088◇白と白と白と黒い星[改訂版]
いろいろと訂正しました。
「ど、どうですか? シンシアさん」
俺は駆けつけてくれた黒髪の美少女シンシアさんに訊ねた。
「はい、生命に別状は有りません」
純白の『巫女見習い』の装いをした『俺の聖女』が、力強く保証してくれた。
「よかった……」
思わず、安堵の呟きが漏れる。
いやしくも『女王国』の第三王女たるラウラ姫が、いやしく俺の残した毒入り(?)スープを飲み漁り、全身に熱さを感じて倒れこむという失態を演じてしまったのだ。
あと、その妹のドロレスちゃんと「六本指の猫」茶トラ君も。
プリムローズさんは幸いな事にスープは飲んでなくて、寝不足と過労からの胃痛だったようで、状況を説明したら、すぐに復活した。
そして、女王位争いの『星』獲りレースに影響がありそうだったので、極秘裏に三人を治療したかった俺たちは、知己である『癒し手』のシンシアさんの助けを借りる事にしたのだ。
◇
俺と『合体(後ろから抱きつくぜ)』したプリムローズさんが『飛行魔法』で人造湖を超え、『永遠の道』の『大交差』も飛び越えて、『全知全能神神殿』のツインタワーに着地するという荒技で、『全知全能神神殿』の警備網に故意にひっかかり、囮になった俺が、追い詰められてタワーの物見台から地上にダイヴするという陽動作戦を決行するぜ。
その間に『巫女見習い』に変装(ドロレスちゃんが『王都』に持ち込んだ荷物の大半が、変装用のコスプレ衣装だったのだ)したプリムローズさんがシンシアさんとクリムソルダ嬢を秘かに連れ出し、今度は4人で『合体』して、夜の闇に紛れて『飛行魔法』で空を飛んで、ここ『白百合の小宮殿』に降り立つぜ。
その際、俺は3人のタイプの違う美少女に抱きつかれるという素晴らしい体験をするぜ。
この3人とは、もっと深い関係になれるだろう。
そんな予感がするぜ。
◇
――というような「作戦」を立案したら、プリムローズさんに、
「よしなさい」
と怒られたので、
「ハイ」
と素直に答えた俺は、きちんとした正規のルートで『全知全能神神殿』に『癒し手』の緊急派遣を要請した。
知り合いである『巫女見習い』のシンシアさんの名前を出して、彼女に来てもらえるように懇願したのだ。
そして、その際「猫の治療も出来る方を」とお願いしたら、「ならばこの人」と太鼓腹……イヤ、それはラウラ姫の姉たちだ。じゃなくて太鼓判を押されたのが、なんとクリムソルダ嬢だったのだ。
ただ、一刻を争う事態だったので、『合体』して『飛行魔法』を使用したのは事実なのだった。
パイロット役のプリムローズさん。
『合体魔法』の核となる『賢者の玉』内臓(場所は内緒)の俺。後ろにクリムソルダ嬢。
そして黒髪の天使シンシアさんがいちばん背後で、白い翼を華麗にひらめかせたのだ(これはウソだけど)。
ちなみに、俺に背後から抱きついていたのは「メロンおっぱい」を持つクリムソルダ嬢だったけど、高所恐怖症らしくて、耳元でワーキャー騒がれ、お胸の感触を楽しむどころではなかった(これもウソだけど)。
それにしても、たった二日ぶりの再会のはずなのに……とても長い時間二人に会っていなかったような気がするのは何故だろう?
やっぱり、この二三日って「詰め込み過ぎ」だったのではないだろうか? そんな気がするぜ。
◇
「呼吸は乱れがちですが、アレの脈動は落ち着いていらっしゃいます。一番の不自然な点はやはり、お身体がとても熱い事ですね」
シンシアさんは、緊急事態にもかかわらず、落ち着いていた。
大の苦手な「血」をきちんと「アレ」と言い換えて、自分を誤魔化してるのが、その証拠だ。
てか「アレの脈動」とか言われると、ナニか違う事考えちゃうよ。
「『神聖術法』の『解毒』も試みてみましたが、発動しませんでした」
シンシアさんはそう言って俺を見つめた。
「毒物が原因ではないようです」
毒じゃない?
「ご病気でもないようですし、このまま水分を摂りながら、お身体を冷やしつつ、容態を見守るのが一番かと思います。おふた方とも、なぜか全身に火照りを感じていらっしゃるようですし」
シンシアさんがどこか恥ずかしそうだ。
「「……(はふはふ)」」
ラウラ姫もドロレスちゃんも、身体を熱そうにして、息も荒い。
床に敷いた毛布の上に横たわって、顔を赤くして、潤んだ瞳をしている。
これって風邪なのかな?
でも、スープを飲んで、突然風邪をひくなんて聞いた事もない。
二人とも『全裸祭り』に参加中で、薄いエプロンみたいなものを着てるけど……冬ならともかく、今、夏だしな。
となりでは、
「うーん。毒をー、飲んじゃいましたねー、猫ちゃん。自然にぃ吐き出せればー、よかったのになぁ」
動物専門という極めてレアな『癒し手』クリムソルダ嬢が、そんな診断を下した。
どこからどうやって、ここまでやって来たのか謎だけど「六本指の猫」茶トラ君が、姫やドロレスちゃんが飲んだスープの残りを飲んで、自力で立てなくなって、へたり込んでいるのだ。
「人間にはー、普通にぃ食べれてもー、猫ちゃんにはー、食べちゃダメなものがー、あるんですよぉ」
のんびりと怒られた。
「毒」ってそういう意味? ガチな毒物じゃないのか?
じゃあ、みんなの体調の激変の原因はなんなの?
「ジンさん。お願いですう。『合体』ですう」
クリムソルダ嬢が、俺との『合体』を求めて来た。
もちろん性的な意味はない。
事前に、俺に触れながら『神聖術法』を使うと、効果がオオババに……イヤ、大幅に増強されると伝えておいたのだ。
非常時なので、秘密が知られるのもやむを得ないのだ。
てか、この子あんまり細かい事を気にしなさそうだし、上手く丸め込めそうな気がするぜ。
お胸も、まん丸いメロンおっぱいだしな。
「じゃあぁ、握りぃますねぇ」
クリムソルダ嬢がのんびりとそう言って、『全裸祭り』参加中で、なおかつ余計な事を考えて半△△状態の俺様の俺様を、左手でしっかりと握った。
「はううう」
俺は悶えた(笑)。
あれ? 性的な意味が含まれてたよ?
「「「「「……あ!」」」」」
シンシアさんと、ラウラ姫付き侍女軍団のみんなが唖然としてる。
「では行きますねー。悪いのー、悪いの、吸い出しちゃいますううう! ☆救いの手ぇ☆」
クリムソルダ嬢が空いた右手を茶トラ君のお腹にあてがって、『癒し手』の力を発動させた。
『魔法』と違って、『癒し手』の手が白く発光する。
――と思ってたら、今回はちょっと違うようだ。
まず、対象者(猫だけど)が「白い光」に包まれて、その光がクリムソルダ嬢の右手に吸い込まれてるような感じだった。
彼女の色白な右手で、茶トラ君から毒素的なヤツを吸い出してらしい。
彼女の色白な左手は、俺様の俺様を、ずっと握っている。いやらしい。
「うおー? すっげぇぇえ?」
クリムソルダ嬢が、のんびりと驚いてる。
ナニがどんな風に凄いと言うのだろう?
光がおさまると、茶トラ君が普段通り、のっそりと偉そうにしていた。
「……みぃあ゛あ゛あ゛」
お礼のつもりなのか、クリムソルダ嬢と俺の腕に、Mの模様のある狭い額を、ぐいっ、ぐいっ、と押し付けた。
そして、そのまま近くの長椅子に飛び乗って、大あくびした。
どうやら、彼の「毒」は抜けたらしい。
なんだっけ? デトリタス?
なんとなく海底のウミウシを思い出すな。『ア○アテラリウム』か?
あ、違うか、毒抜きは「デトックス」か?
「ジンくうん? クリちゃんに何教えたのー?」
ミーヨの声には「毒」がたっぷりと含まれていた。
「イヤ、ちゃんとさっき『手で握ってね』って言ったよ? ……って、もしかして原因、俺?」
でも部位を指定しないと、俺様の俺様を握るのか?
イヤ、ちょうどその時、クリムソルダ嬢から「見ましたよー、プロペラ踊りぃ、グルグル回ってましたねー」とか言われたから、変な思い込みがあって、勘違いしたんじゃないかって気がするけれども……。
「…………(ぽかーん)」
白色化してる。
「クリムソルダさん。もう完全に手遅れですけど、戒律。戒律!」
シンシアさんが、ぽかーんとして我を失ってるクリムソルダ嬢に声をかけた。
「は? はううう! いけないっ! ち○こ触っちゃった! じゃない! 今まさに、ち○こ握りしめちゃってるぅ!」
クリムソルダ嬢が、唐突に意識を取り戻して叫んだ。
言葉通り、思いっきり握られっぱなしなのだ。
俺様のその部位には、充実した充血感が。
脳内では、脳内麻薬的な幸福ホルモンが……。
「『巫女見習い』って男の子の、ち○こ見たり、ち○こ触ったり、ち○こ握ってたりしちゃいけない決まりなのにぃ!」
完全に取り乱してる。
でも放してくれない。
とても、気持ちいい。
「クリちゃん、落ち着いて! 離してから話して! あと言い過ぎ」
緊急時なので、仕方なく彼女を愛称で呼んでしまった。
ともかく、このままではマズい。
本日2回目の『暴発事故』が起きる危険が高まってる。すごく気持ちいいナリ。
「クリちゃん! それをそのまま握ってると危ないよ! 今すぐ手を放して!」
ミーヨが、何かの前兆を察知したらしい。俺様の俺様を危険物呼ばわりした。
「でも、わたしぃ、緊張するとぉ、手が震えてきちゃうクセがあってええええ!」
クリちゃんの手が、俺様の俺様を握ったまま、震え出して来たあああああ!
「そ、そんな事しちゃいけませんよ。『巫女見習い』さま」
人造湖での『事故』を思い出したらしい。アルマメロルトリア嬢が警告した。
「で、でもー、なぜかー、離れなくぅ、なっちゃって、るんですううううううう」
クリムソルダ嬢が半泣きだ。その手も小刻みに震えているうううううううう。
「10・9……」
誰だ? カウントダウン始めやがったのは?
第二侍女ポーニャ嬢か!?
マジでヤメて。
それに合わせて、ホントに発射しそう(笑)。
しかし、相手は「清き乙女」の『巫女見習い』。
今度こそ……今度こそ、成功させなくてはならない!
思わず韻踏んだYO!
食卓の上には「壺ミルク」があるはずだ。それを原料にして――
(精○錬成。コンデンス○ルク)
ああ、もっと簡単に「ホット○ルク」でよかったのに……。
俺のバカ。煮詰めて、練って、どーするYO?
「……8・7……」
(精○錬成。ホット○ルク)
イヤイヤイヤ、やっぱり飲み物・食べ物はやめとこう。
出て来る部位が部位だ。
「あー、お腹痛い」
プリムローズさんが、俺とミーヨが原因の寝不足と、主に俺が原因のストレスと過労から来た胃痛に耐えている。
俺のフィニッシュの後……イヤ、ラウラ姫とドロレスちゃんの治療が終わってから、シンシアさんに診てもらう予定なのだ。
「……6・5」
その間にも、カウントダウンは無情に続く。
(○液錬成。ボディシャンプー)
間に合え!
「……4……」
「「「「……ああ」」」」
見守るみんなから、嘆きのため息が漏れる。
「……3・2」
もう、誰にも止められない。
悲劇はまた繰り返されるのか?
誰しもが、そう思った瞬間だった。
「居ましたよ! あの婆ちゃん、見つけて来たっす!」
次郎氏の声だ。
そして――今回は辛うじて間に合った。
チン!
ポーニャ嬢がカウントダウンを終えるのと同時に、
「……1・0!!」
「…………う」
俺は『白い花』を咲かせた。
あ、間違えました!
完成した「ボディシャンプー」を放出しました。
「「「「「いや――――っ!!」」」」」
広範囲複数同時攻撃だったよ。
みんな覗き込むようにして見てたから。
「「「「「あわあわあわああわーっ!!」」」」」
なにせ、モノが「ボディシャンプー」なので、めっちゃ泡まみれっス。
「こ、これは……なんとした事ですじゃ!?」
第四侍女ベコジッタ婆だ。
あんたの所為だよ。俺の精じゃないよ。
◇
「祈願! みんなまとめて ★洗髪っ☆ みんなまとめて ★洗浄っ☆ みんなまとめて ★乾燥っ☆ みんなまとめて ★滅菌っ☆」
ミーヨがきちんと正しい部位(俺の手だ)を握って、『合体魔法』を四連射した。
うん、俺には無理な芸当だ。いろんな意味で。
キラキラキラキラキラキラキラン☆
凄まじい数の、虹色のキラキラ星が乱れ飛ぶ。
「ね? 『合体魔法』は正しく使えば、善。間違った使い方をすると、悪になるんだよ」
その「解説」は間違ってるぞ。
「はううう、ぶっかけーられてーしまいましたぁ!」
クリムソルダ嬢が、間抜けな感じて嘆いていた。
がっくりとうなだれて、大きなお胸が重たそうだ。
しかし、マジカルメイド・ミーヨちゃんの活躍で、みんなの泡まみれ状態は終息した。
クリームソーダ……じゃなくて、クリムソルダ嬢も綺麗にペッカペカだ。
どうでもいいけど『前世』で「サイダー」に「牛乳」入れたら、盛大に泡噴いた記憶があるな。
「ダイエットコーラ」に何かのお菓子を入れると、とんでもない噴水状態になるの、何て言ったっけ? 「なんとかガイザー」か?
「「「……」」」
みんな無言だ。
「君だけじゃないよ!」と励ましかったけど、俺が言うのもな……。
てか、寸前でガチな「ぶっかけ」は回避してるんですけど気付いてます?
「……(ぷるぷる)」
一人だけ、物凄い回避能力を発揮したシンシアさんが、壁際で肩を震わせてる。
怒ってるワケではなく、きっと面白おかしかったんだろう。
「わたし、わたしぃ、戒律をー、破ってしまいましたぁ!」
クリムソルダ嬢が嘆く。
イヤイヤイヤ、別に汚れてはないよ?
みんな衛生的には、とても清潔で綺麗になってるよ。ミーヨの『魔法』で。
無関係な次郎氏や、第四侍女ベコジッタ嬢までもが、ペッカペカになってるし。
ん? ベコジッタ嬢……イヤ、だから「嬢」じゃねーよ。お年寄りだよ。
もう面倒だから「ベコちゃん」でいいや。
以後「ベコちゃん」と呼称しよう。
ベコちゃんは、侍女服のポケットから取り出した小さな砂時計をずっと見てる。
なんだろう? カップ麺でも……イヤ、ここは異世界だ。そんなわきゃないよ。
寓意か? 「自分には時間がない」とか?
「戒律をー、びりびりにぃ、破ってしまいましたー、お嫁にはー行けるとー思いますけど(ちらり)、もう『巫女選挙』には出れません――うえぇぇぇえええ!」
クリムソルダ嬢が、一瞬俺をチラ見したあとで大声で泣き出した。
その時だった。
「頃合いかの? 大丈夫じゃ、嬢ちゃん!」
第四侍女ベコちゃんだった。
「――我が生命を代償に奉げん! 暗黒邪法 ★空白の2ツンっ★」
あんたこそ、大丈夫か?
ベコちゃんは何かろくでもない事を口にして、変なポーズをとった。
『て○きゅう』の『夜叉の構○』そっくりだ。
……(さわさわさわっ)……★
なんだ? 『星』の動きがいつもと違う。
『魔法』発動時に何種類か見える『守護の星(普通サイズ)』の中の、いちばん小さい「黒い星」だけが、ざわざわざわっ、と蠢いているように見える。
それも、誰にも気付かれないような、隠密性の高い舞い飛び方だ。
そして、その「黒い星」の群れが、みんなの頭をこつん! と叩いた……のか?
「よし、これで皆の2ツン間の記憶が消えたじゃろう」
ベコちゃんは独り言ちた。
「……(呆然)」
『夜叉の○え』って「最大MPが20%増える」だけなんじゃないの?
そんで、「2ツン」って地球の「2分間」くらいなんだけど……そのあいだの記憶を消しただと?
ちなみにアニメ『て○きゅう』も2分(※9期目のみ2分30秒)だけど、観ると前後の記憶が無くなるぞ。
観終わった直後の感想が、毎回「ひでー」だぞ(※誉め言葉)。
それはそれとして、他人の「記憶を操作」するなんて……そんな事『魔法』で出来るのか?
――イヤ、『暗黒邪法』とか言ってたか?
ナニソレ?
『暗黒邪法』『★空白の2ツン★』とやらを掛けられた面々は――
「あれー、うーっとぉ?」
クリムソルダ嬢が呆然としてる。
「あれー? わたしぃ、泣いてるぅ?」
泣いてた理由を忘れて、流れる涙に驚いてる。
本当に、その間の記憶を失ってしまっているようだった。
「「「「「…………」」」」」
他のみんなも、なんかぽわーん、としてる。
――そして、唐突に笑いだした。
「「「「「うふふ。あはははは」」」」」
うわー。さすが『暗黒邪法』。
「こ、怖いんですけど。なにかヤバい後遺症でも出てるのか?」
そんな俺の呟きに、
「大丈夫ですじゃ、失った2ツン間を埋めるために、記憶の整合性を求めて夢を見とるようなもんじゃ、と妹が言っとりましたわい、って、な、何であんたは効いとらんのですか!?」
ベコちゃんは解説終了直後吃驚仰天した。
「え? 俺?」
なんか、ちょっと照れちゃうな。
でも秘密。『★不可侵の被膜☆』なんてものがあって、『魔法』とか『神聖術法』とかみんな反射して弾いちゃうとか、言えないじゃないですか?
「ふぬぬぬ。さすがは姫が見込んだお方。わしゃ、あんた様に一生ついて行きますわい!」
「あ、それはいいです。遠慮します」
「ふぬぬぬ。さすがは姫が見込んだお方」
こういうのはちゃんと断らないとな。後腐れのないように。
「「「「「…………(すうすう)」」」」」
みんなは寝ちゃってる。
完全にその『暗黒邪法』の副作用じゃないですか?
もう、コレ「催眠魔法」として使った方が、いろいろと悪用出来そうだな……。
そう言えば一昨日『王都』に着いた時に、俺様の暴発事故……イヤ、華麗に咲いた『白い花』の事を忘れるために、プリムローズさんが自分自身に『記憶消去』の『魔法』を発動させてたっけ……あの時彼女は壁に頭突きして気を失ったんだったな。同じ原理なのか? 知らんけど。
「ところで双子の妹さんって、女王陛下の元側近の人ですよね?」
流れから言って、ヘルス……デリ……えーと、違う。
あ、思い出した。ヘルメス・トリスメギストス……ああ、こっちも長くて面倒だから、もう「歌川シゲ」でいいや。
『女王国』を陰から操った「歌川シゲ」の生まれ変わりだと言われてる(言われてない)ネコジッタ婆が、その『暗黒邪法』とかを開発したのか?
ネコジッタ婆が言っていた『世界の理の司』を騙す方法って……コレの事なのか?
「双子と聞いてますけど、さっきの『暗黒邪法』って妹さんから……」
「……ネコジッタなら、もう死んどりますわい」
「え? 行方不明じゃなくて?」
そんなん、なんで分かるんだ?
「双子ならでは『チ○ポジー』というヤツですわい。わしには判りますのじゃ」
多分、それね、シンパシーだよ、お婆ちゃん?
あんた、そんなもん気にしようがないでしょ? 最初からないんだから。
「……また、どこかで生まれ変わるため?」
「そうですじゃ。きっと『永遠の道』を走って、わざと『アタリヤ』に弾き飛ばされたに違いないのですじゃ! わざと死にくさりおったんですわ! あんの馬鹿垂れがっ」
身内だけに手厳しい。
『アタリヤ』って『永遠の道』の脇の草むらに棲んでる巨大なウサギだ。
自分のナワバリの前を、二足歩行する生き物が「走る」と、体当たりをかまして来るという謎な習性があるそうな。
……って、80歳くらいのお年寄りが「走った」のか?
「もう、今頃どこぞの赤子の中やもしれませぬわ!」
ベコちゃんは悔しそうにしてる。
本当にそうなんだろうか?
もし、そんな事が可能だと言うのなら、ソレって「魂の輪廻転生」とかじゃなくて『魔法』的な何かを利用した「記憶の転写」みたいな事じゃねーの?
とすると、やっぱり俺ってなんなんだ? って気もするけれども……とりあえず自分の事は棚に上げとこう。
しかし、こうして双子の妹が現れたんだから、せっかくだから御存命の内に二人で「幽体離脱~」とかやって見せて欲しかったけど……ってシャレにならないか。
にしても、何かしでかしそうな感じで登場しておいて、すぐ死んじゃうとか……まるでどっかの魔法少女みたいだな。
ミーヨからは「『この世界』では、人は死んだら『星』になる」って聞いてる。
姫は「『永遠の道』の上で死んだ者は、必ず『この世界』に生まれ変わる」と言ってた。
シンシアさんは、それは『伝説』だって言って、否定していたけれども。
……イヤ、もう考えないようにしよう! そっちは放置だ。
でも――
「代償に……生命を奉げるとか言ってましたけど……まさか」
この人まで死んじゃうのか?
「ひとり、ふたり……8人の記憶を、2ツン間ずつ奪ってしまいましたからのう……わしの生命も16ツンは縮んでしもうた事でしょう」
「安っ。生命の代償、安っ。そして計算簡単!」
従量制かよ。
ホントなのかな? なんか信用出来ない。
「あと、まるでこの子(クリムソルダ嬢だ)を助けるような感じでしたけど……お知り合いなんですか?」
気になったので、訊いてみる。
「知らん子ですじゃ。ただ、若い頃のわしに似ておったで『巫女選挙』に出れんようになるのは可哀相でしたでのう」
「似てる? どこが?」
「特に、この乳がそっくりですじゃ」
そう言われて、つい素直にクリムソルダ嬢のお胸を見てしまう。デカい(※直球)。
このまん丸い「メロンおっぱい」が、年とると、尖った三角形になるんですか?
……ウソでしょ?
とても信じられないです。てか信じたくないです。
あ、この方は現在きちんと侍女服着てますけど……双子の妹さんのは、『おっぱい宮殿』の『全裸祭り』中に見ちゃいましたW たぶん、アレと同じだろうと想像つきますW ……イヤ、面白いことなんて何ひとつないけれども(泣)。
「わしも若い頃は『まるで牛みたいな超巨乳のベコちゃん』と呼ばれて、男子に大人気でしたわい」
それ、微妙に褒められてない気が。
そして、その回想長くなりそうな気がするんですけど……。
ネコジッタ婆が化けて出……イヤ、変装して……イヤ、双子のフリをしてここに居るのか? とちらっと思ったけど、やっぱこの人って、ネコジッタ婆とは完全に別人だわ。キャラ違い過ぎるし。
「わしと妹は、昔『巫女見習い』で、『六人の巫女』を目指しておりましたが、『イケナイアヤマチ』で『巫女選挙』に出れなくなってしまいましてのう」
「……『六人の巫女』?」
今は『七人の巫女』だよ?
増えたの? それいったい何十年前の話?
あと怖くて訊けないけど「イケナイアヤマチ」って何?
「「「「……ん……んん」」」」
お、そろそろみんなが目を覚ますみたいだ。
◇
「すまんこってす、姫」
第四侍女ベコちゃんが、土下座に近い平身低頭ぶりだ。
「申し訳ありませんのですじゃ、みんなわしの老婆心から出た事ですじゃ」
イヤ、ガチなお婆ちゃんに「老婆心」とか言われてもな……。
「うむ。よい、もう顔を上げておくれ。ババさま」
まだ火照りの退かないラウラ姫が優しく言った。
白い肌が、湯上りみたいに全身ピンクだ。
「まことに、も、勿体なき……」
ベコちゃん、泣いてんの?
「あのー、それで結局あの汁は、何だったのですか?」
黒髪の美少女シンシアさんが、ベコちゃんに訊ねてる。
どうでもいいけど、『スープ』は『汁』なのか?
清楚で可憐な『俺の聖女』なのに、『汁』とか……やめて。
「……知りたいですかいのう?」
ベコちゃんが、変に勿体つけるように言う。
「もちろんです。私は『癒し手』として幾人もの病める人たちに接してきましたが、あのような症状は初めてでした」
シンシアさんは真剣だった。
「あ、あれはですのう。アレですわい」
ベコちゃんが照れている。
なんだろう? スゴくイヤな予感がする。
「アレですわいな。アレ」
「「「「アレ?」」」」
「ふぬう。一角海獣の下の一角の汁ですじゃ!」
鼻息荒く、ベコちゃんが言った。
「「「「一角海獣の下の一角の汁うっ?」」」」
それ、ハモっちゃいけないワードですよ?
てか「一角海獣の下の一角」って、この方の妹のネコジッタ婆が酒のつまみとして齧ってたってヤツだろ?
姉妹揃って、まったく。
どうやら『一角海獣』って『地球』の海に棲んでる「イッカク」とは完全に別物らしいけど……どこに棲んでんだろ?
「……ぼそぼそ(ああ、そりゃ多分、ウチの品だなあ)」
本業は「商人」の次郎氏が呟いていた。
棲息地は『東の円』の海らしい。
『東の円』ってまん丸いドーナツ形の島で、真ん中に「中つ海」があるそうだけど、中? 外? どっちに棲んでんの? ひょっとして「鬼門」を守る「ウシトラ警備隊」が退治してる『海からの恐怖』ってソレ?
「えー、下の一角ってー、なんですかぁ?」
クリムソルダ嬢が、自身のお胸の先端部と同じく、ピンと来ていないようだ。
そう、今回『飛行魔法』で飛行中に、彼女に背中から抱きつかれて改めて確認したけど、やっぱり陥没気味なのだ!
「それってー、なーんなーんでーすかぁ?」
先刻まで似たようなものを握りしめてたクリムソルダ嬢が、のんびりと訊いた。
「有名な『精力剤』よ!」
第二侍女ポーニャ嬢があっさりと言った。
「精力剤ってなーんですかぁ?」
みんな知ってて黙ってるのに、一人だけ騒いでる「お子様」が……。
「……(あたたかい目)」
でも、そんな彼女を見守るベコちゃんの目が優しい。何故かクリムソルダ嬢を気に入ってるらしい。
「あのですね……」
第五侍女アルマメロルトリア嬢が、クリムソルダ嬢に耳打ちしてる。教えちゃうのか?
「なるほどー、元気にぃなるんですねー? よかったぁ!」
理解したらしい。なぜか喜んでる。いいのか?
「その精力剤をジンさんに飲ませたと?」
シンシアさんは冷静だ。
さすがに大人のジョーク好きなだけあって、精力剤と聞いても平然としてる。
ん? なんか視線を浴びてるな。
「「「「「……(じーっ)」」」」」
「イヤ、一口飲んですぐに、お腹が熱くなったんで、毒かと思って『おトイレ』駆け込んだから……飲んでないよ?」
そう言ったら、みんな安心してくれた。どんな危険人物扱いだよ。
てか、みんなホントに記憶ないんだよな?
「ありゃありゃ、飲まんかったのですかいな? そんじゃあ、先刻のは」
ベコちゃんは、自分の発言の危険度に気付いて、言葉を切った。
あぶねーな。
みんな忘れてんだから、迂闊な事言って、俺の『白い花』のコトを思い出したらどーすんだよ。
イヤ、今回は違うけれども。
「つまりは、姫が一日も早よう、可愛い坊ちゃんの孫さまをお産みなさるように、姫の『愛し人』の汁を、こっそりと『一角海獣の下の一角の汁』に入れ替えたのですじゃ! 子作りのためですじゃ!」
ベコちゃんが、今回の「事件の真相」を明かした。
その余計なお世話の、要らぬお節介が「老婆心」てコトか?
てか「可愛い坊ちゃん」て誰?
ラウラ姫やドロレスちゃんの父君の事だよな。
俺が『おっぱい宮殿』でのゴタゴタの後始末のために女王陛下の『大事な秘書』ロザリンダ嬢やシャー・リイ嬢と会談してるあいだに会ってたらしいけど……この人の「仕込み」で会ってたのか?
「それで、その余った残りを……姫殿下とドロレスちゃんと茶トラ君が飲んだと?」
シンシアさんが確認する。
『地球』で言ったら「スッポン料理」みたいなものだろうし、食べた後で身体がカッカと火照るみたいな感じだったのかな?
アレって末梢血管まで拡がって、めっちゃ血行が良くなるんだっけ?
どっちにしろ、ラウラ姫はちっこいから、分量・用法をよく確認の上、きちんと「子供用」の量にしとかないと!
「うむ。珍味ゆえ、残してはもったいないのでな!」
動じず、力強く言うラウラ姫とは違って、
「……アレ、そうだったんですか? 美味しかったです。美味しかったです。凄く美味しかったですけれども。そうだったんですか? あの歯ごたえのあるコリコリしたものが、そうだったんですか……」
ドロレスちゃんの方は、強い衝撃を受けているようだ。
さっそく、いい「社会勉強」になったね。
「うむ。たいへんに美味であったな! ババさまや、あれはまだあるかな?」
ラウラ姫がぜんぜん懲りてなかった。
「はい、姫。たくさんありますゆえ、たんと召し上がれ」
「うむ!」
「「「「……いや、それは」」」」
これは……マズい。
俺は筆頭侍女に近づき、
「プリムローズさん、今夜、姫はドロレスちゃんと一緒に寝るんスか?」
気になってる事を確認する。
「まさか! 君と言う『愛し人』がいるのに。君の出番だよ。頑張り給え!」
遠回しに確認したのに、基本的に興味ないのか、雑に言われた。
「じゃあ、今夜は『見届け人』って付かないですよね?」
みんなに見られながら、なんかするのってどうなの?
「いや、そんな事はないよ。毎回付くに決まってるだろう?」
「……」
至極当然のようにあっさり言われても……。
そんな事やってる横で、
「うむ。やはり美味い!」
ラウラ姫が赤い顔で『精力剤スープ』を爆喰いしてた。
いくら美味しいからって、そんなものバカ喰いしちゃダメだろ。
これって、どーしたらいいんだ?
俺も対抗措置として食べるべきなのか?
◇
その夜のラウラ姫は、いろいろとたいへんでした。
みんな『見届け人』として見てたのに。
今回初参加のみなさん(イヤ、次郎氏と未成年のドロレスちゃんはいませんよ?)は、こんな感想を漏らしていました。
「……」
感想も地味でした。
「あれー? お馬さんってー、言ってたのにぃ、本物のー、お馬さんたちとー、違いますよー。オスがですねぇ(モゴモゴ)」
だってー、本物のー、お馬さんじゃないしぃ。
てか誰が口塞いでくれたんだろ? ナイスアシスト!
「さあ、今回は何ツンかしら?」
その砂時計、ベコちゃんからの借りものだよね? なんの時間計ってるの?
そして――
「おかしいのお、わしらの頃と作法が違うのかのう? お側に付き添うだけで、こんなにじっくりと皆で観たりはしないはずじゃがのお?」
最年長者の第四侍女が、寝落ちして爆睡してる筆頭侍女の横で、そんな古風な事を言ってらしたのが、とても印象的でした。
ひょっとすると筆頭侍女さまが、その「正しい作法」を知らなかったんじゃないんでしょうか?
疑念が残ります。
◆
ジン君の「暴発事故」は、今回が最後です――まる。




