242☆シン最終章[14]◆神授祭 2日目⑨
「君ら、なにやってんの? せっかく描いた『増幅円』の上で」
だからの、超強力な『★光球☆』だったんだな。
真上から「サーチライト」みたいな光で照らされたよ。
てか、ふつうに怒られたよ。てか、知り合いだったよ。
こちらも、その「美声」で、一発でわかったよ。
『プリ○ドール』……じゃなくて、「プリムローズさん」だよ。
でも、それは「愛称」だったりする。真名は違うのだ。要注意だ。
「プリマ・ハンナ様。唐突ですが『なーらけんこうらーんど』とは何ですの?」
「『奈良健康○ンド』のことです」
「…………」
堂々と大真面目に言われて、こっちがビビったっス。
ついでに言っとくと、某オーナーの孫娘は「楽奈ちゃん」だ。左右の瞳の色が違う「オッドアイ」な子だ。銀河の英雄たちの伝説ふうに言うと「金銀妖瞳」だ。
にしても、ラウラ姫の筆頭侍女をつとめるプリムローズさんが、なんでこんな時間に、こんなところにいるのやら?
あと、彼女の瞳はふだんは水色なのに、興奮して血の気がはいると「紫」っぽく見える。『銀河英○伝説』の某・提督みたいなのだ。なお、帝国サイドだ。
「ここは、なんのための『増幅円』ですのん?」
『魔法』に使役されている『守護の星(普通サイズ)』は、なぜだか「円の中心に集まりやすい」という性質があるので、それを利用した『魔法』効果の増幅スポットなのだ。
さらに言えば、この「おまん……だから、違うってば!
まるで『操舵輪』みたいな、このカタチは、惑星『アアス』を取り囲む『軌道リング』の全体構造図に似てる。モトネタは、案外そっちなのかもしれない。
そんで、それがナニか変な風に見えてしまうのは、見る人の「心が汚れている」からだろう。ちなみに俺は、変な風に見てしまっている(笑)。
「この『増幅円』は、あるものを呼び寄せるためのものです」
「なにを呼び寄せるためのものですの? 『UFO』ですのん?」
(♪ぱぺぷーん、ぱら、ぽぺぷーん)
「♪ぱぺぷーん、ぱら、ぽぺぷーん」
ホノカの思念波を、そのまま音声化してみた。
なお、『星屑○レパス』の明内さんが使う「宇宙語」ではないと思われる。
「昔の『UFO』関連の番組で流れていた『ジングル』ですね?」
ジングル? ジングルベルのジングル? 昔っていつ?
俺の「先輩」と同年代らしいんだよな、プリムローズさんの「中の人」って。そんで、俺もこれを「先輩」に聞かされてたな。
(したら、『○追純一UFOスペシャルのジングル』で検索。検索ぅ!)
黙っててや!
(あたしは、何度聞いても『♪ぱぺぷーん、ぱら、ぽぺぷーん』なのだべさ。みんなは、なんて聞こえるかな? だべさ)
いい加減、自由すぎるぞ?
……でも、「やおい」ってなんかで聞いたな。BL関連?
あと、「UFOの夏」ってなかった? いま冬だけど。
(『イリヤの空』ですね。『イリ○スフィール』じゃあないですよ?)
どっちも分からん。その「入谷」って、地名じゃあないの?
そんで、某シリーズにも「UFO」が関係してるよ。でも、タイトルは言えないです。禁則事項です。恋愛同盟です。大町市内です。
「この『増幅円』は、『UFO』を呼ぶためのものではありません。『召喚』のためのものなのです」
召喚? 何を? テーブル? どこから? 四国?
あるいは、「悪魔」とか「精霊」とか「召喚獣」とか「使い魔」とか……あるいは「勇者」とか? ま、他にもあるだろうけれども。
(『英霊』とか『神様』とか『魔王』とか)
(寝ながら無意識にすると、『おね召』だべさ)
魔力を「お○っこ」みたいに言わないでくださーい!
ちなこれ、『でこぼこ○女の親子事情』だ。「娘」の声優さんにビックリだ。全話観たけど、そこそこ下品なアニメだった(笑)。
「『神授祭』にまつわるものを、『★召喚☆』するための『増幅円』なんです」
『アアス』の魔法式の「召喚」か。
つまりは物理の強引な「力技」だ。異次元空間とかは非通過だ。
「『魔法審議会』総出で、『多重詠唱』をかけましてね」
「……そうなんですの?」
『女王国』の、『魔法』に関する研究団体が、なぜか『魔法審議会』なのだ。
プリムローズさんは、そこに所属してるのだ。そして、その手の団体は「年長者」が多くて、現場でこき使われるのは「若手」だからな。要するに、『増幅円』の「見張り番」として、ここを見守っていたらしいよ。
ただ、彼女も『前世の記憶』持ちだし、精神年齢はどうなんだろう?
でもまあ、そんな「大がかり」に、一体何を『★召喚☆』したんだろう? コレは、届いてからの「お楽しみ」ってヤツか?
それはそれとして、いい機会だ。
俺は、プリムローズさんとヒサヤに向かって言った。
「おふたりには、これからすこし、付き合っていただきます」
「「……えっ?」」
逃がさへんでぇ。
「それは構いませんが、とりあえず寒いので、地下に下りませんか?」
プリムローズさんが、そう提案してきた。
ここ、『東の街区』には、地面の下に巨大な「地下街」があるのだ。
◇
雪が積もり、広々とした雪原みたいになってた『大馬場』から、いつぞやみたいに「換気口」を兼ねてるらしいマンホールを下り、いまは地下街にいる。
ここの深さは……だいたい「6ハナバタ」くらいかな?
(なにそれ? 何メートル?)⇒カオリちゃん。
1ハナバタは、110㎝だ。
あるアニメキャラの、驚異の胸囲に等しいのだ。
でも、ぶっちゃけて言ってしまうと、その子よりも「金髪受付嬢の母娘」のほうが、インパクトが強かった。
母娘そろって、胸のパイ圧で服のボタンが弾け飛んだのだ。お母さんなんて、Bのホックまで外れて、Bが浮き上がったのだ。ものすごい絵面だったよ。あんなの初めてだよ。そんで、あの娘さん、いったい何歳なんだ? ランドセル背負ってたよ。あの園児服みたいなのはなんなんだ?
(なにそれ? なんのアニメ?)
『不徳のギル○』だ。第7話だ。
でも、俺は「TV放送ver」しか観ていない。
規制が外れた「別ver」があるらしいのに……しょんぼりだ。
しょんぼりルドルフだ。
ちなみに「銀河帝国」の初代皇帝は、「ルドルフ」だ。自分の身長を「長さ」の基準値にしようとして臣下に抵抗された人だ。俺は、どちらかというと原作派なのだ。
『銀○英○伝○』は、人類の歴史に名をとどめるレベルの稀代の名作なのだ!
(そう思うのなら、こんなことでネタにしないほうがいいのでは?)
……た、たしかにそうかもしれんけど。
だがしかし、『前世の記憶』では1期目までしか観れなかったアニメ版のつづきが観れるようになったので、いろいろとテンションが揚がっているのだ!
(わたし、もう寝ますね。おやすみなさい……)
……ハイ、おやすみ。
◇
「さ、これを見てください。見覚えはありませんか?」
俺は二人に、ある画像を見せた。
「……女性の、胸のように見えますが?」
「はい、私にも、そう見えます」
プリムローズさんが言うと、ヒサヤがそれに同意した。
……え? 女性の胸?
「……間違えました。こちらの画像です」
まあ、いつもの「お約束」ってヤツだ。
◇
仕切り直しだ。
「この画像の少女に、見覚えはありませんか?」
地下街の『水灯』の下で、一枚の『ふぉとぐらふ』を見せた。
12年前に亡くなったはずの、『二の姫』ロザリンダ王女の「当時の姿」だ。
というのは、正確な事実ではないな。
実は、現在19歳の、「ある女性の画像データ」を「生成AI」を使って加工し、「12年ぶん若返らせた画像」だ。
俺が『宇宙』から持ち帰った「未来の記憶媒体」を視聴するための「プレイヤー」は、実は「ゲーム機」だ。なのでソフト次第で、そんな事も可能だったのだ。
つい先刻、『将棋愛好会』の『こっそり小部屋』で、こっそり「生成」してきたのだ。ついでなので、そこには御礼の意味を込めて、「ボックスティッシュ」を『錬金術』でこっそり錬成し、こっそり置き土産にしてきたよ。コッショリ使ってほしいよ(笑)。
「誰かに……似ているような気もしますが。これは、誰なのですか?」
「いまの段階では、ある少女としか言えません。ヒサヤさんは?」
実は、プリムローズさんはオマケで、本命はヒサヤのほうだ。
「……見覚えありません」
まあ、だろうな。もしかすると「当の本人」かもしれないしな。
「それでは、こちらの二人の少女は?」
ヴァーチャルにロリ化した、女王陛下の『大事な秘書』ロザリンダ嬢と、『乙女神官』ロザリンダ嬢だ。設定年齢は「7歳」なので、どことは言わないけれど……「ぺったんこ」だ。なお、ご本人たちの許諾は得ていない(笑)。
「あっ、ロザリン!」
そう叫んだのは、プリムローズさんだった……え!? なんで?
「……プリマ・ハンナ様?」
「失礼。私は、この二人と知己でしてね。特に『王宮』のロザリンダ様とは懇意にしておりまして、つい」
で、遠慮しないで「愛称」と呼べと言われてんだそうだ。
そんな理由かよ、ビックリしたがな。
「そうなんですの? あ、いえ、そういったことではなく、これを見て、そのロザリンダ様の幼いころの姿と断定できたのは、どこいらへんですのん?」
某アニメキャラみたいに、JS、JC、JK、JD……と4タイプあるのに、まるっきり「髪型」が同じってワケではないよ?
(『青○ブタ野郎』の『牧之原○子』だべか? して、あの子も『姫カット』でなかったべか?)
よくわかったな? たしかに「○之原翔子」のことだよ。
そんで、確かにあの子は見事なまでに「姫カット」なのだけれど、側頭部に「編み込み」があるので、残念ながら「黒髪ストレートの姫カット」ではないのだった。
「どこで断定? そうですね、強いて言えば」
「違います。あの二人は、こんな感じではありませんでした」
プリムローズさんの言葉を断ち切ったのは、ヒサヤだった。
「ハイ?」
「これはまるで、現在のあの二人を、ただ小さくしたような姿です」
まあ、その通りなんだけどさ。
ならば、君は本当の「ふたりの当時の姿」を知ってるのか?
「ロザリンはもっと『ふくよか』でしたし、ロザは『やせっぽっち』でした」
「「…………」」
ヒサヤの言葉に、俺とプリムローズさんは沈黙した。
てか、ふくよか?
ふくよか、って、きょうび聞かねえな(※『リゼ○』のス○ル君だ)。
俺の『脳内言語変換システム』は色々やらかす欠陥の多いシステムだけれど……当の本人が理解できない言葉を提示しないでほしいな。
で、日本語の「ふくよか」って何?
なんかのキャッチフレーズ? 「福岡よかとこ一度は来んしゃい」とか? そしてこれ、福岡方言として合ってるのか?
(『ふっくら』してるってことだべさ。『葬送のフリー○ン』の)
ああ、わかった。みなまで言うな。
でっかいハンバーガーとかドーナツを両手食いする子な。
ついでに言うと、俺の「お気に」は、「重くない」と言われて、月をつかむような仕草をして、絶望の表情のまま塵になって散ってしまったよ(泣)。
(『おばあちゃんパンツ』の子だべか)
ちげーよ、「ドロワーズ」だよ。
ちなみに、『巫女選挙』を一緒に戦ったプリムローズさんの親戚の子は、ドロワー・ヅ・ロース嬢だよ。そういえば、あの子とも久しく会ってないな。
それと、ふっくらしてたって言うんなら、『呪術○戦』の虎○くんは、見た目が大きく変わってたのに、一目見て中学時代の同級生の「小○さん」と断定してたよ。あれも、どうやってだろ? 10点満点もらってたよ。計20点。
(あたしは、あの子が『事変』に巻き込まれるものだと思ってたべさ)
あ、俺も俺も。
『地球』の日本の本州の東京の某所が、とんでもないことになってたもんな。衝撃で誰かのヅラが飛んだり……。
ちなみに、『事変』は九州でもあったよ。明治十四年だけど。
「……『聖女』さま?」
「あ、ハイ」
ホノカと雑念の飛ばし合いしてて、表面上は長いこと黙り込んでしまっていたので、ヒサヤに不審がられた。
とにかく、この子に「三人ロザリンダ」の『記憶』……しかも、愛称「リンダ」からの視点での『前世の記憶』があるというのなら。
もう、こうなったらダイレクトアタックだ。
そうであるならば、あのセリフを言うしかない。
「ヒサヤさん。貴女が『二の姫』さまだったのですね?」
◇
「私が……『二の姫』?」
いきなり言われ、とまどっているようだ。
「いえ、貴女自身が亡くなっているはずの『二の姫』その人というワケではなく、その姫に宿っていた『黒い星』を継承しているのではないか? ということですの」
実は生きているのに、すでに亡くなったとされているのは、何らかの事情があって、その人の「生命反応」が、一時的に停止していたのかもしれない。
例えば……瀕死の重傷を負って仮死状態に陥り、「疑似的な死」を迎えていたのかもしれない。
その際、『アアス』の生きとし生けるものすべてに取り付く情報収集端末である「黒い星」が、その状態を「生命の最期」と誤認し、被着者から離脱してしまい、それがその後に「新しく生まれた生命」に固着してしまっているのかも知れないのだ。
それが、12年前の『王都大火』が引き起こした混乱の中で起きた事ならば……そして、ヒサヤの実年齢は「11歳」だ。
「『黒い星』?」
「『守護の星』の一種です。それが人間の身体に付着して、変態したものが、いわゆる『魔法の黒子』です」
ちなみに、「科学の黒子」は変態だ。
そんなにハッキリ言いきって大丈夫? と言われそうだけど、『T』の次回予告で、本人がそれを隠してないのがハッキリしてるので大丈夫だ。
うん、シリアス展開に耐えられない俺様が、またまた逃避的にアニメネタに走ってしまったようだ。
「というわけで、ヒサヤさん。貴女の『魔法の黒子』を、あたくしに見せてください。首筋にあるばずです。それを見せてくださいな」
どうせ、首筋だ。
後頭部の生え際近くなので、そんなえっちい事はない。
「……どうぞ」
屈むような姿勢で、ヒサヤは『雪焼け除け』をズラして、首筋を見せた。
人体の真ん中「心中線」から、すこし外れた右側に、小さな黒子があった。
(『光眼』。受光。顕微鏡モード。拡大・拡大・拡大……)
……あれ? 「★」が無い。
メラニン色素が集まったような、ただの、ふつうのホクロだった。
「ヒサヤさん……貴女の『魔法の黒子』はどこにありますのん? 『女王国』で生まれた子は、みんな」
「私、生まれたのは『女王国』ではありません。『西の七国』です」
なん……だと?
「西谷……西村……西の……アカネ?」
「アカネとは言ってません」
その時だった。また邪魔がはいった。
「ようようようようようよう」
ラッパー? あるいはDJ?
「ようようよう、舐めた真似してくれるじゃねえかよ」
誰、このチンピラ? モブAくん?
でも、未来人ホノカによると、単なる地味なモブキャラだと思ってたキャラが再登場して、そこそこ暴れる作品もあるそうだよ。
「この地下街は、俺たちのシマだぜ。勝手に入ってくるんじゃあねえぜ。滞在料を払ってもらうぜ」
それ、「ドメイン」とか「領域」みたいなもの? 意味同じ?
というか、ここの「地下街」って、誰が管理してんの? 『女王国』じゃあないの? 無法地帯化してるの?
「……(すっ)……」
一方、プリムローズさんが無言のまま右手人差し指を立てている。
女性が男性に対して『護身魔法』を使う場合の、事前の警告というか「予備動作」だ。使われずに、警告だけで終わったのを俺は見たことがない。プリムローズさんは、やる時はやる女性なのだ。
「おおっと、甘いぜ。ここの照明を見てみな」
「このオレンジ色っぽい照明って、冬季用の『アカリさん』の光?」
実は、地下街のこの一画だけ『水灯』の色味が青白くない。
でも、茜色と呼ぶには黄色味が強いので、オレンジ色なのだ。
なお、青白いのが『ヒカリちゃん』で、紫外線出すのが『ユカリさん』だ。
「『おれんじ』? なんだそりゃ? これはな、『夕焼け空の魔法停止現象』を引き起こす光なんだぜ? 明日の『神前重量挙げ大会』も、イカサマが出来ないように、この照明が使われるんだぜ。『魔法』が使えると思ったら、大間違いだぜ」
なんか説明的だ。
ならば言おう! 『ギルティ○ラウン』の主人公は、桜満と涯だぜ。
オウマ違いですわ! ロストクリスマスですわ! でも、「シュウ」と「ツツガミ」と呼ばれることが多かった印象があるのですわ!
そんで、「諏訪湖」は「大町市」外だぜ。
あの湖は、「木崎湖」って言うらしいぜ。
「ようようよう」
ああ、めんどくせえ。
(『光眼』。発光。レーザー眼。魔針眼モード)⇒俺。
「あのう、お兄さん。『静電気』みたいに、パチパチするかもですわよ」
(チクチクチクっと、三点バースト発射)⇒俺。
「ぐ!? ぐああっ!」
ほぼ同時に弾着する3連射だ。
ヒサヤと、プリムローズさん。そしてッ! この俺の怒りだッッッ!!
「さ、今のうちに立ち去りましょう」
「「……え、ええ」」
三人で、オレンジ色の『水灯』の下から遠ざかる。
「ここからならいけるかな? 護身! ★電撃っ☆」
プリムローズさんが『魔法』の「発動句」を唱えると、
ドサッ――
向こうで、男が無言で崩れ落ちて床面に倒れた。
「「…………」」
俺とヒサヤは、言葉もなかったよ。
……マジカルでリモートな「スタンガン」で、トドメさしやがったよ。
てか、ホントに■んでないよな?
「あのー、プリマ・ハンナ様?」
「彼のやってる事の方が、無法で不当なのです。だから、『護身魔法』が発動した。気にせずとも平気ですよ」
さらっと、そう言った。
◇
「また来たよー!」
『将棋愛好会』に舞い戻った。
俺だけじゃなくて、プリムローズさんとヒサヤも一緒だ。ほかに行く当てが無かったのだ。
「ちょうどよかった! あの『ボックスティッシュ』は『聖女』さまが? あれを、五万個ほど用意できませんか?」
「出来るか!」
鈴阿弥さんから、無茶苦茶なことを言われたので、即座に拒否したよ。
出来っこないよ、どこのどんなセイシ工場だよ? あ、「製紙」か。
「『聖女』さまは、『神授祭』の『私的な祈願』が2回できるのでございましょう? なにとぞ『ボックスティッシュ』を!」
「ヤだよ!」
まさか、鈴阿弥さんが、こんなにも「ボックスティッシュ」に拘る人だとは思わなかったぜ。あと、日本語だと「ティシュ」とか「ティシュー」とか表記があいまいだぜ。今回は「ティッシュ」で通すぜ。
「えっ!? セシリア? どうしてこんなところに?」
ヒサヤが、鈴阿弥さんとセシリアがそっくりな事に気づいてしまったようだ。初対面だと、本気で間違えてしまうレベルで似てるのだ。なお、プリムローズさんは以前会ってるので、特に気にしてないみたい。
「セシリア? 『○聖女と●牧師』の?」
そして、鈴阿弥さんは、アニオタな『前世の記憶』持ちなのであった。
異世界人相手に、いらんコト言う人なのであった……って、俺もか?
(『白聖女』の友人ヘーゼ○ッタの中の人は、『それでも○は寄せてくる』の、自称・将棋部部長のセンパイも演じてたりするのだべさ。ここが『将棋愛好会』だけに)
だけに、と言うわりには「つながり」が希薄だ。牽強付会だ。
ちなみに、女性の「中村さん」だそうだ。
(『ウ○娘』の『2nd』と『3rd』のあいだの『2.5』というべき『ROAD TO THE T○P』では、中村さんは『ナリ○トップロード』を演じてたのだべさ)
うん、まあ、「競走馬」って言ったら、牧場の多い「北海道」だかんな。
またまた、そんな雑念を交わしているあいだに――
「きっと人違い、なのではないかしら?」
「セシリアでは……ないのですね。彼女も今『巫女見習い』ですものね」
ヒサヤが、鈴阿弥さんとセシリアが「別人」であることを理解したようだ。
「以前にも、『聖女』さまから、私に娘がいるのではないか? と問われた事がありましたが、それが、そのセシリアという名なので?」
今度は、鈴阿弥さんが食いついてしまった。
でもな、セシリアには鈴阿弥さんの『ふぉとぐらふ』を見せているので、彼女の存在はすでに知ってるし、直接会わせてしまってもいいような気がするな。
「今度、三者面談みたいにして会ってみます?」
「だが断る」
「…………」
『前世の記憶』持ちの相手すんの、めんどくさい。
◇
また夜間飛行だ。
まだ未成年のヒサヤを、遅くまで引き留めるのはマズいという事で、俺が『巫女見習い』たちの寄宿舎まで送り届ける事になったのだ。
『地球』の日本ならば、補導されちゃうくらいの深夜だしな。
シンデレラガールの帰宅時間には、まだちょっと早いけれども。
(んあ? 『アイドルマ○ター○ンデレラガールズ』の話だべか?)
ゴメン、観てないっス。
なので、誰が誰とか、まったく知らないっス。申し訳ないっス。
(『逮捕』とか言うから、あたしは、てっきり、早苗ちゃんの話かと思ったのだべさ)
イヤ、そんなことは言ってない。
そして、そんな名前の「幽霊」とか「IT大臣」とか「女子柔道部員」とか「幽霊?」とか「凸守」なら知っているけれども。違うだろうし。
(早苗ちゃんは、元『警察官』で『アイドル』だべさ)
なにその前職!?
でも聞いたら、中の人は「和氣あず○」さんらしい。
うん、ちゃんと覚えた。もう忘れない。もう間違えない。
それはそれとして、眼下の『王都』は、未だに明るいよ。
いいかげん、もう深夜なのに、まだはしゃいでる連中がいるんだな。
――翼よ、あれがパリピだ。
(『翼よ、あれがパリの灯だ』。大西洋をはじめて飛行機で無着陸横断したリンドバーグの名言ですね)
カオリちゃんだ。
寝てたはずなのに、我慢出来なくなって、つっこみ入れてきたらしい。
そして、とても説明的だ。将来は『神官女』に向いてそうだ。
でも、それには「正式な結婚」が必要だ。その点どうなんだろう?
(やっぱり、わたし、もう寝ます。おやす――――)
どうせ我慢出来なくなったら、またつっこみ入れてくるだろうな。
俺が、ずーっとボケたおしてたら、カオリちゃん「不眠症」になっちゃうかも。
そんなことを考えていると、ヒサヤの声がした。
「……綺麗ですね。『神授祭』の夜景」
『★マジカル・ライトプレーン☆』の後部座席から、そんなつぶやきが聞こえてきたよ。
都合よく二人きりで、ほかに聞かれる心配もない。
『二の姫』ロザリンダ王女の「黒い星」を継承している……かもしれないヒサヤに訊いてみる。
「ヒサヤさん。貴女は以前から、自分のことを『前世の罪人』などと言ってましたが、それはどういう意味なのです?」
俺が訊くと、彼女は物憂そうに小声で答えた。
「『聖女』さまは意地悪です。以前、お話しましたのに」
「……え?」
イヤ、聞いてない。てか、その『聖女』は俺じゃない。
おーい、カオリちゃーん!
(――――)
『★伝心☆』切ってるし!
ま、後で詳しく聞かせてもらうさ。
◇
「どこ? こっち?」
「向こうの建物の集まりです」
道を知らないタクシードライバーのごとく、乗客であるヒサヤに何度も位置を確認しまくり、オドオドと寄宿舎近くに降りた。ところで、小戸川さんて、カバだっけ? セイウチだっけ? 俺、『オッド○クシー』はTV版しか観てないんだけど、めっちゃピンチのところで終わってた気がするな。
そんで、「寄宿舎」って言うから、『神殿学舎』の近くにあると思ってたら、めっちゃ遠かったよ。『巫女見習い』たちの寄宿舎。
『全知全能神神殿』って、やたらと規模がデカくて広大だけど、その端っこの『方舟の群れ』の中にあったよ。こんなとこから、『大馬場』まで歩いて来たのかな。
寄宿舎の前では、同じ年頃くらいの『巫女見習い』の子たちが何人もいて、ヒサヤの帰りを待ち続けていたようだった。
ヒサヤ自身にも、よく分からないような衝動に突き動かされて、寄宿舎を「脱走」したんだし、他の子にも心配されてたんだろうな。
その子たちに謝るヒサヤに、誰かが頭から毛布をかけて、そのままみんなに囲まれて中に連れて行かれたみたいだ。
うん、なんか、慕われてるようで、よかったよ。
それを見届けてから、こうも思ったよ。
この俺の「陰ながら、あたたかく見守るお姉さまポジ」はなんなの?
◆
次回。神授祭 3日目……たぶん。




