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006◇考察と深まる謎


(……どこも怪我してないな)


 ぼんやりと、そう思う。


 ――普通であれば、よほど運が良くて全身擦傷(さっしょう)

 イヤ、姿勢としては反り返って頭から落ちたので、頭蓋骨陥没とかで死んでもおかしくないような状況だったかもしれない。


 なのに、頭はなんともなかった。

 服は擦り切れてボロボロなのに、体はまったく無傷だ。


 なんかのゲームの「被ダメージ時の立ち絵の差分」みたいだ……って、なんだそれ?

 ところどころ、服が破れたとこが「摩擦熱」のような感じで、ほんの少し熱い気もするけど……それだけだった。


 痛みらしい痛みは、ぜんぜん感じなかった。


 こんなことってあり得ない――と、そこで『★不可侵の被膜☆』とかいう「女神の加護」のことを、思い出した。


(まあ、たぶんアレのせい……アレのおかげだな)


 どうやら『★不可侵の被膜☆』は、俺が傷つくような、ある程度以上の衝撃――運動エネルギーを、その被膜自体の硬度に転換して吸収してしまうようなものらしかった。


 貧乳だか非ニュートン流体だかに、強い衝撃を加えると一瞬で硬化する『リキッドアーマー』とか、ネットで見たことある気がするけど――あれってダイタランシー効果とかいうんじゃなかったっけ?


 ――まあ、コレはコレで、きっと何らかの魔法的な謎パワーだろうから参考にもならないだろうけど。


 それにしても、服がボロボロで体は無傷ということは、俺の皮膚だけがそれを発動出来るということなので、もしも全裸だったら完全になんともなかったかもしれない。


 でも、ギリシャ神話のアキレウスのアキレス腱(カカト)やニーベルンゲンに出てくるジークフリートの肩みたいに、ぽこっと「弱点(あな)」が存在する気もする。


 俺のは「ち○こ」だったら、どうしよう(笑)。


 めっちゃ、カッコ悪いがな……と、そんな事を考えてると――


「ジンくぅぅぅうううん!!」


 ミーヨの泣きそうな声が近づいてきた。引き返してきたらしい。

 ゴロゴロダンゴムシを利用した『とんかち』は、細かい方向指示や操作なんて出来ないのに、よくUターンできたなあ。ひょっとして片側だけ「足ブレーキ」かけるのかな?


 さて、どう説明しよう?


      ◇


「ジンくん! け、怪我はない!?」


 めっちゃ心配してる。


「落ちつけ、ミーヨ。俺はどこもなんともない。ほら、全部脱ぐからその目で確かめてみてくれ」


 俺は全裸になった。


 説明がめんどいので、視覚的に表現してみたのだ(笑)。

 ……てか、こんなことを日本でやったら、すぐ捕まるだろうな。


「うええっ、ホントに? ホントになんともなかったの? あ」


 ミーヨが、俺のある部位の前で固まった。

 なんだろう? と思って見おろすと、理由が判明した。


 転落事故の原因だった。


 でも、こういうことって男の子なら、誰にでもあると思うの――


      ◇


「――ジンくん。わたしになにか言いたいことはある?」


 ミーヨが真っ赤な顔で俺に訊ねる。


「ミーヨのおかげなんだ」

「え?」


「ミーヨが『全能神』と『全知神』に頼んでくれたんだろう? 『全知神』様から聞いたよ。ミーヨが『もうジンくんが傷ついたり、痛みを感じたりしないようにして』って言ったって。それで俺、『全知神』様から加護を貰ったんだ。それで助かった。ミーヨが俺を助けてくれたんだ。ありがとう、ミーヨ。本当にありがとう」


 ただ、その「願い」には、「俺が着ている衣類の無事」は含まれてなかったんだな(笑)。


 ……イヤ、贅沢は言えないけれども。


「……ジンくん」

「俺、助けてもらってばかりだよな。俺も、お前を守りたい。助けたいって思ってる、だからミーヨ。そこ(・・)から手を放して。ぐりぐりしないで」


 金○袋握られてます。潰されそうです。


 ――この子、男の急所知ってます。

 密着した状態からじんわりと力を加えると『★不可侵の被膜☆』は発動しないらしい。


 本気で潰されそう……。


「……ねえ、ジンくん。この右側ちょっとヘンじゃない? なんか丸い石みたいな感じするよ。ひょっとして悪い病気?」

 ミーヨが何気に怖いことを言う。


「それ、『全知神』様から貰った『賢者の玉(仮)』です。愛称はケンちゃんです」

「ナニソレ?」


 ミーヨが俺の口癖を真似る。耳コピされてる。


「ナニソレ?」

 俺もそう返す。


「もう、ふざけないで! なんで無事だったのか、ぜんぶ話して!」


 ミーヨは泣きそうだった。

 本気で心配してくれてるようなので、この子にはぜんぶ話してしまおう。


      ◇


 結局、ほとんどすべてをミーヨに告白することになった。


      ◇


 俺の排泄物を使う『錬成』の話をし終えると、


「……かっこ悪い」


 心が凍りついて砕け散るような、非常に冷たいお言葉をいただいた。


 ――凹む。


 望んで、そうなったんじゃないんだけどな。


「そうだよな。ミーヨ、俺の事キライになったよな。うん、いいんだ……もう、いいんだ」


 やっと解放してもらえた俺は、父親(会ったこともないけど)譲りの『旅人のマントル』をバッと羽織ると、一人旅立つポーズを示した。


「ここで、お別れしよう?」


 横目でチラチラっとミーヨを見る。

 引き止めて欲しいなあ。


「……」


 ミーヨは何か考え込んでいて、聞いてないみたいだ。


「さてと、じゃあ、俺は行くから……グエっ」


 立ち去ろうとすると、ミーヨに『旅人のマントル』の端を掴まれ、首が締まる。


「……自分の体の中にだけ……そんなの、聞いた事ないなあ。ねえ、ジンくん。その『レンチン術』ってね」

「『錬金術』です。俺、もう行っていいですか?」


「ダメ、離さない。ねえ、ジンくん。ちょっとわたしの真似してみて」

「……? うん」


 何かの実験か?


「祈願! ★点火っ☆」


 キラン☆ と虹色の星が舞って、ミーヨの指先から火花が散った。


 ちょっとビックリ。「点火」って言うんだから、ホントに何か燃えやすい物に着火させるだけの効力なんだろうけど……原理が不明だ。


「……お前『魔法』使えたのか?」


 まさか、ミーヨまで『魔法』を使えるとはな。


「なんで驚くの? いいから、言ってみて」

 ミーヨが不可解そうに言う。


 この世界では、『魔法』って誰でも使えるものなのか?


 よし、俺も――


「点火っ。…………うん、ムリ」


 ああ、昨日の夕暮れを思い出す。なんの「手ごたえ」も無い。


「あのね、コレって『しり』へのお願いなんだって」

「『お尻』?」


 俺は断然おっぱいが好き(笑)。


「ちがくて『司理(しり)』」


 s○i? 俺そんなのに話しかけたりしなかったよ?


「正しくは『世界の理(ことわり)(つかさ)』。略して『司理(しり)』」

「……へー?」


 よく、分かんないけど?


「だから、最初に『祈願』って唱えると『成就』しやすくなるんだって」


 ミーヨが、ペリドットみたいな深緑色の瞳を、俺に向ける。


 ところで『世界の理の司』って何なんだ?

 『全知神』とか『全能神』とは別物なのか?


 そんで、それって起動のための「キーワード」的な?


 とりあえず……試すだけは試すか。


「じゃあ、祈願。点火っ」


   し――ん。


「……使えないんだけど」


 俺の願いは叶いませんでした。

 泣いていいですか?


「うー……じゃあ、次。これは? 祈願! ★送風っ☆」


 キラキラした虹色の星が舞い飛ぶ。何か丸いカタチの「空間の揺らぎ」みたいな物が見えた気もする。


 と、そこから風が吹いて、

「きゃっ!」

 ミーヨのスカートがめくれ上がり……そうになる。


 もうちょいだったのに、惜しい。風力不足。


 ならば俺様が!


「よし、気合入れて、魂込めてやろう! 祈願っっ。送風っっっ!!」



    し――ん。



「…………」


 いろんな意味で、しょんぼりだ。


「最初の『★点火☆』ってね。15歳以上なら使えるはずなんだけど――」


 ミーヨが戸惑ってる。


「なんで、年齢制限があるの?」


 R15? なんかエロい要素あるの?


「火をあつかうから……火遊びして火事とか起きないように、子供は禁止されてるらしいよ」


 ミーヨは、口に出して言うのが辛そうだった。

 苦痛を我慢するような表情だった。


「ジンくん……一度死んじゃって、生き返ってるから……今の年齢が、ヘンな風になっちゃってるんじゃないかと思ったんだけど」


 死んで生き返った人間て、零歳児あつかいになるんか?


「誰でも使えるはずの『★送風☆』も出来ないなんて……。うー……この世界の言葉を、正しい発音と抑揚で話せれば『世界の理(ことわり)(つかさ)』を通じて『守護の星』を動かして、『魔法』は発動出来る……って、言ってたのになあ。うー……ん」


 ミーヨが、悩みまくって、うんうん唸ってる。


 だから、『世界のナントカ』って何?

 『守護の星』? ナニソレ? 占星術?


 そんで、この世界の『魔法』って、「音声認識」というか「音声入力」なのか?


 人から聞いた話みたいに言ってるけど……誰がそんな事言ってたんだろ?


「ジンくんの『言葉』は間違ってないのになあ」

「……そうなん?」


 てか、俺は『前世の記憶』を持って、あの麦畑の中でミーヨの『往復ちちびんた』で目覚めたわけだけど……この世界の言葉は、特に問題なく話せるんだよな。


 何故かもともとの「ジンくん」が持っていた知識や記憶は抜け落ちてるのに、言語能力だけは残ってる。変な感じだ。

 ま、異文化コミュニケーションなので、多少の齟齬(そご)はあるみたいだけれども。


「『魔法』って、どこかで習うと上手くなるのか?」


 よくある「魔法学校」みたいなのがあるのかな?


「ううん」

 ふるふるっ、と首を振るミーヨ。


「『神殿学舎』では『言葉』は習うけど……あとは勝手に独学。だから個人差が出るんだけど……。わたし、『魔法』の力が他の人より弱いらしいから」


「え? なんで?」

「おっぱい」

「おっぱい?」

「おっぱい少なかったから」


「え?」

 大きさ?

 目覚めてすぐの『往復ちちびんた』で見せてもらったけど、そんな事なかったよ? ぜんぜん大丈夫だよ? てか、俺は「おっぱい博愛主義者」だよ(笑)。大きさは関係無いよ?


「赤ちゃんの頃にね。お母さんから初めて貰うおっぱいに『魔法』の(もと)になる何かが含まれてるんだって。でも、わたしのお母さん、おっぱいが出なくって……」


 なーんだ、「おっぱい」って「母乳」のコトか。


 それって、「初乳」に免疫力を高める力があるとかそう言う話かな?

 でもって、俺がこの世界で目覚めてすぐの記憶が「母親からの授乳」だったっけ……。


 ただ、アレは状況から考えて「初乳」じゃなかったハズだ。


 イヤ、違うか。『魔法』の素って言ったし……この世界の人間の身体の中には、そんなものが入ってるのか?


 そしたら、俺たちって厳密に言うと「ヒト」じゃないんじゃね?

 それこそ、「成分無調整の牛乳」だと思ってたら「乳飲料」だった……みたいな。


 俺がそんな事をぼんやり考えている間にも、ミーヨはミーヨなりに思考して、ひとつの結論に至ったらしい。


「ジンくんの言う『錬金術』が、ウン……ちがくて『体の中にあるもの』しか変えられないのって、『全知神』様の加護となにかぶつかり合うみたいになってて、そうなっちゃうじゃないのかなあ」


 そんな推論を提示した。

 途中、何か出かけ……イヤ、言いかけたようだけど、俺は突っ込まなかった。

 実は●(固体)の『錬成』はまだ試してないから、ホントに出来るかどうか不明なのだ。


「そして、本当なら普通に使えるはずの『魔法』が使えない。でも、ジンくんの場合は、それが内向きに……体内での『錬成』っていうふうにだけ使えるんじゃないのかな?」


「…………」


 ミーヨの言う通りなのかもしれない。


 『★不可侵の被膜☆』とかいうよくワケのわかんないバリアによって、『魔法』に関係した何かの力が、俺の身体の外に出ないように「干渉」というか「阻止」されてるって事か? なくはないかもしれない。


 と言っても、この世界に『魔法』があるらしいというは分かっても、どんな仕組みなのかはさっぱり不明だ。

 ミーヨは『世界の理の司』へのお願い――って言ってたけど、『世界の理の司』とか『守護の星』とか……意味分かんないしな。


「ベクトルの違いだけで、働いてる力は同じってことか?」

 俺がそう呟くと、

「『べくとる』? わたしにはよく分からない」

 ミーヨがちょっと困っている。


 でも、「キス」は「キス」で通じてたんだよな。

 『地球』の言葉が、断片的に混ざりこんでるみたいな感じだ。


「ジンくんが本気で自分の能力(ちから)のことが詳しく知りたいんだったら、きちんとしたところで調べてもらうしかないと思う。――ああ、プリちゃんがいればなぁ……」


 ミーヨが残念そうに嘆く。

 だから、『能力』に「ちから」とかルビふったら、雪ノ下雪○に怒られるってば!


 てか、『俺』の知らない名前があったぞ。

 ……イヤ、2回目だな。聞いたの。


「プリちゃん?」


 その人、何者?


「あー……忘れてるんだっけ? わたしたちの幼馴染。魔法の天才で12歳で『王都』に呼ばれて村を出ちゃった子。わたしもいろいろ『魔法』教えてもらってたの。あの子がいればいろいろ聞けたのになぁ」


 小さい村っぽかったのに、そんな天才児がいたのか?

 でも、現在は遠くにいるんじゃ……頼れないか。


「で、俺みたいなのって珍しいの?」


 レアなの? 俺って。


「んー……どうだろ? 『癒し手』って言う人たちがいてね。その人たちは他人の身体の内側に働きかけて、怪我や病気を治したりするんだけど……それは『魔法』じゃなくて『神聖術法』って言うの」


「『癒し手』と『神聖術法』か」


 ゲームで言うところの「回復役」だな。


 でも、ミーヨを見てる限り、この世界には「レベル」とか「スキル」とか……そんな「ゲームみたいな要素」は、一切無さそうだ。


「うん。でも、『癒し手』の力って自分自身には使えないはずなの。でも、ジンくんは似た感じの力が自分自身に使える。そして、ふつうの『魔法』が使えない――その二つの事柄って……人に知られたらちょっと問題になる気がする」


 だとしたら――


「捕まって、実験動物みたいな扱い受ける未来しか見えないんですけど」


 そもそも、あの『全知神』に『実験体』って言われてるしな……。


 全裸に剥かれて性的に解剖とかか? どうなるんだ、俺?

 ちょうど魔法使えないし、『クロス○ンジュ』みたいな展開になるのか? あの空飛ぶバイクみたいな変形ロボ(パラメイル)には、ちょっと乗りたいけれども。


「『じっけんどうぶつ』?」

 ミーヨが不思議そうに、きょとんとしてる。


 良かった。そういう概念無いんだな。


「あー……でも自由に旅して回るとかは出来なくなりそう。『伝説のデカい樹』に行けなくなるんじゃ、村を飛び出した意味がなくなるもんね」

「だろ? ほかの人たちにはある程度隠さないと」


「ふたりの秘密ってやつだね」

 ミーヨはちょっと嬉しそうだ。


「俺、ミーヨの秘密なんにも知らないけどな」

「じゃあ、わたしの秘密も教えてあげる。わたしの初恋の相手は――ジンくん。初めてのキスの相手も――ジンくん。初めてのえ、えっちの相手も――ジンくん」


 三冠王か。MVP間違いなしだな。ヤッたな、俺(笑)。


 ――でも、残念ながら、その「ジンくん」は『俺』じゃないので、微妙な罪悪感とNTR気分を味わう。


「……」


 深緑の宝石「ペリドット」のような瞳で、じーっと見つめられて、なんか照れくさくなってきた。なので、別な話をしようっと。


「なあ、ミーヨ。俺が起きたらすぐ隣にいたけど……どうやって見つけたんだ?」

 気になっていた事を、ミーヨに訊いてみた。


「ん? 『魔法』だよ。迷子探しの」


 あっさりと、そう言われた。


 なるほどね。

 俺って異世界で迷い子だったもんな。


「迷子じゃなくても、仲のいい知り合いとかなら探せるよ。握ったことあるなら」

「握る? どこを? ……ああ、そっかー、俺、麦畑の中で目覚めてすぐに、お前に握られたもんな」


 思い当たりましたよ。


「ん? 握るって……『手』だよ」

「……ち○こじゃないのか!」

 俺は思わず叫んだ。


「「…………」」


 ち○……イヤ、沈黙の後で、

「と、ところで、ジンくん。その『錬成』って本当に何でも出来るの?」

 ミーヨは雰囲気を切り替えて、俺にそんな事を訊いて来た。


「え? ああ、そう言えば……ちゃんと試してないけど、多分」


 ――この体にもう違和感なくなってるけど、もともとジンくんのだし、どういうペースで排●(固体)してたかまで知らんし。


「わたし、欲しいものがあるんだけど……」


 ミーヨがちょっと上目遣いで、おねだりしてくる。

 ちょっとドキドキする。


「な、なにかな? ただ断っておくけど、その元は俺のウ○コだぞ」

 つい馬鹿正直に言っちゃいました。


「……」

 無言だ。


 聞こえてたけど気にしてないのか? 聞こえてなかったのかな?

 はっきりしたリアクションが欲しいところだ。


「……もし出来るんなら、赤い石が欲しいの」

 ミーヨは少し考え込みながら、そう言った。

 

「赤い石? 『宝石』かなんかか?」


 とすると、なんだろう?

 ルビーとかガーネットか?


「子供の頃ちらっと見たきりだから……よく憶えてないけど、卵くらいの大きな赤い石。うちの家宝みたいなのが、なんかのはずみで失くなっちゃったって聞いてるから」

 ミーヨが記憶を探るように言う。


「うーん。見本があれば……同じようなの、錬成(つく)れると思うけど」


 それにしても、卵大か……俺が知ってるニワトリとかウズラの「卵」くらいの大きさかな?

 ニワトリの方なら……出すのタイヘンそうだな。


「見本? 同じ種類の石ってこと?」


 この子に、どれくらい『宝石』についての知識があるんだろう?

 俺はアニメ『宝石○国』が好きだったから、一時期いろいろとネットで調べてた事があるので「知識だけ」はある。


 ……実物を見たり、触ったりはした事ないけれども。


「うん、それを特定出来たらな」

「そっかー、じゃあ、また今度だね」

 言うと、すんなり聞き入れてくれた。


「あ、でもどんなカタチになってもいいよな?」

「カタチ?」

 ミーヨが訊き返してくる。


「たとえば、はっきりとウ○コの形でも」

「……それはヤダ」


 ですよね。


「あ、ちょっとゴメンね。……そんな話してたら、わたし」


 ミーヨは、少し恥ずかしそうに『永遠の道』の外側に広がる草っ原の中に入って行った。


 ああ、トイレか……。


「……」

 紳士な俺は、黙って見送った。


 しばらくして――


「は、早く行こう! い、急がないと」

 ミーヨが麦畑から飛び出して来て、俺をせっつく。


「な、なに? どうしたんだ?」

「早く!」

 めっちゃ慌ててる。


「なんで、そんな急いでんの?」


 急いで捕獲したゴロゴロダンゴムシを装着した『とんかち』に乗り込んでから、訊いてみる。


「だって、早く逃げないと、ダイオウフンコロガシが飛んでくるから」


 ナニソレ? そんな生物いるんだ?


 てか、「大」だったんですね?


      ◇


 とりあえず、旅の相棒(※いまのところ)に隠すような秘密が無くなって、とても気が楽になった。


      ◆


 秘密の共有は、互いにとって諸刃の剣――まる。

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