042◇星のひみつ
「これがお兄様の馬車ですか……素敵です。まるでお姫様の馬車みたい」
ヒサヤが、真っ白い『俺の馬車』を見て、うっとりと呟いた。
うん。元々お姫様の馬車だったヤツを、俺が『決闘』で奪い取ったんだ(笑)。
◇
一緒に『王都』に向かう事になっているみんなに、『俺の馬車』をお披露目したら、旅の予行演習的にみんなで乗り込んで、『代官屋敷』まで移動してみよう――という流れになった。
屋敷までの移動には、馬車工房の女主人の紹介で借りた馬車馬二頭に牽いてもらう事になったけど……。
「プリムローズさん、『王都』からここまで馬車で来たんですよね? 馭者出来ますよね? 教えてくださいよ」
「適当にやってれば、そのうち身につくわよ」
雑に言われた。
「んな無茶な事言わないで下さいよ! 事故ってからじゃ遅いんスから!」
何度も言うけど俺は「小市民」なのだ。
そんな中、麦わら帽子を被った金髪の少年が、さっ! と馭者台に飛び乗った。
「では、あっしが馭者のやり方を伝授させていただくのでごんす」
男装して、なおかつ変な獣耳奴隷口調でも、聞き覚えのある女の子の声なので、すぐに分かった。
「「「ドロレスちゃん!?」」」
いつものパターンだな。
◇
俺は馭者台に同乗して、「ドロレス馬車教習所」の生徒になっていた。
前に人力で動かした時とは違って、実際に「牽き馬」を繋いでみると、いろいろと勝手が違った。
「二頭立ての場合は、曲がりたい方向とは逆の方に繋いでいる馬を、急がせる必要があります。そう、そうです。そっちの手綱です」
馬車前方に伸びるT字形の「牽き棒」は、車体側のリングと、丸いピンで連結していて、左右にある程度だけ動くようだ。機械部品の「遊び」ってやつだ。
要するに「牽き棒」は取り外し式だ。つまり「牽き馬」と「馬車」は、「自動車」と「牽引式のキャンピングカー」みたいな関係だった。
『この世界』ならではの仕組みかな? 『地球』の馬車ってどうなってんだろ? 知らないしな。
「つまり、目の前の二頭の馬さえ御せれば、好きなように操れるんですよ」
ドロレスちゃんはさくっと言う。
でも、言うほど簡単じゃないよ?
「きつい曲がり角を曲がる時には、ここにある制動装置で、後輪を停止させて、後ろを横滑りさせるんです」
ハンドル代わりに左右二頭に速度差をつけて、ブレーキでリヤをロックさせて、ドリフトさせるらしい。
路上教習の初日でいきなり「ドリフト」とか、ここの教習所すげーな!
「左右別々に制動装置があると、曲がりやすいんですけど……この馬車、違う仕様ですね」
イヤ、初心者だから違いなんて全然理解出来ないんだけど。
「このくらいの緩い曲り道なら、馬なりに、任せて走らせても大丈夫だと思います」
ふむふむ。
「あ、子供です。馭者台は高いところにありますから、小さい子供が近づくと見えない場合があります。気をつけてください」
おおっと、人身事故なんてゴメンだ。
「交差点での決まりはないの?」
俺はドロレス先生に訊いてみる。
信号機なんてないので、ちょっと怖いのだ。
「はい、ノリで突っ込みます。気合の入ってる方が優先です。ひるんだら負けです」
んなアホな。
でも、どうやら本当にそうらしい。
実際に馬車に乗ってみると、みんなそうしてるのが、はっきりと理解できる。
――というか、牽いているのが生き物なので、そういった場合には馭者の操作がどうこうよりも、馬の性格が出るらしい。
「あ、でも。場所によっては交通整理の人がいるので、それに従ってください」
「へー、そーなんだ」
これから向かう事になってる『王都』とか、交通量多そうだしな。
長い直線に出た。あとは馬まかせだ。
「麦わら帽子、似合うね」
「あ、これ、ミーヨさんに貰ったんです」
「……へー」
そう言えば「ボコ村」に居た頃に手作りした麦わら帽子を、何個か持ってたな。
ミーヨに聞いたら、俺が目覚めた「異世界の麦畑」で育ててた「オバケムギ」って品種は、茎が丈夫でしんなりしてて、色んな麦藁細工に適しているらしい。籠とか笊にまで使われてるらしい。
「ところでドロレスちゃんって、どうやって馬車の操り方覚えたの?」
「ここって『丘』に出入りする荷馬車がいっぱいいるじゃないですか?」
「うん」
「お小遣い稼ぎに何度か雇われてるうちに、自然に覚えました」
「――苦労してるんだね?」
「……はい」
◇
とりあえず、無事故で『代官屋敷』正門まで着いた。
一昨日来た時には、開けてもらえなかった透かし模様の見事な鉄の正門から敷地に入る。
芝生の中の石畳の道を、カポカポと蹄の音を響かせながら、屋敷に近づいていく。
途中、木陰や物陰に、やっぱり猫を見かけた。
正面玄関前にあるC字形の「馬車寄せ」のところをどう操ろうか? と思ってたら、馬たちが勝手に進んでくれた。
「ハイ、ドウ!」
俺の掛け声で、馬たちが停まる。
「じゃあ、あたしはみなさんに降りてもらいますね」
少年馭者風の男装ドロレスちゃんが、地面に降り立って、馬車側面の扉を開けに行った。
「お願い」
俺は馬車が動かないように、制動装置を引きっぱなしにしてないといけないらしい。
◇
みんなの、声だけが聞こえる。
「うー……やっぱり後ろに引っ張られるのはヤだなー」
ミーヨの呻きが最初だった。
車内前部の、後ろ向き座席に座っていたらしい。
「慣れよ。慣れるしかないわ」
元・日本人転生者で、電車通勤の経験があるっぽいプリムローズさんだ。
「私はあまり気になりませんでしたけど? ヒサヤはどうでした? ヒサヤ?」
シンシアさんが、ヒサヤに訊いてる。
あれ? 三人掛けのはずなのに四人で座っていたのか?
「だいじ……うP。……です」
イヤ、大丈夫じゃないよね?
むしろ何かがダウンロードしそうだよ? 無理しちゃダメだよ。
「『癒し手』ともあろうものが、まさか乗り物酔いですか?」
ロザリンダ嬢の言い方が、ちょっとキツめだ。棘がある。
「『巫女』さま、いまはご容赦を」
シンシアさんが気遣ってくれたようだけど、あの二人相性悪そうだったよな。
「ちっちゃい子をいぢめると、ジンくんが大人しくしてませんよ?」
ミーヨが、俺様の威を借りて(?)いるらしい。
「どうするというのです?」
「グルグル振り回します。プロペラです」
えーっと、ミーヨさん?
「……私は直接見ていなかったので、むしろ拝見したいくらいです」
あのー、『巫女』さま?
「うええっ。……じゃあ、今呼んできます」
「こら――――っ!」
プリムローズさんが怒鳴ってる。なんというか昭和の怒声だ。
「むむむっ、怒られちゃいました。また今度です」
「ええ、ぜひ」
声しか聞こえないけど、ミーヨとロザリンダ嬢との間に火花が散っているようだ?
◇
「あれ? ラウラ姫は?」
声がしなかったので、馭者台に戻って来たドロレスちゃんに訊いてみた。
「王子様のキスを待ってます」
「……また、寝てるのか?」
本当に猫のようなひとだ。
必要な荷物を下ろし、屋敷とは別棟の建物に馬車を進める。
「ここって『永遠の道』にある『駅』の、『馬車ごと旅亭』と似たような構造らしいですよ」
「……へー、そーなんだ」
『馬車ごと旅亭』って、またまた俺の『脳内言語変換システム』が変な誤訳してる気もするけれども……とにかく、一階が馬車の駐車スペースと言うか「車庫」になっていて、その2階が客室。つまりは馬車ごと乗客が泊まれる宿泊施設の事らしい。
ただ、ここの別館は『代官屋敷』の使用人用住居だそうで、練習がてら、ちょっと一泊ってワケにはいかなさそうだ。
で、ドロレスちゃんから革製の馬具の外し方やら、馬のケアを教わり、かなりな時間をとられた。
間近で見ると『この世界』の馬って『地球』の馬よりも一回りくらい大きい気がする。
小柄なラウラ姫がカンタンに騎乗出来るような大きさじゃない。道理で俺をお馬さん代わりにしたがるワケだ……って、おい。
「おねーちゃん、どーしましょう? キスはしないんですか?」
「軽いから、俺が持ってく」
「……さすがに、その言い方はどうなんでしょう?」
ドロレスちゃんに窘められました。
眠りっぱなしのラウラ姫を「リアルお姫様抱っこ」して、屋敷に連れていく。
どこから出したのか、ドロレスちゃんが大きな日傘をさしてくれる。
途中で姫が目を覚ましたけど、甘えるようにそのままにしていた。
◇
一休みした後、またみんなを『俺の馬車』で『全能神神殿』まで送り届けた。
行って帰っての『往復ちちびんた』……えー、間違えました。
行って帰っての「一往復」で、それなりに馭者のコツは掴んだ。
旅の準備は整いつつある。
なんとかなりそうだ。うん。
俺たちの『伝説のデカい樹』を探す旅は、いよいよこれから始まるんだ!
そんな感慨にふけっていると――
「ジンさーん! ミーヨさーん!」
「ハイ! なんでしょう? シンシアさん」
かなり親しくなっちゃった黒髪の美少女シンシアさんから、気軽な感じで声を掛けられたので、超反応でそっちに行く。
「んー……なになに?」
何故かミーヨも連いて来た。イヤ、ミーヨも呼ばれてるか。
「性交禁止」の『神殿』の敷地内で、真昼間から『巫女見習い』の女性に変な事はしないから、別にいいけど。
「ほら、ここですよ」
シンシアさんに手招きされて、中庭にある木の、樹冠の下に案内された。
なんかこんもりとしたブロッコリーみたいな形の木で、楓みたいな葉っぱだ。幹にまで葉緑体があるのか、幹も緑がかってる。
俺が異世界最初の夜に、風除けにした樹と同種の樹だろうな。妙な懐かしさを感じる。
「ここがどうかしたの? シンシアちゃん」
ミーヨが訊ねる。
「ほら、お二人って『伝説のデカい樹』を探してるって、おっしゃってたじゃないですか? これがそうですよ」
にこやかに言われた。
「「…………」」
俺とミーヨは固まった。
俺たちの『伝説のデカい樹』を探す旅は終わった――
短い道のりだった。
◇
「……そーだったんだ」
ミーヨは腰が抜けて、地べたに座り込んじゃってる。
「……コレの事だったんだ」
というか『この世界』では、いちばん多く目にする樹だ。
ちょうど『前世』の日本で言う「杉」みたいに、圧倒的にこの樹が多い。
『冶金の丘』を取り囲む濠の外側の森にも、いっぱいあった。あり過ぎて気にもとめてなかった。
それがなんで『伝説のデカい樹』なんて呼ばれてるんだろう?
「でも、コレって『プロペラ星の樹』じゃないの? そこら中にいっぱい生えてるよ」
少し硬直がほどけたミーヨが、シンシアさんに確認してる。
前にも聞いたけど、どうやら彼女は、この樹の事を他の名前で認識してたっぽい。
ちなみに「プロペラ星」は、『この世界』の夜空に見える「棒渦巻銀河」の事だ。『地球』で言う「北極星」の位置にある。
「『プロペラ星の樹』?」
今度はシンシアさんが不思議そうだ。
「ホラ、秋に『プロペラ星』みたいな実が、グルグル回りながら空を飛ぶじゃない? それを真似て、ジンくんが子供の頃におち」
ミーヨが言いかけて、やめた。
どうやら、口に出すには下品な事だったっぽい。そして何故か俺のある部位をチラ見してる。
「あ、ああ、そうですね」
シンシアさんも何故か俺のある部位をチラ見しながら言った。
二人とも、俺がラウラ姫との『神前決闘』の時に披露した、俺様の俺様を高速回転させる「プロペラ・ダンス」を思い出してるんだろう。なんか照れてるし。なんなら今ここで再演したろか(笑)。セク○ラか。
「え? ナニ見てんの?」
でも言ってみた。『地球』なら完全にセク○ラだな。
「「……(赤面)」」
恥じらいの顔で黙り込まれてしまった……。
「ミーヨさんがそう呼ぶのも、あながち間違いという訳ではないと思いますよ。『星葉樹』は『この世界』のどこにでもあって、土地土地で呼び名が違うそうですから」
シンシアさんが丁寧に言った。
「あれ? 『星葉樹』?」
また名前が違うぞ。
「はい。『伝説のデカい樹』を始祖として世界中に広まった樹の事を、『神殿』では『星葉樹』と、そう呼びます」
「うー……そう言えば、習ったよ。神殿学舎で」
ミーヨの、自身の失態を恥じる姿が可愛かった。
「それと、『星葉樹』は『変態』しますから」
「え? 変態?」
「はい。変態するんです」
黒髪の美少女の口からそんな事言われて、ちょっと興奮(笑)。これが正に変態か?
そう言えば、『前世』の知り合いの、けして俺ではないさる人物が、無口系美少女キャラから「変態」呼ばわりされるのを、この上ない喜びとしていたな。イヤ、けして俺では無いよ? その人、『変〇。』とか『〇neR〇〇m』セカンドシーズンのラスト数話で悶え死んだそうだよ。
「『星葉樹』は、地面の中の根っこが、ある程度の深さに到達すると、それ以上の成長が不可能になって、枯死するんだそうです」
シンシアさんが真面目に言った。
――俺もアホな事考えてないで、真面目にしてようっと。
その枯死って、『この世界』のすべての生物が体内に宿していると言うナノマシン的な『守護の星』が関係してそうな気がするな。
「そして、最後に根っこが到達した地層によって、石みたいになったり、炭になったり、中が空洞になったり、蝋になったり、宝石みたいになったり……色々と変態するんだそうです」
それって「変態」じゃないな。「変化」とか「変質」なんじゃ?
俺の『脳内言語変換システム』が変な方向に暴走してるな。
「……石に、なるの?」
ミーヨが呟くように訊ねた。
「はい。ここ『全能神神殿』には、まるい石柱がたくさん並んでますよね? それは皆、石化した『星葉樹』。『石化枯木』なんだそうです。『王都』の『全知全能神神殿』から『柱分け』されたものなんだそうです」
シンシアさんが明快に言った。
「「……へー」」
「柱分け」とか「のれん分け」みたいだ。
にしても、「石化」って「化石」みたいになるのかな? 地中の珪素が浸み込むんだっけ?
「わたしが知ってる木は『香木』になる、って聞いてる」
ボコ村のあたりか。
「それなら、『神殿』でも『お香』として使われていますよ」
「うん。わたしの使ってるクシもそう」
ミーヨが愛用してる木の櫛、香木を使ってたのか。
いいニホイなんだよな。つい嗅いじゃうんだよな。
そんで、ついつい違うとこのニホイも嗅いじゃうんだよな。俺って、まるで――
「凄い変態ですよね? まるで『虹色豆』みたいですよね」
一瞬、俺の事言われたかと思ったよ。
「あー……凄い変態だよね。言われてみれば、そうだよね」
ミーヨも同意してる。
二人とも可愛い女の子なんだから「変態」とか言うの、もうヤメて。俺が興奮するから(笑)。
◇
他にも、中が空洞に石化するものは水道管に利用されてるし、毛細管現象で水を吸い上げる「汲水管」になるものもあるらしい。この街の円形広場にある高い『塔』は「給水塔」も兼ねてるけど、その『管化枯木』が利用されてるらしい。
さらに聞いたら『伝説のデカい樹』とは、『地球』から『この世界』に最初にやって来た――てか『全知全能神』によって勝手に「コピー&ペースト」された最初の人類『方舟の始祖さま』と呼ばれてる人たちが住み着いた土地にあった『星葉樹』を指しているらしい。
て事は、この惑星に人間が住み着く以前からあったんだな。『星葉樹』って。てか『地球』由来じゃないんなら、『樹』ではなくない? って気もするけど。
それで、その『伝説のデカい樹』の種子を、『神殿』が大事に大事に数千年も伝えて来たのが、現在の『伝説のデカい樹』だそうだ。
その「由緒」が大事にされていて、特別に保護されているらしい。
『地球』にも「ニュートンの林檎の木」とかあるもんな。
でもって、ミーヨが誰かから聞いて知っていた『伝説のデカい樹の下で祈った願いは必ず叶う』と言う話は、『七人の巫女』と言う『巫女見習い』の上位職が、年に一回冬至の日の『神授祭』で祈った事が必ず叶う――と言う意味だったらしい。
「シンシアさん、俺が前に訊いた時は『ごめんなさい。言えません』って言ってたのに、なぜ今頃」
俺も呆然としたけど、なぜこのタイミングで教えてくれたんだろう? そっちの方が気になる。
「ふふっ、だってあの時は初対面だったじゃないですか? でも今は『仲良し』ですし」
素敵な笑顔でそう言われた。
そんな腰が抜けそうな理由でか?
めっちゃ可愛いぞ、この女性!!
◇
でも結局のところ、俺たちが『王都』に行く事には変わりがないのだった。
『王都』には一度行きたいと、ミーヨからも言われてるしな。
『代官屋敷』に戻って『俺の馬車』を停めて、引き取りに来たおっちゃんに牽き馬を返却した後で、俺はプリムローズさんに先刻の事を話してみた。
「そうよ。何、知らなかったの?」
「……(愕然)」
プリムローズさんも当然のように知ってたワケか。
でも、俺自身が日本人顔の黒髪の美少女シンシアさんから聞き出す事に拘ってたから、目の前のこの人に訊くという発想そのものが無かったよ。
「忘れ物は無いね? じゃあ、★封印っ☆」
指パッチンの軽快な音がして、『魔法』発動時に見える虹色のキラキラ星が舞い飛ぶ。
プリムローズさんが『魔法』で車庫の扉を「施錠」してくれたのだ。「封印」って言ってるけど、実際はただの「鍵かけ」だ。
「『守護の星』って、なんで、こんな星のカタチしてるんスかね?」
なんとなく訊いてみた。
「空気中に浮きやすくしてるからじゃない? 星形の薄い膜みたいでしょ? それが普段は横に……水平になりながら、上下の圧力差で空気中に浮いてるらしいわよ。わたしたちの真上に、層になってね」
プリムローズさんが言った。
「へー、じゃあ、☆のカタチは、動きやすさ……高速移動のためかな? 5方向の、どれかに気圧差を生じさせると、そっちに動くだろうから、ローターがいっぱい付いてる『マルチコプタ』みたいな機動性を出せるかも」
「ああ、そうかもね」
そういう事には詳しくないらしく、気のない感じで雑に返された。
でも『地球』の「ドローン」は、だいたいローター(プロペラ)が4つなんだよね。
ちなみに俺のプロペラは1つだ。……言わなくていいか、こんな事。
「それと、『守護の星』には色々な役割と『さいず』があるって前に言ったでしょう?」
なぜかプリムローズさんの「解説者魂」に火が点いたらしい。
「目には見えないくらいにとても小さな『守護の星』が、そこら中の水や空気の中にもいるし、生き物の体内にもいる」
そんな事を語り出した。
でも、この手の話って、他に話し相手がいないのかもしれない。
普段からいろいろお世話になってるので、お話に付き合ってあげようっと。
「シンシアさんみたいな『癒し手』が、「白い光」として手や指に纏うヤツっスね?」
「……(こくん)」
俺が言うと、一度満足そうにプリムローズさんが頷いた。
「それが人間の思念や音声を、『世界の理の司』に伝えて、『守護の星』を動かして『魔法』を発現させている」
「ハイ」
「それが一般に知られてる『守護の星』なんだけれど……それとはまた別に、凄く大きな星形のものが、この惑星の大気の上層に、層を成して存在してるらしいわよ。有害な宇宙線から、地上の生命を守るためにね。それも『守護の星』って呼ばれてる。ま、こんな事『魔法』を研究してる一部の人間しか知らないし、一般の人たちは興味もないようだけどね」
ちょっと淋しそうで、残念そうだ。
『この世界』の人たちって、産まれた時から『魔法』のある世界で生きてるから、あんまり細かい事は気にしてないのだ。
『地球』でも、一般の人たちが「オゾン層がどうこう」言われてもピンと来ないし、そんなもんだろうけど。
「……そうなんですか」
つまり、『守護の星』には――
① 生物の体内はおろか水や土にも含まれてるナノマシン的な「極小サイズ」。
② 『魔法』を発動させる「虹色のキラキラ星」に見える実行部隊的な「普通サイズ」。
③ 『この世界』の生物を有害な宇宙線から護るオゾン層的な「特大サイズ」。
――の3種類があるわけか。
やっぱ、ややこしいからそれぞれ別な名前つければいいのに。
にしても有害な宇宙線から身を守るため、とか……無いと皮膚ガンとかになっちゃうのか?
でも、そもそも『地球』みたいに宇宙線や太陽風を防護する磁力線のバリアーがないと、水が蒸発しちゃって生き物なんて住めないハズだから……それとは別口の「何か」に対抗するためのものみたいな気もする。
「でも惑星って言ったら球体だし、ちょっと高度が上がるだけで、そこの表面積はめっちゃ増大して、必要数もめっちゃ増大すると思うんスけど、これって……どこから生まれて来るんスか? どう見ても消耗品っぽいですし」
前々から不思議に思ってたので、訊いてみた。
「『星葉樹』よ。あの『葉っぱ』よ。今はまだ初夏だから『カエデ』みたいだけど、そのうち大きく葉が広がって星の形になるの。それで冬に葉っぱが枯れ落ちると、脱皮するみたいに透明になって、『守護の星』に成るのよ」
プリムローズさんがかるく言ってくれる。
「…………(愕然)」
そんなん、ぜんぜん知らんかったよ。
『星葉樹』って、そのまんま「星に成る葉っぱの樹」って意味だったのかー。
道理で、あの樹。そこら中に植えて……というか生えてるワケだ。
シンシアさんが案内してくれた『伝説のデカい樹』も、楓みたいな葉っぱをしてたっけ。あれって「育ちかけ」なワケか。
「あ、それと『守護の星』が上空に存在すると言われてるのは、生き物がいる陸地の上だけらしいわよ」
「……ああ、有害な宇宙線を減衰するのに『水』が有効だって聞いた事あります。水中の生物には必要ないって事っスか?」
俺が言うと、プリムローズさんは頷いた。
「そうね。『この世界』って、圧倒的に海が広くって、陸地がすごく少ないらしいわよ」
「……へー、そうだったんスか」
ん? とすると――
「この辺りって夜中に強風が吹くじゃないっスか?」
「『夜半過ぎの強風』ね? 『王都』も凄い強風が吹くわよ。要所要所に『防風壁』があるくらいだし、集団で発動させる防風用の『魔法』もあるのよ」
それも初めて聞いたな。
そしてその現象に名前があったのか……『夜半過ぎの強風』って、そのまんまだけど。
「その強風の原因って『陸』と『海』の温度差なんじゃないっスか?」
「ああ……確かに聞くね。『水』は保温性が高いって。それが低気圧と高気圧になってるワケだ。なるほどなるほど。『海陸風』ってやつだ」
何かに納得したように深く頷いてる。ちょっとオーバーアクトな動作だ。
ただ、『地球』の「海陸風」みたいな大気の循環があるかどうかは不明だ。違う気もするし。
そんで、さらに言うと「夜」には「太陽」が出てないから、紫外線とかをカットする必要が無くて「特大サイズ」の『守護の星』が惑星の「昼側」に移動してしまって、大気の上層の「ラップ(みたいなもの)」が外れて、地表の熱が逃げてるかも。「放射冷却」みたいな現象も起きてるかも。
「ここって一応『大陸』って呼ばれてるけど、『地球』の大き目の『島』くらいらしいね。『海』からの影響を受けやすいらしいよ」
「そこまで『海』ばっかなんスか? 『この世界』って」
いまいるのは完全な陸の上なのでピンと来ないけれども。
「そうらしいわよ」
でも陸と海の比率は、プリムローズさんも知らないみたいだ。
「世界一周航海」とかして、正確に測定した人がいないらしい。
俺も単なる「観光」での世界一周ならともかく、伊能忠敬とかマゼランみたいな「測量の旅」なんて無理だしな。
でも、海に行ってみたいな。夏だし。
みんなで「水着回」とか……ぐへへへ。
波打ち際でキャッキャウフフと遊んでると、突然の大波でブラが流されてポロリとか――
そんでその『守護の星』がぺたっと張り付いて、星のカタチのニプレス「スター・ニプレス」になるとか(笑)。
「オーラオラオラオラオラ(※中略※)オラオラオラオラオラァ」ならぬ、
「ブーラブラブラブラブラ(※中略※)ブラブラブラブラブラァ」とか。
コレだとナニか振り回してるみたいだな(笑)。
てか、原作やアニメじゃ登場しなかった『女教皇』の使い手「ミ〇ラー」って、ゲームだとすごい巨乳で「スター・ブラジャー」着けてたな(笑)。
そんな事を考えてると――
「ニヤニヤしながら、何考えてるの?」
プリムローズさんに冷たく言われた。
◆
次回。タイトルで出オチ――まる。




