合わせ」の寝間着で、ハッキリ言って「前を開いて」ナニかするための服だけど……彼女が着てると、そんな感じがまったくしない。


 この小宮殿の名(※白百合だ)のような、清楚で可憐なお姿だ。


 やっぱり服って、着る人にも()るのだ。

 ただ、長い黒髪を白い布で巻いて、頭部にまとめ上げてあったので、全体的にはキノコみたいに見える。

 コミカルな恰好ではあったけど、中身が美少女なので、それはそれで可愛いのだ。


「ハイ。たしかに『全知神』さまが」


 俺のしょーもない妄想が「読み取られた」所為(せい)で、深夜なのにご迷惑をおかけしてしまった。申し訳ございません。


「……何か、『お告げ』があったのですか?」

 真摯な様子で訊かれた。


 そんな大したこっちゃないので、どーしよう?


 何をどう言おうかと躊躇(ためら)っていると、


   ゴチン!


 この音、何の音だ?

 まるで誰かが『おトイレ』の個室の扉に、おでこをぶつけたような音がしたぞ。


   ギギギギイ――


 扉が内側から開いて、そこからクリムソルダ嬢が崩れ落ちるように出て来た。


「……はううう。寝てたですう」


 『おトイレ』の最中に寝落ちして、頭から扉に倒れ込んだらしい。


 ……とりあえず、この場は助かった。


      ◇


「握るね」


 手です(笑)。

 少し冷たい手で、右手を握られました。


「祈願! ★洗浄っ☆ ★洗髪っ☆ ★洗顔っ☆ ★乾燥っ☆ ★滅菌っ☆ ★消臭っっっっ☆!!」


 侍女服は着てないけれど、マジカルメイド・ミーヨちゃんが、俺と手を繋ぎながら『合体魔法』を連発した。

 昨日の1.5倍の六連射だ。もの凄い。


   キラキラキラキラキラキラキラキラン☆


 膨大な数の『守護の星(普通サイズ)』だ。虹色のキラキラ星が乱舞してる。


「……あっ」

 小さく呻いたミーヨがよろめいて、俺にもたれかかって来た。


 『魔法』って、いっぱい使うと、疲れるらしいのだ。

 体内に常駐してるナノマシン的な『守護の星(極小サイズ)』が、体から抜けていくかららしい。


 ただ、俺の手を握って『合体』してたし、そういう(たぐい)の消耗じゃなくて、最後の『★消臭っっっっ☆』に気合を入れ過ぎて、一時的に立ちくらみ状態なんじゃないのか? って気もするけれども。


「疲れ、(おとろ)えし者に(みなぎ)活力(ちから)を。☆賦活(ふかつ)の手☆!」


 シンシアさんが白い光を(まと)った右の(てのひら)で、ミーヨのお尻を、ばちーん! と引っ叩いた(笑)。


 何の前フリも無く、いきなりだったので、正直驚きました。

 ちなみに、叩いたのはパンツの上からでした。生じゃなかったっス。


「うええっ!」

 ミーヨが喜んでいる?

 いいなー。俺、『★不可侵の被膜☆』のせいで、それ出来ないんだよなー。

 俺もやりたいなー「お尻ぺんぺん」。


()う。なに今の?」

 ミーヨがお尻をさすってる。間抜けな感じが可愛い。


「叩く必要はなかったのですけれど……疲れをとり、元気付けるものなんです」

「そうなんだ? ありがとう、シンシアちゃん。……ぼそぼそ(祈願。★後始末☆)」


「……二人とも、本当にありがとう」

 色々と楽しかったので、深く感謝だ!


 そして補足すると、『おトイレ』で用を足した本人以外は『★後始末☆』を発動出来ないので、他人が色々と「お世話」をしてあげる場合には、先刻のような衛生系魔法の連発になるらしい。


「……はううう」

 ペッカペカに綺麗になったクリムソルダ嬢が、俺たちを怯えたように見つめていた。


 怯えにシンクロして、お胸も小刻みに揺れている。

 明るい場所で改めて見ると、やはり凄い胸だ。正直言って、顔からダイヴしたい。


「い、今のはー、『握手会』のー、必殺技のー『☆賦活の手☆』ですねぇ?」

 何に怯えてるのかと思ったら、シンシアさんの『癒し手』の力に驚いたらしい。


「シンシアさーん、すごーいですう」


 クリムソルダ嬢が、あまり緊縛感……はなくて当然だ。

 あまり緊迫感なく、のんびりと言った。


「ところで……『握手会』って何?」

 訊いてみた。

 やっぱ「会いに行けるアイドル」みたいな?

 てか、そんな催しで「必殺」の技を使うの?


「『握手会』って言うのはー、ですねー、『巫女選挙』二日目にぃ、行われるぅ、応援して下さるぅ方々とのー、ふーれーあーいーの(つど)いのー、事なんですう」


 出来ればシンシアさんに答えて欲しかったけど、クリムソルダ嬢が、のんびりぽわわーん、と教えてくれた。


 『巫女選挙』の最中に、そんなのがあるんだ?


 『☆賦活の手☆』って、触れた相手に対するエナジーチャージ技のようだし、『握手会』でそれやったら、確実に「釣れ」そうだな。なるほど。


 二人は『巫女選挙』で戦うライバル同士だから、クリムソルダ嬢は凄い胸囲……違わないけど、スゴい脅威に感じたのかな?


 と言うか……それって……。


「シンシアさん。それもやっぱり体内の『守護の星(極小サイズ)』を他人に譲り渡す事になるんじゃないんですか?」


 『守護の星(極小サイズ)』は名前の通り、生物の生命活動や健康を守っているものらしい。


 詳細は不明だけど、『癒し手』として「覚醒した者」だけが、自身の「それ」を他人に譲り渡し、注ぎ込む事によって、病気や怪我を癒せるのだ。


 見た感じ、「それ」を受け取った側には、かなりの疲労回復効果があるらしい。

 ただし、失った側は――


「もっと自分を大事にしないと……あまり他人にばかり……」


 心配になって来た。

 『俺の聖女』シンシアさんは『癒し手』の力をカンタンに使い過ぎる。

 体内に無限に宿しているはずはないし、むやみやたらと他人に譲り渡していたら、自身の健康が損なわれるハズなのに……もっと自制すべきだ。


「ご心配いただいて、ありがとうございます。ジンさん」

 シンシアさんは、にっこりと微笑んだ。


「ですけど、ある液体で、しっかりと補充出来ますから、平気ですよ」

「……液体?」

「液体です」

「……飲み物じゃなくて?」

 ミーヨも疑問が湧いたらしい。液体って?


「ああ、あれですねぇ」

 クリムソルダ嬢が指差したのは、天井に設置された『魔法』で光る『水灯(すいとう)』だった。


「「『水灯(すいとう)』?」」


「はい。あの中に入ってる液体です」

「……前に聞きましたけど、その話。『ヒカリちゃん』の体液ですよね?」

「ええ、海を漂う光る女体樹(にょたいじゅ)『ヒカリちゃん』の体液です」

 シンシアさんは明快に言う。


 なんでも体内に溜まった液体を「腹パン」当てて吐き出させて、それを採取して濾過(ろか)したモノが『水灯(すいとう)』の中身らしいけど……それを……飲むの?


 一種の「生物濃縮」みたいな感じで、『守護の星(極小サイズ)』がいっぱい入ってるんだろうけれども。


「それって美味しいの?」

 ミーヨのストレートな問いに、

「……いえ、けして美味しくはないです」

 シンシアさんの美しいお顔が(ゆが)む。表情から推察するに……めっちゃ苦そう。


 先日、クリムソルダ嬢から『全知全能神神殿』の「七不思議」の話を聞いた。


 その中に、「人体発火現象」ならぬ「人体発光現象」の話があったのだけれど……今の話と何か関係ありそう。


「同じような効果がある『黄金茶(ごんちゃ)』は、とっても美味しいそうですよ?」

 シンシアさんが、お茶目に言った。


 俺もずっと飲みたいと思ってるんだよな。『黄金茶(ごんちゃ)』。

 俺の『錬金術』で、錬成(つく)れるように「ラーニング」したいから。

 ただ『赤茶あかちゃ』の最高級品だけに、希少で、めちゃめちゃ高価らしいのだ。


「ああ、アレですねぇ? 見た目がー、お○っ(モゴモゴ)」


 クリムソルダ嬢のお口を塞いだのは、ミーヨ先生だった。


      ◇


「そう言えば、クリムソルダさん。先刻言ってた『仮面の男』って? どんな人?」

 訊くの忘れてたよ。


「『仮面の男』? それって姫ちゃんとドロレスちゃんのお父さんの事じゃないの?」

 ミーヨは知ってるらしい。そう言われた。


「二人のお父さん? なんで『仮面』なんて付けてんだ?」


 実は昨日、俺の知らない所で、久々の親子の対面があったそうだ。

 そんで、第二侍女ポーニャ嬢によると、「何か仕出かしてる」らしいから……普段は素顔を隠してんのか?


「『涙目(ナミダメ)』でしたか?」

 クリムソルダ嬢に訊ねたのはシンシアさんだ。

「いいえー、違いますう。『頬傷(ホホキズ)』でしたー」

「では……別人ですね。どなたなんでしょう?」


 一連の会話が理解出来ない。


 『仮面』の意匠(デザイン)の話か?


 ミーヨを見ると、彼女は自分の目の下に、指で何か描いてみせた。

 漫画の「汗」みたいなカタチだ。


「それが『涙目(ナミダメ)』?」

「……(こくん)」


 「涙目」って「うるうる泣きそう」じゃなくて、ピエロのメイクみたいなティアドロップ。「涙滴(るいてき)」の事らしい。「頬傷(ホホキズ)」の方は……そのままだろうしな。

 『ブラック・○レット』の黒マントの怪人的なキャラは……どんなマスクだっけ?


 それはそれとして、もっと重要な事がある。


「そしたら俺たちとは全然無関係な人物が、『小宮殿(ここ)』に入り込んでたって事?」


 ナニソレ? 怖い。

 不審者の侵入をゆるしてた、って事やん。


「ここってー、建物の端っこぉ、ですよねー、さっきはー、こちら側にぃ、追いかけて来たんですう。でもぉ、見失いましたぁ」


 行き止まりに追い込んだのに、居なくなったって事?

 ヤだあ、怖ーい。


「この先には『おトイレ』しかありませんよ」

「でも●器を持ち上げれば、人ひとりくらいは入れるよ、下水溝に」

 ミーヨの言う通り、それは可能だ。

 『魔法合金』ミスロリ(※実はステンレス鋼)の漏斗(ロウト)型●器は、容易に持ち上げられるのだ。そこから、万歳しながら真下に落下(笑)すれば、その下の下水溝に入れるはずだ。そんなヤツはいないだろうけれども。……イヤ、むしろ不審者の中には、そんな人もいるだろうな。


「『大宮殿』のー、『おトイレ』みーたーいーにぃ、『開かずの扉』はないんですかあ?」

「クリムソルダさん。それは『神殿七不思議』のうちのひとつでしょう?」

 シンシアさんが、即座に指摘した。俗に言う「突っ込み」だ。


 どこでも似たような話はあるんだなあ……てか、俺も突っ込みたい。

 クリちゃん。『大宮殿』に入った事あるのか? 『おっぱい宮殿』に?

 そんで、そんなのあったかな? 昨日、入ったよ、『双丘大宮殿』の『おトイレ』に。


「とにかく、どーする? わたしたちで探し出して、捕まえる?」


 ミーヨが、いらん事を言い出した。


      ◇


 結局、そーなった。


 俺は見張りの為、廊下にいる。

 女子三人は、寝間着姿だったので、着替えに行っちゃったよ。


 そこに――


「お兄さんじゃないですか? そこで何してるんですか?」

「ドロレスちゃんこそ、こんな時間に……何を?」

「あたしはウ○コしに来たんですけど」

「めっ!」

「はい」


      ◇


 俺は事情を説明した。


「なるほど、そんな事が」


 『おトイレ』の個室からは納得した声と、それ以外の音が漏れ聞こえて来る。


「「「おまたー」」」


 これも「めっ!」だな。

 着替え終えて、女子三人がやって来たよ。


「祈願! ★後始末っ☆」

 ドロレスちゃんの声だ。


   ガチャリ


「それでは、行きましょうか」

 すべきことを終えて、個室から出て来たドロレスちゃんが、颯爽(さっそう)としている。色々とスッキリしたようだ。


 さあ、冒険の始まりだ。


      ◆


 期待はしないで下さい――まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ