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081◇黄金色の煌めき


「ぶったまげるような恩寵(おんちょう)に包まれし――」


 な、ナニソレ?

 いきなり式典官の女性(※全裸)に告げられて、ぶったまげた。


 知らんけど、女王陛下の出御(しゅつぎょ)の先触れってこんななの?


「いと(たっと)き人類最初の降臨の地の主人(あるじ)にして、いと(わずら)わしき『永遠の道』大交差の交通整理人」


 その二つ、だいぶギャップがあるよ?


「『全知全能神神殿』の守護の戦士の長。『空からの恐怖』に備えし兵団の長。『ケモノ』の駆逐者。害虫の駆除者」


 最後のはどーなの?


「『冶金の丘』の太守。『美南海(みなみ)』の島主(とうしゅ)。『月の欠片』の保持者。『水路』の雑草取り」


 だから、なんで最後にくさすの?


「『運河』の経営者。『賃貸住宅街』の所有者。『両替商組合』の大口預金者」


 もーソレ、「称号」じゃねーよ!!



 ちょっと間があった。



「――女王国。第19代女王、ブラリンダ2世陛下!」


 女官の声が、丸いドーム天井に響いた。


 女王陛下のオナ○ー……イヤ、お成りだ。


 お名前はブラリンダ2世か……俺様の二世も、今ぶらりんだ。


 …………。

 ……。


 …………ちょっと反省。


      ◇


   ひたひたひた――


 足音がする。裸足だな、これ。

 絨毯(じゅうたん)の上歩けばいいのに、魔造大理石の床の上を歩いてる。


 ちらっと見ると、女王陛下は全裸だった。


 まあ、『謁見の間』の両脇に並んでいる王族や女官の皆さんが全裸なので、判り切っていた事だけど。


 ただし俺は、

「あまり、直視しないように」

 と、前もって注意されているので、視線は下向き加減だ。


 それにしても、本当にみんな全裸とは、まったくどうかしてるぜ。

 前にラウラ姫が自分の名前を噛んで、「ラララ」と言ってたけど、まさにここは「ららら♪ 裸族の宮殿」だ。


 ありえなさ過ぎる。


 なんなんだ、この状況。


「「……」」


 謁見に臨んだ俺とラウラ姫は、敬意をこめて頭を下げた。

 こうすると、女王陛下を見ずに済むし。


 当然、俺とラウラ姫も全裸だ。


 わしゃわしゃした癖のある金髪が、姫の背中を隠してる。

 つまり、その他は見えてるんだけど。なんとなく悪い気がして『光眼(コウガン)』の「カメラ機能」は使用してない。


 でも、姫の「ウェヌスのえくぼ」が可愛いので、一枚だけ貰おう。パシャっとな。


 謁見資格のない侍女さんたちは来てない(脱衣拒否だ)。

 謁見予定だった次郎氏はドタキャンした(脱衣拒否だ)。


 俺と姫だけが謁見に(のぞ)んでいるのだ。


      ◇


(おもて)を上げよ」

 言われるまま、顔を上げて……さらにもっと顔を上げる。

 ちょうど女王陛下の『世界の起源』が見えちゃう角度だったのだ。危ない危ない。


 女王陛下は、光輝いていた。


 てか計算された演出で。


 イヤ、女王陛下の玉座は「おっぱいドーム」のちょうど真ん中にあるんだけど……ドームの頂点に空いた採光の穴から、女王陛下に光が降り注いでいるのだ。


 しかも、採光孔の上にある『小屋根(※見た目は◎首だ)』の内側に光学的な仕掛けがあるらしくて、黄金(きん)色にキラキラと煌めいている。


 なるほど、「控え室」で随分と長い事待たされてたけど……このために太陽(ソル)の「出待ち」(?)だったのか。はた迷惑な。


 でもって女王陛下は、ぽっちゃりと肥り気味だった。

 よく見たら、肥えた太ももで『ラウラ姫の故郷』は見えない安心設計だった。良かった良かった。


 てか、その横にとんでもないものを見つけてしまった。


 女王の側近らしい、高齢のお婆ちゃんだった。このお方も全裸だ。

 すでに現役を引退した萎びた三角形の物体が、彼女の上半身にふたつブラ下がっていた。

 でもって、この人も無駄に黄金(きん)色に煌めいていた。



 こら、ちょっとキッツいわーW。



 謁見の前。

 すぐさま脱衣を完了した俺は、そのままプリムローズさんに向き直って、助言を求めた。

 そしたら彼女は、梅干し(※『この世界』には無いけど、似たような酸っぱい漬物はある)でも食べた時のような、酸っぱそうな顔になって「陛下の傍に居る婆あ(酷い言い方だ)に気をつけて」って助言をくれたんだけど……間違いなく、この人の事だな。


 オオババちゃんこと『先々代(さきのさき)の女王陛下』とソリの合わない「今上(きんじょう)」の側近って、この人の事らしい。


 女王陛下の「乳母」が、『脇侍(わきじ)』という呼称の「補佐官」に繰り上がったらしい。

 てか「脇侍」って仏像の用語かなんかじゃないのか? 俺の『脳内言語変換システム』はどうなってんだ?


 そんで、40代半ばくらいの女王陛下の「元・乳母」にしては、高齢過ぎると思えるんだけどな……すんごいお婆ちゃんだよ?


「お久しゅう御座います。陛下。ライラウラに御座います。ここに控えますは、我が『(いと)(びと)』に御座います」

 ラウラ姫が噛むのを恐れて、焦り気味に、早口で言った。

 『(いと)(びと)』って、つまりは愛人の事だから、えーっと俺の事か? てか今のは、俺に「続け」って事だよな?


「サ……ジン・コーシュで御座います」

 姫が「御座います」を連発してたので、つい「○ザエで御座います」と言いかけたよ。


「お目にかかれて光栄に存じます」

 そこまで言って、あとは向こうの出方を待つ。

 これでいいハズだ。多分。


「……ぼそぼそ」

 なんか側近のお婆ちゃんが、女王陛下に耳打ちしてる。


「その方、昨日『大交差』で暴れた『ヘビアタマの翼竜』を、ラウラと共に討ち果たしたそうだな」

 女王陛下は、平板な調子で言った。


左様(さよう)に御座います」

 本当なら(こうべ)()れるべきなんだろうけど、俺はつい壇上の二人を見上げたままで言ってしまった。


「……」

 女王陛下は無言で頷いた。

 そこにまた全裸のお婆ちゃんが耳打ちする。出来ればこの人にモザイクいれたい。


「大儀であった」

 うつろな口調と死んだ表情で、女王陛下が言った。

 ラウラ姫の生き生きした口調で言われると、嬉しいし、労われてる感じがあるけど、まったくそんな感じがしない。


 てか女王陛下、お婆ちゃんの言いなりっぽいぞ。


 この二人「操り人形」と「人形師」みたいな関係なのかな?


 こんな覇気のない女性(ひと)が女王なのか? 

 最初からこういう人柄だったんだろうか?

 それとも、何か「きっかけ」があったんだろうか?


 オオババちゃんも、『王都大火』の精神的なショックで過眠症みたいになったって言ってたけど……。


 俺の紹介はまあ、終わったものとして、他にも『冶金の丘』での『王家の秘宝』に絡んだドロレスちゃんの件とか、次郎氏の再訪の報告とかあるんだけどな……どうしよう、ここで切り出していいのか?


 そんな事を考えていたら――


「フ○ックしよ!」


 全裸で寒いのか、唐突に誰かが大きなくしゃみをした。

 なんか性的なお誘いみたいなくしゃみだ。


「ファ○クしよ!」

 もう一度くしゃみした。

 ダメだ。一度そう聞こえてしまうと、空耳が止まらない。


「……(ずずっ)」

 見ると、席次が上位の、ぼってりと太った丸い……イヤ、若い女性だった。ある種の専門家にウケそうな感じだ。

 鼻をすすりながら、何故か俺を睨んでる。


 きっと、この人が色々問題児の第一王女殿下に違いない。

 先刻『(いち)の小宮殿』で会った第二王女殿下に、よく似てる。

 あの人は、この『謁見の間』にはいない……当然だ。第二王女殿下が女の子を産んじゃったから、今のこの『全裸祭り』というイベントが発生してるのだから。どっかで母子ともに休んでるんだろう。


「フ○ックしよ!」

 Fで下唇噛んでるだろ。発音がネイティヴだぞ。

 太ってる人って暑がりなイメージ有るけど、寒がりなのか? 今、夏だよ。

 てか誘われても、お断りですよ?


「『(いち)の姫』よ。寒ければ、下がっても苦しゅうないぞ」

 女王陛下のお慈悲だ。でも、どこか物憂げなご様子だ。


 『(いち)の姫』というと……この人が長女か?

 ラウラ姫は「第三王女」だけど『四の姫』なんだよな。


「いえ、陛下。こやつは『プロペラ小僧』と綽名(あだな)される曲者(くせもの)とか。なんぞあればわたくしが陛下の『盾』に」

 第一王女殿下はぶるん、と巨体を震わせて言った。

 「盾」と言うか……もう「肉壁」みたいだったけど。


「なんでも、この者。『ヘビアタマの翼竜』を倒すに『プロペラ踊り』なる目くらましの技を使ったとか……」

 余計な事を言う人だ。


「『プロペラ踊り』とな?」

 あれ? 無気力そうな女王陛下が、ヘンなとこに食いついて来たぞ。

 そんなん好きなんか?


「夜空に輝く『プロペラ星』の如くに!」

 第一王女殿下が大仰に言う。


 『この世界』の夜空には、他の「棒渦巻銀河」と思われる『プロペラ星』が見えるのだ。

 しかも、それは『地球』の北半球で言う『北極星』にあたるポジションにあるらしい。

 なので、晴れていれば夜空にいつも見えるのだ。


 俺の『プロペラ小僧』という輝かしい称号……イヤ、不名誉極まる二つ名は、そこからきてるのだ。


「星か……久しく見ておらぬ」

 女王陛下が憂いを込めて呟いた。


 俺も久しく夜空を見てないな……夜は夜で忙しいしな。ぐへへへ(邪悪な笑い)。


「ぬ? 左様ですか? ……(ぎろり)」

 何故に俺を睨む第一王女殿下?


 てか俺が見ても、恥じらいもしない。

 他の方々は、微妙に気恥ずかしそうなのに……その様子がちょっとグッとくるのに。

 でもみなさん、それなりの年齢の方ばかりなので、微妙に残念なのに。


「……ぬぬ」

 そんで、この第一王女殿下も懐妊中なのかな?


 お腹も丸いけど、お胸とその先端部が()れたようになってて、それがやたらと目に付く。

 大きくて物凄い色のバスストップだ。バスが停車しそうなくらい目立ってる。あれ? なんか間違えたか。


 と言うか……第二侍女ポーニャ嬢が言ってた『◎首が■くなる呪い』ってコレか?


 確かに、その呪いは彼女の身体(の一部。二ヶ所)を(むしば)んでしまっているようだ!


 恐るべし、『◎首が■くなる呪い』!!


 俺がそんな事を考えていると、第一王女殿下は、ホントにしつこかった。


「陛下がご所望でしたら、こやつも喜んで踊りましょうぞ!」


 まだ言ってるし。


「……(じろり)」


 そして、時々俺を睨む。

 次郎氏は来なくて正解だったな。

 恐らくは次郎氏の事を激しく恨んでいるハズの第一王女殿下は、凄まじい形相で周囲に怒気を振り撒いていて、とても妹の出産を祝ってるようには見えないのだ。


「……(ぎろり)」


 鬼女か夜叉か般若か。

 ちびっ子が見たら、お○っこチビりそうな感じだ。

 ラウラ姫大丈夫だろうか?


「こやつ、『大交差』のど真ん中で、男のアレを千切れんばかりに振り回したとか!」

 からかうように言った。


「「「「「……(ひゃはんっ)」」」」」


 居並ぶ女性たちから、声に成らないような変な悲鳴が上がった。


 これって、たぶん、俺を笑いものにして、コケにしないと、この場が収まらないんじゃなかろうか?


「ほれ、小僧。『プロペラ踊り』なるを披露してみせよ。ほれ! ほれ!」

 しつこく挑発される。


 何か面白くない事でもあったのか……イヤ、確実にあったんだな。


 自分は酒呑んで暴れるという大失態で『星(女王になるためのお手柄ポイントだ)』を失った上に、ライバルの第二王女が女児出産で『星』を獲得したんだから、面白くはないだろうな。


 しかもそれを、素っ裸でお祝いさせられてるんだから、腹も立つだろう。

 なんとなくキレ気味だ。


 ……やれやれ。


「では、お目汚しに」

 俺はそう言って立ち上がる。


「「「「……!」」」」


 その場の皆さんが、(ぎょ)……イヤ、それは俺様の(にっく)き仇。……ぎょっとした。


「……」

 ラウラ姫が気付かわし気にこっちを見てた。

 うん、姉君とは比べ物ならないほど美乳だ。全体的にちっちゃいけど。


 姫にも協力してもらう事になるな。


 まさか、本当に女王陛下の御前で、俺様のプロペラ・ダンスを披露する事になるとはな!


 思ってもいなかった(というと嘘になるけど)展開だけど、この際だ!


 脂肪……イヤ、不満の塊みたいな第一王女殿下と、憂いに沈んだ重い表情の女王陛下を、心から笑わせてあげよう!!


 俺はそう決意した。


      ◇


 俺様の俺様は、現在エネルギー充填率40%程度だ。

 まだ、足りない!


 だがしかし、100%ではいけない。

 その硬度に阻害されて、振り回せなくなってしまうからだ。

 プロペラ・ダンスには「適度な大きさ」と「適度な柔らかさ」の絶妙なハーモニーが必要なのだ。


 エネルギー充填率に換算すると、70%から80%だ。


 つまり、あと30から40ほど足りない!

 それを補わなくてはいけないのだ!


 どうするのか?

 簡単だ!


「……(凝視)」

 俺はラウラ姫(の裸体)を見つめた。


「……むぅ(照れ)」

 照れてる照れてる。

 その恥じらいが萌えるぜっ。


 エネルギーが充填される。

 ちなみにこのエネルギーとは、『俺の聖女』シンシアさんが大の苦手にしてるヤツだ。


 しかし、まずい。


 このままでは、100はおろか120に達してしまう。

 エネルギー充填率が120%を超えてしまうと、発射寸前となり、『暴発事故』の危険性があるのだ!!


 二打点(約3時間)ほど前に、湖に『白い花』咲かせちゃったけど、そんなことでは、とてもとても『賢者』になんてなれないのだ!

 俺はミーヨに『魔王』と呼ばれた男なのだ!


 リビドーが(ほとばし)ってしまうのだ!!


 ちん○……イヤ、鎮静が必要だ!

 俺は玉座を……ではなく、敢えてその隣にいる全裸のお婆ちゃんを見つめた。


「……ぽ(照れ)」

 照れんなよ。ババア。

 しかしその恥じらいが、俺様の俺様をいい感じに()えさせた。


 よし、調整(アジャスト)完了!


 いくぜっっ!!


      ◇




  ※ 描写不可能 ※




「「「「「ぎゃぁぁぁぁあああああああ!!」」」」」




      ◇


「ほんに、ライラウラ姫は良い殿方に恵まれたのう」

「ほんに。ほんに」

「恐縮です」


 なんか気に入られました。おばちゃんたちに。


 『王宮』にお住まいの王族の女性……女王陛下の姉妹で、姫の「叔母さん」たちらしいです。このお二人、凄い似てらっしゃいます。ひょっとすると双子かもしれないです。


「陛下が、あんなにお笑いになられるとは……何年振りであろか」

「ほんに。ほんに」

「左様でしたか」


 なんか、のんびりした会話だ。

 『謁見の間』は大騒ぎだったっていうのに。


「アレというものは、あんなにグルグルと回せるものじゃったのだなあ」

「ほんに。ほんに」

「驚かれましたでしょうか?」


 ラウラ姫の叔母さんたちは、侍女さん(たぶん着衣状態)が迎えに来るのを待ってるそうです。

 お二方とも全裸なので。目のやり場に困ります。

 なんていうか、ゆるんだ体形ですが。


「最後に、ぴたっ! と上を向いて止まったのには、ほんに心の底から笑ったわい」

「ほんに。ほんに」

「それは結構で御座いました」


 今回初披露の決め技『うえピタ』です(怒られそう)。

 発動条件があるので成功するかどうか不安でしたが、全裸のラウラ姫の、無自覚で献身的な協力のお(かげ)で上手くいきました。


「あんまりにも、笑い過ぎて、陛下は失禁しておられたのお。まるで滝のようじゃった」

「ほんに。ほんに」

「……」

 歯に衣着せぬ物言いだ。

 てか全身一糸まとわぬお姿なので、相撲なら「物言い」がつきそうだ。

 てか「不浄負け」だ。


 まあ、実はそうなんです。


 女王陛下の大爆笑と、それに続く大失禁によって、全てが有耶無耶になって謁見終了でした。


 俺の脳内では、カン! カン! カン! とゴングが鳴り響いてました。

 セコンドからタオル投入ですわ。


 腹筋が崩壊してたのは確かだったけど……括約筋も連動してました。


 ホントに滝でした。


 笑わせ過ぎちゃいました。てへ。


 俺も呆然としましたけど、

「俺もよく『白い花』を咲かせます。むろん、陛下の『黄金の水』には到底(かな)いませんが」

 と言ってフォローしてみました。大人のジョークってヤツですわ。

 てか紛れもない事実だけれども。


「ならば良し」


 どこかで聞いた事あるようなセリフの後、女王陛下は不都合を誤魔化すように豪快に呵呵大笑なさいました。

 キャラブレ……というかキャラ崩壊もいいとこです。そんなキャラじゃないでしょ?

 で、そのまま退出なさいました。


 ちいさな人造湖を残して。


 人造湖は天井から差し込む光で、キラキラと黄金(きん)色に輝いていました。

 もしかすると……()の色だったのかも知れませんが。


 取り残された人々が大騒ぎでした。


 実に様々な人間模様ってやつですわ。

 女王陛下を追いかける人もいれば、俯いて笑いを堪える人もいれば、俺を睨みつける人もいれば、真っ青になって玉座の洗浄に向かう人もいれば、ただただ呆然としてるだけの人もいれば、なんか自分に『★後始末☆』かけてる人もいれば――


 総入れ歯……イヤ、そう言えばラウラ姫は、ご自分の母君の痴態を見て強いショックを受けていたようでしたが、どうしても話しておきたい事があったらしくて、女王陛下を追いかけて行ったので、今ここには居ないのでした。


 『謁見の間』に居た人々は追い出されました。

 全裸のままで。

 で、今は廊下で立ち話中なんです。立ち話と言っても……してないですよ、△△。


「まずは『女王国』の歴史の中でも、誠に前代未聞の出来事であったのう」

「ほんに。ほんに」

「恐縮です」

 俺も偉業を達成出来て素直に嬉しいです。


 そこへ、

「……王妹殿下」

 やっぱり着衣状態だった30代くらいの侍女さんが、俺様の俺様をチラ見しながら、主人を迎えにやって来た。

 てか王族二人に対して侍女一人なのか? なかなか扱い酷いな。


「おお、来たか。では、たいへん楽しゅう御座いましたよ、プロペラ小僧殿」

「ほんに。ほんに」

「たいへん恐縮です」

 ホントは、縮んでなんかないけどね!

 てか『プロペラ小僧』はやめてよ。


「では、また」

「ほんに。ほんに」

「……(ぺこり)」

 三人はにこやかな笑顔で去っていった。


 良かった良かった。


 重苦しい鉛色の表情だった人たちが、みんな俺様のプロペラ・ダンスで、黄金色の笑顔になってくれた。


 俺はみんなの心を黄金に換える『心の錬金術師』なんだな!


 …………。

 ……。


 すみません! どなたか俺に、『★消臭☆』を!!

 てか、これも寒いな。

 でも今は初夏だから、寒い時にどんな防寒用の『魔法』使うのか知らないんですううう。


      ◇


 もう廊下には、俺一人だけだ。


 どうしよう? ラウラ姫が戻って来るのを待ってた方がいいのかな?


 そんな事を考えていると、不意に廊下の曲がり角から――


 ひょこっ、ひょこっ、ひょこっ、ひょこっ、ひょこっと顔が現れた。

 筆頭侍女と第七侍女と第六侍女と第二侍女と第五侍女のものだった。

 ラウラ姫付きの侍女軍団の顔が、縦一列に並んでた。トーテムポールってこんなんだっけ?


「――まさか、君らも脱いだの?」

 多少の期待を込めて訊いてみる。


「「「「「……(ふるふる)」」」」」


 みんなは否定的に首を振った。


 しょんぼり。


「じゃあ、なにやってんの?」

 ただ迎えに来たのなら、早く出てくればいいのに。


「「「「「……出づらくて」」」」」


 えーっと、それって俺のせい?


      ◆


 今更だけど、下品ですみません――まる。

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