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085◇三人ロザリンダと重さの謎

『メ○ドインア○ス』に関する部分で、「ち○こ」を「ちん○ん」に修正しました。

前書きに書くな、こんな事。


 ほっとくとヘンな話に雪崩(なだ)れ込みそうなので、ここで阻止しよう。


「失礼ですが、お名前をお聞きしても?」

 俺が言うと、

「ロザリンダです」

 いとも簡単に教えてくれた。


「ロザリンダさん? 『七人の巫女』の中にも、同じお名前の方が」

「『女王国』には多い名です。歴代の女王陛下にも、3人いらっしゃいます」


 そう言ってから、少し考え込む。


「そうですね。多い名前ですし、わたくしの事は……」

「ロザ様? リンダ様?」

 そう言ってみた。


「……!」

 横目で見ると、『★謎の光☆』の白い光のビキニを身に纏った半裸のドロレスちゃんが、びくっ、と身を震わせていた。反応アリだ。


 前に君が、ポロリ、と言ってた事だもんな?

 そして『★謎の光☆』って、急な激しい動作で、ポロリ、としないんだな。しょぼーん。


「……なつかしい。それは『王都大火』で亡くられた、わたくしの従姉(いとこ)()の姫』と、その親しいお友達の愛称でした」

 少し遠い目になる。


 むむ? なんか新情報が。


「ひょっとして、その親しいご友人というのは、メルォン家のロザリンダ嬢なのではないですか?」

 確かドロレスちゃん付きメイドのジリーさんも、あっち(・・・)のロザリンダ嬢を知ってたんだよな。どういう繋がりなのかまでは知らないけど。


「まあ、ご存知で?」

 女官のロザリンダ嬢は意外そうだった。


「ええ、縁あって『冶金の丘』からここまで、同じ馬車で旅をしました」

「ああ、そうでした。ロザは『七人の巫女』として彼の地に赴いていたのでしたね。……ふふふ」

 最後に、なぜか笑った。


 ……見ると、目の前の彼女の右膝には、ホクロが(ふた)つ並んでいる。


 『王都』への旅の途中に、双生児識別用の人為的な黒子(ホクロ)である「双子星」の話になった時に、『巫女』のロザリンダ嬢が懐かしそうに話していたのは、コレの事か?


「彼女はロザ。『()の姫』ロザリンダ姫殿下がリンダ。そしてわたくしはロザリンと呼ばれていました。三人とも同い年で……」


 何か遠い思い出を懐かしんでいるようだった。


 その『()の姫』って……髪は何色だったんだろう? ちょっと気になる。


「……」

 そんで、この人と巫女さま。

 二人とも凄い巨乳だし、亡くなったその『()の姫』も生きておられれば、さぞや……不謹慎か。


 てか、その方が亡くなったがために、『(よん)の姫』だったラウラ姫が繰り上がって『三人の王女』になってるんだよな。


 さらに言えば、『大火』の責任を(なす)り付けられる形で、ミーヨのオ・デコ家は没落してるし……俺にとっても色々と因縁があるお方なのかもしんない。


 とにかく、同じ「ロザリンダ」という名前の三人が……親友同士だったのか?

 『巫女』のロザリンダ嬢が現在19歳って話だから、『王都大火』があった12年前は……三人とも7歳か。


「仲の良いお友達だった?」

「……どうでしょう。……ふふふ」

 また笑った。


「何故笑うんです?」

「ごめんね! 先刻の陛下との謁見思い出しちゃって! あはははは」

 言って、大笑いし始めた。


 凄い意味ありげに笑うから、何かと思えば……俺様のプロペラ・ダンスと女王陛下の大失禁を思い出しただけらしい。


「あははははははは」


 てか「謁見」の時に、この女性(ひと)居たっけか?


      ◇


 笑い止むと、女官のロザリンダ嬢はラウラ姫に向かった。


「……それで、殿下。その時のお話、詳しくお聞かせくださいな」

「う、うむ」

 根掘り葉掘り聞き出そうとしてるようだ。


 結局、阻止出来なかったよ。


 女性同士で、どんな話をするのやら。

 姫の事だから、包み隠さず、全部しゃべっちゃいそうだな。

 口数の少ない子だけど、要点はズバッと言っちゃうからな。


 なるべく見ないようにしてたから、気付かなかったけど、女王陛下の側近のお婆ちゃんも、いつの間にかいなくなってるな。

 ミーヨがドロレスちゃんに「おやつ」をあげてる。第二と第五の二人の侍女も、手持ち無沙汰みたいだ。


 『おトイレ』の「座って何かしてます像」は、まだ倒れっ放しのままだ。

 誰か、『魔法』で元に戻せばいいのに……ひょっとして出来ないのかな?


「……やれやれ。殿下がロザリンダ様に捕獲(つかま)ったか……長くなりそうだな」

 筆頭侍女がボヤいてる。


「そう言えば『女王国』の初代の女王様って『ロザリンダ』じゃありませんでした?」

 暇そうだったので、訊いてみた。

「そうよ。よく憶えてたわねー」

 雑な感じに褒められた。


「同じお名前なんスね。なんてゆーか、遠慮して別の名前とかにしないものなんスか?」

「逆に同じ名前を引き継ぐ事が多いわよ。『地球』のブルボン王朝なんて凄いでしょ? 『ルイ』ばっかで」


 いきなり『地球』にワープした。


「はあ? ああ、最後がルイ16世でしたっけ?」

 でも俺も暇なので、話に付き合う。


 ちなみに、ここは異世界『この世界(アアス)』です。


「ブルボン家のルイさんで王位についたのは……13・14・15・16世の4人ね。最後が哀れな17世は除いて……王政復古の18世や、七月王政のルイ・フィリップもいるけれど」

「……はあ」


 変なスイッチ入れちゃったみたいだ。プリムローズさんが語り出したよ。


「太陽王として有名なルイ14世っているでしょ? その子がルイで、その子供もルイで、さらにその子供がルイ15世。ひ孫なのよ」

「……はあ」

 ちょっと付いて行けなくなって来たよ。


「それで、ルイ15世の子供がルイで、その子供がルイ16世。こっちは孫ね」

「……はあ」


 ルイが累々(るいるい)と続くのか? 日本語の「累々」ってそれが語源じゃないよね?


「太川○介もビックリよね?」

「太○陽介って、誰っスか?」

「ルイルイ!」

「知らんがな」


「……それで、元々はゲルマン民族大移動の後の5世紀に成立したフランク王国の初代の王クロヴィス1世の、クロヴィスが、ルイやルードヴィヒって名前に変容したらしいんだけど」


 おお、知ってるぞ。クロヴィス。

 神聖ブリ○ニア帝国の皇子だな……って、アニメ『コー○ギアス 反逆のル○ーシュ』の話だけど。


「フランスの歴代王朝って、そのメロヴィング家の血をずっとひいてるらしいわよ。ブルボン家もたしかカペー朝の時に出来た分家だったと記憶してるわ。ま、13世の時に醜聞や異説はあるけれど、長い命脈を保ってたワケね。18世紀末のフランス革命まで」


「ブルボン王朝を破滅させ、ナポレオンの資金源となったのが『幻の偽札』と言うアレですね?」

「……何の話? 聞いた事があるような……」

「こっちの話です」


 ホントは『ル○ン三世 カリ○ストロの城』の話です。『ゴート(さつ)』です。


 それはそれとして、ブルボン……長い……か。


「そう言えば、プリムローズさん。俺、長年の疑問があるんですけど……」

「なに?」

「ブル○ン製菓に細長いお菓子のシリーズあるじゃないっスか?」

「ブ○ボン……製菓?」

「ええ、製菓です。あの、お茶うけにピッタリなサイズのお菓子のシリーズの話です」

「…………はあ?」

 これはプリムローズさんだ。


「『ル○ンド』とか『エ○ーゼ』とか『○ーベラ』とか『レーズン○ンド』とか『バー○ロール』とか『ホワイト○リータ』とか、色々あるんじゃないっスか?」


 俺も変なスイッチ入りました。


「……そやね」

 対応がはんなり……と言うよりも、しんなりしてる。


「俺的ベスト・オブ・ブル○ン製菓の細長いやつ、は『チョコ○エール』なんスけど……」

「……けど?」


「『チョコ○エール』の真ん中に入る字って、カタカナの『リ』なんですかね? それともひらがなの『り』なんですかね? どっちなんですかね?」

「知らんがな!」


「それと……『ホワイトロ○ータ』って……どうなんですかね? 俺的には第二位なんですけど」

「それも、知らんがな!!」


 ちなみに、第三位は『バーム○ール』です。

 アソートパックに入ってる「コーヒー味」が好きです。

 ただし、これってめったに見ない「激レアアイテム」です。


      ◇


「うちは○ッキーやね」

「へー、プリムローズさん。○ッキーがお好きだったんスか?」


 どんどん細長くなってます。


「俺はプ○ッツ派でしたね。と言ってもサラダ味オンリーでしたけど」


 そう言えば、色々なアニメで「○ッキー」の「似て非なる物」を食べてるシーンが色々あったな。アニメの製作現場の人って好きなのかな? ○ッキー。魔法の杖「ワンド」みたいに使ってるアニメもあったし、酷いのになると「ボッ○ー」とか。中にはモロ出しでそのまま「ポッ○ー」のもあったけど。


 キャラの愛称でも多いな。

 『俺ガ○ル』の主人公も愛称が「ヒッキー」だったな。一人からしか呼ばれてなかったけど。

 スポーツ・アニメの傑作『ハイ○ュー!!』シリーズの陰の主人公と言っても過言ではない眼鏡君は「ツッキー」だったな。男からしか呼ばれてなかったけど。


 そんで『未来○記』の我妻(ガサイ)()が好きなのは「ユッキー」だった。


 ……あの声、また聴きたいな。

 あの背筋が寒くなる感じの可愛い声。

 一途(いちず)健気(けなげ)でめっちゃ可愛いよね? ()○ちゃん(※人によって見解が異なります)。


「イケズ。もう、やめへん? 『この世界(アアス)』じゃ手に入らへんし」


 珍しく弱気だ。

 でも、この人に「コーヒー」は、ガチで禁句だからな。


 『この世界』で手に入らないって言うけど……俺の『錬金術』『口内錬成』で「似て非なる物」なら錬成(つく)れるかもしれないな。


 でも、長さ的にキビしいかもな、口の中だし。

 ブル○ン製菓の細長いシリーズは……ギリで無理だな。

 『ギン○ス』の『アス○ラガス』くらいのサイズなら、余裕で可能だけど。

 ○ッキーはどうかな? 無理だろうな。錬成(つく)れたとしても、短か過ぎて、棒……イヤ、(ぼう)ゲームには使用出来ないだろうな。イヤ、むしろ使えよ、俺。勇気を出して。


 俺がそんなバカな事を考えていると――


「ああ、一本の○ッキーから色々思い出してもて、辛いわー」

 プリムローズさんがかなり本気で嘆いてる。


 そんなにっスか?

「ミナミ、なつかしー」

 ぐーんと背伸びするみたいに、両手を突き上げた。


 ミナミって大阪の地名だよな。

 道頓堀にある『江崎○リコ』のデッカい広告でも思い出してんのかな?

 そう言えば、アレって何かを持ち上げてんのかな? 重量挙げみたいなポーズだったような気がする。……うろ覚えだけど。


 そんで『江崎○リコ』って実在しそうで怖いな。

 『メ○ドインア○ス』のあの子って苗字ないよね?

 ちん○んが付いてるロボット少年のレ○じゃなくて、爆弾とか汁作っていた眼鏡の子。

 ……でも「眼鏡の○コ」って『進撃』にもいたな。

 所属どこだっけ?

 壁美化部?


      ◇


「ホントにお任せてしても、よろしいのかしら?」


 ちょっと歌川(うたがわ)シゲだ……イヤ、誰? そのお婆ちゃん?

 変な人名を妄想してたせいか、俺の『脳内言語変換システム』が暴走してるな。


 正しくは――女官のロザリンダ嬢は、ちょっと「疑わしげ」だ。


 ようやく、ラウラ姫への「尋問」が終わったので、俺がひっくり返ったバカデカい銅像「座って何かしてます像」を元通りにする、と申し出たら、この反応だ。

 もう既に「犯人」の女王陛下の側近ネコジッタ(ばあ)は、逃げ去ってるし、誰かがやらなきゃならないなら、俺たちで十分だ。


 俺たちには『合体魔法』があるんだっ!


「ではお任せしますよ」

 ロザリンダ嬢はそう言って胸元で腕組みした……すると、なんということでしょう!


 「謎の白い光」が消えて、お胸の谷間がはっきりくっきりしたではありませんか!


 おお、大きい!

 ビバ!

 ビバ! 巨乳!


「……(くっはー)」

 それにしても大きい。

 お胸の谷間なのに、まるでお尻のようだ……。


 そして、そうか!


 『★謎の光☆』とは、そういう仕様の『魔法』か!


 『この世界』にかつて栄えていた超古代文明の遺産と思われる『魔法』を司る『世界の理(ことわり)(つかさ)』は、女性のお胸の先端の突起物が露出しなければOKという判断基準か。


 なんか日本のTVの放送コードみたい。


 ん? 待てよ? とすると……。


 俺はある事を確認するために、女官のロザリンダ嬢の背後に回り込んだ。


「おい、ジン!」

 プリムローズさんの声がするけど、今はそれどころじゃない。


「……!」

 そこには、(さえぎ)るもののない、素敵な光景があった。


 肌色だ。

 ここは規制対象外なのか……お尻は完全に丸見えじゃないですか!

 なんですか? この倫理観? 日本と同じですか?


   パシャパシャパシャパシャパシャ


 もう脳内ではシャッター音が(うるさ)い。煩い。


 てか思わず、○ッキーしてしまったよ。

 イヤ、待て。これだと勘違いされてしまうな。棒は()らない……イヤ、要るよ(笑)。


 言い直そう。

 えーっと、まるで某国のジェット戦闘機みたいに「コブラ」した。

 でも、「コブラ」って水平状態から機首を垂直に近い角度にまで上げる事だから、厳密に言うと違う気もするけど……。と言って、生き物の方で例えると、ちょっとシャレにならないしな。カタチからして「似て非なる物」だし。


「「「「……あ」」」」


 何人かに気付かれたようだけど、俺は気にはしない。

 いつもの事さ。


 陶然(とうぜん)として女官のロザリンダ嬢の素敵な後ろ姿を見ていたら、

「……重い」

 ミーヨの呟きが聞こえた。たしかに、なんか重い。


「……え?」

 見下ろすと……ナニコレ?

 気が付くと、俺様の俺様に、何かが被せられていた。


 なにか木製の物体が……あ!


 コレって……第二侍女ポーニャ嬢が誤って落とした鍵を拾うついでに、人造湖の湖底で拾った『七人の巫女』の一人ロザリンダ嬢の妹の『巫女見習い』クリムソルダ嬢が落としたらしい、白い木靴じゃないか! 長いよ、説明。


「……めっ!」

 顔を上げると、ミーヨ先生に怒られた。

 イヤ、いくら非常事態の緊急発進(スクランブル)とはいえ、他人(ひと)様の木靴を、俺様の俺様にすっぽり被せるなんて……てか、だいたい隠れてるな。


 クリムソルダ嬢、足のサイズいくつなんだ?

 イヤ、それに言及する事は、俺様の俺様の全長を公表するに等しい行為だな。やめとこ。


「え? どうし……ぷっ!」

 女官のロザリンダ嬢が振り向いて俺の姿を見ると、噴き出した。


「なによ、それ? あははははは」


 またまた大笑いされた。


「あははははははは」


「「「「「……ぷっ」」」」」


 みんなにも、笑われた。

 たくさんの女性にあざ笑われるのって……凄い良いよね!


 イヤ、別に「強がり」じゃないよ?


 本心だよ(※もっとダメだよ)。


      ◇


   カタン!


 硬い音がして、何かが床に落ちた。

 木靴じゃない。

 みんなからのご褒美(笑)で、俺様の俺様はまだ△△したままだし。


 木靴のカカトから、何かが落ちたのだ。

 何かの細工があって、カカトに何か仕込んで、隠してあったらしい。


「「「なに?」」」


 俺はかがんでソレを拾いあげた。


「うわー、ジン様。また丸見え」

「まあ!」

「うげげげっ、君、わざとやってるんじゃないだろうね?」

「ふむふむ。やっぱりじっくり見ると、お兄さんのお尻には『双子星』みたいな黒子(ホクロ)がありますね……」

 俺の背後の侍女軍団+1が、また何か言ってる。


 そんな事より、俺は拾い上げたものが気になっていた。


「これ……なんだろう?」


 見たことのない、小さな丸い金属製の円盤だ。


「「「「なに? なに?」」」」


 みんなに取り囲まれる。いいニホイだ。


「凄い重たい金属なんだけど」


 見た目は普通に銀色だ。

 ただし、やたらと重い。


 木の靴が「湖底に沈んでいた」事が不自然だとは思ってたけど……コレの重みのせいだったのかもしれない。

 俺は、純金製の物体(俺が『太陽金貨(ソル)』から錬成した『黄金ウ○コ』だ)を手にしたことがあるから判るけど……確実に金よりも重い気がする。


「「「「……ふうん」」」」


 みんな興味なさそうだな。

 アクセサリとかなら食いつきが全然違うだろうけど、なんの刻印も紋様も無い、ただの素っ気ない丸い円盤だからな。


「んー……それって『重い銀』じゃないのかな」

「『重い銀』? 知ってるのか、ミーヨ?」

「うんっ。『銀の都』の『巫女』さまが『神授祭』で祈願すると、それを貰えるんだって、神様から」

「なんだそりゃ?」


 アルミニウムの事である『軽い銀』も、そこの特産って話だけど、どんなシステムになってんだ? 鉱石から精錬するとかじゃなくて、いきなり完成品をクリスマスプレゼント的に貰えちゃうの?


 そんで『重い銀』……金より重くて、放射能とかない元素って言うと……なんだろ?


 頭に浮かぶのは「イリジウム」だな。


 『地球』だと、元々はほとんど存在してなくて、6千6百万年前だかに小惑星が落ちて来て、恐竜が絶滅するような『大量絶滅』があった地層……『K-Pg境界』に目立って含まれてるらしい。


 つまりは宇宙由来のレアメタルのはずだけどな。

 でも、ここは『地球』とは別な惑星だから、どんな元素がどんな割合で存在しているのか不明だけど……レアな事はレアだと思うんだけどな。


 それがあの、メロンのような巨乳で、おっとりぽわんとしたおとぼけ『巫女見習い』のクリムソルダ嬢の靴に隠してあった……。


 どうなってんだろ? いろいろと謎だ。


 ま、『俺の聖女』のシンシアさんに会いに行くついでに、彼女にこの木靴を返すつもりだから、その時訊いてみればいいか。

 その前に、俺様の俺様にすっぽり装着(笑)してしまったので、ミーヨの『魔法』でキレイにしてもらわないとな。


「どうするの? クリちゃんのでしょう? それ」

「ああ、うん。クリムソルダ嬢に返すよ、もちろん」


 心配そうなミーヨに、俺はそう言って安心させる。

 二人とも「小市民」気質なのだ。悪い事出来る性質じゃないのだ。


「本当? そのまま貰っちゃうつもりなんじゃないの?」

 またまた歌川シゲだ。本日2度目の登場だ。

 じゃなくて、女官のロザリンダ嬢が、またまた「疑わしげ」だ。

 でも、お尻をガン見されてた事は、別に気にしてないらしい。


「そんな事しませんよ」

「ふうん。それにしても……」

 彼女はまったく遠慮なしに、俺様の俺様に、まるであつらえたかのようにピッタリな、ペ○スケースと化した白い木靴を凝視してる。


「……ぽ(※照れ)」

 なんか直接見られるよりも恥ずかしいですう。あんまり見ないでくださーい。


「女性の靴にお酒を注いで呑むのが好き、という殿方もいらっしゃいますが……。それ以上ですね。殿下、難儀な人を『(いと)(びと)』になさいましたね」

 女官のロザリンダ嬢がからかうように言った。


「む? ……うむ」

 ラウラ姫は頷いた。


 そこは(かば)ってよ!


      ◇


「祈願! ★怪力っ☆」

 俺とラウラ姫の『合体魔法』が発動した。


「「「「えっ?」」」」


 木靴から出て来た謎の金属には驚きもしなかった面々が、今度は本気で驚いていた。


 この中でいちばん小柄なラウラ姫が、左手で俺のを握り、小さな右手でひょいっ、とバカデカい「座って何かしてます像」を持ち上げたのだ。


 おっと、いけない! 脱字があった。

 左手で俺の「右手」を握り――だ。


 『★怪力☆』は、建設土木作業に従事する肉体労働者などが、めっちゃ重い物を持ち上げる時に、全身を強化する一時的なパワー・アシスト魔法だそうな。

 ついでに言うと、弓矢や近接戦用武器を使用するのに、腕力だけを強化するのが『★剛腕☆』だそうだ。


 双方とも、その効果持続時間は5ツン(約5分)だそうだ。

 5ツン経過でいきなりカクン、と止まるらしい。E○Aの内蔵電源みたいに。

 カップうどんの出来上がりを待つ程度の時間しかないので、使用には充分な注意が必要らしい。


 そんで『★剛腕☆』って、どっかで誰かが使ってた覚えがあるんだけど……思い出せない。誰だったっけ?


「それっ!」

 ちびっ子剣士ラウラ姫によって、あっさりと持ち上げられ、それ(・・)は台座に戻された。てか今、姫は全裸だから帯剣はしてないけどな。


「……(あんぐり)」

 女官のロザリンダ嬢の口が、呆然と半開きになってる。

 なんかちょっとやらしい(※個人の感想です)。


 突然ハッとして、

「少し、お待ちを。祈願。★荷重測定☆」

 銅像の……というか台座に掛かってる重みを測定してるらしい。


「18ナンダモン! そんな!」


 貴女(あなた)19歳でしょ? ……イヤ、違うな。

 『この世界』の重さの単位だ。「18ナンダモン」って「何㎏」だろ?


 玉子2個に砂糖18g……イヤ、コレは『一週間○レンズ。』の玉子焼きの話だ。


 えーっと、1ダモンが約1gで、1ダモンネが約11gで……大きく飛んで1ナンダモンはその千倍だから……ああ、計算の得意なセシリア(10歳の猫耳奴隷だ)がいればなあ……。


「約198『きろぐらむ』だよ」

 プリムローズさんが教えてくれた。

 てか、手元でなんか計算する『魔法』使ったらしい。キラキラ星が見える。


「それだけっスか? 『魔法』使ってるのに、もっと重いかと思った」

 別に大したこっちゃない気がするけどな。


 関係ないけど、180㎏を「軽い」って言ったの、なんのアニメだっけ? 本気で思い出せないから誰か教えて。


「てか『魔法』って、もっともっと重い物運べるじゃないっスか? おとといなんて、あのデッカい『ヘビアタマの翼竜』を運んでたのに」


「あれは対象となる物体の下に、空気の層を造って『横滑り』させてるだけなのよ。やってる事は単純なの。30なの(約3㎝)くらいしか高さが取れないから、平坦な所でないと使えないし。それに……君との『合体魔法』だったしね」


 プリムローズさんが、いつものように解説してくれた。


 つまりは「札幌ドーム」の「ホヴァリングサッカーステージ」の縮小版みたいな感じだったらしい。

 てか「ホバークラフト」かな? でも、軍用の「LCAC(エルキャック)」とかでも、坂道は登れないらしいんだよな。


 一方の女官のロザリンダ嬢は、驚愕から抜けきっていない。

「……去年の『神授祭(しんじゅさい)』の時の記録は……確か16ナンダモン」

 二つ若返った。違うか。


「どういう事です!?」

 凄い剣幕で訊かれた。


「なんかよく理解出来ないんですけど……」


 まったくなんの事やら。

 『神授祭』って「冬至」の時にやるクリスマスみたいなやつでしょ? カレーみたいな味の鳥の丸焼き食うんでしょ? それくらいしか知らないよ?


「『★怪力☆』で持ち上げられる重量は、『神授祭』の『神前重量挙げ大会』の最高記録に等しい。これは『世界の理(ことわり)(つかさ)』で決められている事! それ以上の重さを持ち上げられるハズがないのです!」

 女官のロザリンダ嬢がまくし立てる。


「……へー」

 平板な声が出る。

 『神前重量挙げ大会』なんてものがあるんだ?

 てか、何でも「神前(しんぜん)」付ければいいってもんじゃないだろうに。


 俺が聞いてる話では『★怪力☆』は、生きている人体を強化するパワーサポート魔法のようだから、なんかの処理とか演算が複雑になるのかな? それとも、人体に負荷がかかり過ぎないように「リミッター」としての機能かな?


 そう言えば『江崎○リコ』の「あのポーズ」って「重量挙げ」じゃなかった。

 いま思い出した! 陸上競技の「ゴールの瞬間」みたいな感じだったハズだ。


 そんで、『だが○かし』によれば、グ○コのキャラメル1個には、キャッチフレーズと同じ300m走れるだけのカロリーが入ってるはずだ。ひと粒に16キロカロリーだっけ?


 ……それはそれとして、また「やっちゃった」らしいな。


 『この世界』の『魔法』の常識から外れた、異常な事をやっちゃったらしいよ。


「『神授祭』ですよ! 『神授祭』! ハレの祭りの日の神聖な祈り……それが(くつがえ)されたとでも言うのですか!?」


「……(泣)」


 イヤ、「ハレの祭り」とか「祈り」とか言われると、『ギルティ○ラウン』の可哀相なヒロインたちを思い出して泣いちゃうから、やめて。


   カコン!


「あ、ジン様。おちん……落ちましたよ。靴が逆さに」

 ミーヨの、あわてた声がする。


「……(泣)」

 なんだよ? 靴が逆さ?

 明日の天気どころか、いま俺の目の前に雨が降ってるよ(泣)。


「シャー・リイ!」


 ……!!


「はい。ロザリンダさま」

 いつの間にか居た若い全裸の女官さんに、女官のロザリンダ嬢が声を掛けたようだ。

「『魔法審議会』の招集を! ……って、ジン君? なんで泣いてるの?」


「…………(涙腺崩壊)」


 もう涙が止まらない。

 全裸の女官さんも見えない。


 ……だって、シャー○ーとか、絶対に出しちゃダメな名前出すから……。


「あの人、妹さんの名前は、アナベルよ」

 プリムローズさんが意味ありげに言った。


 ……そっちは知らないです。


 アトミック・バズーカの人ですか……?


      ◆


 シャー○ーは『コード○アス 反逆のル○ーシュ(R2)』の報われないヒロイン。

 『ア○ベル・リイ』はエ○ガー・ア○ン・ポーの詩。

 アナベ○・ガトーはアトミック・バズーカの人――まるが多い。

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