250☆シン最終章[22]◆神授祭 3日目⑦
勝者を称える式典だ。
『『『優勝おめでとう!』』』
神様たちの祝福だ。
またまた、ほぼ完全に忘れていたけれど、『神前重量挙げ大会』なので、「神様たち」が見守っていたのだった。
「「「「「おめでとう!」」」」」」
人間たちも祝福だ。
競技参加者たちと『七人の巫女』が、拍手と賛辞をささげた。
「ウホ……ウホ。ウホウホウホ、ウホウホウホ、ウホウホウホウホ!」
かつてない長文だ。祝福に対する返礼を行っているのだと思われる。
「……うっく……ひっ……んくっ……」
どことなく変な声を漏らしながら、感激のあまり泣いているのは、ゴっさんの「義理の娘」である『乙女神官』アプロダイテ嬢だ。
補足しておくと……彼女は以前、「義母」であるゴっさんの「全身剃毛」を行ったことがあり、「毛のない姿」を見ていたために、今回の「全身脱毛」にも、さほど動揺はなかったらしい。
逆に、その姿を見たことなかった面々は、そこそこ驚愕した。
……俺も含めて。
「優勝おめでとうございます」
『聖女』の役目として、俺はゴっさんに優勝者3点セットとでも言うべき、「宝冠」と「白いファーのついた赤い肩マント」と「王笏」を身に着けてあげたりしたよ。まるで、某コンテストみたいだよ。そして、どうでもいいけど、この「王笏」。『プリ○ュア』とかの「変身ステッキ」にしか見えないぞ? なんかの転用品なのか?
(『プリ○ュア』のは、『変身コンパクト』なのでは?)
(むかしの『魔○っ子』の伝統ば、引き継いでるんでないべか?)
魔法少女ものは、「大きなお友達」向けのやつしか知らないしな。ちなみに「○女っ子」って、某社の登録商標らしいよ。
でも、「武器」としては「魔法の杖」みたいなの使うんじゃあないの?
(『わんだふる○りきゅあ!』のは、絆のリードが変化した『タクト』だったべさ。第6話では、いろ○ちゃんとケンカした○むぎちゃんが、夜中に○○する展開があって、またまたジン君がワンワン大泣きしてたべさ。猫とか大型犬ならともかく、小型犬が○○とか、胸が張り裂けそう、って泣いてたべさ)
だから、それはこの『俺』じゃないってば!
それはそれとして、今度は俺に向かって、ゴっさんが何か言った。
「ウーホ。ウホウホウウホウホウホ」
「素敵に変身出来たのは、『聖女』さまのおかげです……と義母は言っています」
義理とは言え、仲のいい「母娘」なので、ほっこりするよ。この二人。
「幸あらん」
俺は、二人の未来の祝福を祈願した
てか、なんか言われて返答に詰まったら、こう言え、って言われるのだ(笑)。『聖女』だけが万能に使える「魔法の言葉」なのだ。ぶっちゃけ、コレ言えば、大抵のことは誤魔化せるから、便利なのだ。
「「…………」」
二人が、神妙に頭を垂れた。
でも、前代の『聖女』である「お姉さま」だけは、ちょっと顔を上げて俺を見て、ニヤリと笑った。自身の経験から、テキトーに流してる感じが察せられたらしい。
で、実を言うと、式典のBGMとして『神殿演奏団』による演奏がつづいている。あの曲だ。
どこかの『前世の記憶』持ちが伝えたのか……この曲。完全にアレだな。
(検索。表彰式でよく聴くあの曲)⇒俺。
…………。
……。
『地球』の、17世紀の作曲家ヘンデルの曲らしい。
『見よ、勇者は帰る』って、オラトリオ『マカベウスのユダ』第3幕だってさ。
……てか、今のでよくわかったな。検索エンジンが進化してるのか?
で、「オラトリオ」って「歌とオーケストラによる音楽劇」だって。『ダン○ち』の外伝は「○ード・オラトリア」だけど、なんか関係あるんかな?
とにかく異世界なのに、『見よ、勇者は帰る』が演奏されているよ。
俗に言う『勇者が帰る』が、○石奏られている。……久石いらんやろ。イヤ、いるよ。そして、○美子がまさかの部長就任!? どうなる三年生編? もうすぐ次の曲が始まるのだ!
(ネタバレすると、新キャラの)⇒未来人ホノカ。
ネタバレすんなし!
(『勇者が帰る』って、日本語詞もありますよね?)⇒カオリちゃん。
♪みーよ……だっけ?
(わたし?)⇒ミーヨ。
ちがうっス。
著作権的な問題あるかもしれんから、歌い出し3秒のみっス。以下略っス。
でも、『勇者が帰る』の日本語歌詞って、賛美歌バージョンみたいなのもあって、正確なのは知らないっス。
あと、この語尾を使ってたら、某アニメの某キャラが、双子の赤子を抱くことなく、途中退場してしまったのを思い出したっす(泣)。中の人つながりっす。
そんで、俺も帰りたい。彼女のもとへ。
(わたし?)⇒ミーヨ。
応よ。
で、いまのふたつの「わたし?」。微妙にニュアンスが違ってて、かなり良かったぞ。うんうん。
(……えへへ)
(…………)⇒未来人ホノカの無言思念波。体感温度22℃。
(…………)⇒カオリちゃんの無言思念波。体感温度-10℃。
……あ、あと、俺の脳内では、ちがう『勇者が帰る』が聴こえてるよ。
『トモちゃんは○の子!』の、キャロル・オール○トンの歌声が……。
♪たーんたんたたーんたーん……ただいま。
第4話だ。
◇
(それじゃあ、おやすみ)
(おやすみなさい)
ハイ、おやすみ。良い夢を。
『大会』を「表彰式」まで見届けたミーヨとドロレスちゃんが、おやすみのあいさつとともにログアウトした。
なんやかんやと長引いた影響で、ホントにもう遅い時間だし、俺も眠い。
(それで、ジンさん、どうします? 万倍ですよ!)
一方、興奮冷めやらぬ感じの、カオリちゃんの思念波だ。
現在は、屋外から移動して、どっかの室内にいるらしい。
(元が、高額すぎて普通のお買い物には使えない『女王国兌換券』ですよ? その、一万倍ですよ?)
『競馬』で、「万馬券」とか当てたことないの? イヤ、俺も無いけどさ。
あと、さすがに高額すぎるので、日本円換算はやめとくっス。
(わたしの『取り分』だけで、日本円で約32億円ですよ?)
事前の取り決めでは、「20%」がカオリちゃんの「取り分」だ。
いわゆる「落とし物を返してもらう時の謝礼」って、最大20%って聞くし、まあ、そんなところだ。
でも、結果的には相当な金額だし。
それだけの金額ならば、彼女が興奮するのも止むを得ない事だろう。
てか、日本円換算はやめろってば!
でもまあ、もうぶっちゃけて言ってしまうと、『女王国兌換券』は、いちばん高額な硬貨『太陽金貨』の8枚分……日本円で約160万円だ。その「一万倍」なのだ。
てゆーか、それだと総額いくらなのん?
(約160億円……ですが、これ無事に換金出来るんですか?)
……うん。
実は俺も、それを懸念している。
カオリちゃんの「正体」は……まあまあややこしい存在だしな。
いざとなったら、最終兵器である「彼女」もいるので、なんとかなるだろうけれども。
(見ないで、シュウちゃん。……こんなセリフだったかな? 忘れてるなあ)
彼女が言ってるのは、『最終兵器○○』の事だろう。
未視聴なので詳しく知らないけれど、純朴な感じの道産子で、ギャルではないらしい。なまらめんこいらしい。そして、どこをどんな風に「見ちゃダメ」なのだろう? 身体から何かが出ちゃうらしいのだ。
それはそれとして、俺が言ってる「彼女」とは、俺の母親「スピンナさん」のことだ。我々とクリソツなのだ。いざとなったら、「代役の代役」に起用するつもりだ。
(といいますか、今回の『大会』の『ちょっとした余興』の総売り上げって、そんな金額に達してないと思うんですけど?)
そうなの?
『投票券』て、一口いくらだったの?
(例の『地球銅貨』一枚。約390円です)
それが、何口、出たのだろう?
ちなみに今年の『巫女選挙』は、ホノカへの「無効票」とドロワー嬢の「保留票」。さらに投票されなかった「謎分」も含めると、売上総数は、約「2億6千万票」だったそうだ。過去最高だってさ。
しかし、現在の『アアス』の「科学技術」や「現代魔法」を駆使しても、そんな大量の「投票券」をさばききれたのだろうか?
(『現代魔法』の方で、余裕だったらしいですよ)
そうなんだ? 舐めてたな。
というか、『アアス』の魔法システムって、ホントすげーよな。なんだったら「丸投げ」が可能だしな。
で、その『巫女選挙』を参考にすると……。
(それ、参考になりませんよ。投票券の金額が違いますから)
『巫女選挙』の投票券は、基本的には「1円玉」みたいな『軽い銀の円盤』。
あれって、10枚一組で『小惑星銅貨』10枚だった。
つまり、『軽い銀の円盤』1枚=『小惑星銅貨』1枚。
『小惑星銅貨』は『地球銅貨』の32分の1なので……えーっと、いくら?
(約12円です。つまり『一票の格差』が、約32倍なわけですよ)
お金に換算できる「一票の格差」とか……なんかイヤ(泣)。
とりあえず、『巫女選挙』と同規模の「売り上げ」だったと仮定して、計算してみると、どうなるの?
(それなら、さきほどの数字を、32で割ってみると……)
みると?
(812万5000です)
で、その総売り上げは?
(今度は、それに390をかけて……ポチポチポチっと)
電卓みたいな『★計算掌☆』を使ってるんだろうな。
(『選挙』と同程度と仮定すると、31億6785万円ですね)
……イヤ、我々の配当金は「160億円」だよ? 完全に足りてないよ?
しかし、どこをどう計算して、倍率「一万倍」とかになったのであろうか?
(だから、誰も賭けないような『大穴』だったんですよ、194キログラムって)
優勝したゴっさんは、実力をフルに発揮できれば、確実に200㎏以上を持ち上げると予想されていたのだ。
さらにステルス性を犠牲にした「ビーストモード」であれば、その4倍……てか、「ビーストモード」とかEVAみたい。そんで、某ステルス戦闘機って、一機おいくらなのかしら? 160億円で買えるのかしら?
それはそれとして、事前の予想とは異なり、某『聖女』のおこなった「全身脱毛」の影響で、出力は70%にまで低下してしまっていたのだ。
他人事みたいに言ってるけれど、これまたやっぱり原因は俺なのだった。
……イヤ、マジめんご!
(そこは気にしなくてもいいらしいですよ。過去の『大会』でも、いろいろとあったらしいですから)
なにしろ「人間」のやることなので、前日から眠れなかったり、朝起きたら風邪ひいてたり、本番で緊張してミスったり、イキり過ぎてヘマしたり……というような「悲喜こもごも」が多々あって、過去に何度も優勝候補が敗退するような「番狂わせ」があったらしい。
で、そんな「番狂わせ」が起きた時には、倍率がぐーんと跳ね上がって、それなりに盛り上がったらしい。
あと、カーバンクルを助けると、なにかいいことあるのかしら? 2作品知ってるけど、特にいいことなかった気がする。
でもまあ、「一万倍」とか。
以前あった『神前じゃんけん大会』でも、最大で「32倍」だったのにな。
配当金の「オッズ」とか「倍率」って、「賭け」の主催者が、自身が損しないように、なんかこう、うまいこと計算して設定するハズなのにな。いったい誰が設定したのであろうか?
なんにせよ、アホだな、そのひと。
◇
「どうしましよう。どうしましょう。どうしましょう」
「どうしましたので?」
『乙女神官』ロザリンダ嬢が、いつになく取り乱していたので、ついつい声をかけてしまった。
「実は、今回の『神前重量挙げ大会』の『ちょっとした余興』の『倍率設定』に失敗して、『神殿』に大きな損失を与えることになってしまったのです。……あああっ」
「…………」
ハイ、アホはこのひとでした!
彼女、『神授祭』実行委員なのに、大会会場にその姿がなかった。
『重量挙げ』の「司会進行」まで別な『乙女神官』に任せていたけれど……それって、「賭け」の運営の方に関わっていたかららしい。にしても、あの司会進行役のひと。まったく見覚えがなかったし、養成所出たての新人さんだったのかもしれないな。
(声優さんじゃないですから、養成所なんてありませんよ)
学園ものとかのEDのキャストで、知らない名前を見つけると、新人さんかなあ? って思うよね。ガンバってほしいなあ、と思うよ。そんで、のちにメイン級の役で同じお名前を見つけると、おお! ってなるよ。
(……どんな目線で、なにを見守ってるんですか?)
それは置いて、めっちゃ嘆いてるよ。
『乙女神官』ロザリンダ嬢。
「ああっ、どうしましょう、ああああっ」
「…………」
で、それって「うっかりミス」ってやつかな?
『マッ○ュル』では、棒つながりで「ホウキ」と「ゴボウ」を間違えてたよ。「うっかりね」ですまされてたよ。
「数字を間違えたとかではなく?」
いちおう、訊いてみた。
これまた今さら感のある情報ではあるけれど……実は、『アアス』の数字表記は、「ローマ数字」に似ている。
ローマ数字の「10」は「X」だ。
そして「10000」は、「X」の上に「横棒」が付く。文字の形は違うけれど、『アアス』でも表記の仕方は、かなり似てる。なので、うっかり間違えてしまうこともあるのだ。
「ちがうのです。間違いでは……ああ、『神官女』クシナダさまの、『倍率一万倍のまんばけんがあれば、もっと盛り上がるぜ』なんて言葉。信用するんじゃなかった……」
「まんばけん……って、万馬券?」
うっかりミスじゃなくて、その言葉に、うかうかと乗せられたのか?
(ウマウマと乗せられたのでないべか? 『万馬券』だけに)
でも、ホノカの「推し」は、引退レースでも事前の人気投票の順位が高かったから、「万馬券」とは無縁だったんじゃなかろうか?
「ああ、ああああああ、どうしましょう。どうしましょう」
ロザリンダ嬢が、かるい錯乱状態だ。
(『錯○坊』の愛称は『チェリー』だべさ)
俺は個人的に、「チチェリーナ」がなんなのか知りたい。
「どうしましょう。どうしましょう。どうしましょう」
「……落ち着いてくださいな……」
てか、「競馬」には「配当金の倍率をもとめる計算式」があるはずなのに。
主催者が「もうけ」を確保できるように、「控除率」とかあるはずなのに。
「ああああ……どうしましょう。どうしましょう。どうジマじょううぅぅっ」
それ誰だよ?
てか、ついに泣き出しちゃったよ。
ついでに言うと、『この○とまれ!』に「堂島さん」がいたな。色々あって、「目にゴミが」入ってたよ。いいひとだよ、堂島さん。
(『美少○探偵団』の男装ヒロインは『○島眉美』だべさ)
あと、大阪の「堂島」には、そのむかし「おこめ」の先物取引市場があったとかなんとか……。プリムローズさんから聞いたことあるな。
「ハイ、泣かない。泣かない」
「……あううう、ああああああああっ」
仕方なく、肩をポンポンしてあげたよ。
どうやったら、泣き止むんだ? 「あたま倒して水飲む」のか?
(それ、『しゃっくり』の止め方なのでは?)
某・劇場版の話だけど、その前に「お風呂でお尻が丸見え」なシーンがあったよ。劇場版だけに、本編からは想像もつかないようなサービスシーンだったよ。まあ、「餌食(笑)」にされてたのはメインヒロインじゃあなかったけれども。
(そんなことは置いといて、いつもみたいな『男前なヨハンナちゃん』として、助けてあげないんですか?)
カオリちゃんは、そう言うけれど……どうしたもんかな?
俺、ロザリンダ嬢を、すでに何度も助けてるよ。
いずれも「無償」ってワケではなく、それなりの「対価」を受け取ってるよ。
(土地と貴族号……とか。ジンさんもヒドいですよね?)
『軍団鳥』に襲われて資産価値のなくなった「廃屋」と「耕作放棄地」だったけどね。そして、それはもう君のものだけどね。
(あとは……『化物』によるコピー体の『モデル権』ですか?)
某サービス産業の労働力にしようかと……でも、「越冬実験」次第だよ。失敗したら、使えないし。
「うえええん……あう……あうあうっ」
「ハイハイ……どうどう」
ロザリンダ嬢が、泣き止んでくれない。
足元に「水たまり」が出来そうな勢いで泣いてるよ。もし、それが「水鏡」になったら……。
(なったら、なんだと?)
またまた『葬送のフリー○ン』の話になるけれど、某・迷宮に『水鏡の魔物』がいて、みんなの「完璧な複製体」つくられてたよ。無許可で。もちろん、フ○ーレンちゃんも。
あれって、観た人全員が「絶対にミミックで釣るんだろう?」と思うと思うんだけど……見事に外されたよ。
(『水鏡』って、『魔法使いの○』にもありましたよね)
お、それだと「中の人つながり」だ。
あと、『蟲○』にもあったなあ。
でも、それらはすべて、地面に出来る「水たまり」とかじゃあなかったよ。
ついでに言うと、雨上がりに水たまりの上に立つと「おも○し」だと思われるから、立たないほうがいいよ。うっかり立っちゃった人もいるけれど。こっちは某『生徒会』の話だよ。
ま、それはそれとして――
今回の、約160億円ぶんの対価って、なに?
てか、そんなことしたら、君の分の「取り分」も無くなるよ?
(ですが、このままだと『神殿』が莫大な損害を被るんですよ? ただでさえ、赤字体質なのに、またまたそんな損害があったら、関係者の『給金』や『年金』にひびくじゃないですか?)
さすがは『聖女』。
『神殿』ファースト……なのか?
でも、今回の『重量挙げ大会』って、『神前』って「冠」がついてるやん? もちろん競技に「不正」があってはダメだし、主催者側も損害が出るから配当金を支払わないってのも「無い」らしいよ。『神殿』の「威信」にかかわるらしいし。
ならば、「配当金分全額を『全知全能神神殿』に喜捨します」とか?
(……ジンさん、それだと逆に我々が約130億円の大損ぶっこきますよ?)
ぶっこきマス(笑)?
(配当金を配当金として受け取る前に、それ言っちゃうと、そうなりますよ)
そうなるのか?
迂闊なこと言ったら、揚げ足取られて、変な「言質」取られるのか?
いったん配当金を全額受け取ってから……イヤ、『神殿』にそんな支払い能力はないだろうな。そして、どう考えても揉め事になりそうだよ。
したら、俺らからは何も言い出せないな。
きっと、『神殿』側から何か言ってくるだろうから、それ待ちだな。ここは受け身に回ろう。
「ああっ、あああっ……こうなったら……」
一方、ようやく泣き止んだロザリンダ嬢が、なにやら危うい事を、ぶつぶつと言ってるよ。
「損失の穴埋めのために、クリムソルダに頼んで『私的な祈願』で大きな金の塊を……いえ、だめだわ。それは、『銀の都』のために……わがメルォン家のために使わないと……」
そう言えば、『巫女』たちの『私的な祈願』の内容を聞き出してないな。いろいろと「宿題」が増えてるなあ……。
「……ならば、あの『重量挙げ』で使った金塊を……いえいえ、そんなことは……」
「…………」
なんか、フラグが立ちそうな感じになってるし(※他人事)。
◇
「「「「「……(沈痛)……」」」」」
……な、なにここ、お葬式?
『夕食会』の、楽しいはずの会場は、どん底に沈んでいた(笑)。
「「「「「……(どよ~ん)……」」」」」
どうやら、「賭け」の失敗による「大損害」の報が広まっているらしい。
ようやっと、お祭りらしい「ごちそう」が出されてるのに、『全知全能神神殿』の大食堂は、暗く沈んだ重たい空気に支配されていた。
こんなヒドい空気の中で、お食事会とかイヤすぎる。
◇◆◇
「あたくしが、なんとかいたします!」
俺は宣言した。
「倍率一万倍のところを、まけて、9千倍ということで、交渉いたします!」
まあ、「一割引き」くらいなら応じてやるさ。交渉相手、俺だし。
「……し、しかし、『聖女』どの」
どこかで見覚えあるな。このおじいちゃん。でも、誰だっけ?
なんか、すげーお髭が長いよ。なんかの「マスター」的な。
(そしたら、『神官長』さまなのでは?)⇒カオリちゃん。
ああ、そうかもしんない。
「『大会』は、『神前』で行われておったのです。それでは、的中させた人が納得しますまい」
「ますまいも、まいまいもないですわ!」
ちなみに、「マイマイ」の本名は「マイマイ」だ。
(愛称ならば、『マイマイ○子と千年の魔法』だべか?)
(『刀○ノ巫女』とか『ましろの○と』にも、愛称『まいまい』がいますよ)
あと、『迷○』にもいた気がする。
なお、『ゾン○ランドサガ リベンジ』の話だ。姓は「楪」だ。名が「杠」なのは、別作品だ。
◇
――というのは、「妄想」だ(笑)。
俺がなんか言い出したら、「全身脱毛」を競技参加者への「過干渉」と取られ、俺にヘイトが集まってしまう。
そんなのヤだ。
俺はタンクじゃないのだ。防御力は「スライム以下」なのだ。
それと、スライムのやわらかぷよぷよ感を「おっぱい」に例えるのアニメはいくつかあるけれど……でも、やっぱりスライムはスライムでしかないと思うの。見た目がまったく違うの。でも、「おっぱい」って言ってくれた声優さんたち。本当にありがとう。心から謝意を伝えたい。
(……大丈夫だべか? 今夜は早めに、ぐっすりおねんねがいいべさ)
いつもとなんら変わらぬ通常モードなのに、ホノカに心配されてしまった。
たしかに、寝不足と空腹と疲労で、そろそろ活動限界は近いかもしれない。
いわゆる「電池切れ」で、パタッと寝てしまうかもしれない。そうならないためにも、おっぱいは必須だ。それは俺に元気と勇気をくれる。勇気が爆発だ! まさかの「転生もの」だったよ。びっくりしたよ。
(……やっぱり早めに寝たほうがいいべさ)
てか、そもそも「万馬券」とか言ったのは、『神官女』クシナダさんじゃあないか! いらん厄介ごとと心配ごと増やしやがって!
(叔母さんに念話で言ってみたら、ずっと黙秘を貫いてるのだべさ。『その生き方は美しくない』のだべさ)
まあまあ、俺の「先輩」だしな。
自分に都合が悪いことがあると黙り込むんだよ。困ったもんだよ。某・一級魔法使いの人も、だんまり決め込むらしいよ。
……そんなことを考えていると、ある人物が、大食堂に入ってきた。
「失礼します。私、オリカ・テレコと申します」
な! なんで君が、ここに来ちゃうんだよう!?
「先刻の、『ちょっとした余興』を的中させた者です」
イヤ、待て! 何を言う気だ?
「その配当金全額を、『全知全能神神殿』に喜捨いたします」
「「「「「……おおおっっっ……」」」」」
な!? なんてこと言い出すんだよう!
それだと、我々が「約130億円」とか言ってなかった?
「その代わり!」
……やっぱ、「対価」は必要だよな?
◆
次回。金塊盗難事件発生(笑)。




