085◇三人ロザリンダと重さの謎
『メ○ドインア○ス』に関する部分で、「ち○こ」を「ちん○ん」に修正しました。
前書きに書くな、こんな事。
ほっとくとヘンな話に雪崩れ込みそうなので、ここで阻止しよう。
「失礼ですが、お名前をお聞きしても?」
俺が言うと、
「ロザリンダです」
いとも簡単に教えてくれた。
「ロザリンダさん? 『七人の巫女』の中にも、同じお名前の方が」
「『女王国』には多い名です。歴代の女王陛下にも、3人いらっしゃいます」
そう言ってから、少し考え込む。
「そうですね。多い名前ですし、わたくしの事は……」
「ロザ様? リンダ様?」
そう言ってみた。
「……!」
横目で見ると、『★謎の光☆』の白い光のビキニを身に纏った半裸のドロレスちゃんが、びくっ、と身を震わせていた。反応アリだ。
前に君が、ポロリ、と言ってた事だもんな?
そして『★謎の光☆』って、急な激しい動作で、ポロリ、としないんだな。しょぼーん。
「……なつかしい。それは『王都大火』で亡くられた、わたくしの従姉『二の姫』と、その親しいお友達の愛称でした」
少し遠い目になる。
むむ? なんか新情報が。
「ひょっとして、その親しいご友人というのは、メルォン家のロザリンダ嬢なのではないですか?」
確かドロレスちゃん付きメイドのジリーさんも、あっちのロザリンダ嬢を知ってたんだよな。どういう繋がりなのかまでは知らないけど。
「まあ、ご存知で?」
女官のロザリンダ嬢は意外そうだった。
「ええ、縁あって『冶金の丘』からここまで、同じ馬車で旅をしました」
「ああ、そうでした。ロザは『七人の巫女』として彼の地に赴いていたのでしたね。……ふふふ」
最後に、なぜか笑った。
……見ると、目の前の彼女の右膝には、ホクロが双つ並んでいる。
『王都』への旅の途中に、双生児識別用の人為的な黒子である「双子星」の話になった時に、『巫女』のロザリンダ嬢が懐かしそうに話していたのは、コレの事か?
「彼女はロザ。『二の姫』ロザリンダ姫殿下がリンダ。そしてわたくしはロザリンと呼ばれていました。三人とも同い年で……」
何か遠い思い出を懐かしんでいるようだった。
その『二の姫』って……髪は何色だったんだろう? ちょっと気になる。
「……」
そんで、この人と巫女さま。
二人とも凄い巨乳だし、亡くなったその『二の姫』も生きておられれば、さぞや……不謹慎か。
てか、その方が亡くなったがために、『四の姫』だったラウラ姫が繰り上がって『三人の王女』になってるんだよな。
さらに言えば、『大火』の責任を擦り付けられる形で、ミーヨのオ・デコ家は没落してるし……俺にとっても色々と因縁があるお方なのかもしんない。
とにかく、同じ「ロザリンダ」という名前の三人が……親友同士だったのか?
『巫女』のロザリンダ嬢が現在19歳って話だから、『王都大火』があった12年前は……三人とも7歳か。
「仲の良いお友達だった?」
「……どうでしょう。……ふふふ」
また笑った。
「何故笑うんです?」
「ごめんね! 先刻の陛下との謁見思い出しちゃって! あはははは」
言って、大笑いし始めた。
凄い意味ありげに笑うから、何かと思えば……俺様のプロペラ・ダンスと女王陛下の大失禁を思い出しただけらしい。
「あははははははは」
てか「謁見」の時に、この女性居たっけか?
◇
笑い止むと、女官のロザリンダ嬢はラウラ姫に向かった。
「……それで、殿下。その時のお話、詳しくお聞かせくださいな」
「う、うむ」
根掘り葉掘り聞き出そうとしてるようだ。
結局、阻止出来なかったよ。
女性同士で、どんな話をするのやら。
姫の事だから、包み隠さず、全部しゃべっちゃいそうだな。
口数の少ない子だけど、要点はズバッと言っちゃうからな。
なるべく見ないようにしてたから、気付かなかったけど、女王陛下の側近のお婆ちゃんも、いつの間にかいなくなってるな。
ミーヨがドロレスちゃんに「おやつ」をあげてる。第二と第五の二人の侍女も、手持ち無沙汰みたいだ。
『おトイレ』の「座って何かしてます像」は、まだ倒れっ放しのままだ。
誰か、『魔法』で元に戻せばいいのに……ひょっとして出来ないのかな?
「……やれやれ。殿下がロザリンダ様に捕獲ったか……長くなりそうだな」
筆頭侍女がボヤいてる。
「そう言えば『女王国』の初代の女王様って『ロザリンダ』じゃありませんでした?」
暇そうだったので、訊いてみた。
「そうよ。よく憶えてたわねー」
雑な感じに褒められた。
「同じお名前なんスね。なんてゆーか、遠慮して別の名前とかにしないものなんスか?」
「逆に同じ名前を引き継ぐ事が多いわよ。『地球』のブルボン王朝なんて凄いでしょ? 『ルイ』ばっかで」
いきなり『地球』にワープした。
「はあ? ああ、最後がルイ16世でしたっけ?」
でも俺も暇なので、話に付き合う。
ちなみに、ここは異世界『この世界』です。
「ブルボン家のルイさんで王位についたのは……13・14・15・16世の4人ね。最後が哀れな17世は除いて……王政復古の18世や、七月王政のルイ・フィリップもいるけれど」
「……はあ」
変なスイッチ入れちゃったみたいだ。プリムローズさんが語り出したよ。
「太陽王として有名なルイ14世っているでしょ? その子がルイで、その子供もルイで、さらにその子供がルイ15世。ひ孫なのよ」
「……はあ」
ちょっと付いて行けなくなって来たよ。
「それで、ルイ15世の子供がルイで、その子供がルイ16世。こっちは孫ね」
「……はあ」
ルイが累々と続くのか? 日本語の「累々」ってそれが語源じゃないよね?
「太川○介もビックリよね?」
「太○陽介って、誰っスか?」
「ルイルイ!」
「知らんがな」
「……それで、元々はゲルマン民族大移動の後の5世紀に成立したフランク王国の初代の王クロヴィス1世の、クロヴィスが、ルイやルードヴィヒって名前に変容したらしいんだけど」
おお、知ってるぞ。クロヴィス。
神聖ブリ○ニア帝国の皇子だな……って、アニメ『コー○ギアス 反逆のル○ーシュ』の話だけど。
「フランスの歴代王朝って、そのメロヴィング家の血をずっとひいてるらしいわよ。ブルボン家もたしかカペー朝の時に出来た分家だったと記憶してるわ。ま、13世の時に醜聞や異説はあるけれど、長い命脈を保ってたワケね。18世紀末のフランス革命まで」
「ブルボン王朝を破滅させ、ナポレオンの資金源となったのが『幻の偽札』と言うアレですね?」
「……何の話? 聞いた事があるような……」
「こっちの話です」
ホントは『ル○ン三世 カリ○ストロの城』の話です。『ゴート札』です。
それはそれとして、ブルボン……長い……か。
「そう言えば、プリムローズさん。俺、長年の疑問があるんですけど……」
「なに?」
「ブル○ン製菓に細長いお菓子のシリーズあるじゃないっスか?」
「ブ○ボン……製菓?」
「ええ、製菓です。あの、お茶うけにピッタリなサイズのお菓子のシリーズの話です」
「…………はあ?」
これはプリムローズさんだ。
「『ル○ンド』とか『エ○ーゼ』とか『○ーベラ』とか『レーズン○ンド』とか『バー○ロール』とか『ホワイト○リータ』とか、色々あるんじゃないっスか?」
俺も変なスイッチ入りました。
「……そやね」
対応がはんなり……と言うよりも、しんなりしてる。
「俺的ベスト・オブ・ブル○ン製菓の細長いやつ、は『チョコ○エール』なんスけど……」
「……けど?」
「『チョコ○エール』の真ん中に入る字って、カタカナの『リ』なんですかね? それともひらがなの『り』なんですかね? どっちなんですかね?」
「知らんがな!」
「それと……『ホワイトロ○ータ』って……どうなんですかね? 俺的には第二位なんですけど」
「それも、知らんがな!!」
ちなみに、第三位は『バーム○ール』です。
アソートパックに入ってる「コーヒー味」が好きです。
ただし、これってめったに見ない「激レアアイテム」です。
◇
「うちは○ッキーやね」
「へー、プリムローズさん。○ッキーがお好きだったんスか?」
どんどん細長くなってます。
「俺はプ○ッツ派でしたね。と言ってもサラダ味オンリーでしたけど」
そう言えば、色々なアニメで「○ッキー」の「似て非なる物」を食べてるシーンが色々あったな。アニメの製作現場の人って好きなのかな? ○ッキー。魔法の杖「ワンド」みたいに使ってるアニメもあったし、酷いのになると「ボッ○ー」とか。中にはモロ出しでそのまま「ポッ○ー」のもあったけど。
キャラの愛称でも多いな。
『俺ガ○ル』の主人公も愛称が「ヒッキー」だったな。一人からしか呼ばれてなかったけど。
スポーツ・アニメの傑作『ハイ○ュー!!』シリーズの陰の主人公と言っても過言ではない眼鏡君は「ツッキー」だったな。男からしか呼ばれてなかったけど。
そんで『未来○記』の我妻○乃が好きなのは「ユッキー」だった。
……あの声、また聴きたいな。
あの背筋が寒くなる感じの可愛い声。
一途で健気でめっちゃ可愛いよね? 由○ちゃん(※人によって見解が異なります)。
「イケズ。もう、やめへん? 『この世界』じゃ手に入らへんし」
珍しく弱気だ。
でも、この人に「コーヒー」は、ガチで禁句だからな。
『この世界』で手に入らないって言うけど……俺の『錬金術』『口内錬成』で「似て非なる物」なら錬成れるかもしれないな。
でも、長さ的にキビしいかもな、口の中だし。
ブル○ン製菓の細長いシリーズは……ギリで無理だな。
『ギン○ス』の『アス○ラガス』くらいのサイズなら、余裕で可能だけど。
○ッキーはどうかな? 無理だろうな。錬成れたとしても、短か過ぎて、棒……イヤ、某ゲームには使用出来ないだろうな。イヤ、むしろ使えよ、俺。勇気を出して。
俺がそんなバカな事を考えていると――
「ああ、一本の○ッキーから色々思い出してもて、辛いわー」
プリムローズさんがかなり本気で嘆いてる。
そんなにっスか?
「ミナミ、なつかしー」
ぐーんと背伸びするみたいに、両手を突き上げた。
ミナミって大阪の地名だよな。
道頓堀にある『江崎○リコ』のデッカい広告でも思い出してんのかな?
そう言えば、アレって何かを持ち上げてんのかな? 重量挙げみたいなポーズだったような気がする。……うろ覚えだけど。
そんで『江崎○リコ』って実在しそうで怖いな。
『メ○ドインア○ス』のあの子って苗字ないよね?
ちん○んが付いてるロボット少年のレ○じゃなくて、爆弾とか汁作っていた眼鏡の子。
……でも「眼鏡の○コ」って『進撃』にもいたな。
所属どこだっけ?
壁美化部?
◇
「ホントにお任せてしても、よろしいのかしら?」
ちょっと歌川シゲだ……イヤ、誰? そのお婆ちゃん?
変な人名を妄想してたせいか、俺の『脳内言語変換システム』が暴走してるな。
正しくは――女官のロザリンダ嬢は、ちょっと「疑わしげ」だ。
ようやく、ラウラ姫への「尋問」が終わったので、俺がひっくり返ったバカデカい銅像「座って何かしてます像」を元通りにする、と申し出たら、この反応だ。
もう既に「犯人」の女王陛下の側近ネコジッタ婆は、逃げ去ってるし、誰かがやらなきゃならないなら、俺たちで十分だ。
俺たちには『合体魔法』があるんだっ!
「ではお任せしますよ」
ロザリンダ嬢はそう言って胸元で腕組みした……すると、なんということでしょう!
「謎の白い光」が消えて、お胸の谷間がはっきりくっきりしたではありませんか!
おお、大きい!
ビバ!
ビバ! 巨乳!
「……(くっはー)」
それにしても大きい。
お胸の谷間なのに、まるでお尻のようだ……。
そして、そうか!
『★謎の光☆』とは、そういう仕様の『魔法』か!
『この世界』にかつて栄えていた超古代文明の遺産と思われる『魔法』を司る『世界の理の司』は、女性のお胸の先端の突起物が露出しなければOKという判断基準か。
なんか日本のTVの放送コードみたい。
ん? 待てよ? とすると……。
俺はある事を確認するために、女官のロザリンダ嬢の背後に回り込んだ。
「おい、ジン!」
プリムローズさんの声がするけど、今はそれどころじゃない。
「……!」
そこには、遮るもののない、素敵な光景があった。
肌色だ。
ここは規制対象外なのか……お尻は完全に丸見えじゃないですか!
なんですか? この倫理観? 日本と同じですか?
パシャパシャパシャパシャパシャ
もう脳内ではシャッター音が煩い。煩い。
てか思わず、○ッキーしてしまったよ。
イヤ、待て。これだと勘違いされてしまうな。棒は要らない……イヤ、要るよ(笑)。
言い直そう。
えーっと、まるで某国のジェット戦闘機みたいに「コブラ」した。
でも、「コブラ」って水平状態から機首を垂直に近い角度にまで上げる事だから、厳密に言うと違う気もするけど……。と言って、生き物の方で例えると、ちょっとシャレにならないしな。カタチからして「似て非なる物」だし。
「「「「……あ」」」」
何人かに気付かれたようだけど、俺は気にはしない。
いつもの事さ。
陶然として女官のロザリンダ嬢の素敵な後ろ姿を見ていたら、
「……重い」
ミーヨの呟きが聞こえた。たしかに、なんか重い。
「……え?」
見下ろすと……ナニコレ?
気が付くと、俺様の俺様に、何かが被せられていた。
なにか木製の物体が……あ!
コレって……第二侍女ポーニャ嬢が誤って落とした鍵を拾うついでに、人造湖の湖底で拾った『七人の巫女』の一人ロザリンダ嬢の妹の『巫女見習い』クリムソルダ嬢が落としたらしい、白い木靴じゃないか! 長いよ、説明。
「……めっ!」
顔を上げると、ミーヨ先生に怒られた。
イヤ、いくら非常事態の緊急発進とはいえ、他人様の木靴を、俺様の俺様にすっぽり被せるなんて……てか、だいたい隠れてるな。
クリムソルダ嬢、足のサイズいくつなんだ?
イヤ、それに言及する事は、俺様の俺様の全長を公表するに等しい行為だな。やめとこ。
「え? どうし……ぷっ!」
女官のロザリンダ嬢が振り向いて俺の姿を見ると、噴き出した。
「なによ、それ? あははははは」
またまた大笑いされた。
「あははははははは」
「「「「「……ぷっ」」」」」
みんなにも、笑われた。
たくさんの女性にあざ笑われるのって……凄い良いよね!
イヤ、別に「強がり」じゃないよ?
本心だよ(※もっとダメだよ)。
◇
カタン!
硬い音がして、何かが床に落ちた。
木靴じゃない。
みんなからのご褒美(笑)で、俺様の俺様はまだ△△したままだし。
木靴のカカトから、何かが落ちたのだ。
何かの細工があって、カカトに何か仕込んで、隠してあったらしい。
「「「なに?」」」
俺はかがんでソレを拾いあげた。
「うわー、ジン様。また丸見え」
「まあ!」
「うげげげっ、君、わざとやってるんじゃないだろうね?」
「ふむふむ。やっぱりじっくり見ると、お兄さんのお尻には『双子星』みたいな黒子がありますね……」
俺の背後の侍女軍団+1が、また何か言ってる。
そんな事より、俺は拾い上げたものが気になっていた。
「これ……なんだろう?」
見たことのない、小さな丸い金属製の円盤だ。
「「「「なに? なに?」」」」
みんなに取り囲まれる。いいニホイだ。
「凄い重たい金属なんだけど」
見た目は普通に銀色だ。
ただし、やたらと重い。
木の靴が「湖底に沈んでいた」事が不自然だとは思ってたけど……コレの重みのせいだったのかもしれない。
俺は、純金製の物体(俺が『太陽金貨』から錬成した『黄金ウ○コ』だ)を手にしたことがあるから判るけど……確実に金よりも重い気がする。
「「「「……ふうん」」」」
みんな興味なさそうだな。
アクセサリとかなら食いつきが全然違うだろうけど、なんの刻印も紋様も無い、ただの素っ気ない丸い円盤だからな。
「んー……それって『重い銀』じゃないのかな」
「『重い銀』? 知ってるのか、ミーヨ?」
「うんっ。『銀の都』の『巫女』さまが『神授祭』で祈願すると、それを貰えるんだって、神様から」
「なんだそりゃ?」
アルミニウムの事である『軽い銀』も、そこの特産って話だけど、どんなシステムになってんだ? 鉱石から精錬するとかじゃなくて、いきなり完成品をクリスマスプレゼント的に貰えちゃうの?
そんで『重い銀』……金より重くて、放射能とかない元素って言うと……なんだろ?
頭に浮かぶのは「イリジウム」だな。
『地球』だと、元々はほとんど存在してなくて、6千6百万年前だかに小惑星が落ちて来て、恐竜が絶滅するような『大量絶滅』があった地層……『K-Pg境界』に目立って含まれてるらしい。
つまりは宇宙由来のレアメタルのはずだけどな。
でも、ここは『地球』とは別な惑星だから、どんな元素がどんな割合で存在しているのか不明だけど……レアな事はレアだと思うんだけどな。
それがあの、メロンのような巨乳で、おっとりぽわんとしたおとぼけ『巫女見習い』のクリムソルダ嬢の靴に隠してあった……。
どうなってんだろ? いろいろと謎だ。
ま、『俺の聖女』のシンシアさんに会いに行くついでに、彼女にこの木靴を返すつもりだから、その時訊いてみればいいか。
その前に、俺様の俺様にすっぽり装着(笑)してしまったので、ミーヨの『魔法』でキレイにしてもらわないとな。
「どうするの? クリちゃんのでしょう? それ」
「ああ、うん。クリムソルダ嬢に返すよ、もちろん」
心配そうなミーヨに、俺はそう言って安心させる。
二人とも「小市民」気質なのだ。悪い事出来る性質じゃないのだ。
「本当? そのまま貰っちゃうつもりなんじゃないの?」
またまた歌川シゲだ。本日2度目の登場だ。
じゃなくて、女官のロザリンダ嬢が、またまた「疑わしげ」だ。
でも、お尻をガン見されてた事は、別に気にしてないらしい。
「そんな事しませんよ」
「ふうん。それにしても……」
彼女はまったく遠慮なしに、俺様の俺様に、まるであつらえたかのようにピッタリな、ペ○スケースと化した白い木靴を凝視してる。
「……ぽ(※照れ)」
なんか直接見られるよりも恥ずかしいですう。あんまり見ないでくださーい。
「女性の靴にお酒を注いで呑むのが好き、という殿方もいらっしゃいますが……。それ以上ですね。殿下、難儀な人を『愛し人』になさいましたね」
女官のロザリンダ嬢がからかうように言った。
「む? ……うむ」
ラウラ姫は頷いた。
そこは庇ってよ!
◇
「祈願! ★怪力っ☆」
俺とラウラ姫の『合体魔法』が発動した。
「「「「えっ?」」」」
木靴から出て来た謎の金属には驚きもしなかった面々が、今度は本気で驚いていた。
この中でいちばん小柄なラウラ姫が、左手で俺のを握り、小さな右手でひょいっ、とバカデカい「座って何かしてます像」を持ち上げたのだ。
おっと、いけない! 脱字があった。
左手で俺の「右手」を握り――だ。
『★怪力☆』は、建設土木作業に従事する肉体労働者などが、めっちゃ重い物を持ち上げる時に、全身を強化する一時的なパワー・アシスト魔法だそうな。
ついでに言うと、弓矢や近接戦用武器を使用するのに、腕力だけを強化するのが『★剛腕☆』だそうだ。
双方とも、その効果持続時間は5ツン(約5分)だそうだ。
5ツン経過でいきなりカクン、と止まるらしい。E○Aの内蔵電源みたいに。
カップうどんの出来上がりを待つ程度の時間しかないので、使用には充分な注意が必要らしい。
そんで『★剛腕☆』って、どっかで誰かが使ってた覚えがあるんだけど……思い出せない。誰だったっけ?
「それっ!」
ちびっ子剣士ラウラ姫によって、あっさりと持ち上げられ、それは台座に戻された。てか今、姫は全裸だから帯剣はしてないけどな。
「……(あんぐり)」
女官のロザリンダ嬢の口が、呆然と半開きになってる。
なんかちょっとやらしい(※個人の感想です)。
突然ハッとして、
「少し、お待ちを。祈願。★荷重測定☆」
銅像の……というか台座に掛かってる重みを測定してるらしい。
「18ナンダモン! そんな!」
貴女19歳でしょ? ……イヤ、違うな。
『この世界』の重さの単位だ。「18ナンダモン」って「何㎏」だろ?
玉子2個に砂糖18g……イヤ、コレは『一週間○レンズ。』の玉子焼きの話だ。
えーっと、1ダモンが約1gで、1ダモンネが約11gで……大きく飛んで1ナンダモンはその千倍だから……ああ、計算の得意なセシリア(10歳の猫耳奴隷だ)がいればなあ……。
「約198『きろぐらむ』だよ」
プリムローズさんが教えてくれた。
てか、手元でなんか計算する『魔法』使ったらしい。キラキラ星が見える。
「それだけっスか? 『魔法』使ってるのに、もっと重いかと思った」
別に大したこっちゃない気がするけどな。
関係ないけど、180㎏を「軽い」って言ったの、なんのアニメだっけ? 本気で思い出せないから誰か教えて。
「てか『魔法』って、もっともっと重い物運べるじゃないっスか? おとといなんて、あのデッカい『ヘビアタマの翼竜』を運んでたのに」
「あれは対象となる物体の下に、空気の層を造って『横滑り』させてるだけなのよ。やってる事は単純なの。30なの(約3㎝)くらいしか高さが取れないから、平坦な所でないと使えないし。それに……君との『合体魔法』だったしね」
プリムローズさんが、いつものように解説してくれた。
つまりは「札幌ドーム」の「ホヴァリングサッカーステージ」の縮小版みたいな感じだったらしい。
てか「ホバークラフト」かな? でも、軍用の「LCAC」とかでも、坂道は登れないらしいんだよな。
一方の女官のロザリンダ嬢は、驚愕から抜けきっていない。
「……去年の『神授祭』の時の記録は……確か16ナンダモン」
二つ若返った。違うか。
「どういう事です!?」
凄い剣幕で訊かれた。
「なんかよく理解出来ないんですけど……」
まったくなんの事やら。
『神授祭』って「冬至」の時にやるクリスマスみたいなやつでしょ? カレーみたいな味の鳥の丸焼き食うんでしょ? それくらいしか知らないよ?
「『★怪力☆』で持ち上げられる重量は、『神授祭』の『神前重量挙げ大会』の最高記録に等しい。これは『世界の理の司』で決められている事! それ以上の重さを持ち上げられるハズがないのです!」
女官のロザリンダ嬢がまくし立てる。
「……へー」
平板な声が出る。
『神前重量挙げ大会』なんてものがあるんだ?
てか、何でも「神前」付ければいいってもんじゃないだろうに。
俺が聞いてる話では『★怪力☆』は、生きている人体を強化するパワーサポート魔法のようだから、なんかの処理とか演算が複雑になるのかな? それとも、人体に負荷がかかり過ぎないように「リミッター」としての機能かな?
そう言えば『江崎○リコ』の「あのポーズ」って「重量挙げ」じゃなかった。
いま思い出した! 陸上競技の「ゴールの瞬間」みたいな感じだったハズだ。
そんで、『だが○かし』によれば、グ○コのキャラメル1個には、キャッチフレーズと同じ300m走れるだけのカロリーが入ってるはずだ。ひと粒に16キロカロリーだっけ?
……それはそれとして、また「やっちゃった」らしいな。
『この世界』の『魔法』の常識から外れた、異常な事をやっちゃったらしいよ。
「『神授祭』ですよ! 『神授祭』! ハレの祭りの日の神聖な祈り……それが覆されたとでも言うのですか!?」
「……(泣)」
イヤ、「ハレの祭り」とか「祈り」とか言われると、『ギルティ○ラウン』の可哀相なヒロインたちを思い出して泣いちゃうから、やめて。
カコン!
「あ、ジン様。おちん……落ちましたよ。靴が逆さに」
ミーヨの、あわてた声がする。
「……(泣)」
なんだよ? 靴が逆さ?
明日の天気どころか、いま俺の目の前に雨が降ってるよ(泣)。
「シャー・リイ!」
……!!
「はい。ロザリンダさま」
いつの間にか居た若い全裸の女官さんに、女官のロザリンダ嬢が声を掛けたようだ。
「『魔法審議会』の招集を! ……って、ジン君? なんで泣いてるの?」
「…………(涙腺崩壊)」
もう涙が止まらない。
全裸の女官さんも見えない。
……だって、シャー○ーとか、絶対に出しちゃダメな名前出すから……。
「あの人、妹さんの名前は、アナベルよ」
プリムローズさんが意味ありげに言った。
……そっちは知らないです。
アトミック・バズーカの人ですか……?
◆
シャー○ーは『コード○アス 反逆のル○ーシュ(R2)』の報われないヒロイン。
『ア○ベル・リイ』はエ○ガー・ア○ン・ポーの詩。
アナベ○・ガトーはアトミック・バズーカの人――まるが多い。




