241☆シン最終章[13]◆神授祭 2日目⑧
(今夜はダメだよ。門限すぎてるし、お義母さんもいるから)
…………そっか。
ミーヨとラウラ姫が滞在している『王立産院』に寄ってこうと思ったら、なんか妙な感じに断られた(笑)。
てか、その「お義母さん」は、俺のママンだ。スピンナさんだ。
あそこって、男子禁制で、女性じゃないと入れないから、女体化してる今が好機と言えば好機なのに。
そういえば、そこで「男の子」が産まれたらどうなるんだろう? 強制退場?
(さすがに追い出されないよ)
でなきゃ、困るよな。
で、『王立産院』は「◇」のカタチをしてて、建物に囲まれた真ん中に、そこそこ広い中庭があるから、『★飛行☆』でなら降り立てる気がするな。
(でもね、侵入者を感知する『魔法』が張ってあるんだって)
『魔法』による結界的なものか? そこって、雨や川は通すの?
(……川?)
ネタだ(笑)。
(雨と雪は素通り。中庭にも、雪が積もってるし)
どんな『魔法』なんだろう? ラーニングしたい。
(じゃあ、そろそろ切るね。おやすみなさい)
うん、おやすみ。
◇
「うううっ、さむっ」
いつの間にやら気温は低下し、『将棋愛好会』の外は寒かった。
「召喚! ★旅人のマントル☆」
寒さに我慢出来なくなって、またつまらぬモノを召喚してしまった。
到着した『旅人のマントル』の「頭巾」を被る。耳が冷たいのだ。耳が。
ホノカたちは寒がって、外に出ての「見送り」はしてくれなかったよ。
北海道で生まれ育った『前世の記憶』を持つホノカオの二人に、「寒い冬を乗り切るコツ」を訊いてみたら、「寒いときは外に出ない」って返されたよ。北海道の建物って寒冷地仕様で断熱性高いもんな。あと、沖縄では逆に「暑いときは外に出ない」って聞いたことあるよ。
なんのために『家』があるんだ? って観点からすると、それが声……それが正解で、それが真理なんだろうけども。にしても、インドア志向だなあ。
(ジン君は、『道産子ギャル○なまらめんこい』は観てないのだべか?)
鈴阿弥さんから受け取った「大福帳」には書いてあった気がする。
でも、未だ観てないよ。2024年冬アニメでしょ?
タイトルから察するに、舞台は「北海道」と見せかけといて「東京」とか?
(どこの『花嫁』だべか?)
俺の先輩は、『瀬戸の○嫁』と聞くと、「ワンタン」と「天丼」と「味噌ラーメン」が食いたくなるらしいよ。ホントに謎な人だ。
あと、個人的に好きな某・声優さんのお名前を、「まさみさん」だと思い込んでいた時期があったよ。ご本人ご出演の動画で、ご自身が名乗っておられるのを聞いて、間違いだと気づいたよ。
(したら、瀬○麻沙美さんだべか?)
だから、「某」って言ってんだろ!
で、俺は北海道には何度か行ってるから、地理はだいたい分かるよ。
その『なまらめんこい』の舞台は、どのへん?
(道東の『北見市』だべさ)
…………。
(『サロマ湖』の南だべさ)
俺、「網走」からオホーツク海を右手に見つつ、「猿払」まで行ったことあるな。
(したら、行ったこと無いのだべか?)
……ごめんなさい。行ったこと無いです。
(あたしも通り過ぎたことはあっても、行ったことは無いのだべさ)
おい! 「通り過ぎただけ」とか、地元の人がいちばん怒るやつだぞ?
でも、ホノカは「なまら」って使わないよな。なして?
(元は『新潟弁』で、若い世代ではあまり使われなくなりつつある、って『○ィキペディア』に書いてあったのだべさ)
……そんな理由で?
◇
「祈願! ★マジカル・ライトプレーン☆」
人目につかないように、真上にバーチカルクライム(※垂直上昇だ)して、またぐるぐると「トンビ機動」で『王都』を俯瞰する。
年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』の夜景を堪能する「夜間飛行」が楽しくて、そのまま『王都』上空を遊弋した。
でも、こういうの、一人じゃない方がいいよ。
来年は、みんなで見たい。飛行船『空の浮き舟』を貸し切って、ゴンドラをパーティ会場みたいにして、ナイトフライトしたいよ。夜の遊覧飛行。
(なんだかパリピみたいですね。なんだか爆破したいです)⇒カオリちゃん。
……イヤ、君も「みんな」の中に入ってるから。
(がびーん!)
なぜか、昭和なテイストで衝撃を受けているカオリちゃんなのであった。
そんで、爆破はもちろんのこと、飛行船内では発砲もダメだからね(泣)。
あくまでも、娯楽目的の遊覧飛行だからね?
(なかなかいいアイディアだべさ。さっそく鈴阿弥ちゃんに指示を出すべさ)
人の夢で、ショーバイしようとすんな!
……でも、みんなで、空を飛ぶ……か。
『進撃の○人』でも、飛行船やら飛行艇やら○の○○で空飛んでたよ。
彼は……乗ってなかったけどな。
オニャンコ○ンさんの気合がすごかったよ。ラストまで生きてたしね。
(オニャン○ポンさんの生■について語るのは、ネタバレでないべか?)
○ニャンコポンさんは、まあまあサブキャラだから、きっと大丈夫だよ。
(オ○ャンコポンさんて、ただ言いたいだけ、みたいになってるのだべさ)
そりゃ言いたいよ、何度でも。なんか言ってて楽しいもん(笑)。
◇
♪といんくる、といんくる、りる、すたー。
心の中で『きらきら星』を歌ってみる。
(ああ、『炊飯器』の『炊きあがりの音』? あるいは『灯油ヒーター』の『そろそろタンクが空だよ音』ですか?)
カオリちゃん、ぜんぜんロマンティックじゃねえ(泣)!
そんなん言うんなら、眼下に『光のパンツ』が見えてるよ。
(なんですか、それ?)
イヤ、その、『北の街区』にある『三角広場』がにぎやかで「光の密度」が高くてさ。それがまた逆三角形の「▽」で、しかもその先端の欠けた台形になってるから、もう「光のパンツ」みたいに見えるんだよ。
(ああ、夏にもありましたね。『天空のパンツ』)
うん。
しかも、ここって今「おまつり」の「屋台街」とか「露店街」みたいになってるから、そのラインが特に明るくて、言ったら「光のしましまパンツ」に見えるよ(笑)。
その『三角広場』の上辺にあたる『一の小宮殿』の、さらに北にあるデカい『人造湖』は、「光に縁どられた黒いハート」に見えてる。湖上には光はない。あそこは夜間航行禁止なのだ。
『とても寒い冬』が発生していたら、『人造湖』は完全凍結していたそうだ。
けれど、そんな事にはならない。この俺様が、阻止したったのだ。
でも、凍ってた場合には「巨大な白いハート」とか。
それはそれで、ロマンティックだったかもしれない。
(…………)
無言なのに、すごい冷気が伝わってくるんですけど?
そう言えば、某アニメの某「一次試験」で、湖を凍らせてた「三級魔法使い」がいたけれど……正直、君がやるんかい! って思ったよ。あの後、走って逃げたのは「魔力探知」されないため? めっちゃ走りにくそうなブーツ履いてるのに。で、あの子の名前は、なんて意味?
(『雪崩』でなかったべか)
ここで、ホノカがまた加わった。
一時的な念話の断絶は、ある『魔法』の「仕様」なのかもしれない。彼女は『おトイレ』に行ってたのだ。
(二日ぶりで、すっきりしたのだべさ)
……だから、言わんでいいがな。んなことは。
(ところで、『雪崩』って?)⇒カオリちゃん。
キャラの名前っス。ドイツ語での「雪崩」っス。
あと、その子とペアの子は知ってるかんね。ふんわり言うと『水入れる器』? 『水差し』? で、二人とも、なぜかニーハイな白いロングブーツだよ。
(わたし、そのアニメ未だ観てないので、すこし話をもどしますけど……『白いハート』って、『太陽系』の『冥王星』みたいじゃないですか)
ああ、だよねー。そんな画像を見たことあるわ。
で、『冥王星』は……「プルートー」?
『太陽系』の「惑星」の名をもつ「セー○ー戦士」のなかにはいるの?
(はい、いますよ。『プルート』ですけどね。『冥王せつ○』ちゃんです)
プルートとせつな。どっちが本名なんだろう?
でも、『冥王星』は「惑星」じゃなくて「準 惑 星」なのに。
(それを言ったら、メインヒロインは『衛星』だべさ)
そりゃそうだな。
そんで、『美少女戦士セー○ームーン』は1990年代だし、『冥王星』が「準惑星」になったのは、2000年代……2006年とかそのへん? あるよね、そういうの。時代の変化というか。
(して、『白いハート』があるのが分かったのは、探査機『ニュー○ライズンズ』が『冥王星』に最接近した2015年のことだべさ)
どことなく、中学校の英語教科書的な探査機だよな。
(エ○ン・ベーカー先生が載ってたのは、『ニューホライ○ン』だべさ)
俺、下着姿のエレ○先生見たこと……って違うがな!
えーっと、話を戻すと……『冥王星』な。
(その近傍に、『タナトス』が停滞してそうですよね)
(『ガミ○ス』の某・爆弾の発射基地があるのだべさ)
メニアックなことを言うと、『青春男○電波女』の「藤○エリオ」が抱っこしてたのが「冥王星さん」だ。お母さんは「女女さん」だ。「ジョジョさん」じゃなくて「ねねさん」だ。主人公の青春はポイント制だ。
『白いハート』が見つかる以前の話だし、今となっては、色々となつかしー。
でも、普通に言って「ハート」なら、色は「ピンク」か「赤」だよ。
(ある文化祭で発動された『作戦』では、ピンクのハートが乱舞してたべさ)
俺も、某・生徒会長みたいな、なにかウルトラでロマンティックなこと企画したいな。大がかりなイベントでの「素敵な演出」って大事だよね?
(…………)
カオリちゃんが、陽キャ的行為に対して、あまりにも否定的すぎる。
日向と日陰。両方を演じる……あれ?
……んんん?
光が無くて、逆に目立つ広大な場所がある。
「……ナニアレ? まるで……」
『王都』の夜景に、異様で不自然なものを発見した。
気になる。
ちょっと寄って、なんなのか確認しとこう。
◇
「祈願! ★着陸☆」
ズサ、ズサササササ――
MSではないよ?
てか、我ながらメニアックだな。「ズ○」とか。
着陸地点に「雪」が積もっていて、着陸後の制動距離が長引いたのだった。朝方の雨が止んだあと、知らん間に雪が降っていたらしい。
「★解除☆」
飛行機の形状に成形されていた『魔法』のキラキラ星が、ふわふわと散っていく。
で、すぐさま「無敵のバリアー」を展開する。
「寒っ! 祈願! ★不可侵の被膜っ☆」
一瞬だけど、めっちゃ寒かった。
『魔法』が発動されると、「ミーヨの愛」が、俺を守ってくれた。
「…………」
誰からも「つっこみ」が来なかった。ま、いいけど。
で、これは一体なんなのだろう?
空から見たら、「おまん……じゃなくて、『魔法』の「増幅円」みたいな奇妙な円形模様が、何らかの発光体で描かれていたのだ。ミステリーサークルにしては、下品なカタチだしな。
「これって『魔法陣』? イヤ、『魔法円』?」
にしては、規模がデカい。
……まさか、「大規模広域魔法テロ」か?
現在『王都』には、「水素」の詰まった「気球」がいっぱい浮いてるし、アレを同時多発的に爆破されたら……それこそ、12年前の『王都大火』の「二の……イヤ、いいのか「二の舞」になるぞ?
そんなことを考えていると、背後から誰かに話しかけられた。
「もしや、『聖女』さま?」
あ、声で分かった。
まさかの人物との「再会」だった。
なぜ、君がここにいる?
「おひさ……いえ、ちがいますわね」
『聖女』ヨハンナとその人物は、ちょい前にも会ってるらしいのだ。
だから、「おひさしぶり」は禁句なのだ。そんな「縛り」があるのだ。そんな「縛り」があったら、「陽太郎」先生も難儀するだろうに。
(誰なんだべか? 陽太郎先生て)
そんなこと、俺に訊かれても困る。
てか、こっちの会話に集中させて!
「『巫女見習い』ヒサヤ?」
「はい」
すんごい久しぶりだけど、声ですぐに分かったよ。
冬季用の白いヴェール『雪焼け除け』の奥から聞こえたその声は、俺が名付けた元・獣耳奴隷の「ヒサヤ」の声だったのだ。
◇
「…………」
無言のまま、ヒサヤはこちらに近づいてくる。
だがしかし、彼女の方は、どうやって俺を『聖女』ヨハンナと見破ったのだろうか?
「よく、あたくしと気づきましたわね?」
「はい、お尻のカタチに見覚えがありました」
「……そうなんですのん?」
だが、それはおそらく「うそ」だ。
俺はいま、白い『夜の服』(※寝間着です)の上から、『旅人のマントル』(※寒いので『★召喚☆』しました)を羽織っているのだ。足首まで覆うデカい「マント」だ。「おしりのカタチ」なんて、分かりっこないのだ。
「『聖女』さま。椅子に座るような姿勢で空を飛んで、こちらにいらっしゃいましたでしょう? それで、お尻のカタチがはっきりとわかりました」
「…………」
それは『★マジカル・ライトプレーン☆』の「仕様」なのだ。透明な魔法の軽飛行機なのだ。
そんで、俺の……というか、女体化した状態の「ヨハンナちゃん」の「お尻」って、小さくて引き締まってるらしいのだ。俺が俺だと、「後ろ姿」でバレてしまうのだ。背後から呼び止められることが多いのだ。特徴ある「お尻の小さな女子」なのだ。
(『キューティー○ニー』みたいだべさ)
でも、上は「ボイン」じゃないっス。そこそこあるけどね。
あと、これは言っていいのか……『癒し手』でもある『巫女見習い』ヒサヤは、この世界の「病院」にあたる『施薬治療院』では、「*門科」のような部署につとめている。なので、自然と「お尻」に注目してしまうらしい。一種の職業病か?
でも、なんで俺の「お尻は小さい」のだろう?
某「お兄ちゃん」みたいに、女体化にともなって、年齢が若返ってるんじゃあないと思うけどな。
(男性から女性に性転換してるから、骨盤が未発達だから……じゃないんですかね? わたしの推論ですけどね)
カオリちゃんは、「お尻の小さな理由」を、そんな風に考えているらしい。
彼女のほうは、現在そうでもないからな。
『神造の双子』って言っても、その後のなんやかんやで、差異がゼロってワケじゃあないのだ。
『シャングリラ・フ○ンティア 』の「サイガ-○」は、ワケさんなのだ。
(ワキ!!)
(ワキ!!)
未だかつてない勢いで、ホノカオからつっこまれた。
なに、どったの?
(和氣あず○さんだべさ)
え!? ワキ? ……ワケじゃなくて?
イヤ、だって「和気清麻呂」っているじゃん。
(字が違うじゃないですか? それに、そっちでも『和気あいあい』とかあるじゃないですか?)
…………そうだったんだ?
好きな声優さんなのに、ずっと間違えてた……。
(いったい何人好きな声優さんがいるんですか? このシュヴァイン!)
(『オールスターズ』よりも多いんだべか? ぶひぶひブタ野郎だべさ)
なお、「部費」を「ぶたの貯金箱」に貯めてたのは『ハル○カ』だ。
それと「部費」が増えて「ブヒブヒ」言ってたのは『けい○ん!!』だ。
ならば!
お詫びの意味を込めて「スペシャル企画」を発動だ!!
◇
年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』。
その最中に、彼女と「再会」とはな。
ただ、時間と場所を考えると、あまりにも不自然だ。
ヒサヤは、「冬用平服」の上から大き目の「肩マント」を着てる。頭部全体を覆う『雪焼け除け』は、お顔の保温と保湿の効果もありそうだ。あと、足元はブーツっぽい長靴履いてる。
これらは、いちおう『巫女見習い』の冬季の「制服」みたいなものだ。
でも、そんなに本格的な防寒装備じゃあない。
深い考えもなく、フラッと出てきた感じだ。よく寒くないな?
子供は風の子ってヤツか? シルフの加護でもあるんか? 戦闘妖精か? ちがう「雪風」なら、『冥王星』だぞ?
「ヒサヤさん。貴女こそ、どうしてここに?」
不都合なことを訊かれないように、こっちから質問だ。
「実は……理由あって、寄宿舎を脱け出して来ました」
「ワケあって? 寄宿舎から? 女子寮じゃなくて?」
わきあがるような勢いで、ヒサヤは語りだした。
「ずっと以前から、心にひっかかりがあったんです」
未だに、この子の過去は不明だ。
彼女は、やなせまい……じゃなくて、やるせないような思いを吐露した。
「ここで、誰かと約束があったような気がして……ここで、誰かと会わなければならないような気がして。迷いながら、ここまで流されるままに」
誰かと会う約束? そんな理由で、俺みたいに「脱走」したの?
こんな冬の夜遅くに? フラッと、流転の果てに?
『王都』は現在、年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』の最中。
そんで、この時期、実は『女王国』でも、恋人同士のクリスマスデート的なことが行われているらしいんだよな。聞いた話だと、この季節限定の特殊なジュエリーとかも贈るらしいよ。
(ならば、爆裂魔法の出番ですね?)
およしなさい。ネタ魔法なのにネタじゃなくなる。
俺はカオリちゃんに苦情を言ったよ、思念(※間違ってます)で。
かけるんなら泥か? じゃなくて! 「愛の魔法」とかにしなさい。ある魔女のは、別称がとんでもなくヒドいけれども。
「どうしても、ここに来なくてはならない……という『前世の記憶』に導かれているような……」
明快さに欠ける言い方だ。
自分でも、よく分かってないらしい。
まだ幼い子だし、その原因をしすべる……イヤ、知る術はないのだろう。
「誘われるように、ついついここに来てしまったのです。どうしても、その衝動を抑えきれずに」
そこまで言って、俺に判断をゆだねるように言葉を切ってしまった。
参るな。俺はどうしたらいいんだ?
「『前世の……記憶』?」
でも、誰のだよ?
それは、君の『前世』ではないよ。違うかんね。
君の、その身に宿る「黒い星」に記録された「誰かの記録」なんだよ。たんなる「データ」に過ぎないんだよ。
千古の……万古の……あるいはもっと古い太古の昔からある、不死がわりに、永遠のような存在になるための情報収集端末「黒い星」に記録されたデータ。
でも、なんだろう?
もしかすると、「黒い星」から彼女の「脳」へと、「記憶の転写」みたいな現象が起きてるのかもしれない。
その現象は、夜寝てるあいだの「ゆめ」……レム睡眠の時に起きるのかもしれない。
月みたいな、渚の潮の満ち引きのような、波のようなリズムに合わせて。
それが、脳内で何かをカナデて……奏でてる?
検証のため、ハツカネズミとかで実験するベッキー……イヤ、そんな生き物は『アアス』にはいないな。なお、ぬるぬるした日陰の生き物であるアレもいないので、個人的にたすかってる。イヤ、そういう話じゃあない。あと、「ベッキー」って「レベッカ」の愛称なのか?
(『ハツカネズミ』じゃなくて、『モルモット』でしょう?)
そんなこと言われても、現在「スペシャル企画」発動中なんだってば!
……というかアレだな。
実はここ、『東の街区』の大半を占める広大な王立放牧場『大馬場』だ。
12年前の『王都大火』の後、残骸の撤去後も再開発されずに更地のまま放置された土地だ。
季節によっては、白詰草(※クローバー)の白い花くらいは咲くことはあるだろうけれど、ふだんは青々した草だらけの「原っぱ」だ。
それが、今は冬なので「雪原」ぽい。
雪明りと、街明かりで、この場に立ってみると、上空から見たような暗さはなかった。昼間なら、ピュアホワイトでピュアミルキーだろうな。まさみ……まさに。
以前、ラウラ姫のひいお祖母ちゃんの『先々代の女王陛下』が在りし……あ、まだ生きてるよ。オオババちゃん。「在りし日」とか言ったら怒られるよ。とにかく、その時にはセシリアまでいて、三人で一緒になんかやってたな。
その件に関連して、オオババちゃんの娘である先代の女王陛下……なんていったけ? 『女王国』の王家には、同じような名前が多くて困るな。
関係ないけど、アニメの王女様に「シャルロット」ってめっちゃ多い気がする。別バージョンの「シャーロット」とか含めると10人以上いる気がする。
ま、それはそれとして、その先代の女王陛下の「黒い星」が、一時的に『化物』に宿って、俺に「遺言」みたいな言葉を遺してるのだ。
「『神授祭』の贈り物は、例の場所に隠してあるゆえ、探し出して開けてみるがいい」――と。
そのメッセージの宛先は、この子……ヒサヤじゃないと思うんだけどな。
『二の姫』ロザリンダ王女の「実体」は、生きているかもしれないんだし。そうであるならば、本当の受取人は、そちらだろう。
縁もゆかりもない「他人」の『前世の記憶』から引き起こされる衝動的な行動……って、つまりは俺とかホノカオが、強力に「アニメ観たーい!」と思ってしまうのと、同じような事なんじゃあないの?
それに従って、実際に行動するかどうかは……それはまあ、置こう。
「ところで、この『魔法』の『増幅円』はなんなのかご存じですのん?」
上空から見下ろして、人家の明りのない広大な暗黒ゾーンに、なにかで発光してるデカい『増幅円』を見つけて、なんだろう? と思って、ここに着陸したのだ。
「『魔法』の『増幅円』……ですか?」
本気で不思議そうにしてる。
てことは、カノジョとは無関係? それと気づかずに、ここにいたって事か?
そしたら、まさか本当に「魔法テロ」とかに使うような『魔法円』とか『魔法陣』……でも、どう違うんだ、このふたつ? カタチか? 四角いのが「陣」?
あと、まったくの別作品に「○崎の孫娘の紅子」と「箱崎紅○」という、良く似た名前のキャラが……って、まあいいか、それは。
(そんなこと言うんなら、同じ作家さんの別作品に『キツ・チリ』と『キツチ・リコ』ってキャラがいるのだべさ)
それぞれ、年齢も名前の漢字表記も演じてる声優さんも違うのだけれど、見た目の特徴の「真ん中分けの髪型とヘアバンド」がソツ・クリなのだそうだ。
(……謎なのだべさ。あと、あの子は実在してないのだべさ)
『さよなら絶○先生』の原作の事らしいけれど……ネタバレ禁止で。
(あたしは『かくしご○』は好きだども、『隠しごと』は苦手だべさ)
ホノカさん。実は絵も描けて、かなり上手いのであった。
自分が描いた絵を、「これ見ぃな」と言わんばかりに見せてくるのだ。俺は、どうしようもなく「画伯」なので、悔しくもあり、うらやましいのであった。
我々が、そんな雑念を交わしていると――
「……!」
なにかしら、ギクリとして、身を固くしている。なんだろう?
「……夜の、三打点です」
ヒサヤが身に着ける『神授の真珠』に「時報」の感応があったらしい。
あのブルブルした振動って、不意に来ると、本気でびっくりするのだ。
俺は……なにも感じなかった。
こう言うとカッコいー「ファントムバイブレーション」も何も。
事情があって、『聖女』専用の『神授の真珠(金色)』を外してるのだ。
リン、ゴ――ン。リン、ゴ――ン。リン、ゴ――ン。
『永遠の道・南東路』を隔てた『南の街区』から、「時告げの鐘」が聞こえた。
なお、「夜の三打点」は『地球』で言うと「午後10時ちょい前」って感覚だ。
立ち話が、長引いてしまったようだ。
「こんな時間です。未成年の貴女は、寄宿舎に戻るべきですわ」
「いまの私は違うんです。その証拠に……祈願! ★点火っ☆」
彼女の指先に、火花のような火の粉が舞った。
気のせいじゃない。樹の精ドライアドでもない。「怒羅○」メンバーの「○川」と「○山」が左右どっちか分からない。
とにかく、それは……12年前の『王都大火』の後に「年齢制限」が施されるようになった「R15魔法」のはずだ。
俺は……衝撃を受けた。
そんなものを、この子が使えるというのなら、魔法式に被着者のプロフィールが刻まれた「黒い星」の情報がバグってる? たまに、俺の17歳が零歳児あつかいされるみたいに? イヤ、なんかの「欺瞞」? たくみに隠されてる? 別なナニかでマスキングされてるのか? マス○ングさんて、本名判明してるの?
「『聖女』命令です。名乗りなさい。貴女は一体何者なのです?」
俺がきびしく問うと、彼女は微笑み、こう言った。
「私は、ヒサヤ。ヒサヤ・ダイ○クドーです」
うん、いい機会だ。きちんと謝罪しよう。
「……ゴメンな、ノリで変な名前つけちゃって」
「……え!?」
なんか驚かれてるし、フォローも入れとこう。
「と、あたくしの幼馴染の『プロペラ小僧ジン』さんが、言ってらしたのでございマスのことよ!」
「……はあ?」
白い肌で淡い金髪で、明るいライトブラウンの瞳をもつ子なのだ。
かしこい子だし、「ソフィア(叡智)」とか名付ければよかったかもだ。
その時だった。
パキン!
くるみ割りの音じゃなくて、フィンガースナップの音だ。
「きゃあっ!」
「ぐああああっ!!」
上空から強力な光が降りそそぎ、俺たちはその光のチューブによって、UFOによるアブダクションのごとく吸い上げられて、空の高みのスカイハイ、ザ・クライシス・シチュエーション……というのは、まあウソだ。
それと、「年末最大のスペシャルウィーク」を連発していたせいか、俺自身に「なにか変なスイッチ」が入っていたかもしれないことを、ここにお断りしておくぜ。
◇◇◇
(『スペシャル企画』とか言っといて、いろいろ抜けてるんでないべか? 『アイドル○スター』とかは未視聴なんだべか?)
……未視聴です。
(して、実は2023年に、ご結婚されてるのだべさ)
……したら、お名前変わってるかもしれないやん(泣)。
◆
次回。神授祭 2日目⑨。




