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071◇良き転生を


「「「「「――おおおっ!!」」」」」


 道端の野次馬から、大きな喚声が上がった。


 当然か……全裸で無手のナイスな少年が、たった一人で巨大な『ヘビアタマの翼竜』に立ち向かおうとしてるんだからな。


 俺だったら、指差して笑うわ(泣)。


 とにかく、行くぜっ!


 両手を後方に突き出した可変翼機(ひこうき)走りで、ヘビアタマちゃんに接近だ。


(痛いよー!)


 痛みに暴れてる内懐(ふところ)に入ろうとしたところに、翼の一撃を食らった。


 俺を薙ぎ倒そうとした翼は、触れた瞬間に『★不可侵の被膜☆』で無力化された。


 俺の皮膚が受けるであろう衝撃を予測して、その運動エネルギーを魔法的な力で奪い取るんだろうけど……未だに原理は不明だ。


(あれ?)


 全身の慣性まで奪われるらしく、なんとなく間抜けな体勢で、ヘビアタマちゃんの動きがぴたっ、と止まった。


 今がチャンス。


 見ろ!


 と俺は自分の額を指差す。


 そこには、プリムローズさんの書いた『日本語』があるはずだ。

 それを見た、この『ヘビアタマの翼竜』が、どんな反応を示すのか?


(――え? 『肉』ってなに?)


 ヘビアタマちゃんが、痛みや状況を忘れて呆然としていた。


 ――え? 『肉』ってなに?


 俺も呆然としてしまった。

 プリムローズさんは俺の額になにを書いたんだ?


(何? この人、全裸で……額に『肉』って……まさか、自分を食べろってこと?)


 ちゃうがな。


 何やってくれちゃったんだ、あの女性(ひと)は?


 額に『肉』って、元ネタなんなんだ?


 『僕は○達が少ない』の……星○か?

 違うな。星○のコスプレをした○空だな。

 そんで一期目じゃなくて、二期目の『NEXT』だったかも? ……色々とややこしいな。


 それとも、『この○術部には問題がある!』の、着色された上にイタズラ書きされた石膏像か?


 ……イヤ、プリムローズさんの事だから、もっと古い何かだろうな。

 確か『キン○マン』か? てか、それがそもそもの元ネタだな。


 それはそれとして、

「……ふんがー……ふがふが」

 やっぱ、口の中に『神授の真珠モドキ』が入ってるから喋れないですう。


 何か書くものがあれば「筆談」的な事が出来たかもしれないけど……ねーしな。


(そこ退()いてよー)


 自身の手……というか「翼」の距離感がつかめないのか、ちょっとした動きで俺にぶつかる。

 その都度無効化されるので「彼女」も苛立ってるらしい。


(えいっ!)


 ボディープレスをかましてきやがった。


 でも「ふにゃり」って感じで、『★不可侵の被膜☆』が、運動エネルギーと重量を奪い盗った。

 圧し掛かられてるのに、重くないのだ。


 ちょっと試してみたくなって、ヘビアタマちゃんのお腹の辺りに潜り込んで、ちょうど「おんぶ」するみたいに背中に載せて、その体を持ち上げてみた。


(うええっ)


 ミーヨみたいな呻き声だ。


 難なく、持ち上がった。信じられない。

 まるで「遥か空の上から吊り下げられてる」みたいに、巨体が持ち上がった。


 これって俺の『★不可侵の被膜☆』のチートな無敵さを説明する材料のひとつになるかもしれない。

 俺の皮膚に張られた「何か」が、「遥か上空の、天空にある何か」と繋がってるのかも?


 あの『荒嵐(あらあらし)』を(しず)めたのも、そんな風にイメージしてみた結果だったしな。


「「「「「おい……出てこないぞ」」」」」


 なんかザワついてる。

 早目に無事な姿を見せといた方がいいかな?


 そう思って、ヘビアタマちゃんの体の下から這い出ると――


「「「「「……おおっ! 無事だったぞ!!」」」」」


 観衆(?)が俺の事を心配してくれてたらしい。そんな声が上がったよ。


 ふと見ると、何やら『魔法式空気大砲』らしきものが台車に載せられて引き出されようとしてる。手に小銃みたいのを持った兵士らしい人たちもいる。


 彼らと連携しつつ、何とか出来るか?

 でも、兵隊さんたち、すんごいモタモタしてる。普段から訓練してない感じだ。


 とにかく……どーすんだ? これから。


 我ながらアホもいいとこだけど、ヘビアタマちゃんの「中身」が元・日本人だと分かって、そのままノープランで飛び出して来ちゃったからな。


 もしも、この『翼竜』が、本来の『空からの恐怖』そのままで、人間を襲うって言うんなら、俺も覚悟決めて戦うけど……違うしな。


 『光眼(コウガン)』の「レーザー(ガン)」カッター・モードで、「首ちょんぱ」。

 それで終わりだったのに……ややこしい事になってしまったよ。俺的に。


 ――とりあえず、時間を稼ごう。


 俺様の俺様を回転させる。

 プロペラ・ダンスだ。


 回れ! 回れ! 回れ! 回れ! 回れ! 回れ!


 ……奇行少年だな。傷つかないし。

 ちなみに「本家」は「レ!」だよ。


「「「「「うぉぉぉおおおおおっ!!」」」」」


 道端の野次馬から大歓声だ。


 イヤ、道端どころか、ドタバタやってるうちに、俺とヘビアタマちゃんは『大交差』のほぼ中央に居た。


 日本で言うなら、スクランブル交差点のど真ん中だ。

 めっちゃ目立ってる気がする。


「「「「「きゃ――――っ!」」」」」


 なんか女子の悲鳴も聴こえる。


 声のした方を見ると、『全知全能神神殿』の大階段に『巫女選挙』のために各地から集まったと思われる『巫女見習い』のみなさんがいらっしゃいましたよ。


 騒ぎに気付いて観に出て来たんだろうけど……危ないから「レーザー(ガン)」使えないの、確定だな。


 『★遠視☆』の『魔法』を使ってるんだろう、虹色のキラキラ星が舞って、レンズで拡大された目がいっぱい見える(ちょっと怖い)。

 なんとなくラウラ姫との『神前決闘』を思い出したよ。

 推定だけど、かるく百人以上いるな。もちろん、シンシアさんやヒサヤ。そしてクリムソルダ嬢もその中にいた。


 そうか……「恋愛禁止」中の『巫女見習い』たちが、俺様のプロペラ・ダンスを見て絶叫したのか。


 やるな、俺!


 燃えて来たぜっ!!


(ちょ……ちょっと、なんなの、この人。いきなり腰振ってチン○振り回して……変態? 変態なの?)


 日本語で男性生殖器を表現する言い回しは色々あるけど、ヘビアタマちゃんのは……イヤ、言及するのはやめておこう。


 それにしても、かなりがっつりと見られてるな。


(なかなか、おっきいチン○)


 ぽ(※照れ)。


(だけど……おかし……)

 ヘビアタマちゃんから、笑いを堪えてるような、わりと楽しそうな思念が届く。


 なによりです!


 と言っても、ずっと、回れ! 回れ! してる場合じゃないしな。どうしよう?


 その時だった。


「はッ!」


 ラウラ姫が抜刀して、ヘビアタマちゃんに襲い掛かった。


   キン!


 たまたま硬い爪に当たったらしい。


 かるい金属音がして、刀がはじかれた。

 刀身は、四大魔法合金中最弱と思われる銀色の「ミスロリ(ステンレス鋼)」のようだった。残念だけど、選択ミスだ。


 てか飛び出して来ちゃったのか……。


「はッ!」


   ガキッ!


 二撃目は、尻尾に当たったけれど、やはり硬い尾びれのような皮膚ではじかれて、斬撃にはならなかった。

 力が足りていないんだろう。小柄なラウラ姫の致命的な弱点だった。


「むう」

 ラウラ姫の口から不機嫌そうな呟きが漏れる。


「こやつ、ジンを食べようとしていた!」


 イヤ、ないです。

 勘違いです。

 誰も彼も自分と同じ食いしん坊目線で見ちゃダメだよ?


(今度は、なに? このちびっ子!)


 ヘビアタマちゃんは、何故かラウラ姫を敵認定してしまった。

 なんで俺じゃないの?


(このー!)


 俺はヘビアタマちゃんの翼に襲われそうになっていたラウラ姫の背後から、彼女を包み込むように覆いかぶさった。


「「「きゃ――――っ!」」」


 こっちは『巫女見習い』さんたちの悲鳴だ。


「……」

 姫の悲鳴は聴こえない。

 きちんと守れたようだ。


(あれ? また)


 ヘビアタマちゃんから戸惑いの思念を感じる。上手く翼の打撃を無力化出来たらしい。


「ふんが、ふがふが、ふがふんが」

 ラウラ姫に話しかけようとして、類人猿みたいになってしまう。


 もう、口から出そう。邪魔でしょうがない。

 そして逆に『神授の真珠モドキ』をヘビアタマちゃんに飲ませれば、俺の「思念」が彼女(・・)に届く気がする。


 上手くいかなくても、やるだけはやってみよう。


「ぺっ!」


 俺は『神授の真珠モドキ』を、サクランボの種みたいに思いっきり吹いて飛ばした。

 それなりに鍛えてるし、『身体錬成』で文字通りの「肉体改造」もしたから、俺の肺活量はハンパないのだ。たぶん葉○ちゃん(※チューバ)より凄いのだ。


   キッシャアアア……シャグ?


 飛ばした『神授の真珠モドキ』が狙い通りに、ヘビアタマちゃんの口の中に入った。

 イヤ、近かったし、開くとデカい口なんスよ。『ご都合主義』とかじゃないっスよ?


   ……ックン。


 で、ヘビアタマちゃんったら、飲み込んじゃったらしい。

 間接キス(?)だね。


「姫! 俺の内側に潜って!」

 マトモに話せるようになったので、ラウラ姫に指示を出す。


 俺が、小柄なラウラ姫の背後から覆い被さるようにして、『★不可侵の被膜☆』を利用した「人間甲冑」となって、安全な場所に避難して貰おう。


 で、このセリフ聞くと毎回思うけど「安全な場所」ってドコだろ?

 

「「「「「きゃ――――っ!」」」」」


 雑多な野次馬連中よりも『巫女見習い』さんたちの甲高い声が耳につく。


「俺がリードします。二人で動くんです! こうです!」

 ここは『王都』のど真ん中で、某ダンス・スタジオじゃないからな。

 後ろから抱きついてるから、社交ダンスというよりも、セク○ラ・ゴルフ・レッスンみたいになってるし……。


「む? 『りーど』?」

「あー、違うな。俺の事は『着ぐるみ』だと思って、姫の自由に動いてください!」


「む? 『魔動甲冑』のようにか?」


 『魔動甲冑』? 『この世界(アアス)』に、そんなんあるんか?


「こうか?」

 まるで「二人羽織」みたいになって、二人で合体(※性的な意味はありません)しながら動く。


 なんか知らんけど、今の俺は小柄な姫にあつらえたように、背後からぴったりと装着されてしまっているのだ。


 俺は両手で、姫の手首を掴んでる。

 俺の両足の甲には、姫の足が乗ってる。

 俺様の俺様は、姫の――それはいいか。


「とにかく一旦、ヤツから離れましょう!」


   ギャヤヤァァアアアアアア――


 もう……ヘビアタマちゃんの思念は、読み取れない。


 このまま倒すしか……ないのか?


 と思ってヘビアタマちゃんを見たら、俺の方に向けてヘンな仕草をしていた。

 両の翼についた鉤爪を、上に向けて示してる。


(『待って! って意味か?』)


 きちんと伝わるように『日本語』で念じる。


 コクン。


 ヘビアタマちゃんが、長い首と丸い頭で頷いた。


(『俺の考えてる事分かるんだな? さっき『真珠』飲み込んだろ?』)


 コクンコクン。


(『ここは地球じゃない』)


 …………。

 じっと俺を見てる。


(『君は別な星の、別な生きものに生まれ変わって、ここにいる』)


 ヘビアタマちゃんと対峙(たいじ)しつつ、思念波を伝える。


(『君はそのままの姿で、『この世界』で生きるか?』)


 ……ブルブル。

 「彼女」は、否定的に首を振った。


(『それとも一度死んでしまって、また別な存在として別の場所に生まれ変わるか?』)


 ……。

 また、じーっと俺を見てる。


(『選んでほしい』)


 俺は何様のつもりで、こんな選択肢を「転生者」に示してるんだろう?


 ヤな役回りだ。


 その間に、

「む? ふむ。うむ。ふむ。――うむ!」

 あちこち確認するように、手足を(俺ごと)動かしていたラウラ姫が、なんかのコツを掴んだらしい。


「む? えーっとなんだったか? そう、祈願! 『ヘビアタマの翼竜』の全長を ★計測っ☆」


 おお、ラウラ姫が『魔法』を使った……のはいいけど、今、なぜその『魔法』?

 大きさ測ってどうすんだ?


「うむ。7千なの」

 ちょっと可愛い。


「祈願! 彼は大にして我は小なり。対等なる得物を乞わん。★星装っ☆」


 膨大な数の『守護の星(普通サイズ)』……虹色のキラキラ星が集まって来た。


 そして、姫の構える刀身に絡まり、まとわりつくようして、長大な、虹色のキラキラ星を帯びた「大刀」へと巨大化した。


 ……こんな『魔法』あるんか?


 卑小な存在の「人間」が、『この世界』に棲む巨大な生物と戦うために、『世界の理(ことわり)(つかさ)』に「対等」である事を要求したのか。


 だから、最初に全長を計測したのか?


 てか一瞬、ラウラ姫本人が「巨人化」するのかと思っちゃったよ。


「うむ。これは良い。私に任せよ」

 肩越しに俺を見て、にっこりと笑った。


 ラウラ姫が『キラキラ星の刀』で「俺を着たまま」ヘビアタマちゃんと戦う気らしい。


「いざ!」

 ラウラ姫(と俺)は正面から突撃した。


 イヤ、ちょっと待って!


 まだ、ヘビアタマちゃんとの会話は終わってないのに。


   シャアアア――


 打撃を加えようとした翼をかがんで(かわ)し、俺たちはヘビアタマちゃんの足の間に滑り込んだ。


「★()ッ☆!」


 物凄い斬撃が飛んだ。

 というか『合体魔法』が発動した。


 ごつごつとした岩のような左脚を、魔法のキラキラ星を(まと)って巨大化した刀身が、あっさりと切断してしまった。


 俺の体内にある『賢者の玉』の力で、効果が必要以上に増幅されてんだろうな。


 ……人間と同じ色の「体液」が、大量に溢れ出て来る。


 俺たちの上に覆い被さるように迫ってくる巨体の衝撃を、『★不可侵の被膜☆』で消して、横にすり抜ける。


 本来受けるはずの衝撃をキャンセルした、一瞬の奇妙な静止状態の後に、翼竜は崩れ落ちた。


   ずぅううん――――


 巨体に押し出された地表の空気が、足元をなぜていった。


「とどめを刺す!」

「姫! ちょっと……」


 ラウラ姫と俺は、『永遠の道』に横たわったヘビアタマちゃんの長い首に近寄る。


「★慈悲の一撃っ☆」


 姫と一体化して振り下ろした刀に、生命(いのち)を奪った手ごたえは、伝わってこなかった。


 なぜだろう?

 『魔法』の使用者の、心理的な負担を軽減するための「仕様」か?


 俺は……ヘビアタマちゃんに選ぶ時間も与えずに、殺してしまった。


「良いか?」


 ラウラ姫が俺に離れるように促した。


「良き転生を」


 それは『この世界』から旅立っていく『魂』への、祈りの言葉だった。


 たしかに、もうこうなったら祈るしか出来ない。


「…………」

 ラウラ姫は目を閉じ、額から胸。左胸から右胸……と指を動かして「十字を切った(・・・・・・)」。


「……その仕草は?」

「うむ。どんな意味かは分からない。400年前に我が家のご先祖が『この世界』に来た時から伝わっていると聞く」


 それって……でも今は詮索はいいか。


「……」

 俺も、彼女(・・)に黙祷を奉げた。

 目を開けると待っているだろう現実を見たくなくて、俺はしばらく目を開く事が出来なかった。


 そんな俺の手を、誰かがこじ開けて、手のひらに何かを載せた。


(『いいよ。だって、生まれ変われるんでしょ?』)


 あれ? ヘビアタマちゃんの思念だ。

 まだ生きてるのか?


(『蛇らしくて……しぶといよね?』)


 俺の思念を読んでいた時に、自身の体の映像を受け取っていたらしい。

 てことは手渡されたこれ(・・)は『神授の真珠モドキ』か?


(『じき死ぬっぽい。でも、いいよ。こんな姿で生き続けるよりも』)


 ヘビアタマちゃんの、最後の独り言みたいだった。


(『()は可愛い女の子になって、キミに会いに来るから……楽しみに待ってて』)


(『……じゃあね』)


「良き転生を」


      ◇


 この『翼竜』って……どんな由来があって、『この世界(アアス)』に棲息してたんだろう?


 遥か太古の『地球(アース)』から「コピー&ペースト」されたのかな……?

 それとも別の、他のどこかの惑星から「移植」されたのか……。

 元々が『この世界(アアス)』の生物なのかも知れない。


 よく、判らない。


 その中身は……『地球』の、日本の、ただの女の子だった。


「こいつ……生まれ変わるんだろうか?」

 俺の独言に、

「うむ。『永遠の道』の上で死んだ者は、必ず『この世界』に生まれ変わるという言い伝えがある」

 そんな声がした。


 目を開けると、すぐ傍にラウラ姫がいた。


「あやつ、また来そうな気がする。まったく違う姿になって」

 それ、なんかのフラグじゃないですよね?


(『……あ、そうそう。キミ、名前は?』)


 ヘビアタマちゃんの思念だった。


 まだ生きてんのかい!


「ジン。ジン・コーシュ」

 俺は口に出して言った。

 ラウラ姫が不思議そうな顔をする。


(『……じゃあね。またね、ジンくん』)


 さよなら。


(『あー! でも、なかなか死ねない! 修学旅行の前とかって寝たくても眠れないじゃん? あんな感じ』)


 うお――い!


 蛇(?)の生命力は凄かった。

 その後、しばらくヘビアタマちゃんの「つぶやき」に付き合わされた。


(『額の『肉』ってなんなの? なんかのおまじない?』)


 ちゃうがな。


(『ところで、キミ。なんで全裸で、チン○丸出しなの?』)


 いつものことやがな。


(『なんかキミのこと、プロペラ小僧って呼んでる人たち居たよ?』)


 ……さすがに、人道(?)的見地から「早よ、■ね」とは言えないけど、頭の中が(うるさ)い。


「ジンくん!」


 戦闘終了を確認したミーヨたちが、駆け寄って来た。


「おにさ」

「お兄さん」

「ジン!」


 みんなや、後処理に来た兵士や『王都』の役人たちに囲まれながら、脳内に流れ込んでくるヘビアタマちゃんの思念に悩まされつづけた。


(『キミの周りって、女の子ばっかりだね』)


 お蔭様で。


(『そう言えば、『この世界』って魔法あるんだね。楽しそうだね』)


 俺、使えないけどね。


(『どっか遠くに行って、空飛ぶ生き物になりたいって思った事もあったけどさ。それがまさかさ……』)


 『この世界』に来たのは、この子の願望……だったのか?


(『あー……なんか……もう眠いや。……おや……す……み』)


 それがヘビアタマちゃんの、最後の思念だった。


 何か「目に視えるもの」が、飛び立って行くのかと思ってたけど、何も見えなかった。


 今度こそ、


「良き転生を――」


 見上げた空は青かった。


      ◇◇◇


 そして、これはずっと後になってから聞いた話――


「え!? あの時の『ヘビアタマの翼竜』って、君だったの?」

 話を聞いて、驚いた。


「はい。そうみたいですね、話を総合すると。……ただ、わたしは、ずっと夢の中の出来事だとばかり思ってました」

 彼女は冷静に、無表情に、そう言った。


「だよね? あの時もそう言ってたもん」


 正確には「思念」だったから、「そう思ってた」かな?


「わたしの『こころ』を、読んでいたわけですね?」

 そう突っ込み返された。


 俺、夏目先生の本は読んだ事ないけどね。


織田作(おださく)ですね? カッコいいですよね」


 『文豪スト○イドッグス』ネタで返された。

 とある事情から、彼女には「俺の思念」が、ほぼダダ漏れに伝わってしまうのだ。


 そして、彼女も実は「アニメ好き」なのだ。

 そう言えば『文○ト』にも夢の中に閉じ込める異能力あったよね………。


「とにかく、転生おめでとう。良かったね、あのまんまにならなくて」


「これって『転生』なんですかね? 微妙です」


「「……(無言で見つめ合い)」」


「確かに……微妙だよね」


 微妙なのだ。


      ◆


 苺――まる。

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