089◇仮面の男を追って
リン、ゴ――ン。
ちょうど「日付更新時」の「朝の一打点」が鳴った。
『地球』で言うと、午前零時だ。
俺は『おトイレ』に向かうべく、暗い部屋から廊下に出た。
そして、
(昨日は色々あったけど、終わってみれば充実したいい一日だったなあ)
と思ったのも束の間。
とんでもない事が起きた。
◇
「おートイレぇ。おトイレぇ」
慣れない場所に「お泊り」したせいか、クリムソルダ嬢が『おトイレ』を探して小宮殿の中を彷徨っていた。
『大宮殿島』が浮かぶ人造湖は、式典やお祭りの特別な日以外は「夜間航行禁止」だそうで、シンシアさんとクリムソルダ嬢も『全知全能神神殿』に戻れずに、『白百合の小宮殿』に「お泊り」したのだ。
来た時みたいに『合体飛行魔法』で送る予定だったのに、プリムローズさんが疲れ果てて寝落ちしてしまったからだ。
ただ……さすがに「清き乙女」の『巫女見習い』が「無断外泊」はNGなので、『★伝心☆』とか言う『神聖術法』で、『神殿』に連絡は入れたらしいけれど。
「はううう、さっきのー『仮面の男』の人はーどこー? 教えてくーだーさーいぃ」
『仮面の男』?
はて? クリムソルダ嬢は何を言ってるんだろう?
俺の右目の『光眼』には「暗視機能」があるから判るけど、そんなヤツ居ないよ?
次郎氏もここに泊まってるから、彼が「安眠用のアイマスク」でもつけて、うろついてたとかか?
「おートイレぇ、どこー? 『仮面の男』の人ぉ、どこぉ?」
クリムソルダ嬢は、短いスリップというか長めのキャミソールというか、「見せたいのか見られたくないのか、どっちなんだ? はっきりしろっ!」と言いたくなるような、微妙な裾の長さの肌着を、寝着代わりにしていた。
でも、お尻がギリで見えないな……と思っていたら、彼女がこっちを振り向いた……ああ、なんということでしょう!
その肌着は、サイズが小さいのと、彼女のお胸が大きすぎるのが原因で、前の裾が大きくずり上がっていたのです。おへその辺りまで。
先の「質問」の答えは、前面がYESで、背面がNOという『YES/NO』だったのです!
まるで、どっかの新婚さんが使う枕みたいじゃないですか!
とにかく、パンツ丸見えだ!
ラッキースケベ・イベント発生!!
脳内に棲む某アンドロイドから問われる。
(カメラ機能を起動しますか? Y / N )
それはもちろん、「YES」なんやよ! がをがをー!!
……と言いたいところだが、『光眼』の「カメラ機能」は起動しない。
なぜなら「光」が無いからだ。「暗い」からだ。
俺の『光眼』は、大雑把に「発光」または「受光」のどちらかひとつの機能しか発揮出来ないので、今現在作動中の「受光」「暗視機能」をやめて、「発光」「照明」で明るく照らして、さらに「受光」「カメラ機能」に切り替えても、時間差で暗い映像しか撮影出来ないのであった(泣)。
天井には、『魔法』で光る『水灯』が付いてるけど、俺には点灯させられない。
だから、こういう場合は、ただ「見る」だけだ。
そして普通に「思い出」として心に刻むしかないのだ(泣)。
これはもう、造った『全知神』さまがポンコツだからに違いないのだ!
「やんっ!」
クリムソルダ嬢が、ちょっとやらしく短い悲鳴をあげた。
あ、これって『巫女見習い』が身につけてる『神授の真珠』の「官能」……イヤ、「感応」か?
と思ったら、やっぱり――
☆☆
『だーれが『ポンコツ』だ。このシ○ンベンたれのチン○コ野郎が!!』
『白百合の小宮殿』に『全知神』があらわれた。
相変わらず『守護の星(普通サイズ)』と思しき「虹色のキラキラ星を身にまとった半透明な幻影」だ。
そして……めっちゃ「おこ」だ。酷いセリフだ。
山岸○花子(※『ジョ○ョの奇妙な冒険 ダイヤ○ンドは砕けない』)みたいな事言ってやがるぜ。
確かに『おトイレ』行くために、起きて来たとこだけれども。
そしてもし俺が女だったら、もっと違う事言われただろうけれども。
(ハイ。申し訳ございません。失言でした。心よりお詫び申し上げます)
俺は「思念」で素直に謝った。
『だいたいなー……君がその気に成れば、右目だろうが左目だろうが好きなように思いのままだろうが』
怒りのテンションが下がると、ちょっと眠そうな感じだ。
てか、暗い場所だと、凄い眩しく光るんだな、このお方。
(左目も『錬金術』で作り替えられるって意味? 出来るんですか、そんなこと? ……ってあれ? 今回『全能神』さまは?)
『ああ、あいつ、趣味で蒐集してるものがあって、そっちで遊んでるよ』
(……そうなんスか? てかコレクション?)
『ああ、『地球』のモノだよ。じゃあ……』
(あ、待ってください!)
消え去ろうとするのを、引き留めた。
(今日――イヤ、昨日『暗黒邪法』なんてものを見たんですけど、あんなのアリっスか?)
『ん? ナニソレ? 知らね』
うわー、雑。
(……なんで『全知神』なのに、いろいろと知らない事多いんスか?)
『答えはカンタン。私は『全知神』じゃないからさ。君たち『人間』が、勝手にそう呼んでるだけだよ』
(え? それってどういう)
『引き留めるなよ。時間の制約があるんだ。じゃあな!』
(あっ、ちょっと!)
もう、待ってはくれなかった。
他に呼びようがないで、こう呼ぶけど――『全知神』は、消え去った。
◇
左目も『光眼』に作り換える――か。
ヤだよ。
「魔眼」が両目なんて……片目だけだからカッコいいのに。
男には「美学」ってもんがあんだよ。
まあ、俺が密かに敬愛するル○ーシュ様も最後は両目だったけど……アレはストーリー展開上のアレだしな。
まあ、別の方法を考えてみようっと。
それにしても『全能神』。何を集めてんだろ?
もしかして「エロ本一万冊ゲットです」とか……イヤ、これって『ディー○らぐ!』に出てくる架空のゲームの話だな。
そんで、言い忘れてましたが、先の「がをがをー!!」は、from『彼女が○ラグをおられたら』っス。
ふと視線を感じると、
「…………」
クリムソルダ嬢が、無言で俺を見つめていた。
『ご光臨』に、驚き過ぎているのかもしれない。硬直している。
そして、
「ジンさーん。絶対にぃ誰にもー、言わないでー、下さいねぇ?」
どうしようもなく、切なそうな表情で、何かをあきらめたかのように、そう言った。
――ま、まさか。
クリムソルダ、お前もか?
ここで漏らしちゃう気か?
ヒロインでもチョロインでもなく、「ジョ○イン」の誕生か?
「イヤイヤイヤ! 待って! 待って!! 俺、『おトイレ』の場所知ってるから! すぐそこだから!!」
慌てて止めたよ。
◇
「……はううう」
どうやら、間一髪だったらしい。
『おトイレ』の個室から安堵の声と、それ以外の音が漏れ聞こえて来る。
にしても、間に合ってよかった。
「宮殿」というと毎回のように『おトイレ』を探し回る俺だが、実は昨日のうちにここを利用していて、場所を知っていたのだ。
昨夜飲んだ『精力剤スープ』の効果が凄すぎて、色々とギンギン(笑)になってしまった俺様は、やむを得ず一人でごそごそしようとして、ここに来た。
そしてそこで、たまたまミーヨと出くわし、彼女の協力で(以下略)。
「祈願! ★励光っ☆」
あれ? そのミーヨの声だ。
キラキラ星が舞って、天井の『水灯』が、青白い光を放ちだした。
ハイ、照明来ました!
カメラ「ON」でーす!
でもクリムソルダ嬢は、まだ『おトイレ』の中だよ。
「あー……やっぱり、ジンくんだ」
慌てて起きて来たのか、ミーヨはあられもない姿だ。
短いキャミソール的な寝着姿だ。パンツ丸見えだ(笑)。
愛する『俺のチョロイン』だけに「YES/YES」だ。
前からも後ろからも、美味しくいただきました――まる。
……イヤ、今のこの場合は「カメラ機能」の画像としてだけれども。
そして……その後ろには、何故かシンシアさんもいる。はて?
「あのー、ジンさん。『神授の真珠』に感応があったのですけれど、もしかして……また『ご光臨』がありませんでした?」
なるほど、そう言う事か。
『巫女見習い』の装具『神授の真珠』に、振動がブルブルっ、と来ちゃったわけか。
それで起き出して来ちゃったワケか。シンシアさんたら『夜の服』姿だよ。袖も裾も長い、白いバスローブみたいな服だよ。
実際のところ、『夜の服』って「前合わせ」の寝間着で、ハッキリ言って「前を開いて」ナニかするための服だけど……彼女が着てると、そんな感じがまったくしない。
この小宮殿の名(※白百合だ)のような、清楚で可憐なお姿だ。
やっぱり服って、着る人にも依るのだ。
ただ、長い黒髪を白い布で巻いて、頭部にまとめ上げてあったので、全体的にはキノコみたいに見える。
コミカルな恰好ではあったけど、中身が美少女なので、それはそれで可愛いのだ。
「ハイ。たしかに『全知神』さまが」
俺のしょーもない妄想が「読み取られた」所為で、深夜なのにご迷惑をおかけしてしまった。申し訳ございません。
「……何か、『お告げ』があったのですか?」
真摯な様子で訊かれた。
そんな大したこっちゃないので、どーしよう?
何をどう言おうかと躊躇っていると、
ゴチン!
この音、何の音だ?
まるで誰かが『おトイレ』の個室の扉に、おでこをぶつけたような音がしたぞ。
ギギギギイ――
扉が内側から開いて、そこからクリムソルダ嬢が崩れ落ちるように出て来た。
「……はううう。寝てたですう」
『おトイレ』の最中に寝落ちして、頭から扉に倒れ込んだらしい。
……とりあえず、この場は助かった。
◇
「握るね」
手です(笑)。
少し冷たい手で、右手を握られました。
「祈願! ★洗浄っ☆ ★洗髪っ☆ ★洗顔っ☆ ★乾燥っ☆ ★滅菌っ☆ ★消臭っっっっ☆!!」
侍女服は着てないけれど、マジカルメイド・ミーヨちゃんが、俺と手を繋ぎながら『合体魔法』を連発した。
昨日の1.5倍の六連射だ。もの凄い。
キラキラキラキラキラキラキラキラン☆
膨大な数の『守護の星(普通サイズ)』だ。虹色のキラキラ星が乱舞してる。
「……あっ」
小さく呻いたミーヨがよろめいて、俺にもたれかかって来た。
『魔法』って、いっぱい使うと、疲れるらしいのだ。
体内に常駐してるナノマシン的な『守護の星(極小サイズ)』が、体から抜けていくかららしい。
ただ、俺の手を握って『合体』してたし、そういう類の消耗じゃなくて、最後の『★消臭っっっっ☆』に気合を入れ過ぎて、一時的に立ちくらみ状態なんじゃないのか? って気もするけれども。
「疲れ、衰えし者に漲る活力を。☆賦活の手☆!」
シンシアさんが白い光を纏った右の掌で、ミーヨのお尻を、ばちーん! と引っ叩いた(笑)。
何の前フリも無く、いきなりだったので、正直驚きました。
ちなみに、叩いたのはパンツの上からでした。生じゃなかったっス。
「うええっ!」
ミーヨが喜んでいる?
いいなー。俺、『★不可侵の被膜☆』のせいで、それ出来ないんだよなー。
俺もやりたいなー「お尻ぺんぺん」。
「痛う。なに今の?」
ミーヨがお尻をさすってる。間抜けな感じが可愛い。
「叩く必要はなかったのですけれど……疲れをとり、元気付けるものなんです」
「そうなんだ? ありがとう、シンシアちゃん。……ぼそぼそ(祈願。★後始末☆)」
「……二人とも、本当にありがとう」
色々と楽しかったので、深く感謝だ!
そして補足すると、『おトイレ』で用を足した本人以外は『★後始末☆』を発動出来ないので、他人が色々と「お世話」をしてあげる場合には、先刻のような衛生系魔法の連発になるらしい。
「……はううう」
ペッカペカに綺麗になったクリムソルダ嬢が、俺たちを怯えたように見つめていた。
怯えにシンクロして、お胸も小刻みに揺れている。
明るい場所で改めて見ると、やはり凄い胸だ。正直言って、顔からダイヴしたい。
「い、今のはー、『握手会』のー、必殺技のー『☆賦活の手☆』ですねぇ?」
何に怯えてるのかと思ったら、シンシアさんの『癒し手』の力に驚いたらしい。
「シンシアさーん、すごーいですう」
クリムソルダ嬢が、あまり緊縛感……はなくて当然だ。
あまり緊迫感なく、のんびりと言った。
「ところで……『握手会』って何?」
訊いてみた。
やっぱ「会いに行けるアイドル」みたいな?
てか、そんな催しで「必殺」の技を使うの?
「『握手会』って言うのはー、ですねー、『巫女選挙』二日目にぃ、行われるぅ、応援して下さるぅ方々とのー、ふーれーあーいーの集いのー、事なんですう」
出来ればシンシアさんに答えて欲しかったけど、クリムソルダ嬢が、のんびりぽわわーん、と教えてくれた。
『巫女選挙』の最中に、そんなのがあるんだ?
『☆賦活の手☆』って、触れた相手に対するエナジーチャージ技のようだし、『握手会』でそれやったら、確実に「釣れ」そうだな。なるほど。
二人は『巫女選挙』で戦うライバル同士だから、クリムソルダ嬢は凄い胸囲……違わないけど、スゴい脅威に感じたのかな?
と言うか……それって……。
「シンシアさん。それもやっぱり体内の『守護の星(極小サイズ)』を他人に譲り渡す事になるんじゃないんですか?」
『守護の星(極小サイズ)』は名前の通り、生物の生命活動や健康を守っているものらしい。
詳細は不明だけど、『癒し手』として「覚醒した者」だけが、自身の「それ」を他人に譲り渡し、注ぎ込む事によって、病気や怪我を癒せるのだ。
見た感じ、「それ」を受け取った側には、かなりの疲労回復効果があるらしい。
ただし、失った側は――
「もっと自分を大事にしないと……あまり他人にばかり……」
心配になって来た。
『俺の聖女』シンシアさんは『癒し手』の力をカンタンに使い過ぎる。
体内に無限に宿しているはずはないし、むやみやたらと他人に譲り渡していたら、自身の健康が損なわれるハズなのに……もっと自制すべきだ。
「ご心配いただいて、ありがとうございます。ジンさん」
シンシアさんは、にっこりと微笑んだ。
「ですけど、ある液体で、しっかりと補充出来ますから、平気ですよ」
「……液体?」
「液体です」
「……飲み物じゃなくて?」
ミーヨも疑問が湧いたらしい。液体って?
「ああ、あれですねぇ」
クリムソルダ嬢が指差したのは、天井に設置された『魔法』で光る『水灯』だった。
「「『水灯』?」」
「はい。あの中に入ってる液体です」
「……前に聞きましたけど、その話。『ヒカリちゃん』の体液ですよね?」
「ええ、海を漂う光る女体樹『ヒカリちゃん』の体液です」
シンシアさんは明快に言う。
なんでも体内に溜まった液体を「腹パン」当てて吐き出させて、それを採取して濾過したモノが『水灯』の中身らしいけど……それを……飲むの?
一種の「生物濃縮」みたいな感じで、『守護の星(極小サイズ)』がいっぱい入ってるんだろうけれども。
「それって美味しいの?」
ミーヨのストレートな問いに、
「……いえ、けして美味しくはないです」
シンシアさんの美しいお顔が歪む。表情から推察するに……めっちゃ苦そう。
先日、クリムソルダ嬢から『全知全能神神殿』の「七不思議」の話を聞いた。
その中に、「人体発火現象」ならぬ「人体発光現象」の話があったのだけれど……今の話と何か関係ありそう。
「同じような効果がある『黄金茶』は、とっても美味しいそうですよ?」
シンシアさんが、お茶目に言った。
俺もずっと飲みたいと思ってるんだよな。『黄金茶』。
俺の『錬金術』で、錬成れるように「ラーニング」したいから。
ただ『赤茶』の最高級品だけに、希少で、めちゃめちゃ高価らしいのだ。
「ああ、アレですねぇ? 見た目がー、お○っ(モゴモゴ)」
クリムソルダ嬢のお口を塞いだのは、ミーヨ先生だった。
◇
「そう言えば、クリムソルダさん。先刻言ってた『仮面の男』って? どんな人?」
訊くの忘れてたよ。
「『仮面の男』? それって姫ちゃんとドロレスちゃんのお父さんの事じゃないの?」
ミーヨは知ってるらしい。そう言われた。
「二人のお父さん? なんで『仮面』なんて付けてんだ?」
実は昨日、俺の知らない所で、久々の親子の対面があったそうだ。
そんで、第二侍女ポーニャ嬢によると、「何か仕出かしてる」らしいから……普段は素顔を隠してんのか?
「『涙目』でしたか?」
クリムソルダ嬢に訊ねたのはシンシアさんだ。
「いいえー、違いますう。『頬傷』でしたー」
「では……別人ですね。どなたなんでしょう?」
一連の会話が理解出来ない。
『仮面』の意匠の話か?
ミーヨを見ると、彼女は自分の目の下に、指で何か描いてみせた。
漫画の「汗」みたいなカタチだ。
「それが『涙目』?」
「……(こくん)」
「涙目」って「うるうる泣きそう」じゃなくて、ピエロのメイクみたいなティアドロップ。「涙滴」の事らしい。「頬傷」の方は……そのままだろうしな。
『ブラック・○レット』の黒マントの怪人的なキャラは……どんなマスクだっけ?
それはそれとして、もっと重要な事がある。
「そしたら俺たちとは全然無関係な人物が、『小宮殿』に入り込んでたって事?」
ナニソレ? 怖い。
不審者の侵入をゆるしてた、って事やん。
「ここってー、建物の端っこぉ、ですよねー、さっきはー、こちら側にぃ、追いかけて来たんですう。でもぉ、見失いましたぁ」
行き止まりに追い込んだのに、居なくなったって事?
ヤだあ、怖ーい。
「この先には『おトイレ』しかありませんよ」
「でも●器を持ち上げれば、人ひとりくらいは入れるよ、下水溝に」
ミーヨの言う通り、それは可能だ。
『魔法合金』ミスロリ(※実はステンレス鋼)の漏斗型●器は、容易に持ち上げられるのだ。そこから、万歳しながら真下に落下(笑)すれば、その下の下水溝に入れるはずだ。そんなヤツはいないだろうけれども。……イヤ、むしろ不審者の中には、そんな人もいるだろうな。
「『大宮殿』のー、『おトイレ』みーたーいーにぃ、『開かずの扉』はないんですかあ?」
「クリムソルダさん。それは『神殿七不思議』のうちのひとつでしょう?」
シンシアさんが、即座に指摘した。俗に言う「突っ込み」だ。
どこでも似たような話はあるんだなあ……てか、俺も突っ込みたい。
クリちゃん。『大宮殿』に入った事あるのか? 『おっぱい宮殿』に?
そんで、そんなのあったかな? 昨日、入ったよ、『双丘大宮殿』の『おトイレ』に。
「とにかく、どーする? わたしたちで探し出して、捕まえる?」
ミーヨが、いらん事を言い出した。
◇
結局、そーなった。
俺は見張りの為、廊下にいる。
女子三人は、寝間着姿だったので、着替えに行っちゃったよ。
そこに――
「お兄さんじゃないですか? そこで何してるんですか?」
「ドロレスちゃんこそ、こんな時間に……何を?」
「あたしはウ○コしに来たんですけど」
「めっ!」
「はい」
◇
俺は事情を説明した。
「なるほど、そんな事が」
『おトイレ』の個室からは納得した声と、それ以外の音が漏れ聞こえて来る。
「「「おまたー」」」
これも「めっ!」だな。
着替え終えて、女子三人がやって来たよ。
「祈願! ★後始末っ☆」
ドロレスちゃんの声だ。
ガチャリ
「それでは、行きましょうか」
すべきことを終えて、個室から出て来たドロレスちゃんが、颯爽としている。色々とスッキリしたようだ。
さあ、冒険の始まりだ。
◆
期待はしないで下さい――まる。




