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241☆シン最終章[13]◆神授祭 2日目⑧



(今夜はダメだよ。門限すぎてるし、お義母(かあ)さんもいるから)


 …………そっか。


 ミーヨとラウラ姫が滞在している『王立産院』に寄ってこうと思ったら、なんか妙な感じに断られた(笑)。


 てか、その「お義母さん」は、俺のママンだ。スピンナさんだ。


 あそこって、男子禁制で、女性じゃないと入れないから、女体化してる今が好機と言えば好機なのに。


 そういえば、そこで「男の子」が産まれたらどうなるんだろう? 強制退場?


(さすがに追い出されないよ)


 でなきゃ、困るよな。 


 で、『王立産院』は「◇」のカタチをしてて、建物に囲まれた真ん中に、そこそこ広い中庭があるから、『★飛行☆』でなら降り立てる気がするな。


(でもね、侵入者を感知する『魔法』が張ってあるんだって)


 『魔法』による結界的なものか? そこって、雨や川は通すの?


(……川?)


 ネタだ(笑)。


(雨と雪は素通り。中庭にも、雪が積もってるし)


 どんな『魔法』なんだろう? ラーニングしたい。


(じゃあ、そろそろ切るね。おやすみなさい)


 うん、おやすみ。


      ◇


「うううっ、さむっ」


 いつの間にやら気温は低下し、『将棋愛好会』の外は寒かった。


「召喚! ★旅人のマントル☆」


 寒さに我慢出来なくなって、またつまらぬモノを召喚してしまった。


 到着した『旅人のマントル』の「頭巾(フード)」を被る。耳が冷たいのだ。耳が。


 ホノカたちは寒がって、外に出ての「見送り」はしてくれなかったよ。


 北海道で生まれ育った『前世の記憶』を持つホノカオの二人に、「寒い冬を乗り切るコツ」を訊いてみたら、「寒いときは外に出ない」って返されたよ。北海道の建物って寒冷地仕様で断熱性高いもんな。あと、沖縄では逆に「暑いときは外に出ない」って聞いたことあるよ。


 なんのために『家』があるんだ? って観点からすると、それが声……それが正解で、それが真理なんだろうけども。にしても、インドア志向だなあ。


(ジン君は、『道産子(どさんこ)ギャル○なまらめんこい』は観てないのだべか?)


 鈴阿弥さんから受け取った「大福帳」には書いてあった気がする。


 でも、()だ観てないよ。2024年冬アニメでしょ?

 タイトルから察するに、舞台は「北海道」と見せかけといて「東京」とか?


(どこの『花嫁』だべか?)


 俺の先輩は、『瀬戸の○嫁』と聞くと、「ワンタン」と「天丼」と「味噌ラーメン」が食いたくなるらしいよ。ホントに謎な人だ。


 あと、個人的に好きな某・声優さんのお名前を、「まさみさん」だと思い込んでいた時期があったよ。ご本人ご出演の動画で、ご自身が名乗っておられるのを聞いて、間違いだと気づいたよ。


(したら、()麻沙美(あさみ)さんだべか?)


 だから、「(ぼう)」って言ってんだろ!


 で、俺は北海道には何度か行ってるから、地理はだいたい分かるよ。

 その『なまらめんこい』の舞台は、どのへん?


(道東の『北見(きたみ)市』だべさ)


 …………。


(『サロマ湖』の南だべさ)


 俺、「網走(あばしり)」からオホーツク海を右手に見つつ、「猿払(さるふつ)」まで行ったことあるな。


(したら、行ったこと無いのだべか?)


 ……ごめんなさい。行ったこと無いです。


(あたしも通り過ぎたことはあっても、行ったことは無いのだべさ)


 おい! 「通り過ぎただけ」とか、地元の人がいちばん怒るやつだぞ?


 でも、ホノカは「なまら」って使わないよな。なして?


(元は『新潟弁(にいがたべん)』で、若い世代ではあまり使われなくなりつつある、って『○ィキペディア』に書いてあったのだべさ)


 ……そんな理由で?


      ◇


「祈願! ★マジカル・ライトプレーン☆」


 人目につかないように、真上にバーチカルクライム(※垂直上昇だ)して、またぐるぐると「トンビ機動」で『王都』を俯瞰する。


 年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』の夜景を堪能する「夜間飛行」が楽しくて、そのまま『王都』上空を遊弋(ゆうよく)した。


 でも、こういうの、一人じゃない方がいいよ。

 来年は、みんなで見たい。飛行船『空の浮き舟』を貸し切って、ゴンドラをパーティ会場みたいにして、ナイトフライトしたいよ。夜の遊覧飛行。


(なんだかパリピみたいですね。なんだか爆破したいです)⇒カオリちゃん。


 ……イヤ、君も「みんな」の中に入ってるから。


(がびーん!)


 なぜか、昭和なテイストで衝撃を受けているカオリちゃんなのであった。


 そんで、爆破はもちろんのこと、飛行船内では発砲もダメだからね(泣)。


 あくまでも、娯楽目的の遊覧飛行だからね?


(なかなかいいアイディアだべさ。さっそく鈴阿弥ちゃんに指示を出すべさ)


 人の夢で、ショーバイしようとすんな!


 ……でも、みんなで、空を飛ぶ……か。


 『進撃の○人』でも、飛行船やら飛行艇やら○の○○で空飛んでたよ。

 彼は……乗ってなかったけどな。


 オニャンコ○ンさんの気合がすごかったよ。ラストまで生きてたしね。


(オニャン○ポンさんの生■について語るのは、ネタバレでないべか?)


 ○ニャンコポンさんは、まあまあサブキャラだから、きっと大丈夫だよ。


(オ○ャンコポンさんて、ただ言いたいだけ、みたいになってるのだべさ)


 そりゃ言いたいよ、何度でも。なんか言ってて楽しいもん(笑)。


      ◇


 ♪といんくる、といんくる、りる、すたー。


 心の中で『きらきら星』を歌ってみる。


(ああ、『炊飯器』の『炊きあがりの音』? あるいは『灯油ヒーター』の『そろそろタンクが(から)だよ(おん)』ですか?)


 カオリちゃん、ぜんぜんロマンティックじゃねえ(泣)!


 そんなん言うんなら、眼下に『光のパンツ』が見えてるよ。


(なんですか、それ?)


 イヤ、その、『北の街区』にある『三角広場』がにぎやかで「光の密度」が高くてさ。それがまた逆三角形の「▽」で、しかもその先端の欠けた台形になってるから、もう「光のパンツ」みたいに見えるんだよ。


(ああ、夏にもありましたね。『天空のパンツ』)


 うん。

 しかも、ここって今「おまつり」の「屋台街」とか「露店街」みたいになってるから、そのラインが特に明るくて、言ったら「光のしましまパンツ」に見えるよ(笑)。


 その『三角広場』の上辺にあたる『(いち)の小宮殿』の、さらに北にあるデカい『人造湖』は、「光に縁どられた黒いハート」に見えてる。湖上には光はない。あそこは夜間航行禁止なのだ。


 『とても寒い冬』が発生していたら、『人造湖』は完全凍結していたそうだ。

 けれど、そんな事にはならない。この俺様が、阻止したったのだ。


 でも、凍ってた場合には「巨大な白いハート」とか。

 それはそれで、ロマンティックだったかもしれない。


(…………)


 無言なのに、すごい冷気が伝わってくるんですけど?


 そう言えば、某アニメの某「一次試験」で、湖を凍らせてた「三級魔法使い」がいたけれど……正直、君がやるんかい! って思ったよ。あの後、走って逃げたのは「魔力探知」されないため? めっちゃ走りにくそうなブーツ履いてるのに。で、あの子の名前は、なんて意味?


(『雪崩(なだれ)』でなかったべか)


 ここで、ホノカがまた加わった。

 一時的な念話の断絶は、ある『魔法』の「仕様」なのかもしれない。彼女は『おトイレ』に行ってたのだ。


(二日ぶりで、すっきりしたのだべさ)


 ……だから、言わんでいいがな。んなことは。


(ところで、『雪崩』って?)⇒カオリちゃん。


 キャラの名前っス。ドイツ語での「雪崩」っス。

 あと、その子とペアの子は知ってるかんね。ふんわり言うと『水入れる器』? 『水差し』? で、二人とも、なぜかニーハイな白いロングブーツだよ。


(わたし、そのアニメ()だ観てないので、すこし話をもどしますけど……『白いハート』って、『太陽系』の『冥王星』みたいじゃないですか)


 ああ、だよねー。そんな画像を見たことあるわ。


 で、『冥王星』は……「プルートー」?

 『太陽系』の「惑星」の名をもつ「セー○ー戦士」のなかにはいるの?


(はい、いますよ。『プルート』ですけどね。『冥王(めいおう)せつ○』ちゃんです)


 プルートとせつな。どっちが本名なんだろう?

 でも、『冥王星』は「惑星(プラネット)」じゃなくて「準 惑 星(ドワーフプラネット)」なのに。


(それを言ったら、メインヒロインは『衛星(サテライト)』だべさ)


 そりゃそうだな。

 そんで、『美少女戦士セー○ームーン』は1990年代だし、『冥王星』が「準惑星」になったのは、2000年代……2006年とかそのへん? あるよね、そういうの。時代の変化というか。


(して、『白いハート』があるのが分かったのは、探査機『ニュー○ライズンズ』が『冥王星』に最接近した2015年のことだべさ)


 どことなく、中学校の英語教科書的な探査機だよな。


(エ○ン・ベーカー先生が()ってたのは、『ニューホライ○ン』だべさ)


 俺、下着姿のエレ○先生見たこと……って違うがな!


 えーっと、話を戻すと……『冥王星』な。


(その近傍に、『タナトス』が停滞してそうですよね)

(『ガミ○ス』の某・爆弾の発射基地があるのだべさ)


 メニアックなことを言うと、『青春男○電波女』の「藤○エリオ」が抱っこしてたのが「冥王星さん」だ。お母さんは「女女さん」だ。「ジョジョさん」じゃなくて「ねねさん」だ。主人公の青春はポイント制だ。


 『白いハート』が見つかる以前の話だし、今となっては、色々となつかしー。

 でも、普通に言って「ハート」なら、色は「ピンク」か「赤」だよ。


(ある文化祭で発動された『作戦』では、ピンクのハートが乱舞してたべさ)


 俺も、某・生徒会長みたいな、なにかウルトラでロマンティックなこと企画したいな。大がかりなイベントでの「素敵な演出」って大事だよね?


(…………)


 カオリちゃんが、陽キャ的行為に対して、あまりにも否定的すぎる。


 日向と日陰。両方を演じる……あれ?


 ……んんん?

 光が無くて、逆に目立つ広大な場所がある。


「……ナニアレ? まるで……」


 『王都』の夜景に、異様で不自然なものを発見した。


 気になる。


 ちょっと寄って、なんなのか確認しとこう。


      ◇


「祈願! ★着陸☆」


      ズサ、ズサササササ――


 MSではないよ?

 てか、我ながらメニアックだな。「ズ○」とか。


 着陸地点に「雪」が積もっていて、着陸後の制動距離が長引いたのだった。朝方の雨が止んだあと、知らん間に雪が降っていたらしい。


「★解除☆」


 飛行機の形状に成形されていた『魔法』のキラキラ星が、ふわふわと散っていく。


 で、すぐさま「無敵のバリアー」を展開する。


「寒っ! 祈願! ★不可侵の被膜っ☆」


 一瞬だけど、めっちゃ寒かった。

 『魔法』が発動されると、「ミーヨの愛」が、俺を守ってくれた。


「…………」


 誰からも「つっこみ」が来なかった。ま、いいけど。

 

 で、これは一体なんなのだろう?


 空から見たら、「おまん……じゃなくて、『魔法』の「増幅円」みたいな奇妙な円形模様が、何らかの発光体で描かれていたのだ。ミステリーサークルにしては、下品なカタチだしな。


「これって『魔法陣』? イヤ、『魔法円』?」 


 にしては、規模がデカい。


 ……まさか、「大規模広域魔法テロ」か?


 現在『王都』には、「水素」の詰まった「気球」がいっぱい浮いてるし、アレを同時多発的に爆破されたら……それこそ、12年前の『王都大火』の「二の……イヤ、いいのか「()(まい)」になるぞ?


 そんなことを考えていると、背後から誰かに話しかけられた。


「もしや、『聖女』さま?」


 あ、声で分かった。


 まさかの人物との「再会」だった。


 なぜ、君がここにいる?


「おひさ……いえ、ちがいますわね」


 『聖女』ヨハンナとその人物は、ちょい前にも会ってるらしいのだ。

 だから、「おひさしぶり」は禁句なのだ。そんな「縛り」があるのだ。そんな「縛り」があったら、「陽太郎」先生も難儀するだろうに。


(誰なんだべか? 陽太郎先生て)


 そんなこと、俺に訊かれても困る。

 てか、こっちの会話に集中させて!


「『巫女見習い』ヒサヤ?」

「はい」


 すんごい久しぶりだけど、声ですぐに分かったよ。

 冬季用の白いヴェール『雪焼け除け』の奥から聞こえたその声は、俺が名付けた元・獣耳奴隷の「ヒサヤ」の声だったのだ。


      ◇


「…………」


 無言のまま、ヒサヤはこちらに近づいてくる。


 だがしかし、彼女の方は、どうやって俺を『聖女』ヨハンナと見破ったのだろうか?


「よく、あたくしと気づきましたわね?」

「はい、お尻のカタチに見覚えがありました」


「……そうなんですのん?」


 だが、それはおそらく「うそ」だ。

 俺はいま、白い『夜の服』(※寝間着です)の上から、『旅人のマントル』(※寒いので『★召喚☆』しました)を羽織っているのだ。足首まで覆うデカい「マント」だ。「おしりのカタチ」なんて、分かりっこないのだ。


「『聖女』さま。椅子に座るような姿勢で空を飛んで、こちらにいらっしゃいましたでしょう? それで、お尻のカタチがはっきりとわかりました」

「…………」


 それは『★マジカル・ライトプレーン☆』の「仕様」なのだ。透明な魔法の軽飛行機なのだ。


 そんで、俺の……というか、女体化した状態の「ヨハンナちゃん」の「お尻」って、小さくて引き締まってるらしいのだ。俺が俺だと、「後ろ姿」でバレてしまうのだ。背後から呼び止められることが多いのだ。特徴ある「お尻の小さな女子」なのだ。


(『キューティー○ニー』みたいだべさ)


 でも、上は「ボイン」じゃないっス。そこそこあるけどね。


 あと、これは言っていいのか……『癒し手』でもある『巫女見習い』ヒサヤは、この世界の「病院」にあたる『施薬治療院』では、「*門科」のような部署につとめている。なので、自然と「お尻」に注目してしまうらしい。一種の職業病か?


 でも、なんで俺の「お尻は小さい」のだろう?

 某「お兄ちゃん」みたいに、女体化にともなって、年齢が若返ってるんじゃあないと思うけどな。


(男性から女性に性転換してるから、骨盤が未発達だから……じゃないんですかね? わたしの推論ですけどね)


 カオリちゃんは、「お尻の小さな理由」を、そんな風に考えているらしい。


 彼女のほうは、現在そうでもないからな。

 『神造の双子』って言っても、その後のなんやかんやで、差異(さい)がゼロってワケじゃあないのだ。


 『シャングリラ・フ○ンティア 』の「サイガ-○」は、ワケさんなのだ。


(ワキ!!)

(ワキ!!)


 (いま)だかつてない勢いで、ホノカオからつっこまれた。


 なに、どったの?


和氣(わき)あず○さんだべさ)


 え!? ワキ? ……ワケじゃなくて?


 イヤ、だって「和気清麻呂(わけのきよまろ)」っているじゃん。


(字が違うじゃないですか? それに、そっちでも『和気(わき)あいあい』とかあるじゃないですか?)


 …………そうだったんだ?


 好きな声優さんなのに、ずっと間違えてた……。


(いったい何人好きな声優さんがいるんですか? このシュヴァイン!)

(『オールスターズ』よりも多いんだべか? ぶひぶひブタ野郎だべさ)


 なお、「部費」を「ぶたの貯金箱」に貯めてたのは『ハル○カ』だ。

 それと「部費」が増えて「ブヒブヒ」言ってたのは『けい○ん!!』だ。


 ならば!


 お詫びの意味を込めて「スペシャル企画」を発動だ!!


      ◇


 年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』。

 その最中(さなか)に、彼女と「再会」とはな。


 ただ、時間と場所を考えると、あまりにも不自然だ。


 ヒサヤは、「冬用平服」の上から大き目の「肩マント(ケープ)」を着てる。頭部全体を覆う『雪焼け除け』は、お顔の保温と保湿の効果もありそうだ。あと、足元はブーツっぽい長靴履いてる。


 これらは、いちおう『巫女見習い』の冬季の「制服」みたいなものだ。

 でも、そんなに本格的な防寒装備じゃあない。


 深い考えもなく、フラッと出てきた感じだ。よく寒くないな?

 子供は風の子ってヤツか? シルフの加護でもあるんか? 戦闘妖精か? ちがう「雪風」なら、『冥王星』だぞ?


「ヒサヤさん。貴女こそ、どうしてここに?」


 不都合なことを訊かれないように、こっちから質問だ。


「実は……理由(わけ)あって、寄宿舎を脱け出して来ました」

「ワケあって? 寄宿舎から? 女子寮じゃなくて?」


 わきあがるような勢いで、ヒサヤは語りだした。


「ずっと以前から、心にひっかかりがあったんです」


 (いま)だに、この子の過去は不明だ。

 彼女は、やなせまい……じゃなくて、やるせないような思いを吐露した。


「ここで、誰かと約束があったような気がして……ここで、誰かと会わなければならないような気がして。迷いながら、ここまで流されるままに」


 誰かと会う約束? そんな理由で、俺みたいに「脱走」したの?

 こんな冬の夜遅くに? フラッと、流転(るてん)の果てに?


 『王都』は現在、年末最大のスペシャルウィーク『神授祭』の最中。

 そんで、この時期、実は『女王国』でも、恋人同士のクリスマスデート的なことが行われているらしいんだよな。聞いた話だと、この季節限定の特殊なジュエリーとかも贈るらしいよ。


(ならば、爆裂魔法の出番ですね?)


 およしなさい。ネタ魔法なのにネタじゃなくなる。


 俺はカオリちゃんに苦情(くじょう)を言ったよ、思念(しおん)(※間違ってます)で。


 かけるんなら(どろ)か? じゃなくて! 「愛の魔法」とかにしなさい。ある魔女のは、別称がとんでもなくヒドいけれども。


「どうしても、ここに来なくてはならない……という『前世の記憶』に導かれているような……」


 明快さに欠ける言い方だ。

 自分でも、よく分かってないらしい。


 まだ幼い子だし、その原因をしすべる……イヤ、知る(すべ)はないのだろう。


(いざな)われるように、ついついここに来てしまったのです。どうしても、その衝動を抑えきれずに」


 そこまで言って、俺に判断をゆだねるように言葉を切ってしまった。


 (まい)るな。俺はどうしたらいいんだ?


「『前世の……記憶』?」


 でも、誰のだよ?


 それは、君の『前世』ではないよ。違うかんね。

 君の、その身に宿る「黒い星」に記録された「誰かの記録」なんだよ。たんなる「データ」に過ぎないんだよ。


 千古(せんこ)の……万古(ばんこ)の……あるいはもっと古い太古の昔からある、不死がわりに、永遠のような存在になるための情報収集端末「黒い星」に記録されたデータ。


 でも、なんだろう?


 もしかすると、「黒い星」から彼女の「脳」へと、「記憶の転写」みたいな現象が起きてるのかもしれない。


 その現象は、夜寝てるあいだの「ゆめ」……レム睡眠の時に起きるのかもしれない。

 月みたいな、渚の潮の満ち引きのような、波のようなリズムに合わせて。


 それが、脳内で何かをカナデて……(かな)でてる?


 検証のため、ハツカネズミとかで実験するベッキー……イヤ、そんな生き物は『アアス』にはいないな。なお、ぬるぬるした日陰の生き物であるアレもいないので、個人的にたすかってる。イヤ、そういう話じゃあない。あと、「ベッキー」って「レベッカ」の愛称なのか?


(『ハツカネズミ』じゃなくて、『モルモット』でしょう?)


 そんなこと言われても、現在「スペシャル企画」発動中なんだってば!


 ……というかアレだな。


 実はここ、『東の街区』の大半を占める広大な王立放牧場『大馬場(おおばば)』だ。


 12年前の『王都大火』の(のち)、残骸の撤去後も再開発されずに更地(さらち)のまま放置された土地だ。

 

 季節によっては、白詰草(シロツメクサ)(※クローバー)の白い花くらいは咲くことはあるだろうけれど、ふだんは青々(あおあお)した草だらけの「原っぱ」だ。


 それが、今は冬なので「雪原」ぽい。

 雪明りと、街明かりで、この場に立ってみると、上空から見たような暗さはなかった。昼間なら、ピュアホワイトでピュアミルキーだろうな。まさみ……まさに。


 以前、ラウラ姫のひいお祖母ちゃんの『先々代(さきのさき)の女王陛下』が()りし……あ、まだ生きてるよ。オオババちゃん。「在りし日」とか言ったら怒られるよ。とにかく、その時にはセシリアまでいて、三人で一緒になんかやってたな。


 その件に関連して、オオババちゃんの娘である先代の女王陛下……なんていったけ? 『女王国』の王家には、同じような名前が多くて困るな。


 関係ないけど、アニメの王女様に「シャルロット」ってめっちゃ多い気がする。別バージョンの「シャーロット」とか含めると10人以上いる気がする。


 ま、それはそれとして、その先代の女王陛下の「黒い星」が、一時的に『化物(ケモノ)』に宿って、俺に「遺言」みたいな言葉を遺してるのだ。


「『神授祭』の贈り物は、例の場所に隠してあるゆえ、探し出して開けてみるがいい」――と。


 そのメッセージの宛先は、この子……ヒサヤじゃないと思うんだけどな。


 『二の姫』ロザリンダ王女の「実体」は、生きているかもしれないんだし。そうであるならば、本当の受取人は、そちらだろう。


 縁もゆかりもない「他人」の『前世の記憶』から引き起こされる衝動的な行動……って、つまりは俺とかホノカオが、強力に「アニメ観たーい!」と思ってしまうのと、同じような事なんじゃあないの?


 それに従って、実際に行動するかどうかは……それはまあ、置こう。


「ところで、この『魔法』の『増幅円』はなんなのかご存じですのん?」


 上空から見下ろして、人家(じんか)の明りのない広大な暗黒ゾーンに、なにかで発光してるデカい『増幅円』を見つけて、なんだろう? と思って、ここに着陸したのだ。


「『魔法』の『増幅円』……ですか?」


 本気で不思議そうにしてる。

 てことは、カノジョとは無関係? それと気づかずに、ここにいたって事か?


 そしたら、まさか本当に「魔法テロ」とかに使うような『魔法円』とか『魔法陣』……でも、どう違うんだ、このふたつ? カタチか? 四角いのが「(じん)」?


 あと、まったくの別作品に「○崎の孫娘の紅子」と「箱崎紅○」という、良く似た名前のキャラが……って、まあいいか、それは。


(そんなこと言うんなら、同じ作家さんの別作品に『キツ・チリ』と『キツチ・リコ』ってキャラがいるのだべさ)


 それぞれ、年齢も名前の漢字表記も演じてる声優さんも違うのだけれど、見た目の特徴の「真ん中分けの髪型とヘアバンド」がソツ・クリなのだそうだ。


(……謎なのだべさ。あと、あの子は実在してないのだべさ)


 『さよなら絶○先生』の原作の事らしいけれど……ネタバレ禁止で。


(あたしは『かくしご○』は好きだども、『隠しごと』は苦手だべさ)


 ホノカさん。実は絵も()けて、かなり上手いのであった。

 自分が描いた絵を、「これ見ぃな」と言わんばかりに見せてくるのだ。俺は、どうしようもなく「画伯」なので、悔しくもあり、うらやましいのであった。


 我々が、そんな雑念を交わしていると――


「……!」


 なにかしら、ギクリとして、身を固くしている。なんだろう?


「……夜の、三打点です」


 ヒサヤが身に着ける『神授の真珠』に「時報」の感応があったらしい。

 あのブルブルした振動って、不意に来ると、本気でびっくりするのだ。


 俺は……なにも感じなかった。

 こう言うとカッコいー「ファントムバイブレーション」も何も。


 事情があって、『聖女』専用の『神授の真珠(金色)』を外してるのだ。



      リン、ゴ――ン。リン、ゴ――ン。リン、ゴ――ン。



 『永遠の道・南東路』を隔てた『南の街区』から、「時告げの鐘」が聞こえた。

 なお、「夜の三打点」は『地球』で言うと「午後10時ちょい前」って感覚だ。


 立ち話が、長引いてしまったようだ。


「こんな時間です。未成年の貴女は、寄宿舎に戻るべきですわ」

「いまの私は違うんです。その証拠に……祈願! ★点火っ☆」


 彼女の指先に、火花のような火の粉が舞った。

 気のせいじゃない。樹の精ドライアドでもない。「怒羅○(どらみ)」メンバーの「○川」と「○山」が左右どっちか分からない。


 とにかく、それは……12年前の『王都大火』の後に「年齢制限」が施されるようになった「R15魔法」のはずだ。


 俺は……衝撃を受けた。


 そんなものを、この子が使えるというのなら、魔法式に被着者のプロフィールが刻まれた「黒い星」の情報がバグってる? たまに、俺の17歳が零歳児(れいさいじ)あつかいされるみたいに? イヤ、なんかの「欺瞞(ぎまん)」? たくみに隠されてる? 別なナニかでマスキングされてるのか? マス○ングさんて、本名判明してるの?


「『聖女』命令です。名乗りなさい。貴女は一体何者なのです?」


 俺がきびしく問うと、彼女は微笑(ほほえ)み、こう言った。


「私は、ヒサヤ。ヒサヤ・ダイ○クドーです」


 うん、いい機会だ。きちんと謝罪しよう。


「……ゴメンな、ノリで変な名前つけちゃって」

「……え!?」


 なんか驚かれてるし、フォローも入れとこう。


「と、あたくしの幼馴染の『プロペラ小僧ジン』さんが、言ってらしたのでございマスのことよ!」

「……はあ?」


 白い肌で淡い金髪で、明るいライトブラウンの瞳をもつ子なのだ。

 かしこい子だし、「ソフィア(叡智)」とか名付ければよかったかもだ。


 その時だった。


      パキン!


 くるみ割りの音じゃなくて、フィンガースナップの音だ。


「きゃあっ!」

「ぐああああっ!!」


 上空から強力な光が降りそそぎ、俺たちはその光のチューブによって、UFOによるアブダクションのごとく吸い上げられて、空の高みのスカイハイ、ザ・クライシス・シチュエーション……というのは、まあウソだ。


 それと、「年末最大のスペシャルウィーク」を連発していたせいか、俺自身に「なにか変なスイッチ」が入っていたかもしれないことを、ここにお断りしておくぜ。


      ◇◇◇


(『スペシャル企画』とか言っといて、いろいろ抜けてるんでないべか? 『アイドル○スター』とかは未視聴なんだべか?)


 ……未視聴です。


(して、実は2023年に、ご結婚されてるのだべさ)


 ……したら、お名前変わってるかもしれないやん(泣)。


      ◆


 次回。神授祭 2日目⑨。

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