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069◇彼女の回想


 (くり)……じゃなくて、「彼女」とは、『巫女見習い』クリムソルダ嬢の事だ。


 たまたま偶然知り合いになった彼女と、『俺の馬車』の中で暇潰しの雑談をしていた時に聞いた「体験談」の通りだった。


 それで、ピンと立った……イヤ、ピンと来たのだ。


 ……話の内容とはまったく関係ないけど、クリムソルダ嬢はメロンのように大きなまんまるいお胸をしている。


 何故そう見えるかと言うと、最大の秘密はその先端部にある。


 そう、彼女のお胸の先端部は、陥没気味なのだ!

 マニア呼ばわりされそうだけど、俺的には嫌いじゃないのだ!

 イヤ、ハッキリ言ってしまうけど、かなり好きなのだ、陥没◎頭!!


 これは、ある種の福音(ふくいん)であり、救済なのだ! 俺は変態じゃないのだ!!


 出来れば、この手で、ピンと立ててみたいのだ!!


 …………。

 ……。


 そ、それはそれとして、聞いたのはこんな話だった。


 ハイ。じゃ、予告しといた回想行きま――す。


      ◆◇◆


「ふわふわふわー」

 大あくびだ。


 クリムソルダ嬢は『荒嵐(あらあらし)』でずぶ濡れになって、風邪の初期段階みたいになってたけど、シンシアさんの『神聖術法』で復活して、逆に調子が良いようだった。髪の毛は無茶苦茶なままだけど。


 不意に上体を起こして、

「……んんっ」

 ぐぐっと、お胸を突き出して背伸びした。


(……うおおっ!)

 俺は内心で感嘆した。「ブラーヴォ!」と声を掛けたい。


 すっげー、お胸だ。


 シャツのボタンが二つ三つ弾け飛びそうな勢いだ。

 てか絶対に弾け飛んで、貧乳キャラのほっぺを直撃するに違いない。


 といっても、残念ながら『この世界』には、ボタンで留める前合わせの服がない。

 イヤ、実はあるけど『夜の服』と呼ばれる寝間着だけだ。

 日頃活動するための『昼の服』は、頭から被ったり、給食当番の割烹着みたいに両手を突っ込んで着て、背中の部分の紐を絞って体形に合わせるようなフリーサイズの服ばかりなのだ。


 ……と思ってたら、その紐が脇腹のあたりに垂れ下がっていた。


 服の内側からのπ(パイ)圧に耐えられずに(ほど)けてしまってたらしい。

 膨らみに合わせ曲線(アール)を描いている。

 イヤ、そろそろ二乗(自重)しようっと。


 とにかく、すっげーお胸だ! まん丸いメロンおっぱいだ!!


「…………(あいてっ)」

 ぼけ――――っ、と見てたらミーヨさんに(つね)られました。ハイ。

 ちなみに彼女は、俺の『★不可侵の被膜☆』をブチ破って、ダメージを与える事が出来ます。そういった意味では、あんまし「不可侵」でもないです。


「ところでぇ、ジンさん」

 俺様の俺様を隠した事によって「ち○さん」と呼ばなくなったクリムソルダ嬢から話しかけられた。


「ジンさん。『音の宮殿』にぃ、行くんですよねぇ?」

 のんびりと、語尾を伸ばしがちな話し方をするクリムソルダ嬢であった。


「あたしぃ、むかしぃ、あそこでー、『亡霊』の声ー、聴いたんですう」


「「ええっ?」」


 傍で話を聴いていたミーヨも、一緒にリアクションした。


「この話ぃ、聴きたいですかぁ?」

 呑気な調子で、ぽわわ――ん、とクリちゃんことクリムソルダ嬢が訊ねる。


 とぼけた感じで、超強力な脱力感(?)だ。

 髪の毛は無茶苦茶なままだけど……てか『この世界』には洗髪や乾燥の魔法はあるのに、『整髪』とか『理髪』みたいな魔法はないので、仕方なく放置されちゃってる。可哀相に。


「「……(こくんこくん)」」


 俺とミーヨは頷いた。是非聴きたいです。


「そしたらー、わたしにぃ、入れてくれますかぁ?」


「「えええっ!?」」


 クリちゃんたら、言う事が大胆!


「『巫女選挙』で清き一票をぉ」


 なるほど、そっちかい!

 ちゃっかり、選挙運動かい!

 最近すっかり大人の大運動会が御無沙汰気味だから、何気ない言葉がエロく聴こえてしまうぞ!!(※時系列的には『暴発事故』の前です)


「よく知らないけど……一票くらいなら入れるよ」

 まだ調査不足で知らないけど、一票くらいなら別にいいだろう。

 シンシアさんにはその千倍か万倍投票するけどな。


「あ……でもー、やっぱりぃ、もっともっとー、欲しいですう」

 クリムソルダ嬢がおねだりする。

 ただ、本人の間抜けな雰囲気のせいか、ぜんぜんセクシーな感じがしない残念仕様だ。


「分かった。3票くらい?」

「うーん、そのくらいですかー? まあ、いいですけれどもぉ」

 この子もよく分かってないらしいな。

 イヤ、俺もぜんぜん知らないけれども。

 『巫女選挙』って、投票総数どれくらいなんだろ?


「で、ですねー、わたしがー、まだー、今のー半分くらいしかー、おっぱいがー、なかった時のー、ことなんですけどぉ」

 メロンみたいな巨乳を誇るクリムソルダ嬢だけど……それって、いつの話なんだよ?


「それじゃ分かんないよ。具体的にはいつ?」

 訊いてくれたのはミーヨだ。同性だしな。セク○ラ回避だ。


「6年前ですねー。まだー、10歳でしたぁ」

 それならそうと、最初から言って。

 にしても10歳の時点で、現在(いま)の半分もあったのか? すげーな。


「おにさ、な、に?」

「……? なんですか? お兄さん」

「なんでもないよ、二人とも。面白い話だから聞いとけば?」


「あい」

「……はあ?」


 ついつい見ちゃってごめんよ。


「続きぃ、いいですかぁ?」


「「うん、それで?」」


「「………」」


 初代猫耳ちゃんのドロレスちゃん(12歳)と、二代目猫耳ちゃんのセシリア(10歳)も一応、話だけは聴いているようだ。


「ちょうどー『音の宮殿』がー、出来上がってですねー、すぐにぃ、落成記念のー、演奏会がー、あったんですう」


「「うんうん」」


「わたしぃ、『神殿』のー、合唱隊にぃ、入ってたんでー、優先的にぃ、入れてもらえたんですう」


「「「ほうほう」」」


 コツを掴んだらしく、相槌にドロレスちゃんも参戦だ。


「てゆーか。舞台でー、歌ったんですけれどもぉ」


「「「へー」」」


「その後はー、おねいちゃんやー、みんなとー、客席でー座ってー、演奏会聴いてたんですう」


「「「ふむふむ」」」


「で、あいだにぃ、挟むんですよぉ」


「「「えっ?」」」


「演奏会ってー、だいたいー、一打点(約90分)ずつくらいにぃ、『休憩』挟むんですう」


「「そっちかー」」


「えー? そっちかーって、何でー、何をー、挟むとー、思ったですかぁ?」


「「えへへ」」


「……ぼそぼそ(パンで肉を……ああ、お腹空きましたね?)」

「……ぼそっ(あい)」


「えーっと……あれー? 何でー、何をー、挟むんでしたっけぇ?」


「(誰のとは言わないけど)おっぱいで」

「ジンくんの顔面(おかお)を」

「そっちですか?」

「で、すか!」



「「「「「…………」」」」」



「ごめんね。俺たち今ちょっと性的欲求不満なんだ」

 俺は謝罪し、ありのままの事実を告げた(笑)。


「……ぼそっ(だってもう4日も)」

「……ぼそっ(ほう、4日もですか)」

「……ぼそっ(『おにさとみよねさ。夫婦円満で何よりです』)」

 ミーヨの独語にドロレスちゃんが感想を漏らし、セシリアが『日本語』で流暢に呟いた。


「はううう。あ、でもいいですねー、お二人はー、そういうー、仲なんですねー? いいなぁ」

 クリムソルダ嬢が羨ましそうだった。

 この子も『巫女見習い』だから、「恋愛禁止」中だもんな。


「「えへへ」」


 とりあえず、照れ笑いだ。


      ◇


「おい。いつになったら『亡霊』の話が出て来るんだ?」

 プリムローズさんから突っ込まれた。


「あ、もうすぐ、出ちゃいますう」(※時系列的には『暴発事故』の後です)


      ◆◇◆


「そいでですねー、演奏の間のー、『トイレ休憩』の時にぃ、『亡霊』さんたちのー、呻き声がー、したんですう」


「「「……ど、どんな?」」」


「舞台のー、天井の辺りからー、『ヴォォォオオオオオオオオ――』って音がー、したんですう」


「「「「怖っ」」」」


「その後もー、『ヴゥドゥオオシィヴァブー』って……。ただぁ、その時にぃ、魔法のー、チビチビ星がー、見えたんですう」


「「「チビチビ星?」」」


「『魔法』使うとー、出るじゃないですかー、キランキラン☆ ってぇ」


「「「ああ、あれね」」」


「『おにさと手を繋げれば……わたしも出来るのに』」

 セシリアが周りを気にせず、『この世界の日本語』で話し出してる。

 次郎氏に聞かれないかな? と横目で確認すると、クリムソルダ嬢の姉の『七人の巫女』の一人ロザリンダ嬢と過剰接近しつつ、何やら談笑中だった。『巫女』も「恋愛禁止」中のハズなのにな。


「で、みんなー、すんごい大騒ぎにぃ、なってー。おねいちゃんなんかぁ……プークスクス」

 『亡霊』の話をしていたはずなのに、クリムソルダ嬢は姉をチラ見したあと、楽しそうに思い出し笑いを始めた。


 ふと思い出したけど、メインヒロインの巨乳を「ロケット砲」呼ばわりしてたアニメがあったな。

 『未確認で○行形』だな。

 

 俺、この姉妹(ロザリンダ嬢とクリムソルダ嬢の方だ)のは、未だ見ていないんだよな。

 未確認の紡錘形なんだよな。

 是非「肉眼で確認」したいな。

 そして『光眼(コウガン)』で撮影したいな(……)。


「クスクス」

 肩が小刻みに揺れてる。

 メロンのように大きなお胸も、時間差をおいて振動してる。うっはー。


 俺様の「振動○頭」で、亀の甲羅みたいな六角形が集まってるク○インフィールドをブチ破りたいぜ(※下品)。


 ちなみにコレ、元ネタは『蒼き鋼のアル○ジオ ア○ス・ノヴァ』だけど、TVシリーズでは「浸蝕○頭/魚雷(タ○トリウム弾頭)」のみで、「振動○頭」は実戦に投入されてなかったから、劇場版の『DC』以降ってコトになる。


 でも、どう見てもクリムソルダ嬢のお胸のサイズは、巡洋艦()(クルーザー)も駆逐艦()(デストロイヤー)も大きく凌駕してるな。

 超戦艦クラスだ。もうワケわかんねー。


「クスクス。クスクス」

 クリムソルダ嬢だ。俺をあざ笑ってんの?

 小麦粉練って(つぶ)状にした食べ物みたいになってるよ? それとも密林の猿?


 ま、話の途中なので訊いてみよう。


「「「おねいちゃんが、どーかしたの?」」」


「『この方のお姉さんというと、ロケットおっぱいの人ですね?』」

 セシリアが一人で、なんか確認してる。


 その通りだ!

 『DC』では「振動○頭」はロケット(ミサイル)のカタチで発射されたので「魚雷」じゃなかったのだ……じゃなくて「その通りだ!」と同意してやりたいところだけど、俺が『日本語』理解出来るの、現時点では非公表だしな。


「おねいちゃんですかー? 言えないですう、おもらしとかー、絶対秘密ですう」

 クリムソルダ嬢の目が笑ってる。頬が緩んでる。機密事項が漏れている。


「「「……そうなんだ」」」


 機関部に浸水事故が発生していたらしい(笑)。……潜水艦だと致命的だな。


 機関部というと、い○りが常駐してて、「ロケットおっぱい」みたいな突起物がいっぱいあるとこだな。


 でも、四月一日(わたぬき)さんも八月一日(ほずみ)さんも、霧のメンタルモデルに()されて、存在感薄いんだよな。それこそ潜水艦みたいに。


 やっぱり、イ○ナの独特なイントネーションの「ぐんぞー(主人公名)」とか「きゅーそくせんこー(急速潜航)」には勝てないよな。

 流石は48(※同姓同名の別人です)。


 にしても潜って深海魚の「あんこう」でも捕まえるのかな?

 なんかで「中の人繋がり」のコラボやってたから、これセーフだよね?


 でも、いい加減、そろそろ怒られるだろうな。両方の生徒会から。

 作品が好きだからこそのトリビュートなので、出来れば怒らないで欲しいな(※懇願)。


 さらに同名繋がりで言うと某最終章のラスボスなんて、まさかの○○プするしな。「流石は○○ト」って思ったよ……ネタバレか?


 そんな妄想から、ふと我に返ると――


「『あの方は今19歳だから、6年前だと13歳。……13歳でおもらし』」

 セシリアは相変わらず計算が得意なようだった。まだ10歳なのに。


「わたしは、もちろん、我慢しましたからー、ちょっとしかぁ」

 クリムソルダ嬢が、なにやら秘密を漏らしそうになる。


 ほほう?


      ◇


「はい。そこまで!」

 プリムローズさんが俺の回想シーンを打ち切った。


 なんだ? なんで? 大人の事情?


 確かに、一部やり過ぎだったかもしれないけれども……。


「え? いいんスか? ここまでで」

「続けたいのか? まあ、いいや、じゃあ、話しなよ」


      ◆◇◆


「そいでですねー、おねいちゃんが、こっそり『★後始末っ☆』って、おトイレ魔法使ったんでー、そこでー、わたしぃ、はうああっ!! って思ったんですう」


 なぜか、キラキラ☆ と虹色の星が舞った。


「なんで? てか、今ホントに『魔法』発動したよ? そっちもなんで?」

「ジンくん。いいから、続き聴こう。続けて、クリちゃん」

 ミーヨは気にならないのか? この謎が。


「はいー、さっきの『ヴゥドゥオオシィヴァブー』って声ってー、ひょっとしてー、『★後始末☆』のー、魔法だったんじゃないのー? って思ったんですう」


「「「『★後始末☆』の魔法? ――亡霊が?」」」


 ちなみに『★後始末☆』は、発音も「アトシマツ」だ。日本語みたいなのだ。


 もしかして、元・日本人の『前世の記憶』を持った人が、「ウォ○ュレット」とかを思い浮かべながら、新規に「開発」した『魔法』なんじゃねーの? って気がしてならない。


「『わたしも使ってみたい。おにさと一緒なら出来るのに』」

 セシリアも使えないのか……でもって、俺と『おトイレ』に入りたいのか? そっかー……って、え?


 ――イヤ、そろそろ話をまとめよう。


「つまり、『亡霊』なんて最初からいなくて、生きてる人間が、生きてる人間のやった事を勝手に勘違いしただけなんじゃないか――わたしは、そう思うんです。ジンさん、素敵。立派。かっこいい」


      ◇


「今の、最後の部分は本当にそう言ったのか?」

「すみません、最後の部分は完全にウソです」


 ホンモノなら「かっこいいぃ」と言ったハズだ。

 クリムソルダ嬢の語尾は、その大きなお胸と違って「小っちゃい母音(ぼいん)」なのだ。

 でも、「です」は「ですう」だな。俺も吸いたいですう。


 イヤ、実は『回想シーン』の中から、不都合な部分をカットした「ダイジェスト版」のみを、みんなには話してる。


 『アイ○ツ!』……じゃなくて「割愛(かつあい)」ってヤツだ。

 俺、男なので観た事ないけれども。好きな声優さん出てたけれども。


 それはそれとして、もちろん『蒼き鋼のアル○ジオ ア○ス・ノヴァ』は、俺の脳内での話だ。

 海とはまったく関係ないけど、ここは王立歌劇場『音の宮殿』なので「音楽用語」繋がりだったのだ(※強引)。それに「陥没◎頭」と「振動○頭」って「字面(じづら)」が似てるしね(笑)。ちなみに某吹奏楽部ネタは温存しておくよ。俺の旅はまだまだ先が長いしね……。


 それはそれとして、最後の「cadenza(終止形?)」は、こうだった。


「不思議なー、体験でしたぁ」


 クリムソルダ嬢は、まったく怖がりもしないで、こんな風に話をしめくくったのだった。


 彼女の話はそれだけ――イヤ、実は他にも『全知全能神神殿』の「七不思議」のひとつも聞いたけど、ただの笑い話だった――だったので、『おトイレ』の音が『個室』に付いてる『通風管(・・・)』を伝わって、この舞台の天井に出て、舞台の音響装置……反射板のせいで、やたらと大きく反響して増幅されてる……というのは、俺独自の推理というか推測だ。


      ◇


 不必要に怖がらすのもなんなので、

「誰かが『殺してやる』って聴こえたって言ってましたけど……アレって『おトイレ』の最後の『★後始末☆』の魔法の声だったんですよ。だから、さっきの『亡霊』の正体はオオババちゃんってわけで」

 冗談ぽく言ってやったよ。


「「「「……ぷっ」」」」


 恐怖と緊張から解放されたのか、何人かが噴いた。


「……なるほど。面白き話であった」

 『先々代(さきのさき)の女王陛下』が、満足げに笑った。


      ◇


 でも、とりあえず確認だ。


「『飛行魔法』じゃないんスか?」

 訊いてみた。

 天井近くなので「飛び上がって」見ればいいのに。


「こんな、屋根付きの狭い所では無理だよ」

 プリムローズさんが困惑したように言った。


 そう言えば、ヘリコプターみたいな原理の、大量の空気と引き替えの「空中浮遊」だもんな。室内じゃ無理か。


 残念ながら、今回ラッキース……イヤ、何でもないよ?

 向こうの侍女のひとたち、おばあちゃんばっかりだしね。


「「「「「祈願! ★遠視っっ☆」」」」」


 そ、それは「目がデカくなる魔法」……じゃなくて「遠くの物を拡大して見る魔法」。

 でも、みんなして「魔法使用中」のアイコン的に「目がデカく」なってる。

 怖いんですけど。


「「「「「……(ざわざわ)」」」」


「あー……うん。確かに見える。あれが換気口になってるんだね」

 他にも皆、口々に言いたい事言ってるけど、ミーヨの声のみ抜粋だ。


 どういう意図でこういう設計なのかは不明だけど、「吹き抜け」になった舞台の、すぐ裏手の3階にVIP用の「貴賓室」があるそうで、そこの『おトイレ』の換気口が、舞台天井近くに口を開けているのが確認出来た。

 外に向けて換気しろよ。まったく。


「よう分かった」

 『先々代(さきのさき)の女王陛下』だ。


「であるなら、この宮殿、今上(きんじょう)の陛下に返還(かえ)すがいいぞ。『亡霊』がいないのであれば、ここも本来の『音の宮殿』に戻すのが一番ぞ」

「それでは殿下の居場所がなくなりますが」

 姫の筆頭侍女が気付かわしく言った。


「すぐに出て行けとは言われまい。そこは何とか掛け合うがよいぞ」

 オオババちゃんは他人事みたいに言う。


 確かに「出てけ」って言われたらラウラ姫、ホームレスになっちゃうしな。

 プリムローズさんの心配も分かる。


「……」

 ふと、ラウラ姫を見ると、きりりとした目で覚醒していた。


 俺はあの顔を知っている。


 あの顔は――「眠気が抜けて、今度はお腹が空いた」時の表情だ。

 早く食べ物を与えないと!

 でも、こっちで何を話しているかまでは、聴こえてないようだ。


 そしてひとつ、疑念が湧く。

 ラウラ姫の「証言」では、6年前の「こけら落とし」の時には、姫とオオババちゃんは、『おトイレ』に入ってて、『亡霊』の声を聴かなかったと言う。


 ……つまり、二人のうちのどちらかの、『★後始末☆』の声だったんじゃねーの?


ま、いいか。


「この事でラウラ姫は『星』を()れるんスか?」

 そう訊いてみた。


 ここ『女王国』では、王族にも過酷な競争原理が働いていて、年長三人の『三人の王女』の中から、国家への貢献度『星』を、いちばん多く獲得した王女が、次の女王に即位するそうなのだ。


 しょーもなかった『亡霊』の正体はともかく、『音の宮殿』を本来の目的で使用出来るようにして返還したら、姫のお手柄にはなるんじゃないだろうか。


「小僧。これ(・・)をラウラの手柄にしてよいのか?」

 疑うような目つきで、『先々代(さきのさき)の女王陛下』から言われた。


「もちろん。いいっスよ」

 俺自身は別にいい。

 ラウラ姫が女王に即位する事で、みんなが抱いている、いくつかの願い事が叶うのならば。


「誰であっても、功績があれば『星』は貰える。二つも獲れば、平民から貴族に成る事も可能ぞ」


 へー、そんなシステムだったんか?

 シンシアさんの父君が「獣耳奴隷」から、一気に「領主貴族」に成ったのってソレか?


「俺は、オオババちゃんや他の方々から少し話を聞かせてもらえれば、それで」

「12年前の『王都大火』の話か……」


 その事をきちんと知っているメンバーが、ウチにはいないのだ。

 みんな子供だったし。ドロレスちゃんなんて、その最中に生まれたそうだよ。

 色々と知ってそうな気もするマルカさんとジリーさんも、その事については話したがらないしな。


「では、すこし外に出よう。外は晴れておろう?」

 しっかりとした足取りで、『先々代(さきのさき)の女王陛下』が舞台から退場する。


 俺たちも、それを追った。


      ◇


 ただ、ちょっと疑問は残る。


 あの「音の歪み」の原因は何なんだろう?


 プリムローズさんは、

「……なるほどね。あの音の歪みと低音はそういう事か。管楽器のいちばん低い音はいちばん長い管から出るしね」

 そんな風に言って、納得してたけど……違和感がある。


 「長い管」を伝わった「音」って歪まないで、かなりクリアーに聞こえるはずなんだけどな。

 もちろん内部が綺麗で、錆付いてたり、ひび割れてたりしない――という条件は付くけれども。


「プリムローズさん、訊きたい事が」

「なんだい?」

「『この世界』には『伝声管』ってあるんスか?」

「いや、無いよ。代わりに『★伝声☆』の『魔法』や『★伝心☆』の『神聖術法』があるしね」


 『魔法』と『神聖術法』の違いって何だろ?

 でも、それはまた後ででいいか。


「その、無い理由の方を、ご存知ですか?」

 訊いてみた。


「細長い管を通して音を伝えると、音が歪んでしまうんだよ」

「何故ゆえに?」


 ()せぬ。


 「伝声管」では、音が拡散しないで「平面波」とか言う状態で伝わるから、小声でも、かなりはっきり聞こえるはずなのに。


 それは『天○の城ラ○ュタ』を観れば明らかなのに……って、またアニメか?


 パ○ーとシ○タが、タイガー○ス号に乗り込んで、パ○ーが「見張り当番」やらされた時に、シ○タとの会話を「伝声管」伝いにみんなに聴かれてた……あれ? あれって電話だっけ? 伝声管だっけ?


 ……ハッキリ覚えてないな。


 俺「シ○タ救出シーン」が大好きで、そこまで観ると満足しちゃって、その後の続き観ないからな。何度も何度も観てるから。


 なので「バ○ス!」やった事ないんだよな。


 そう言えば『前世』で、こんな話をして、誰かにめっちゃ怒られた記憶があるな。「きちんとエンディングのスタッフロールまで観ないとダメですよ!」って。

 

 ……あれは誰だっけ? 「彼女」の名前は何だっけ?


 俺がそんな回想に入り込もうすると――


 少し考え込んでいたプリムローズさんが、

「『この世界』には『魔法』のキラキラ星……つまり大小の『守護の星』が無数に満ちているでしょう? それが細い管の中にまで入っていて、音の伝達を阻害しちゃうからだと思うわよ」

 そう解説してくれた。


「……へー、そういう事なんスか?」

「今回のこれが、推理小説の話なら『ノックスの十戒』に反してるけどね」

「……はあ」


 そんなのがあるらしい。知らんけど。


      ◇


 大玄関に向かう途中、みんなから言葉攻め……イヤ、質問攻めにされた。

 荒縄で縛られてた後だから、ちょっと間違えちゃった。てへ。


「お兄さん! 先刻(さっき)、どうやって『縄抜け』したんですか?」

「あっ、そうそう! どうやったの? ジンくん」

「君って、食事用の小刀持ち歩いてないよな?」

「おにさ、ひとり、ごそごそ、ぬいた」

「む?」


「簡単だよ。硬いものがふにゃふにゃになったら、ずるっと引き抜けるだろ?」

 俺は言った。

 まあ、腕の骨を抜くなんて真似は俺にしか出来ないだろうけど。


「「「……かたいもの?」」」


「む?」

「今から身体(からだ)の一部分を使って説明しよう」

 俺は『夏の旅人のマントル』から、右腕を突き出して見せた。


「「「……あ、いいです」」」


「む?」

「え、だって、知りたいでしょ?」

 そっちから訊いといて、なんなの?


「もー……ジンくんのえっち」

「うむ」


「なんで?」

 一体何をどんな風に誤解してるの?

「みんなには、ちゃんと見せてあげるよ?」


「「「えっち」」」


「うむ」

「だから、なんで?」


 その後も、ずっと誤解は解けなかった。


 てか、最後はこんなオチかよ?


      ◆


 陥没◎頭好きは変態ではない(力強く断言)――まる。

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